「魔王の葛藤」「4ブックマーク」
初めまして。
「#b#魔王#/b#」-私はそう呼ばれる存在です。
この世界を征服し、魔族の世とすること。
それが魔王に代々与えられてきた使命です。
ですが・・・私の世界征服に対する考え方は、
恐らくこれまでの魔王とは違うのでしょう。
#b#私は人間を滅ぼすことは考えていません。#/b#
彼らの命を奪う事に意味を見出せないからです。
私はただ、我ら魔族と#b#共存#/b#するという事を、
人間たちに理解してもらえれば、それで良いと考えています。
これならば、この世界は人間の世でありながら、魔族の世ともなる。
それで「この世界を魔族の世にする」という使命を果たすつもりです。
ただ、いずれにしてもどうにかしなければならない問題はございます。
#red#勇者#/red#-歴代の魔王が降臨するのと同時に現れ、魔王を打ち倒してきた存在。
そして勇者は此度、単身で私の下へ訪れました。
しかし、今回私は#b#勇者を倒してしまった#/b#のです。
こんなことは過去に一度もありませんでした。私も戸惑っているところです。
現在は彼の戦力を奪い、捕虜として迎えている状態です。
戦力を奪ったとはいえ、勇者が今後再び私の脅威にならないとも限りません。
ただ、無用に彼の命を奪う事もしたくはありません。
先ほども申し上げたように、無闇に人間の命を奪う事に意味を見いだせないからです。
勇者が私の考える世界征服を理解し、共に実行してくれれば良いのですが。
ならば私の取るべき道は、#b#勇者を説得する#/b#ことでしょう。
とはいえ、魔王たる私がかような世界征服のありかたを説いたとて、
勇者がすんなり納得してくれるとも思えません。
皆様、どうか勇者の説得にご協力をお願い致します。
「#b#魔王#/b#」-私はそう呼ばれる存在です。
この世界を征服し、魔族の世とすること。
それが魔王に代々与えられてきた使命です。
ですが・・・私の世界征服に対する考え方は、
恐らくこれまでの魔王とは違うのでしょう。
#b#私は人間を滅ぼすことは考えていません。#/b#
彼らの命を奪う事に意味を見出せないからです。
私はただ、我ら魔族と#b#共存#/b#するという事を、
人間たちに理解してもらえれば、それで良いと考えています。
これならば、この世界は人間の世でありながら、魔族の世ともなる。
それで「この世界を魔族の世にする」という使命を果たすつもりです。
ただ、いずれにしてもどうにかしなければならない問題はございます。
#red#勇者#/red#-歴代の魔王が降臨するのと同時に現れ、魔王を打ち倒してきた存在。
そして勇者は此度、単身で私の下へ訪れました。
しかし、今回私は#b#勇者を倒してしまった#/b#のです。
こんなことは過去に一度もありませんでした。私も戸惑っているところです。
現在は彼の戦力を奪い、捕虜として迎えている状態です。
戦力を奪ったとはいえ、勇者が今後再び私の脅威にならないとも限りません。
ただ、無用に彼の命を奪う事もしたくはありません。
先ほども申し上げたように、無闇に人間の命を奪う事に意味を見いだせないからです。
勇者が私の考える世界征服を理解し、共に実行してくれれば良いのですが。
ならば私の取るべき道は、#b#勇者を説得する#/b#ことでしょう。
とはいえ、魔王たる私がかような世界征服のありかたを説いたとて、
勇者がすんなり納得してくれるとも思えません。
皆様、どうか勇者の説得にご協力をお願い致します。
15年04月05日 16:56
【亀夫君問題】 [セルス]
【亀夫君問題】 [セルス]
解説を見る
魔王と勇者。
魔王は人類の蹂躙を望み、勇者は魔王の邪なる野望を打ち砕く。
そういった対極の存在として、魔王と勇者の伝説は語り継がれてきた。
しかし此度の魔王と勇者は、
#b#対極の存在でありながら、これまでとは全く違う関係#/b#を築いていた。
#red#魔王は人類との共存を願い。#/red#
#red#勇者は人類に絶望し、滅ぼす事を願った。#/red#
魔王がそう願う理由は、彼女自身が語った通り。
勇者がそう願った理由を語るには、少しばかりの時間が要る。
