「最終回の悲喜劇」「3ブックマーク」
週間雑誌で連載中の大人気漫画『ラテクエスト』が、いよいよクライマックスを迎えている。最終回へ向けてファンの興奮が高まる中、作者の安東ヒロキが交通事故に遭い、全治一ヶ月の重傷を負ってしまった。
『ラテクエスト』の大ファンである女。彼女は後になって、#b#その出来事がなければ今の自分はなかったかもしれない#/b#と語ったというが、これはいったい、どういうことだろう?
『ラテクエスト』の大ファンである女。彼女は後になって、#b#その出来事がなければ今の自分はなかったかもしれない#/b#と語ったというが、これはいったい、どういうことだろう?
16年12月17日 01:25
【ウミガメのスープ】 [az]
【ウミガメのスープ】 [az]
解説を見る
駅構内の売店で雑誌を買った女。目当ては今週号に掲載されているはずの『ラテクエスト』の最終回だ。大好きな『ラテクエスト』の最終回を読み終えたら、彼女は線路に飛び込むつもりだった。
高校3年生の彼女はその頃、クラスで陰湿ないじめに遭っていた。加えて、迫る大学受験への不安と伸び悩む成績……。諸々の悩みに追い詰められ、いつしか彼女は気が付けば「死にたい」と呟くようになっていた。
そんな彼女の精神をギリギリのところで保っていたのが、毎週の『ラテクエスト』だった。連載を追いかけている彼女にとって、毎週の最新回を読むのがほとんど唯一といっていい娯楽だ。特に今は物語のクライマックス。続きが気になる……その思いが彼女の日々を生き抜く原動力になっていた。
だから。
いよいよ来週で最終回と知ったとき、彼女は「もう自分は死ぬしかない」と思った。連載が終わってしまえば、何とか一週間頑張ろうという気も起きなくなるだろう。それに、大好きな『ラテクエスト』が終わるのと同時に、自分の生涯も終わる、それはそれで“散り様”としては美しいじゃないか――。そんなことを考えながら、彼女は今週号の雑誌を手に取った。
ところが、いくらページをめくっても、一向に『ラテクエスト』のページにならない。おかしいなと思う彼女がようやく見つけたのは、今週の休載を知らせるページだった。
そのページには、
・作者が交通事故に遭い、最終回の原稿が描けていないこと
・命に別状はなく、怪我は全治一カ月の重傷だが、それが癒えればまたすぐ描けるようになるだろうということ
・怪我の回復具合にもよるが、最終回の掲載は約二か月後を予定していること
が書かれていた。
彼女はここで初めて、作者が事故に遭ったことを知った。最近はスマホの電源も切りっぱなしだった彼女は、世間のニュースをほとんど知らなかったのだ。
『ラテクエスト』が載っていないなら、とりあえずこの雑誌に用はない。ごみ箱に雑誌を放り込みながら、少女は考える。
今を生きるのは辛い。しかし、#b#『ラテクエスト』の最終回を読まずして死ぬのはあまりにも惜しい。#/b#連載がまだまだ途中ならともかく、もう残すところ最終回のみだというのに……。
「2ヶ月、か……」
彼女はぽつりと呟いた。それくらいなら、何とか頑張れるかもしれない。最終回は何としても読みたい。
――あと2ヵ月は、とりあえず頑張ってみよう。死ぬかどうかは、最終回を読んで、その時また決めよう――。
彼女は線路に飛び込むことなく、やってきた電車に乗って家へ帰った。
2ヶ月の間に、状況はいくらか改善した。成績は少しずつだが上向き始めたし、彼女をいじめていたグループも、受験どころでだんだんそれどころではなくなってきた。すべてが良い方向に、とまではいかずとも、少なくとも2ヵ月後、最終回を読む彼女は、こんなことで死ぬのは馬鹿らしいと思える程度には、心に余裕ができていた。
