「名探偵新藤工一の事件簿『海亀島の悲劇』」「1ブックマーク」
ドンドンドン!
「安原さん、ここを開けてもらえませんか!」
佐伯健作が食料庫の戸をどれだけ叩いても、どれだけ声を上げても中から反応はなかった。
「もう強引に突き破ってしまおう」
薄井敦の意見に頷いた健作は本間素直のほうを向いた。
「本間さんも手伝ってもらえますか」
「はい」
三人がかりでドアに体当たりし、何度目かの衝撃で入口が開け放たれた。戸は右側にスライドするタイプのものだが、内側からつっかえ棒がされていたため開かなかったのだ。
室内の中央には安原蓮也が仰向けで倒れており、傍らにはワインの瓶、そして床は赤く染まっていた。
安原のもとまで真っ先に駆けつけた本間は首を横に振った。
「もう息絶えております……」
三人は地下の食料庫から一階の談話スペースへ戻り、安原のことを伝えた。
佐伯沙恵と宍戸美空の表情には動揺が広がった。
さて、ここで名探偵新藤工一の出番である。
現場や遺体の観察、関係者からの聞き取り。委細調査した結果、一つの結論を導き出した。
そう、犯人は――。
事件の真相をみなさんで解き明かしてください。
(必要最低限の設定の詳細はまとメモに記載しますのでご覧ください)
【進行方法】
まとメモの登場人物(安原蓮也を除く)から一人指名+質問という形で、事件関係者からの聞き取りを行ってください。回答はその人物になりきって行います。
質問内容はYES/NOで答えられないものでもけっこうです。
誰に何度質問してもかまいませんし、違う人に同じ質問をしてもかまいません。
誰も故意による嘘の回答はしません。しかし、知らない、勘違いしている、あえて黙っている等の理由から明確な回答ができない場合があります。
現場や遺体の詳しい情報を知りたい場合は探偵にお尋ねください。
ちなみに探偵に犯人は誰かを聞いても答えません。真相を解明するときに、同時に犯人を名指ししてください。
「安原さん、ここを開けてもらえませんか!」
佐伯健作が食料庫の戸をどれだけ叩いても、どれだけ声を上げても中から反応はなかった。
「もう強引に突き破ってしまおう」
薄井敦の意見に頷いた健作は本間素直のほうを向いた。
「本間さんも手伝ってもらえますか」
「はい」
三人がかりでドアに体当たりし、何度目かの衝撃で入口が開け放たれた。戸は右側にスライドするタイプのものだが、内側からつっかえ棒がされていたため開かなかったのだ。
室内の中央には安原蓮也が仰向けで倒れており、傍らにはワインの瓶、そして床は赤く染まっていた。
安原のもとまで真っ先に駆けつけた本間は首を横に振った。
「もう息絶えております……」
三人は地下の食料庫から一階の談話スペースへ戻り、安原のことを伝えた。
佐伯沙恵と宍戸美空の表情には動揺が広がった。
さて、ここで名探偵新藤工一の出番である。
現場や遺体の観察、関係者からの聞き取り。委細調査した結果、一つの結論を導き出した。
そう、犯人は――。
事件の真相をみなさんで解き明かしてください。
(必要最低限の設定の詳細はまとメモに記載しますのでご覧ください)
【進行方法】
まとメモの登場人物(安原蓮也を除く)から一人指名+質問という形で、事件関係者からの聞き取りを行ってください。回答はその人物になりきって行います。
質問内容はYES/NOで答えられないものでもけっこうです。
誰に何度質問してもかまいませんし、違う人に同じ質問をしてもかまいません。
誰も故意による嘘の回答はしません。しかし、知らない、勘違いしている、あえて黙っている等の理由から明確な回答ができない場合があります。
現場や遺体の詳しい情報を知りたい場合は探偵にお尋ねください。
ちなみに探偵に犯人は誰かを聞いても答えません。真相を解明するときに、同時に犯人を名指ししてください。
13年01月29日 21:07
【亀夫君問題】 [+チック]
【亀夫君問題】 [+チック]

かなり力作でした!投票ありがとうございます!