興味があるならば、語ろう。興味がないのなら、読み飛ばせばよい。
彼の歩んだ凄惨たる運命を。
--------------------------------------------------------------------
魔王討伐の任を仰せつかることは、大変に光栄なこと。
だから勇者が勇者に選ばれた時、誰もが彼を、この世の救世主だともてはやした。
勇者には初め、打倒魔王の旅を共にした者がいた。
戦士と魔法使い。
戦士は勇者の幼馴染で、魔法使いは勇者にとってかけがえのない恋人であった。
彼らは昔から仲が良く、勇者が勇者として選ばれた時も、三人で魔王を倒そうと誓い合った。
だが、悲劇は唐突にして訪れた。
とある街を訪れた時の事。
夜、勇者たち一行の宿泊していた宿が焼き討ちされ、魔法使いが命を落とした。
当初は街まで侵攻してきた魔族によるものであると考えられていたが、
街に魔族が侵入してきた形跡はなく、人間の仕業であることが判った。
そして、騎士団による調査の結果では、それを実行したのが勇者であるとされた。
しかも、初めから魔法使いを殺すつもりで計画された事である、と。
もちろん身に覚えはなく、そもそも魔法使いを殺す理由などないと勇者は反論するが、
数々の証拠の品により勇者による犯行であると断定され、
また魔法使いを殺した理由も適当にでっち上げられてしまった。
こうして、かつて彼を英雄ともてはやした人々は、掌を返すように彼を罵った。
その日から彼は、救済対象である人類から追われる身となった。
邪なるもの-「魔王」として。
どうしてこうなってしまったのだろう。
勇者は苦悩した。
最愛の人を失った事。
追われる身となった事。
このままでは終われない。とにかく真実を知りたい。
その一心で、勇者は追われながらも、件の事件について独自に調べていった。
そして、彼は真実に至る。
彼の至った真実は、とても残酷な物だった。
勇者は一人の人物と対峙する。
それは、全ての信実を握る人物-戦士だった。
全ては戦士による犯行だったのである。
幼いころから、彼と勇者は互いに切磋琢磨していた。
しかし、戦士がどれほど努力を重ねようとも、勇者はその上を行った。
剣術も、学術も・・・そして、魔法使いとの恋の行方も。
戦士もまた、魔法使いに恋心を抱いていた。
しかし、魔法使いの心はいつだって勇者に傾いていた。
旅の最中、あの街の宿の焼き討ちが起こる直前の事。
戦士は魔法使いに気持ちを伝えた。
これまで自分がどれだけ魔法使いを想ってきたか、その全てを伝えた。
それでも、魔法使いが選んだのは勇者だった。
その時、戦士の心に歪みが生じた。
積もり積もった妬み。
それは次第に、全てを勇者に奪われてきたという憎悪へと姿を変えた。
憎悪の対象は勇者だけに留まらなかった。
どれだけ想っても振り向いてくれない魔法使いにも、それは及んだ。
だから戦士は、勇者から全てを奪ってやると決意させた。
勇者たる栄誉を奪い、魔王の汚名を与え、
愛する人をも奪ってやる。
そして戦士は凶行に及んだ。
全ての真実を知った勇者もまた、戦士を激しく憎んだ。
二人の憎悪は激しく衝突し、二人を互いを殺し合った。
激戦の果て、生き残ったのは勇者だった。
だが、勇者は勝利の喜びに浸ることはなかった。
あるのはただ、何もかもを失った喪失感だけ。
暗く淀んだ空をぼんやりと眺めているうち、
次第に勇者の心は絶望に支配されていった。
それは、今の自分に対する絶望でもあり、
救済すべき対象であるはずの人類に対する絶望でもあった。
これまで自分が信じてきた全ての人間に裏切られた。
幼馴染であった戦士に、最愛の人を奪われた。
そして、かつて自分を英雄ともてはやした者達も、今は自分を魔王と蔑む始末。
#red#もう、この世界で、自分に味方する者は誰もいない。#/red#
圧倒的な孤独に苛まれるうちに、勇者は人類に対する憎しみを憶えた。
人間はロクでもない生き物だ。
妬み、憎み、平気で他者を殺し、他者を陥れる。
力を持たぬ者達は、力を持つ者にすがり、しかし平気で斬り捨てる。
ああ、なんてロクでもない生き物なんだ。
#red#ならば滅ぼしてしまえ#/red#