2ヵ月前に予定通り最終回が掲載されていたら、当時の自分なら本当に自殺していたかもしれない……そう思うとぞっとするとともに、結果として安東先生が事故に遭い怪我をしたことは自分にとっては奇跡だったのだと、多少は申し訳なく思いつつ、運命の悪戯とやらに感謝するのだった。
それから数年後、とある喫茶店。
新作の構想を練る安東ヒロキのそばには、今は新米編集者となった、当時の少女の姿があった。
高校3年生の彼女はその頃、クラスで陰湿ないじめに遭っていた。加えて、迫る大学受験への不安と伸び悩む成績……。諸々の悩みに追い詰められ、いつしか彼女は気が付けば「死にたい」と呟くようになっていた。
そんな彼女の精神をギリギリのところで保っていたのが、毎週の『ラテクエスト』だった。連載を追いかけている彼女にとって、毎週の最新回を読むのがほとんど唯一といっていい娯楽だ。特に今は物語のクライマックス。続きが気になる……その思いが彼女の日々を生き抜く原動力になっていた。
だから。
いよいよ来週で最終回と知ったとき、彼女は「もう自分は死ぬしかない」と思った。連載が終わってしまえば、何とか一週間頑張ろうという気も起きなくなるだろう。それに、大好きな『ラテクエスト』が終わるのと同時に、自分の生涯も終わる、それはそれで“散り様”としては美しいじゃないか――。そんなことを考えながら、彼女は今週号の雑誌を手に取った。
ところが、いくらページをめくっても、一向に『ラテクエスト』のページにならない。おかしいなと思う彼女がようやく見つけたのは、今週の休載を知らせるページだった。
そのページには、
・作者が交通事故に遭い、最終回の原稿が描けていないこと
・命に別状はなく、怪我は全治一カ月の重傷だが、それが癒えればまたすぐ描けるようになるだろうということ
・怪我の回復具合にもよるが、最終回の掲載は約二か月後を予定していること
が書かれていた。
彼女はここで初めて、作者が事故に遭ったことを知った。最近はスマホの電源も切りっぱなしだった彼女は、世間のニュースをほとんど知らなかったのだ。
『ラテクエスト』が載っていないなら、とりあえずこの雑誌に用はない。ごみ箱に雑誌を放り込みながら、少女は考える。
今を生きるのは辛い。しかし、#b#『ラテクエスト』の最終回を読まずして死ぬのはあまりにも惜しい。#/b#連載がまだまだ途中ならともかく、もう残すところ最終回のみだというのに……。
「2ヶ月、か……」
彼女はぽつりと呟いた。それくらいなら、何とか頑張れるかもしれない。最終回は何としても読みたい。
――あと2ヵ月は、とりあえず頑張ってみよう。死ぬかどうかは、最終回を読んで、その時また決めよう――。
彼女は線路に飛び込むことなく、やってきた電車に乗って家へ帰った。
2ヶ月の間に、状況はいくらか改善した。成績は少しずつだが上向き始めたし、彼女をいじめていたグループも、受験どころでだんだんそれどころではなくなってきた。すべてが良い方向に、とまではいかずとも、少なくとも2ヵ月後、最終回を読む彼女は、こんなことで死ぬのは馬鹿らしいと思える程度には、心に余裕ができていた。
2ヵ月前に予定通り最終回が掲載されていたら、当時の自分なら本当に自殺していたかもしれない……そう思うとぞっとするとともに、結果として安東先生が事故に遭い怪我をしたことは自分にとっては奇跡だったのだと、多少は申し訳なく思いつつ、運命の悪戯とやらに感謝するのだった。
それから数年後、とある喫茶店。
新作の構想を練る安東ヒロキのそばには、今は新米編集者となった、当時の少女の姿があった。
「最近メールを覚えたカメばあちゃん」「3ブックマーク」
カメばあちゃんはメールをうつのが苦手。
だけど亀ばあちゃんが私に送ってくる用件メールは、海外の友人にとても好評。
カメばあちゃんはどんなメールを送っている?
だけど亀ばあちゃんが私に送ってくる用件メールは、海外の友人にとても好評。
カメばあちゃんはどんなメールを送っている?
