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勇敢な女性がいた。
彼女はずっと、見知らぬ人からの電話に悩まされていた。
電話に出ても中々相手は喋ろうとしない。
悪質な悪戯だと思い、彼女はキツい口調で、迷惑だと言い電話を切った。
それ以降、電話はかかってくることがなかったが、彼女は大変後悔した。
何故彼女は後悔したのだろうか。
11年04月23日 23:18
【ウミガメのスープ】
[アイゼン]
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間違い電話が止んだ数週間後、彼女は信じられない知らせを受けた。
一番仲の良かった、大好きだった幼馴染が死んだらしい。会社での虐めを苦にした自殺だそうだ。
信じられないという気持ちのまま、彼女は幼馴染の葬式に行った。
葬式は数人の親族と、彼女だけの非常にささやかなもので、より寂しさを感じられた。
葬式の後、彼女は幼馴染の母親から、「遺書に渡すように書いてあったから」と缶の箱を手渡された。
幼馴染が大切にしていたものが詰まっているものらしい。彼女は複雑な気持ちながら、幼馴染の遺志なら、とそれを受け取った。
家に帰り、蓋を開けると、一番上に手紙が置いてあった。
彼女は手紙の封を開け、中の手紙を読むと、息を呑んだ。
「ごめんね」で始まり、「ごめんね」で終わる手紙。幼い頃の思い出から、今に至るまでの経緯、思いが書き綴られた手紙。
ぽたり、ぽたりと落ちる涙が、便箋のインクを滲ませた。
「私、ちょっと頼り過ぎてたみたい。ごめんね、迷惑だったよね。言ってくれてありがとう」
この一文を読み、彼女は全てを悟った。あの電話は幼馴染からの電話だったのだと。
彼女は、幼馴染に頼られる事が嬉しかった。あの子の為なら何でもしてあげられると思っていた。
なのに、あの子の願いを断ち切ってしまった。大好きな、愛していたあの子を死に追いやったのは私だ!
手紙を握り締めたまま、彼女は崩れ落ちた。自責の念に押し潰されそうだった。
溢れ出る涙は、枯れることなく流れ続ける。止まらない、止められない。
「ごめんね」を連呼しながら、泣き崩れる彼女の脳裏には、百合のように白い肌の、柩の中で眠る幼馴染の姿があった。
女は、友達が沢山いて、幸せだった
しかし彼女の最期は不幸だった
彼女は何者かに殺された。愛する人と共に
犯人はそこにいたが、誰にも見つからず、とうとう罪を問われる事はなかった
状況を補完して下さい
あっさり系スープです。瞬殺歓迎!
11年04月04日 19:52
【ウミガメのスープ】
[アイゼン]
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とあるところに、一人の可愛らしい女の子がいた。
彼女には友達が沢山いた。友達といっても、彼女は引っ込み思案で、人間の友達はいない。
彼女の友達は、彼女の部屋に沢山置かれたぬいぐるみだった。
中でも、一番の親友は黒猫のぬいぐるみだった。青と緑の綺麗な目の黒猫は、女の子にとても愛された。
だから奇跡が起きたのだろう。いつの日からか、黒猫は彼女と会話するようになった。
女の子には両親はいない。彼女が小さい頃、死んでしまったのだ。ぬいぐるみは、彼女の本当の両親が買ってくれたものだ。黒猫の目も、元々は両方とも青だったのだが、片方が取れ、失ってしまったものを、母親が緑で代用して、縫い付けた。もしかしたら、彼女が黒猫のぬいぐるみを愛したのは、その緑の目に母親の姿を見ていたからかもしれない。
両親が死んでから、女の子は親戚の夫婦の家に引き取られた。が、その夫婦は自分のストレスを、女の子で発散する為に、彼女を引き取った。
引き取られてから毎日、彼女は虐待を受け続けた。一日の中で彼女が安らげる時間といえば、自分の部屋として割り当てられた物置で、黒猫と話している時間だけだった。
ぬいぐるみだけが友達。そんな女の子にとって、友達に囲まれている時間は、幸せの絶頂であった。