#red#生きる価値の無い人間どもを根絶やしにするために#/red#
#red#魔王に代わって俺がこの世を蹂躙してやろう#/red#
--------------------------------------------------------------------
絶望だけを抱えて魔王の下に訪れた勇者。
しかし勇者は魔王に敗れた。
考えてみれば、それは当然の事であった。
勇者とは人類の希望を力に変えて、魔王を打ち破る者。
希望を失った勇者がそれだけの力を持てるはずもなかった。
それならそれでいい。
自分を殺せば、魔王が世界を蹂躙するのを阻むものはいなくなる。
魔王に敗れた勇者は、このまま魔王に殺される事を望んだ。
しかし、魔王は勇者を殺す事を望まなかった。
ただ、勇者を優しく包み込むように抱擁し、彼に語りかけた。
-ごめんなさい。
-私がいなければ、貴方が勇者になることは無かった。
-貴方の絶望には、私にも罪があります。
-でも、起こったことは覆らない。
-私にも、貴方にも、それを覆すだけの力は無い。
-確かに、人類の全てが貴方の敵になってしまったかもしれません。
-でも、#red#貴方は孤独じゃない。#/red#
-#red#人ならざる私は、貴方を受け容れましょう。#/red#
-私の世界征服の構想を少し、修正しましょうか。
-私は魔族の存在を、人類に認めてもらうことを考えてきました。
-それに、貴方という存在をもう一度認めてもらう事を加えましょう。
-大丈夫。
-貴方は一人じゃないから。私もいますから。
-二人で協力して、この世界を征服しましょう?
全ての者に拒絶され、閉ざされた勇者の心は、
自らを受け容れてくれた魔王によって再び開かれ、
堰を切るようにして感涙にむせぶ。
彼の人への憎悪の全てを取り払うことはすぐには難しいだろうが、
いずれは彼の憎悪も融け、全ての人々を許し、また許される日が来るのだろうか。
ただ、勇者の心に再び希望の光が灯ったことに、間違いはないだろう。
魔王は人類の蹂躙を望み、勇者は魔王の邪なる野望を打ち砕く。
そういった対極の存在として、魔王と勇者の伝説は語り継がれてきた。
しかし此度の魔王と勇者は、
#b#対極の存在でありながら、これまでとは全く違う関係#/b#を築いていた。
#red#魔王は人類との共存を願い。#/red#
#red#勇者は人類に絶望し、滅ぼす事を願った。#/red#
魔王がそう願う理由は、彼女自身が語った通り。
勇者がそう願った理由を語るには、少しばかりの時間が要る。
興味があるならば、語ろう。興味がないのなら、読み飛ばせばよい。
彼の歩んだ凄惨たる運命を。
--------------------------------------------------------------------
魔王討伐の任を仰せつかることは、大変に光栄なこと。
だから勇者が勇者に選ばれた時、誰もが彼を、この世の救世主だともてはやした。
勇者には初め、打倒魔王の旅を共にした者がいた。
戦士と魔法使い。
戦士は勇者の幼馴染で、魔法使いは勇者にとってかけがえのない恋人であった。
彼らは昔から仲が良く、勇者が勇者として選ばれた時も、三人で魔王を倒そうと誓い合った。
だが、悲劇は唐突にして訪れた。
とある街を訪れた時の事。
夜、勇者たち一行の宿泊していた宿が焼き討ちされ、魔法使いが命を落とした。
当初は街まで侵攻してきた魔族によるものであると考えられていたが、
街に魔族が侵入してきた形跡はなく、人間の仕業であることが判った。
そして、騎士団による調査の結果では、それを実行したのが勇者であるとされた。
しかも、初めから魔法使いを殺すつもりで計画された事である、と。
もちろん身に覚えはなく、そもそも魔法使いを殺す理由などないと勇者は反論するが、
数々の証拠の品により勇者による犯行であると断定され、
また魔法使いを殺した理由も適当にでっち上げられてしまった。
こうして、かつて彼を英雄ともてはやした人々は、掌を返すように彼を罵った。
その日から彼は、救済対象である人類から追われる身となった。
邪なるもの-「魔王」として。
どうしてこうなってしまったのだろう。