解説を見る
「
それで探偵さん、犯人はわかったのですか?」
佐伯健作をはじめ、広間に集まった全員の目がこちらを向く。
「ええ、すべて解けました。犯人は誰かを言及する前に、いったい何があったのかを最初から振り返ってみましょう。
まず、ここへ来たのは十日前でした。私が運転するクルーザーで島へ来て、みなさんを見届けたあと私は本島へ帰りました。
予定では、一週間で島を出ることになっていました。しかし、その日付になっても迎えは来ない。お恥ずかしながら私はすっかり忘れていたのです。
ここには電話線も通じていませんし、携帯も圏外、通信手段がないことで帰ることができなくなりました。
八日目、九日目にもなると多めに蓄えていた食料も尽きはじめます。そのまま飢え死にすることを危惧した安原さんは一人食料庫にこもります。
そして、そこで凍死したのです」
「安原さんは殴られたのではなかったんじゃないのか?」と薄井敦。
「いいえ、ワインの瓶が転がっていたのはおそらく彼が飲んでいたからです。ほかの食べ物のほとんどが調理しないといけませんでしたので食料は諦めたのだと思います。あるいはあの寒さに耐えられず長居はできないと考えたのでしょうか。しかし、いずれにしろ自らこもると言った以上すぐ出るわけにもいかず、とりあえずワインを手に取ったのでしょう。そして酔いが回り、そのまま眠ってしまった。床が染まっていたのはこぼれたワインです。
食料庫ほど低温度の場所で一晩過ごせば凍死するのも間違いないでしょう」
「ということは、つまり犯人は……探偵さん?」と佐伯健作。
「その通りです。私がすべての元凶なのです」
「これは誰も責められないですな。すべて事故だったんだ」
健作の声には何か吹っ切れるような気持ちがこもっていた。
「私にも原因が」
「いいや、いいんです。あいつは死んでも仕方のないほど汚い人間だった。一人で食料庫を占領しようとした当然の報いなんですよ」
誰もが賛同するような面持ちで、いっさい探偵を責めようとはしなかった。
探偵のクルーザーは海亀島をあとにし、事件は幕を降ろした。
それで探偵さん、犯人はわかったのですか?」
佐伯健作をはじめ、広間に集まった全員の目がこちらを向く。
「ええ、すべて解けました。犯人は誰かを言及する前に、いったい何があったのかを最初から振り返ってみましょう。
まず、ここへ来たのは十日前でした。私が運転するクルーザーで島へ来て、みなさんを見届けたあと私は本島へ帰りました。
予定では、一週間で島を出ることになっていました。しかし、その日付になっても迎えは来ない。お恥ずかしながら私はすっかり忘れていたのです。
ここには電話線も通じていませんし、携帯も圏外、通信手段がないことで帰ることができなくなりました。
八日目、九日目にもなると多めに蓄えていた食料も尽きはじめます。そのまま飢え死にすることを危惧した安原さんは一人食料庫にこもります。
そして、そこで凍死したのです」
「安原さんは殴られたのではなかったんじゃないのか?」と薄井敦。
「いいえ、ワインの瓶が転がっていたのはおそらく彼が飲んでいたからです。ほかの食べ物のほとんどが調理しないといけませんでしたので食料は諦めたのだと思います。あるいはあの寒さに耐えられず長居はできないと考えたのでしょうか。しかし、いずれにしろ自らこもると言った以上すぐ出るわけにもいかず、とりあえずワインを手に取ったのでしょう。そして酔いが回り、そのまま眠ってしまった。床が染まっていたのはこぼれたワインです。
食料庫ほど低温度の場所で一晩過ごせば凍死するのも間違いないでしょう」
「ということは、つまり犯人は……探偵さん?」と佐伯健作。
「その通りです。私がすべての元凶なのです」
「これは誰も責められないですな。すべて事故だったんだ」
健作の声には何か吹っ切れるような気持ちがこもっていた。
「私にも原因が」
「いいや、いいんです。あいつは死んでも仕方のないほど汚い人間だった。一人で食料庫を占領しようとした当然の報いなんですよ」
誰もが賛同するような面持ちで、いっさい探偵を責めようとはしなかった。
探偵のクルーザーは海亀島をあとにし、事件は幕を降ろした。
「いっぬっの~おまわりさん!」「1ブックマーク」
お巡りさんが迷子の女の子を保護して聞きました
「お名前を教えて?」「分からないの…」
「あなたのお家はどこ?」「分からないの…」
泣いてばかりいる女の子に困ってしまったお巡りさん
お巡りさんはもう1度女の子に名前とお家の場所を聞いてみました
女の子から返ってきた答えはやはりわからない、といったものでしたが
お巡りさんは泣き出してしまいました。
どうして?