16年12月09日 23:45
【ウミガメのスープ】 [koto]
【ウミガメのスープ】 [koto]
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カメばあちゃんは達筆。
筆と墨の美しい文字で紙に用件を書き、それを写真にとってメールで送っていた。
漢字と習字が珍しい海外の友人には、とても好評である。
筆と墨の美しい文字で紙に用件を書き、それを写真にとってメールで送っていた。
漢字と習字が珍しい海外の友人には、とても好評である。
「Good night call」「3ブックマーク」
時間は深夜0時を回ったところだった。
プルルルル
カメオの寝ている部屋の電話が鳴った。
部屋の電気をつけて眠い目をこすりながらカメオは受話器を取る。
(いったい誰だよこんな時間に)
と思いながら悪態をつくように応答する。
カ「もしもし?」
?「やぁカメオかい?都会は忙しいって聞くけど元気でやってるかい?」
カ「はぁ?こんな時間に誰だよあんた」
?「やだよこの子は、母親の声を忘れるんじゃないよ」
カ「おい悪戯か?俺のおふくろは・・・」
?「どこにいたって、母さんはあんたの味方だからね」
聞き返そうとしたところで電話はプツリと切れた。
自分は寝ぼけているのだろうか、タバコに火をつけ先ほどの声を思い出す。
先ほどの電話の声、それは確かに5年前に他界した母親の声だった。
電話の相手は誰なのか、なぜカメオにこんな電話を掛けたのか
以上の二点を推理して状況を補足してください。
プルルルル
カメオの寝ている部屋の電話が鳴った。
部屋の電気をつけて眠い目をこすりながらカメオは受話器を取る。
(いったい誰だよこんな時間に)
と思いながら悪態をつくように応答する。
カ「もしもし?」
?「やぁカメオかい?都会は忙しいって聞くけど元気でやってるかい?」
カ「はぁ?こんな時間に誰だよあんた」
?「やだよこの子は、母親の声を忘れるんじゃないよ」
カ「おい悪戯か?俺のおふくろは・・・」
?「どこにいたって、母さんはあんたの味方だからね」
聞き返そうとしたところで電話はプツリと切れた。
自分は寝ぼけているのだろうか、タバコに火をつけ先ほどの声を思い出す。
先ほどの電話の声、それは確かに5年前に他界した母親の声だった。
電話の相手は誰なのか、なぜカメオにこんな電話を掛けたのか
以上の二点を推理して状況を補足してください。
16年11月04日 21:18
【ウミガメのスープ】 [真央]
【ウミガメのスープ】 [真央]

ひさびさの長文スープ
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タバコの火を消すと、カメオはふと母親と過ごした日々を思い出した。
仕事を優先して長い間会えなくなり看取ることもできなかった。
ずっと心に引っかかっていた何かが今消えた、そんな気がした。
ホテルの窓から見える景色を見ながら、折角近くまで来たんだし
明日は墓参りに行こう、そんな事を考えながら涙を拭いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
五分前
とあるホテルの一室でパソコンに囲まれた男がハッキングを繰り返す。
とある依頼を成功させるために、宿泊客のリストからある順番にそって電話をかける。
電話に出た相手が一番聞きたがっている音声を聞かせる為だ
お別れを言えなかったサラリーマン
家出中の少女
学生時代庇ってくれた恩師
全ては起こされた人が幸せであるという条件を守るために
もうすぐ深夜0時を回る
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
海子「ねぇねぇ、なんでプレゼントなのに外に出るの?」
ラテ蔵「まぁまぁ、とりあえずあのホテル見てればわかるからさ」
頭にハテナマークを浮かべる海子を横目に
ラテ蔵はカウントダウンをはじめる
10・・・9・・・8・・・・3!2!1!!
ホテルの部屋の光が一斉についたかと思うととある文字が浮かび上がる
#big5#HAPPY BIRTH DAY UMIKO#/big5#
Qなぜ電話をかけたのか
A部屋の明かりをつけて文字を作るため
仕事を優先して長い間会えなくなり看取ることもできなかった。
ずっと心に引っかかっていた何かが今消えた、そんな気がした。
ホテルの窓から見える景色を見ながら、折角近くまで来たんだし
明日は墓参りに行こう、そんな事を考えながら涙を拭いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
五分前
とあるホテルの一室でパソコンに囲まれた男がハッキングを繰り返す。
とある依頼を成功させるために、宿泊客のリストからある順番にそって電話をかける。
電話に出た相手が一番聞きたがっている音声を聞かせる為だ
お別れを言えなかったサラリーマン
家出中の少女
学生時代庇ってくれた恩師
全ては起こされた人が幸せであるという条件を守るために
もうすぐ深夜0時を回る
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海子「ねぇねぇ、なんでプレゼントなのに外に出るの?」
ラテ蔵「まぁまぁ、とりあえずあのホテル見てればわかるからさ」
頭にハテナマークを浮かべる海子を横目に
ラテ蔵はカウントダウンをはじめる
10・・・9・・・8・・・・3!2!1!!
ホテルの部屋の光が一斉についたかと思うととある文字が浮かび上がる
#big5#HAPPY BIRTH DAY UMIKO#/big5#
Qなぜ電話をかけたのか
A部屋の明かりをつけて文字を作るため
「【解説はY●】」「3ブックマーク」
「死亡しないフラグ」「3ブックマーク」
孤島の古い洋館で、殺人事件が起きた。電波が通じないため助けも呼べず、迎えの船が来るまで島から出ることもできない。訪れていた人々は、身の安全を考え、全員で洋館の大広間に寝ることにした。
そんな中、1人の男が「犯人がこの中にいるかもしれないのに、一緒にいられるか! 俺は部屋に戻る!」と大広間から出て行ってしまった。
男以外の全員が、あの男は死なないなと確信したのはなぜ?