勇者は苦悩した。
最愛の人を失った事。
追われる身となった事。
このままでは終われない。とにかく真実を知りたい。
その一心で、勇者は追われながらも、件の事件について独自に調べていった。
そして、彼は真実に至る。
彼の至った真実は、とても残酷な物だった。
勇者は一人の人物と対峙する。
それは、全ての信実を握る人物-戦士だった。
全ては戦士による犯行だったのである。
幼いころから、彼と勇者は互いに切磋琢磨していた。
しかし、戦士がどれほど努力を重ねようとも、勇者はその上を行った。
剣術も、学術も・・・そして、魔法使いとの恋の行方も。
戦士もまた、魔法使いに恋心を抱いていた。
しかし、魔法使いの心はいつだって勇者に傾いていた。
旅の最中、あの街の宿の焼き討ちが起こる直前の事。
戦士は魔法使いに気持ちを伝えた。
これまで自分がどれだけ魔法使いを想ってきたか、その全てを伝えた。
それでも、魔法使いが選んだのは勇者だった。
その時、戦士の心に歪みが生じた。
積もり積もった妬み。
それは次第に、全てを勇者に奪われてきたという憎悪へと姿を変えた。
憎悪の対象は勇者だけに留まらなかった。
どれだけ想っても振り向いてくれない魔法使いにも、それは及んだ。
だから戦士は、勇者から全てを奪ってやると決意させた。
勇者たる栄誉を奪い、魔王の汚名を与え、
愛する人をも奪ってやる。
そして戦士は凶行に及んだ。
全ての真実を知った勇者もまた、戦士を激しく憎んだ。
二人の憎悪は激しく衝突し、二人を互いを殺し合った。
激戦の果て、生き残ったのは勇者だった。
だが、勇者は勝利の喜びに浸ることはなかった。
あるのはただ、何もかもを失った喪失感だけ。
暗く淀んだ空をぼんやりと眺めているうち、
次第に勇者の心は絶望に支配されていった。
それは、今の自分に対する絶望でもあり、
救済すべき対象であるはずの人類に対する絶望でもあった。
これまで自分が信じてきた全ての人間に裏切られた。
幼馴染であった戦士に、最愛の人を奪われた。
そして、かつて自分を英雄ともてはやした者達も、今は自分を魔王と蔑む始末。
#red#もう、この世界で、自分に味方する者は誰もいない。#/red#
圧倒的な孤独に苛まれるうちに、勇者は人類に対する憎しみを憶えた。
人間はロクでもない生き物だ。
妬み、憎み、平気で他者を殺し、他者を陥れる。
力を持たぬ者達は、力を持つ者にすがり、しかし平気で斬り捨てる。
ああ、なんてロクでもない生き物なんだ。
#red#ならば滅ぼしてしまえ#/red#
#red#生きる価値の無い人間どもを根絶やしにするために#/red#
#red#魔王に代わって俺がこの世を蹂躙してやろう#/red#
--------------------------------------------------------------------
絶望だけを抱えて魔王の下に訪れた勇者。
しかし勇者は魔王に敗れた。
考えてみれば、それは当然の事であった。
勇者とは人類の希望を力に変えて、魔王を打ち破る者。
希望を失った勇者がそれだけの力を持てるはずもなかった。
それならそれでいい。
自分を殺せば、魔王が世界を蹂躙するのを阻むものはいなくなる。
魔王に敗れた勇者は、このまま魔王に殺される事を望んだ。
しかし、魔王は勇者を殺す事を望まなかった。
ただ、勇者を優しく包み込むように抱擁し、彼に語りかけた。
-ごめんなさい。
-私がいなければ、貴方が勇者になることは無かった。
-貴方の絶望には、私にも罪があります。
-でも、起こったことは覆らない。
-私にも、貴方にも、それを覆すだけの力は無い。
-確かに、人類の全てが貴方の敵になってしまったかもしれません。
-でも、#red#貴方は孤独じゃない。#/red#
-#red#人ならざる私は、貴方を受け容れましょう。#/red#
-私の世界征服の構想を少し、修正しましょうか。
-私は魔族の存在を、人類に認めてもらうことを考えてきました。
-それに、貴方という存在をもう一度認めてもらう事を加えましょう。
-大丈夫。
-貴方は一人じゃないから。私もいますから。
-二人で協力して、この世界を征服しましょう?