「お名前を教えて?」「分からないの…」
「あなたのお家はどこ?」「分からないの…」
泣いてばかりいる女の子に困ってしまったお巡りさん
お巡りさんはもう1度女の子に名前とお家の場所を聞いてみました
女の子から返ってきた答えはやはりわからない、といったものでしたが
お巡りさんは泣き出してしまいました。
どうして?
17年10月16日 22:49
【ウミガメのスープ】 [kirakoku]
【ウミガメのスープ】 [kirakoku]
解説を見る
☆ある少女のお話
その女は子供がいませんでした
学生時代に妊娠してしまい、相手には認知してもらえず
堕胎したくないと家を出て、勝手に出産しようとし
結果は流産、実家からは勘当され、二度と子供を産めない体になりました。
女は暫くは呆然とただ息をして過ごしていましたが
やがて死ぬ場所を求めて街を出歩くようになりました
女性はベビーカーで眠る、本当に幼い赤ん坊を見ました
どうしてか、その娘が産まれて来るはずだった自分の娘に見えて仕方がないのです
ある幸せだった夫婦の生活は、途端に灰色になりました。
ほんの少し、ほんの少し目を離した間に、愛する娘は攫われてしまいました
目撃証言もなく、あるのは不鮮明な監視カメラの映像だけ
やっと産まれた念願の子供でした。
ただただ娘が帰ってきて欲しいだけの毎日でした
女は幸せでした。
生活は苦しく大変だったけど、愛する娘のためならどんなことも頑張れました
不甲斐ない自分のせいで、他の人の胎から産まれてきてしまったけれど
それでも自分の愛する娘です。そして私はこの娘の母親なのだと。
世界は鮮やかに色付いて、幸せな日々が続きました。
少女は幸せでした。
お家は貧乏だけど、誰よりも自分を愛してくれるお母さんがいるから大丈夫でした
お母さんと血が繋がってないのは知っていたけれど、事情があるんだろうと思って聞きませんでした。
私のことを娘として愛してくれている。だからお母さんはお母さんいいんです。
少女の幸せな生活は壊れました
お母さんが逮捕されたのです。何か酷い事をしてしまったからではありません。
私が、私がお母さんの娘だから、お母さんは捕まってしまうというのです
カウンセラーの先生に連れられて、知らない家に入りました。
今日からここで暮らすのだと、本当の家で、本当の家族と暮らせるのだと。
初めて見る人達が、知らない名前を呼びました。私のことを呼んでると気付いたのは、その人達に抱きしめられてからでした
ここが私の本当の家…違う
これが私の本当の名前…違う
この人達が私の本当の家族…違う!
私にとっての本当はーーー
3日目の朝、誰よりも早く起きた私はこっそりと家を抜け出しました。
「わかんない…わかんないよ!
私の名前ってなに?私は○○○○じゃないよ!私は×××なの!
私のお家はどこ?あんな広くて寂しいところじゃない…小さいけれど、暖かかったんだよ!