だが、女の子は死んだ。一人で死んだ。言うまでもなく、虐待で死んだのだ。
夫婦は、彼女を殺したのを隠すため、ぬいぐるみと一緒に女の子を燃やした。
パトカーのサイレン音。どうやら、この家で殺人事件が起こったらしい。
被害者はこの家に住んでいた夫婦。死体は、寄り添うようだったと聞いた。
一人で死んだのに! あの子は一人で寂しく死んだのに!! 犯人は腹立たしげに叫んだ。
死体の傍らには、凶器のナイフと、手帳から引き千切られたと見られる紙きれが落ちていた。
紙切れにはこう書かれていたらしい。
1/2 11:12
わあわあ泣くだけで、コミュニケーションも取れやしない
たいへんなんだろうけど可愛いと思わない事もないんだ
しぜんに、懐かなくてもただ傍にいてくれるだけでいいかな
ハンバーグが、あの子のだいこうぶつだったな。作ってあげよう
この紙切れから、夫婦が女の子を愛している事が分かった。
全く、馬鹿な奴だよ。と犯人が笑っても、警察は気付かなかった。
犯人は頬に夫婦の血を付けたまま、愚かな人々をじっと見ていた。
あれから十五年。
取り壊しを待つあの家の物置に、焦げた黒猫のぬいぐるみが落ちていた。
ぬいぐるみに付いた血のシミは、まるで泣いているようだった。
桜の木の下に制服のあの人がいた。
私を見ると、その人は謝まりだした。
なぜ?
嘘はなしです
11年04月03日 23:07
【ウミガメのスープ】
[アイゼン]
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ぽかぽかとした陽気に誘われ、私は瞼を開いた。
周囲を見渡す。しまった、私が一番出遅れてしまった。
去年は一段と寒い冬だったもんなぁ……と私は思いながら、風に枝を揺らす。
土手を彩る桜の樹の一つである私は、ずっと待っている人がいた。
今年は、ちゃんと来るかしら。
4月。風に漂ってきた桜の花びらに誘われて、あたしはいつもとは違う道を通り、学校へ向かっていた。
土手の両脇に、一定の間隔で並ぶ桜。その中に、何かを探しているような、あの人の姿を見つけた。
彼は、一本の、他のとは少し小さい桜の樹の下に立ち止まると、突然その樹に向かって頭を下げた。どうやら、謝っているようだ。
「悠、何やってるの?」
「えっ……ああ、ちょっとな」
話しかけられて、初めてあたしに気付いたのか、彼はちょっと戸惑った様子を見せる。
昔から、一つの事に集中すると周りが見えなくなるんだから。
「桜に謝ってたんでしょ?」
「そうだよ。ちょっと、忘れちゃってて」
「何?」
「こいつとの約束」
約束? ああ、そんなこともあったね。
彼がまだ小さく、私がまだ苗木からちょっと成長したぐらいの時、彼は泣きながらこの道を通っていた。
「ねえ、こわくないの?」
その時、偶然私を見つけた彼が、私にそう問いかけた。
「おおきなきにかこまれて、きみはこわくないの?」
「ぼくはみんなよりもちっちゃいから、みんながこわいんだ」
いじめられている、というわけではなさそうだ。
自分よりも、周囲の子が大きいから、怖くて話しかけられない。それで友達ができない、といったところか。
『怖くないよ。だってみんな友達だから』
私はそう答えた。きっと、聞こえないだろうけど。
しかし、彼はキョトンとして、首を傾げた。
「ともだち? みんな、ぼくなんかとともだちになってくれるかなぁ」
子供とは不思議なものだ。大人はアニミズムという言葉で片付けるが、子供の中には私たちの声を聞く事ができる子もいる。
『大丈夫さ。きっとみんな優しいから』
私がそう言って、枝を震わすと、彼は大きく頷いた。
「わかった! ぼくにともだちができたら、いちばんにきみにいうね!」
彼は笑顔でそう言って、私に手を振って、歩いて行った。
「そんなことがねぇ。あたし、全然知らなかったな」
「そりゃそうだよ。お前に会うずっと前だから」
「でも信じられないな」
あたしは桜を見上げた。
青い空をバックに、薄紅色の花が揺れる。
桜の樹が喋るなんて、やっぱり信じられないな。
「夢でも見たんじゃないの?」