そんな中、1人の男が「犯人がこの中にいるかもしれないのに、一緒にいられるか! 俺は部屋に戻る!」と大広間から出て行ってしまった。
男以外の全員が、あの男は死なないなと確信したのはなぜ?
16年10月15日 20:40
【ウミガメのスープ】 [とかげ]
【ウミガメのスープ】 [とかげ]

そしてスープもなくなった
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軽い気持ちだった。電波の届かない孤島、今は誰も住んでいない古い洋館、1週間隔絶される10名――雰囲気を楽しむにはうってつけの場所で、ちょっと変わった合宿くらいの気持ちで遊びに来た。
まさか、こんな悲劇が待ち受けているだなんて、誰が想像しただろうか?
あ、ああ、嫌、誰か――――――――――――!
第一発見者の女性の悲鳴を聞きつけ、思い思いの場所でのんびり過ごしていた8名は、慌てて現場に駆け付けた。
悲鳴を引きずりつっかえながらも、女性は説明する。なかなか起きてこないから、部屋を覗いてみたの、そうしたら……
全員に嫌な予感がよぎる。勇敢な一人がドアを開けた。起きてこなかった理由は明白だった。昨日まで何事もなく笑って話していた仲間が、無残な死体に変わり果てていた。頭は古めかしく重たそうなタンスに押しつぶされており、おびただしい量の血液をベッドが吸い切れず、床にまで滴っている。
何かあるかもしれない、という期待は、何も起こらないのがわかっているからこそ楽しめるのだ。何かが起こってしまったら、楽しんでいる余裕などない。まさかの事態に、全員が凍り付いた。10名が9名になってしまった。
連絡が取れない孤島、住人のいない古い洋館。今やそれは危険な場所であることは明らかだった。
死に慣れない若者たちは、犠牲者の部屋をそのままに、ひとまず自分達の身の安全を考えることにした。
このままでは危険だ。昨日のように、各自が個室に入って就寝するのは良くない。いっそのこと、布団を持ってきて大広間に全員で寝るのはどうだろうか? 自然とそういう話の流れになった。大広間はこの洋館の中で一番広い場所だし、仲間を押しつぶしたタンスのような凶器も置いていない。迎えが来るまでの数日間、なるべく大広間にいるようにすればいい。
全員がその案に賛成しかけたそのとき、一人の男が焦ったように、騒ぎ出した。
「みんな、それでいいのか? よく考えてみろ、あいつは死んだんだぞ!?」
男が何を言いたいのか測りかねて、残りの8名は男の次の言葉を待つ。
「俺は嫌だ! ここだって危険に決まってる! なんでみんな、そんな平気な顔をしていられるんだ!」
必死の訴えにも、8名は首をかしげるしかできない。彼は何が言いたいのだろうか?
誰からも賛同が得られそうにないことに耐えかねたのか、男は絞り出すように叫んだ。
「犯人がこの中にいるかもしれないのに、一緒にいられるか! 俺は部屋に戻る!」
そして男は本当に、8名が見守る中足音を立てて大広間を横切り、扉を乱暴に閉めて出て行ってしまった。
しばし、沈黙。
男が出て行った扉やお互いの顔に視線をやり。
そして――
「……犯人?」
一人の呟きを皮切りに、男をポカンと見送っていた8名が次々に疑問を口にし出した。
「どういうことだ?」
「この洋館が古すぎて、タンスの立て付けが悪かったんじゃないの? え? そう思ってたの私だけ?」
「いや、みんなそのつもりで周りに家具が少ない大広間に集まろうって言ってたんだし……」
「あの部屋じゃ、棚やら照明やらが落ちてきたらどこに寝てても危ないからな」
「一人で部屋に寝てると、いざというときに助けも呼べないしね」
「寝ている間にタンスに押しつぶされてしまうなんて、彼も随分運が悪かったと思っていたんだけど……」
「事故死だよな。事故死だと思ってた。けどあいつは犯人って……え、殺されたの? これ、殺人事件なの?」
「えーと、つまり……?」
顔を見合わせる8名。
8名は8名とも、事故死だと思っていた。素人目には、殺人だと言えるような手がかりは何もないと思える。警察が来て調べれば何かわかるのかもしれないが、今の段階で殺人などという非日常な出来事にすぐさま結び付けるなんて、しかもそれを本気で警戒するだなんて、普通じゃない。そんなことに思い至るのは、身に覚えがある人間くらいだろう。
黙って考えていた9名は同時にその結論を導き出し、男が出て行った扉を振り向く。
誰かが全員を代表して言った。
「……つまり、あいつは死なないってことだ」
END
#b#被害者は部屋のタンスに押し潰されて死んでいたので、事故だと思われていた。男が犯人などと言い出したため、皆、犯人はあいつかと気づいたのだ。#/b#
まさか、こんな悲劇が待ち受けているだなんて、誰が想像しただろうか?
