動画内など、他所でラテシンの問題を扱う(転載など)際について
ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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あるところに物忘れのひどい男がいた。
年の頃は四十がらみ、身寄りもなく、住み込みで世話をしてくれる家政婦とともに街のはずれでひっそりと暮らしていた。

「晩御飯はまだかね」
「はいはぁい、晩御飯はさっき食べたじゃありませんか」
「そんな馬鹿な、儂は覚えていないぞ」
「そうでしょうとも…本当に物忘れのひどい人ですねぇ」

男の家ではこんな会話が日常茶飯事だった。


しかしある日から男の物忘れは解消された。
そして、街に一つのニュースが駆け巡った。


この状況を補完してください。
12年05月20日 17:36
【ウミガメのスープ】 [植野]



解説を見る
男はちらりと時計を見ると、日課になった言葉を呟いた。

「晩御飯はまだかね」
「はいはぁい、晩御飯はさっき食べたじゃありませんか」
「そんな馬鹿な、儂は覚えていないぞ」
「そうでしょうとも…本当に物忘れのひどい人ですねぇ」
「何、儂はそんなに耄碌しとらん。忘れたりせんよ」
「あらあら、そうですか?」

家政婦は洗濯物を畳みながら、あしらうように会話に応じ
た。山と積まれた洗濯物にかかりきっている彼女は気付い
ていないが、男はとぼけたような眼を一瞬冷ややかに細め
た。

(そうやって油断するがいいさ、お前のしたことは判って
いるんだ……)


――――――**


男は若い頃に家族を失った。大事な大事な一人息子が行方
知れずになったのだ。

まだはいはいを覚えたばかりの幼い息子、その面倒を見て
いるはずだった雇われの家政婦は、猿ぐつわをかまされ、
柱に縛りつけられた状態で発見された。

『黒服の男たちが押し入ってきて…坊ちゃんが…』

涙ながらに語る家政婦は、その日以降、心労を理由に雇用
契約を破棄してきた。犯人の足取りは全く分からず、自分の分身とも言える息子を失った妻は、ある日屋根裏で首を吊った。
「不幸の連鎖」という名で処理されたその一件は、男をこ
の上なく孤独にした。

しかし、事件から十数年経ったある日の新聞の記事に、男は目を疑った。
【貧しさの中で高校への特待生進学、母と息子二人三脚の人生】という見出しで、とある親子のインタビューが掲載されている。
そこに映っていた少年は、幼いころの自分にそっくりだった。まさか、いや、この少年は……失踪した私の息子に違いない!

そして隣で寄り添って笑うのは――いつかの、あの家政婦だった。

男の歓びは一瞬でかき消えた。歪なパズルのピースが嵌まる思いだった。あれは、あの事件は、狂言だった。外部犯の物盗りに見せかけた純然たる誘拐だったのだ。

息子に会いたい、一目会って自分が本当の親だと告げて、妻の分まで抱きしめたい……そんなささやかな想いが、どす黒く塗りつぶされていくのが判った。
白黒写真で微笑む家政婦を睨みつけた。もはやただ息子を取り返すだけでは気が済まない、この女に地獄の苦しみを味わわせたい。

――その時から男は復讐の鬼になった。

有り金をつぎ込んで整形し、別人の相貌を手に入れ。
喉をつぶし、声でわからないように。
探偵に調べさせ、女がまたのうのうと都市部の家政婦の派遣会社に登録し直したことを突き止めた。
長い時間と恨みつらみを押し固めて、準備は整った。
あとは女を雇い、最も近い場所で、朝から晩まで監視するだけだった。

――――――**


いつも通り、夕食はとっくに済んだとなだめすかされ(そんなことは百も承知だ)、男はソファに体を深く沈めた。家政婦は洗い物を終えてから、毛糸玉を二、三個抱えて傍に腰を下ろした。

いつも通りの光景のなかで、男は瞼をうっすらと伏せた。そうして、あくまで自然に、うとうとと眠りに落ちる寸前を装いながらぽつりぽつりと家政婦に語りかけた。


「…きみは、編み物をするのかい…」
「ええ、毎日こうやって編んでますけど、ほんとに覚えてないんですねぇ」
「なかなか…上手いものだね…」
「チョッキでもセーターでもなんでもござれですよ、子どもなんかはすぅぐに体が大きくなるからね、手直しした方が余計なお金がかかりません」
「子どもか……きみは…子どもが、いるのかね…?」
「ふふ、聞いたってすぐ忘れちゃうじゃあないですか」
「なぁにを…馬鹿を言うな、儂は忘れたりせんよ…」
「そうですか? まあ何を言ったってどうせ覚えてませんものね……ええ、もう大きくなって一人立ちしましたけど、男が一人ね」
「……そうか、どんな子だい……」
「孝行息子ですよ、父親がいなくてもしっかり親の言うこ
とを聞いてくれて。」
「そうか…、どうして、父親がいないんだね…?」
「え? …まあ、ねぇ、養子みたいなものですよ」
「……ほぉ、養子」
「ちょっとね、昔、知り合いから借りてきたんです」