私の家族は…あの人たちじゃないよ…、お母さんが悪い人っていうのは何回も聞かされたけど…それでも私のお母さんはお母さんだけなの…
私は…○○○○じゃない…私は…私は…、誰なの…?」
警察官としての職務を全うしただけだった
少ない情報からよく特定したと表彰されもした
目の前の泣き続けている少女を見る
ああ、自分にいま泣いている資格はあるのか
彼女の「母親」を逮捕したのは…#b#私だ#/b#
その女は子供がいませんでした
学生時代に妊娠してしまい、相手には認知してもらえず
堕胎したくないと家を出て、勝手に出産しようとし
結果は流産、実家からは勘当され、二度と子供を産めない体になりました。
女は暫くは呆然とただ息をして過ごしていましたが
やがて死ぬ場所を求めて街を出歩くようになりました
女性はベビーカーで眠る、本当に幼い赤ん坊を見ました
どうしてか、その娘が産まれて来るはずだった自分の娘に見えて仕方がないのです
ある幸せだった夫婦の生活は、途端に灰色になりました。
ほんの少し、ほんの少し目を離した間に、愛する娘は攫われてしまいました
目撃証言もなく、あるのは不鮮明な監視カメラの映像だけ
やっと産まれた念願の子供でした。
ただただ娘が帰ってきて欲しいだけの毎日でした
女は幸せでした。
生活は苦しく大変だったけど、愛する娘のためならどんなことも頑張れました
不甲斐ない自分のせいで、他の人の胎から産まれてきてしまったけれど
それでも自分の愛する娘です。そして私はこの娘の母親なのだと。
世界は鮮やかに色付いて、幸せな日々が続きました。
少女は幸せでした。
お家は貧乏だけど、誰よりも自分を愛してくれるお母さんがいるから大丈夫でした
お母さんと血が繋がってないのは知っていたけれど、事情があるんだろうと思って聞きませんでした。
私のことを娘として愛してくれている。だからお母さんはお母さんいいんです。
少女の幸せな生活は壊れました
お母さんが逮捕されたのです。何か酷い事をしてしまったからではありません。
私が、私がお母さんの娘だから、お母さんは捕まってしまうというのです
カウンセラーの先生に連れられて、知らない家に入りました。
今日からここで暮らすのだと、本当の家で、本当の家族と暮らせるのだと。
初めて見る人達が、知らない名前を呼びました。私のことを呼んでると気付いたのは、その人達に抱きしめられてからでした
ここが私の本当の家…違う
これが私の本当の名前…違う
この人達が私の本当の家族…違う!
私にとっての本当はーーー
3日目の朝、誰よりも早く起きた私はこっそりと家を抜け出しました。
「わかんない…わかんないよ!
私の名前ってなに?私は○○○○じゃないよ!私は×××なの!
私のお家はどこ?あんな広くて寂しいところじゃない…小さいけれど、暖かかったんだよ!
私の家族は…あの人たちじゃないよ…、お母さんが悪い人っていうのは何回も聞かされたけど…それでも私のお母さんはお母さんだけなの…
私は…○○○○じゃない…私は…私は…、誰なの…?」
警察官としての職務を全うしただけだった
少ない情報からよく特定したと表彰されもした
目の前の泣き続けている少女を見る
ああ、自分にいま泣いている資格はあるのか
彼女の「母親」を逮捕したのは…#b#私だ#/b#
「危険ですのでおやめください」「1ブックマーク」
友達のカメコがペットの自慢をしてきたのが羨ましかった。
だからカメオは家の中のあるものを壊してしまった。
カメコが自慢したペットとカメオが壊したあるものが何か答えなさい。
だからカメオは家の中のあるものを壊してしまった。
カメコが自慢したペットとカメオが壊したあるものが何か答えなさい。
17年08月22日 23:00
【20の扉】 [松神]
【20の扉】 [松神]

ごゆっくりどうぞ
解説を見る
ペット……ひよこ
あるもの……電子レンジ
友達のカメコがペットのひよこを自慢してきたのでどうしてもカメオはひよこが欲しくなってしまい、市販の卵を暖めて卵からひよこを孵すことにした。
そう、電子レンジで温めて。
あるもの……電子レンジ
友達のカメコがペットのひよこを自慢してきたのでどうしてもカメオはひよこが欲しくなってしまい、市販の卵を暖めて卵からひよこを孵すことにした。
そう、電子レンジで温めて。
「うさぎおいしいかの山」「1ブックマーク」
「夜に見かけた蜘蛛は必ず殺せ」
彼の故郷の村ではそう伝えられている。
年寄りほどその言い伝えを忠実に守り、
見かけるや否や親の仇のようにたたき殺す。
それが哀れで彼はこっそり見逃がしたりもしていたのだが、
三十年ぶりに村に帰って以来、彼もまた言い伝えを守るようになった。
なぜだろう?