全ての者に拒絶され、閉ざされた勇者の心は、
自らを受け容れてくれた魔王によって再び開かれ、
堰を切るようにして感涙にむせぶ。
彼の人への憎悪の全てを取り払うことはすぐには難しいだろうが、
いずれは彼の憎悪も融け、全ての人々を許し、また許される日が来るのだろうか。
ただ、勇者の心に再び希望の光が灯ったことに、間違いはないだろう。
「見栄っ張りラヴァーズ」「4ブックマーク」
コンビニバイトの山村カナエは、
常連客である佐藤タクトが一日おきに現れることに気づき、
彼を"見栄っ張り"な性格であるとプロファイリングした。
カナエはどのような推理過程を辿ったのだろうか?
常連客である佐藤タクトが一日おきに現れることに気づき、
彼を"見栄っ張り"な性格であるとプロファイリングした。
カナエはどのような推理過程を辿ったのだろうか?
15年01月25日 14:20
【ウミガメのスープ】 [牛削り]
【ウミガメのスープ】 [牛削り]
解説を見る
ファミファミファミーパファミファミパー♪
入店の音楽が鳴ったので、山村カナエは慌ててスマホをしまった。
「いらっしゃいませ」
見ると、常連客の"とかげ"氏だった。
顔立ちがどことなく爬虫類を連想させることから、誰かがそう呼び始めたのである。
とかげ氏は脇目も振らずスイーツコーナーに行った。
最近のお気に入りらしい#red#「炭火焼きプリン」を二つ手に取り#/red#、私の立つレジカウンターに静かに置いた。
「スプーンはご入用ですか?」
「うん、二つお願い」
「……かしこまりました」
会計を済ませ、店から出ていくとかげ氏。
ふと見ると、カウンターの上に商品が置きっぱなしだった。
カナエはそれを掴み、すぐにとかげ氏を追いかけた。
「とかげ様ぁ!」
店の前の駐車場を出るところで、ようやく追いついた。
振り向いた彼が戸惑うような顔をしているのを見て、何か変なことを口走ってしまったかなと思った。
「あの、お忘れですよ」
「あれ? ああ、しくじったなあ」
彼は額に手を当てながら受け取り、「ありがとう」と言った。
「でも、お店、離れちゃって大丈夫ですか?」
「あ……ええ、この時間はあんまりお客さん来ないので」
「そう……とにかく、助かりました」
とかげ氏はビニール袋を軽く上げてみせ、それからまた、帰路につこうとした。
「あの」
失礼と知りつつも、山村カナエは指摘したくなった。
とかげ氏は再度振り向いた。
「いつも二つ、買われていますよね。スプーンも二つ付けて。#red#それ、彼女さんとか奥さんの分ですか?#/red#」
「ああ、嫁の……」
「でも、とかげさん、一日おきに来られますよね。それって、#red#二つのプリンを二日間かけて食べている#/red#ってことじゃないでしょうか?」
とかげ氏は何も言わず、手元のプリンに目を落とした。
「本当は奥さんなんていないんでしょう? そうじゃないですか?」
「し、失礼じゃないか」
か細く、消え入りそうな声。
「違うんです、私、とかげさんが一日おきにしか来られないのが寂しくて……。もう見栄なんて張らなくていいんで、毎日来てくれませんか?」
「え……」
とかげ氏は顔を上げた。
「好きになっちゃったんです。あなたのその真っ黒な目、ぬらぬらした肌、それに突き出た鼻先も……」
カナエは恋愛の駆け引きというものを知らない。走り始めたら止まれない、暴走特急である。
とかげ氏は顔を赤らめるカナエを見つめて、ひとつ頷いた。
「正解です。おっしゃる通り、僕は見栄っ張りでした。……見破られちゃったらもう、わざわざ一日おきに二つ買っていく必要もないか」
「とかげさん……」
「僕の名前はとかげじゃないよ。佐藤タクト。タクって呼んでほしいな」
「わかりました。とかげさん」
#big5#簡#/big5#易解説
#b#一日おきにやって来て、スイーツを二つ買っていく佐藤タクト。#/b#
#b#二つ買っていくことから、一緒に食べる人がいるという推測が成り立つ。#/b#
#b#しかし一日おきであることから、買った二つは二日間に分けて一人で食べていると思われる。#/b#