あ、ああ、嫌、誰か――――――――――――!
第一発見者の女性の悲鳴を聞きつけ、思い思いの場所でのんびり過ごしていた8名は、慌てて現場に駆け付けた。
悲鳴を引きずりつっかえながらも、女性は説明する。なかなか起きてこないから、部屋を覗いてみたの、そうしたら……
全員に嫌な予感がよぎる。勇敢な一人がドアを開けた。起きてこなかった理由は明白だった。昨日まで何事もなく笑って話していた仲間が、無残な死体に変わり果てていた。頭は古めかしく重たそうなタンスに押しつぶされており、おびただしい量の血液をベッドが吸い切れず、床にまで滴っている。
何かあるかもしれない、という期待は、何も起こらないのがわかっているからこそ楽しめるのだ。何かが起こってしまったら、楽しんでいる余裕などない。まさかの事態に、全員が凍り付いた。10名が9名になってしまった。
連絡が取れない孤島、住人のいない古い洋館。今やそれは危険な場所であることは明らかだった。
死に慣れない若者たちは、犠牲者の部屋をそのままに、ひとまず自分達の身の安全を考えることにした。
このままでは危険だ。昨日のように、各自が個室に入って就寝するのは良くない。いっそのこと、布団を持ってきて大広間に全員で寝るのはどうだろうか? 自然とそういう話の流れになった。大広間はこの洋館の中で一番広い場所だし、仲間を押しつぶしたタンスのような凶器も置いていない。迎えが来るまでの数日間、なるべく大広間にいるようにすればいい。
全員がその案に賛成しかけたそのとき、一人の男が焦ったように、騒ぎ出した。
「みんな、それでいいのか? よく考えてみろ、あいつは死んだんだぞ!?」
男が何を言いたいのか測りかねて、残りの8名は男の次の言葉を待つ。
「俺は嫌だ! ここだって危険に決まってる! なんでみんな、そんな平気な顔をしていられるんだ!」
必死の訴えにも、8名は首をかしげるしかできない。彼は何が言いたいのだろうか?
誰からも賛同が得られそうにないことに耐えかねたのか、男は絞り出すように叫んだ。
「犯人がこの中にいるかもしれないのに、一緒にいられるか! 俺は部屋に戻る!」
そして男は本当に、8名が見守る中足音を立てて大広間を横切り、扉を乱暴に閉めて出て行ってしまった。
しばし、沈黙。
男が出て行った扉やお互いの顔に視線をやり。
そして――
「……犯人?」
一人の呟きを皮切りに、男をポカンと見送っていた8名が次々に疑問を口にし出した。
「どういうことだ?」
「この洋館が古すぎて、タンスの立て付けが悪かったんじゃないの? え? そう思ってたの私だけ?」
「いや、みんなそのつもりで周りに家具が少ない大広間に集まろうって言ってたんだし……」
「あの部屋じゃ、棚やら照明やらが落ちてきたらどこに寝てても危ないからな」
「一人で部屋に寝てると、いざというときに助けも呼べないしね」
「寝ている間にタンスに押しつぶされてしまうなんて、彼も随分運が悪かったと思っていたんだけど……」
「事故死だよな。事故死だと思ってた。けどあいつは犯人って……え、殺されたの? これ、殺人事件なの?」
「えーと、つまり……?」
顔を見合わせる8名。
8名は8名とも、事故死だと思っていた。素人目には、殺人だと言えるような手がかりは何もないと思える。警察が来て調べれば何かわかるのかもしれないが、今の段階で殺人などという非日常な出来事にすぐさま結び付けるなんて、しかもそれを本気で警戒するだなんて、普通じゃない。そんなことに思い至るのは、身に覚えがある人間くらいだろう。
黙って考えていた9名は同時にその結論を導き出し、男が出て行った扉を振り向く。
誰かが全員を代表して言った。
「……つまり、あいつは死なないってことだ」
END
#b#被害者は部屋のタンスに押し潰されて死んでいたので、事故だと思われていた。男が犯人などと言い出したため、皆、犯人はあいつかと気づいたのだ。#/b#