彼の故郷の村ではそう伝えられている。
年寄りほどその言い伝えを忠実に守り、
見かけるや否や親の仇のようにたたき殺す。
それが哀れで彼はこっそり見逃がしたりもしていたのだが、
三十年ぶりに村に帰って以来、彼もまた言い伝えを守るようになった。
なぜだろう?
17年07月09日 20:31
【ウミガメのスープ】 [娘虎]
【ウミガメのスープ】 [娘虎]

解説を見る
村についたのはもう日も暮れた頃だった。
(なんだかやけに蜘蛛が多いな)
三十年ぶりに村に帰った彼の感想はこれであった。
記憶の底から、蜘蛛を叩き潰す親や村の大人たちの鬼の形相が浮かんでくる。
(夜に見かけた蜘蛛は必ず殺せ、だっけな)
古い言い伝えやしきたりが根強く残るこの村で、それに囚われて生きることが嫌で逃げだした。
そんな村の子供は彼だけではなく、村はすっかり高齢化が進んでしまった。
蜘蛛を殺す人間もまた、少なくなってしまっているのだろう。
(この機会に、戻って畑耕すのもありかなあ。うるさい爺さんたちももうほとんどいないんだし)
ところで、先人が口うるさく言うことには、意味があることも多い。
例えば、この村に固有の夜行性の蜘蛛の話とか。
人差し指ほどの、不気味な大きさを持つその蜘蛛は、生き物の死体に産卵する習性があった。
子供の食料を確保するためで、その子供の数は尋常でなく多い。そしてまた、孵化が早いのだ。
ほんの一匹残っていたらしくて自分の親が……村の年寄りたちはそんな惨状を見てきたからこそ、
きちんと駆除をしないと死後の自分がその被害にあうとよく知っていたのだ。
さて、彼はようやく実家についた。
明りの消えた家を寂しく思いながら電気をつけ、母親の遺体と対面し、それがびっしりと子蜘蛛に覆われているのを見て……。
以降、彼は夜中に見かけた蜘蛛はためらうことなく鬼の形相でたたき殺すようになったのである。
(なんだかやけに蜘蛛が多いな)
三十年ぶりに村に帰った彼の感想はこれであった。
記憶の底から、蜘蛛を叩き潰す親や村の大人たちの鬼の形相が浮かんでくる。
(夜に見かけた蜘蛛は必ず殺せ、だっけな)
古い言い伝えやしきたりが根強く残るこの村で、それに囚われて生きることが嫌で逃げだした。
そんな村の子供は彼だけではなく、村はすっかり高齢化が進んでしまった。
蜘蛛を殺す人間もまた、少なくなってしまっているのだろう。
(この機会に、戻って畑耕すのもありかなあ。うるさい爺さんたちももうほとんどいないんだし)
ところで、先人が口うるさく言うことには、意味があることも多い。
例えば、この村に固有の夜行性の蜘蛛の話とか。
人差し指ほどの、不気味な大きさを持つその蜘蛛は、生き物の死体に産卵する習性があった。
子供の食料を確保するためで、その子供の数は尋常でなく多い。そしてまた、孵化が早いのだ。
ほんの一匹残っていたらしくて自分の親が……村の年寄りたちはそんな惨状を見てきたからこそ、
きちんと駆除をしないと死後の自分がその被害にあうとよく知っていたのだ。
さて、彼はようやく実家についた。
明りの消えた家を寂しく思いながら電気をつけ、母親の遺体と対面し、それがびっしりと子蜘蛛に覆われているのを見て……。