#b#わざわざそんなことをするのは、自分には恋人がいるんだと見栄を張りたいためである。#/b#
入店の音楽が鳴ったので、山村カナエは慌ててスマホをしまった。
「いらっしゃいませ」
見ると、常連客の"とかげ"氏だった。
顔立ちがどことなく爬虫類を連想させることから、誰かがそう呼び始めたのである。
とかげ氏は脇目も振らずスイーツコーナーに行った。
最近のお気に入りらしい#red#「炭火焼きプリン」を二つ手に取り#/red#、私の立つレジカウンターに静かに置いた。
「スプーンはご入用ですか?」
「うん、二つお願い」
「……かしこまりました」
会計を済ませ、店から出ていくとかげ氏。
ふと見ると、カウンターの上に商品が置きっぱなしだった。
カナエはそれを掴み、すぐにとかげ氏を追いかけた。
「とかげ様ぁ!」
店の前の駐車場を出るところで、ようやく追いついた。
振り向いた彼が戸惑うような顔をしているのを見て、何か変なことを口走ってしまったかなと思った。
「あの、お忘れですよ」
「あれ? ああ、しくじったなあ」
彼は額に手を当てながら受け取り、「ありがとう」と言った。
「でも、お店、離れちゃって大丈夫ですか?」
「あ……ええ、この時間はあんまりお客さん来ないので」
「そう……とにかく、助かりました」
とかげ氏はビニール袋を軽く上げてみせ、それからまた、帰路につこうとした。
「あの」
失礼と知りつつも、山村カナエは指摘したくなった。
とかげ氏は再度振り向いた。
「いつも二つ、買われていますよね。スプーンも二つ付けて。#red#それ、彼女さんとか奥さんの分ですか?#/red#」
「ああ、嫁の……」
「でも、とかげさん、一日おきに来られますよね。それって、#red#二つのプリンを二日間かけて食べている#/red#ってことじゃないでしょうか?」
とかげ氏は何も言わず、手元のプリンに目を落とした。
「本当は奥さんなんていないんでしょう? そうじゃないですか?」
「し、失礼じゃないか」
か細く、消え入りそうな声。
「違うんです、私、とかげさんが一日おきにしか来られないのが寂しくて……。もう見栄なんて張らなくていいんで、毎日来てくれませんか?」
「え……」
とかげ氏は顔を上げた。
「好きになっちゃったんです。あなたのその真っ黒な目、ぬらぬらした肌、それに突き出た鼻先も……」
カナエは恋愛の駆け引きというものを知らない。走り始めたら止まれない、暴走特急である。
とかげ氏は顔を赤らめるカナエを見つめて、ひとつ頷いた。
「正解です。おっしゃる通り、僕は見栄っ張りでした。……見破られちゃったらもう、わざわざ一日おきに二つ買っていく必要もないか」
「とかげさん……」
「僕の名前はとかげじゃないよ。佐藤タクト。タクって呼んでほしいな」
「わかりました。とかげさん」
#big5#簡#/big5#易解説
#b#一日おきにやって来て、スイーツを二つ買っていく佐藤タクト。#/b#
#b#二つ買っていくことから、一緒に食べる人がいるという推測が成り立つ。#/b#
#b#しかし一日おきであることから、買った二つは二日間に分けて一人で食べていると思われる。#/b#
#b#わざわざそんなことをするのは、自分には恋人がいるんだと見栄を張りたいためである。#/b#
「【勝手にコラボ祭】折り紙付きの秘湯」「4ブックマーク」
人
々が行き交う海ノ関の街に、亀介という男がいた。
彼は何より温泉を好み、時間を捻出しては全国の秘湯を巡っていた。
そんな亀介は、各地を旅し、露天風呂を満喫した後、風呂上がりにいつも折り鶴を折った。
彼曰く、これは露天風呂を楽しむ為に必要なのだという。
一体、何のために彼は鶴を折るのだろうか?
【ディダムズさんとのコラボ問題】
【問題文:ディダムズさん。解説:Taka。推敲:ディダムズさん、Taka。】
【挿絵:植野さん】
々が行き交う海ノ関の街に、亀介という男がいた。
彼は何より温泉を好み、時間を捻出しては全国の秘湯を巡っていた。
そんな亀介は、各地を旅し、露天風呂を満喫した後、風呂上がりにいつも折り鶴を折った。
彼曰く、これは露天風呂を楽しむ為に必要なのだという。
一体、何のために彼は鶴を折るのだろうか?