「そうかもしれないけど、やっぱり、今の俺があるのはこいつのお陰なんだ」
『立派になったね』『あんなおチビさんがこんなに大きくなって』『可愛いガールフレンドもできちゃって』
周りの樹が、さわさわと揺れながら、そんな話をしている。確かに、立派になったね。
約束を守らなくても、思い出してくれただけでいい。
『おめでとう』
私はそう呟いて、彼の頭に花弁を一つ落とした。
聞こえたのか聞こえなかったのか、彼はこちらを見て、「ありがとう」と言った気がした。
僕は愛を知り、そして殺した
けれど、それは僕に大きな後悔を残す結末になってしまった
何故だろうか
11年03月31日 20:17
【ウミガメのスープ】
[アイゼン]
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僕は、退屈しのぎに夜の散歩に出かけた。空を見上げても、家の明かりが多すぎて星は見えない。
星とは程遠い、下品な明かりだ、と思った僕は、眉を顰めた。
視線を前に戻した僕は、前から女性が歩いてくるのに気付いた。女性はどこか寂しそうな表情をしていた。その表情の理由が知りたくて、僕は彼女に惹かれたのだろう。
その次の日、彼女のことが忘れられない僕は、頑張って昼間に外に出ることにした。太陽は嫌いなんだけどなぁ……
捜すのに苦労はしなかった。すぐに見つけられた彼女は、友達であろう人間たちと一緒に笑っていた。彼女の笑顔は、太陽のように明るかったが、太陽ほど嫌いではなかった。
しかし、昨夜のあの表情をしっている所為か、その笑顔も仮面のようにしか思えなかった。
彼女が寂しげにする理由はすぐに分かった。どうやら彼氏とやらに捨てられたらしい。恋愛なんて分からない。何故人間はそんな薄っぺらいものに振り回されるのだろうか。僕には彼女の気持ちなんて理解できなかったが、その彼氏とやらのことはどうにも許せなかった。
だから殺した。僕には簡単なことだった。ちょっと名簿を書き変えるぐらい、どうってことなかった。
しかし、彼女の寂しさは、悲しみに変わった。何で、何で何で何で。裏切られたんだ。もう愛する理由なんてないのに。人間って分からない。僕は頭を掻き毟った。
彼女を寂しがらせる男なんて死んでしまえばいいんだ。愛しきれない奴なんて近付くな。僕なら最期まで彼女を――
気付いた。これが「愛」だということを。本当にどうしようもない、悪魔のような、けれども天使のような感情。ああ、僕も振り回されてしまった。
そしてもう一つ気付いた事があった。しかし、もう、手遅れだったのだ。
気付くのが遅かった。もし気付ければ、こうにはならなかった。
だから、社長はあんなことを言ったのか。
「人間の愛を理解しようとしてはいけない」なんてこと。やっと分かったよ。
あまりの自分の愚かさに、僕は乾いた笑い声を漏らした。
その間にも、彼女は階段を上がっていき、屋上の扉を開ける。
「やめときなよ、そんなこと」「あの男にそんな価値なんてない」
僕はそう言ったが、彼女には聞こえない。触れる事もできない。視認される事もないのだから。
フェンスが揺れる音。夜風が彼女の綺麗な神を揺らす。
上には黒一色の夜空。下には煩い星が散りばめられた、人工の夜空。
僕は、とある愚かな死神は、「死」に愛された女性が星空へと堕ちていく様を、ただ唇を噛み締めて見つめるばかりだった。
大量殺人を犯す女がいた
人々は彼女の行為に感謝した
どういうことだろう
11年03月23日 22:44
【ウミガメのスープ】
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女は小説家だった。
彼女の手により、何組ものカップルが生まれ、何人もの人が死んでいった。
人々は女の書いた小説を読み、楽しむ。
中には、彼女の書いた小説により、人生を動かされた者もいただろう。
もしかすれば、人間というものは空想の中に生きているのかもしれない。
私も、貴方も、誰かの話の中の登場人物という可能性もある。
存在なんて、所詮曖昧なものなのだろう。
勿論、彼女に人を直接殺す度胸なんてない。