以降、彼は夜中に見かけた蜘蛛はためらうことなく鬼の形相でたたき殺すようになったのである。
「恋の行き着く先」「1ブックマーク」
通勤時、いつもカメオの近くに座る女性に対し、カメオはひそかな好意を抱いていた。
彼女が、カメオが降りるA駅より手前のB駅で下車していて、
カメオは自らの想いを伝えることもなく、ただ毎日彼女が下車する姿を見送っていた。
ところが、ある日彼女がB駅で降りずにA駅まで来た上、なんと携帯電話を取り出し、カメオに対し「あの・・・」と声をかけてきた。
それなのにカメオは、その必要はないと彼女の言葉を遮り、連絡先を交換することもなく、彼女とはその場で分かれてしまった。
いったいなぜ?
彼女が、カメオが降りるA駅より手前のB駅で下車していて、
カメオは自らの想いを伝えることもなく、ただ毎日彼女が下車する姿を見送っていた。
ところが、ある日彼女がB駅で降りずにA駅まで来た上、なんと携帯電話を取り出し、カメオに対し「あの・・・」と声をかけてきた。
それなのにカメオは、その必要はないと彼女の言葉を遮り、連絡先を交換することもなく、彼女とはその場で分かれてしまった。
いったいなぜ?
17年05月13日 22:52
【ウミガメのスープ】 [m-akr]
【ウミガメのスープ】 [m-akr]
解説を見る
バスの運転手のカメオは、毎朝B駅を経由してA駅に至る路線バスを運転している。
彼女は、大抵運転席のすぐ後ろ、最前列の席に座っていて、カメオはミラー越しに彼女の姿を見るのを毎朝の密かな楽しみにしていた。
ある日、疲れていたのか、彼女は席に着くなり眠りに落ち、B駅に着いても起きる気配がない。カメオとしても、すぐに次の停留所に向かわねばならず、彼女に声をかける余裕はなかった。
結局、彼女は終点のA駅でようやく目を覚まし、慌てた様子でB駅までの定期券と携帯電話を取り出しながら、「あの・・・」とカメオに声をかけてきた。
乗り越し分を電子マネーで清算しようとしているのだろうと察したカメオが、「乗り過ごしですよね?清算は結構ですので、そのまま降りてくださっていいですよ。」と言って彼女の言葉を遮ると、彼女は「ありがとうございます!」とお礼の言葉を残し、バスの外へと駆け出した。
彼女は、大抵運転席のすぐ後ろ、最前列の席に座っていて、カメオはミラー越しに彼女の姿を見るのを毎朝の密かな楽しみにしていた。
ある日、疲れていたのか、彼女は席に着くなり眠りに落ち、B駅に着いても起きる気配がない。カメオとしても、すぐに次の停留所に向かわねばならず、彼女に声をかける余裕はなかった。
結局、彼女は終点のA駅でようやく目を覚まし、慌てた様子でB駅までの定期券と携帯電話を取り出しながら、「あの・・・」とカメオに声をかけてきた。
乗り越し分を電子マネーで清算しようとしているのだろうと察したカメオが、「乗り過ごしですよね?清算は結構ですので、そのまま降りてくださっていいですよ。」と言って彼女の言葉を遮ると、彼女は「ありがとうございます!」とお礼の言葉を残し、バスの外へと駆け出した。