【ディダムズさんとのコラボ問題】
【問題文:ディダムズさん。解説:Taka。推敲:ディダムズさん、Taka。】
【挿絵:植野さん】
13年03月08日 22:04
【ウミガメのスープ】 [Taka]
【ウミガメのスープ】 [Taka]
解説を見る
亀
介は温泉ライター。全国の露天風呂を巡り、その情報を人々へ伝える仕事をしている。
そんな彼にはこだわりがある。もちろん温泉が好きなのだが、温泉しかない露天には入らない。必ず旅館の中の露天風呂しか入らないのだ。亀介の温泉を楽しむ方法、それは露天風呂だけではなく、その旅館全てを満足する事なのだ。
その自論を持つ亀介は、旅館を出る朝、必ず露天風呂に入り、自室で少し大きめのメモ帳に、泊まった旅館の良い所、満足した所を書き机に残す。ダメな所はあえて書かない。ダメな所とは、部屋の掃除が行き届いていない、石鹸が小さくなりすぎているなど、旅館側の目の届きにくい場所。そして折り鶴をダメな所付近に置いて帰る。
その場所に折り鶴を置くことで、旅館側が不思議に思い、その場所に目を向けると亀介の思いに旅館側が気付くというわけだ。
(いい所は目立つ所。ダメな所は目立たない場所にある。)
その折り鶴に気づかない、またはその意味を理解出来ない程度の旅館なら他の人に伝える必要はない。記事として書く必要もない。
そして旅館側がその指摘に気付き、亀介宛にご指摘ありがとうございましたと手紙を送って初めて、亀介はその旅館を記事にする。それでこそ、良い旅館だからだ。他のお客さんにより良い旅館として、そしてより良い露天風呂を楽しんでもらう為、亀介は折り鶴を折っている。
介は温泉ライター。全国の露天風呂を巡り、その情報を人々へ伝える仕事をしている。
そんな彼にはこだわりがある。もちろん温泉が好きなのだが、温泉しかない露天には入らない。必ず旅館の中の露天風呂しか入らないのだ。亀介の温泉を楽しむ方法、それは露天風呂だけではなく、その旅館全てを満足する事なのだ。
その自論を持つ亀介は、旅館を出る朝、必ず露天風呂に入り、自室で少し大きめのメモ帳に、泊まった旅館の良い所、満足した所を書き机に残す。ダメな所はあえて書かない。ダメな所とは、部屋の掃除が行き届いていない、石鹸が小さくなりすぎているなど、旅館側の目の届きにくい場所。そして折り鶴をダメな所付近に置いて帰る。
その場所に折り鶴を置くことで、旅館側が不思議に思い、その場所に目を向けると亀介の思いに旅館側が気付くというわけだ。
(いい所は目立つ所。ダメな所は目立たない場所にある。)
その折り鶴に気づかない、またはその意味を理解出来ない程度の旅館なら他の人に伝える必要はない。記事として書く必要もない。
そして旅館側がその指摘に気付き、亀介宛にご指摘ありがとうございましたと手紙を送って初めて、亀介はその旅館を記事にする。それでこそ、良い旅館だからだ。他のお客さんにより良い旅館として、そしてより良い露天風呂を楽しんでもらう為、亀介は折り鶴を折っている。
「それはダメだよ!」「4ブックマーク」
牛削りさんから「あるものはやめた方がいい」と言われたフィーカス。
一体どういうことだろう?
一体どういうことだろう?
