みんなのブックマーク

マナーにうるさい父親は娘に、

「鍵をかけるのはお客様が立ち去ってから、

　聞こえないようにそっとするように」

と言い聞かせてきた。

娘は忠実に言い聞かせを守ってきたが、

父親が仕事に出かけるときもそうするのだ。

父は娘が鍵をかけ忘れていないか心配で仕方がない。

自分で鍵をかけようとしてロックを解除してしまうこともあり、困った父は

「ただし、自分が出かけるときにはすぐにガチャンと」

と、付け加えたそうである。

「俺、闇のポーカーに参加するんだ」
そういって夫カメオは私に封筒を差し出した。
中には『#b#闇のポーカー#/b#』への招待状が入っていた。

「何言ってるの！ あなた死ぬ気？」
私は声を荒げる。

「君が僕の身を心配するのはわかる。でも、これは僕にとって命よりも大事な……」
「誰があなたの心配なんかするのよ！ まだ愛しの息子、ウミオは小学生。これからお金がかかるのよ。
あなたはギャンブル漬けの生活で碌に家にお金を入れやしない。このままあなたが死んじゃったら私は
どうやってウミオを育てていけばいいのよ！」
「えっ……えーっと」
「もういいわ！　あなたとなんかやっていけない！ もしあなたが闇のポーカー？ ってのに参加するんだったら
私はあなたと離婚するわ」
「えっ、ちょっと、カメコ。考え直してくれ！」
「じゃあ、私たちに死ねというの？」
「違う！　僕は負けないよ。それに万が一に備えて僕が敗れたときのために#red#生命保険#/red#だってかけているんだ」
「えっ……そうなの」
「ああ、僕は本気だ。どうか参加を許してくれないか」
「……わかったわ。夫の夢を支えるのも妻の役目。頑張ってきてね」
「ああ。必ず大金を手にしてくるよ！」

私は主人が寝たのを確認すると急いで#b#保険会社#/b#に連絡を取った。
主人の掛けた生命保険。死亡で#b#3000万円#/b#。受取人の名義には#b#私#/b#の名前が。






翌日。私は主人を見送る。
主人が乗り込んだ車は夫と私の共通の友人、ラテオが運転する。
昨晩のうちに計画はラテオに伝えてある。

家を出て少し行ったところに細い路地がある。
そこは通学路となっており学校の始業時間ギリギリとなると子供が道路を飛び出してくるのだ。
その道を何度も通り慣れている私でも運転の際にはヒヤッとすることがある。
ましてやこの近辺に慣れていないラテオであれば飛び出してきた子供をよけようとハンドル操作を誤ることもあるだろう。

3000万円。私一人でウミオを育てていくには心もとない金額だ。
でも、新しい夫と一緒であれば少なくともギャンブル漬けの夫と一緒にいるよりはまともな生活が送れるはずだ。

私は#red#ラテオ#/red#からの連絡を待ちながらスマホの画面をぼんやり見つめていた。


#big5#要約解説#/big5#
カメオは生命保険をかけ、それを妻に伝えたために、
保険金殺人のターゲットとして殺されてしまったのだ。

妙にベルトの長い腕時計。

つまり、ちょっと#big5#ブカブカ#/big5#だから。

それを#red#右手に着けた者#/red#が、
時計を#red#見るために腕を上げる#/red#時、
時計盤の重みで時計は
手の甲から#red#時計回りに回転#/red#する。

#red#左手#/red#に着けた者はその#red#逆#/red#となる。


そして、
#big5#栄養たっぷりで重厚感のある肉付きの良い者#/big5#が着ければ、#red#ジャストサイズ#/red#。
時計が腕を#red#回転することはなくなる#/red#だろう。

もともとはカメオと掘ってもらう予定だったから。

カメオのパソコンの画面は一定時間そのままにしておくとスリープ状態になる。
しかしカメオが部屋に戻ったとき画面がスリープ状態になっていなかったので、
カメオは誰かがパソコンをいじったことに気づいた。