15年10月06日 21:48
【ウミガメのスープ】 [フィーカス]
【ウミガメのスープ】 [フィーカス]
意外とコクがあったスープ
解説を見る
おもしろい問題を思いついたフィーカスは、牛削りさんに#red#SPをやってもらっていた#/red#。
そこで問題文の指摘をしてもらっていた時の話である。
牛削り「この問題だと、#red#『あるもの』は範囲が広すぎるからもう少し具体的に『果物をもらった』とした方がいい。だから、『あるもの』はやめたほうがいい#/red#」
要するに、#red#表現として「あるもの」とするのはやめた方がいい#/red#という話である。
※指示語を多用すると、指示語の内容まで解明する必要があるためあまりお勧めしないが、それにより問題文がおかしくなるのであれば指示語を入れた方がいい場合もある(牛削りさんの出題の十戒より)。
そこで問題文の指摘をしてもらっていた時の話である。
牛削り「この問題だと、#red#『あるもの』は範囲が広すぎるからもう少し具体的に『果物をもらった』とした方がいい。だから、『あるもの』はやめたほうがいい#/red#」
要するに、#red#表現として「あるもの」とするのはやめた方がいい#/red#という話である。
※指示語を多用すると、指示語の内容まで解明する必要があるためあまりお勧めしないが、それにより問題文がおかしくなるのであれば指示語を入れた方がいい場合もある(牛削りさんの出題の十戒より)。
「悲しみと喜び」「4ブックマーク」
ユウトは、同じ高校に通っている兄弟同士は仲が悪いものだと思い込んでいる。
彼にカウンセリングを施して、その思い込みの奥深くにある理由を探ってほしい。
なお、彼はキーとなる情報をすべて持っているが、思い込みが強固なため、適切に関連づけられない場合があることに用心してほしい。
彼にカウンセリングを施して、その思い込みの奥深くにある理由を探ってほしい。
なお、彼はキーとなる情報をすべて持っているが、思い込みが強固なため、適切に関連づけられない場合があることに用心してほしい。
15年09月17日 00:30
【亀夫君問題】 [牛削り]
【亀夫君問題】 [牛削り]
解説を見る
ユウトは2人兄弟の長男である。
弟はミキオといい、#red#年齢は8つ離れている#/red#。
両親は2歳差くらいの兄弟を計画していたのであるが、#red#ユウトとミキオの間に、3回の流産を経験した#/red#という。
諦め掛けた時、やっと生まれてきたのがミキオであった。
このことは、酒が飲める年齢になって、親と飲んでいる時に聞いた。
幸いにして、8歳差の兄弟は健康に成長した。
母親のコトノには、昔から口癖があった。
#red#「あんたたちは8歳も離れてて喧嘩にもならないから、すごく仲が良いよね」#/red#
幼い時分からそう言い聞かされていれば、事実は後からついてくる。
俺たちは8歳差だから仲が良いんだ。それは半ば自己暗示であった。
コトノの発言が正しかったのかどうかはわからないが、少なくとも正しく「なった」ことは確かである。
思えば3回の流産は、コトノの心を静かに蝕んでいたのだろう。
彼女はユウトとミキオの間に生まれて消えた#red#3つの命を無駄なものにしたくなかった#/red#。
#red#空白の8年間には何か意味があったはず。そう思いたかった#/red#のだろう。
その切なる願いが、彼女をして、無意識に「8歳差の兄弟は仲が良い」という信念を抱かせた。
そして#red#それを聞かされ続けたユウトが、「年齢が近い兄弟は仲が悪くなる」と思い込んでしまうのも無理はない#/red#のである。
改めて自らの出自を振り返り、母親の感じてきた悲しみや喜びを想ったユウト。
このシルバーウィークは、久々に実家に顔を出そう。
彼はそう思った。
弟はミキオといい、#red#年齢は8つ離れている#/red#。
両親は2歳差くらいの兄弟を計画していたのであるが、#red#ユウトとミキオの間に、3回の流産を経験した#/red#という。
諦め掛けた時、やっと生まれてきたのがミキオであった。
このことは、酒が飲める年齢になって、親と飲んでいる時に聞いた。
幸いにして、8歳差の兄弟は健康に成長した。
母親のコトノには、昔から口癖があった。
#red#「あんたたちは8歳も離れてて喧嘩にもならないから、すごく仲が良いよね」#/red#
幼い時分からそう言い聞かされていれば、事実は後からついてくる。
俺たちは8歳差だから仲が良いんだ。それは半ば自己暗示であった。
コトノの発言が正しかったのかどうかはわからないが、少なくとも正しく「なった」ことは確かである。
思えば3回の流産は、コトノの心を静かに蝕んでいたのだろう。
彼女はユウトとミキオの間に生まれて消えた#red#3つの命を無駄なものにしたくなかった#/red#。
#red#空白の8年間には何か意味があったはず。そう思いたかった#/red#のだろう。
その切なる願いが、彼女をして、無意識に「8歳差の兄弟は仲が良い」という信念を抱かせた。
そして#red#それを聞かされ続けたユウトが、「年齢が近い兄弟は仲が悪くなる」と思い込んでしまうのも無理はない#/red#のである。
改めて自らの出自を振り返り、母親の感じてきた悲しみや喜びを想ったユウト。
このシルバーウィークは、久々に実家に顔を出そう。
彼はそう思った。