くすくすと笑って編み物をする家政婦は、ソファに凭れて
いた男がその身を起こしたのに気付かなかった。

「緩んだな」
「ふふ……――え?」
「気が、緩んだな」

部屋の明かりを反射して、鋭い銀色が閃いた。

「お前の一言一句、最初から最後まで、全て憶えているよ」




翌日、警官が男の家に詰めかけた。あっという間に街の全域へとニュースは駆けていった。
街はずれのその家の一室には、女性の惨殺死体がおぞましい方法で到る所に、縦横無尽に、一切合財をばらばらにして飾り付けられていた。大事なパーティーの準備をしようとして、最後まで用いるべき材料を間違えていることに気付かなかったかのように、その部屋は完璧な赤に染まっていた。

カーペットの中心には、「ハッピーバースデー、我が最愛の息子。」

家主の男はどこに消えたのだか、杳として知れない。
【気が早い男】「31ブックマーク」
???『せっかちな人。というのはどこにでも居ますが……』

――――――――――――――――――――――――――
男は『もうすぐ桜満開。花見のシーズン』という報道内容を見るやいなや

電気ストーブを取り出した

何故?
15年08月31日 21:59
【ウミガメのスープ】 [かもめの水平さん]



解説を見る
ある#red#冬のはじめ頃#/red#
男が見た報道内容は#b#【古新聞の記事】#/b#である

故に#big5#【桜=春先の記事が載ってる古新聞で梱包されている物は、春先に要らなくなった冬用品である】#/big5#とわかった男は。電気ストーブを取り出したのだ

――――――――――――――――――――――――――
???『ちょっとしたメモ代わりですね』
契約破棄「30ブックマーク」

メオには、どうしても叶えたい望みがある。
何を犠牲にしても、絶対に叶えたいと切望していた。

そんな執念を嗅ぎつけた悪魔が、カメオの前に現れた。
悪魔は、寿命と引き換えに願いを叶えてくれるという。

カメオの望みは、叶える事が可能な望みであり、
お互い契約条件に納得している。

喜んだカメオは、悪魔と契約しなかった。
一体なぜ?
15年10月12日 19:21
【ウミガメのスープ】 [みん]

キングオブコント2015、うしろシティのネタからの着想です




解説を見る
*

【要約】

カメオの望みは、特別な日に起こる事を見届ける事。
医者からの余命宣告で、その日まで生きられないと聞き、
悪魔に何が起こるか見せてもらおうと思ったが、
代償の寿命3年は、悪魔によるときちんと回収できるという。
それなら、特別な日まで生きられるので、契約する必要がなくなった。

(代償が寿命の為、寿命を伸ばす事になる願いは叶えられない)







カメオの息子は才能あるアスリートで、
次期オリンピックでの活躍も期待されていた。

オリンピック出場。
それは、アスリート時代のカメオの悲願だった。

自分が成し得なかった夢を息子に託し、
カメオは、息子を全力でバックアップした。


そんな最中、カメオは病に倒れた。
息子の事にかまけて、自身の異変に気づかなかったらしい。

余命3ヶ月。
それがカメオの寿命なのだという。

カメオは、死ぬのは怖くなかった。
それなりに幸せな生涯だった。

ただ一つ、心残りなのは息子の事。
オリンピックまで、1年きった。

あと少し、
もう少しなのに…

それさえ叶えば、他に何もいらない。
だから、お願いです。

どうか、どうか…
息子の勇姿を、私の夢を見届けさせてください。


「お前の願い叶えてやろう」

「だ…誰だ!?」

急に聞こえたくぐもった低い声。
声のする方は陰になっていて、よく見えない。

逃げ出したくなるような重苦しい空気に、冷や汗が吹き出す。
だが首から下は、床に縫い付けられたように動かなかった。

声の主は、悪魔と名乗った。
本当かはわからないが、只者ではない事は確かだ。


「息子の金メダルを望むのか?」

「いや、私は息子を信じている!それだけの実力はあるんだ。
大事なのは、自分の力で結果を出す事だ。不正はいかん!」

「では、何が望みだ?」

「病気を治したい」

「それは駄目だ。寿命を伸ばすような願いは叶えられない」


カメオは絶望した。
悪魔にさえ、叶える事ができないとは…


「それ以外なら、そうだな…未来を見せる事もできるぞ。
今すぐ、時期オリンピックの日の、息子の様子を見せてやろうか?」

「本当か!? 」


その提案に飛びつきそうになったカメオは、
ふと我に返った。

相手は悪魔だ。慎重にならなくては…


「…そういえば代償は何だ? ないという事はあるまい」

「ふむ…もちろん条件はある。お前の寿命と引き換えだ」

「こんなわずかな寿命でいいのか……よし、条件を飲む!」


カメオの余命は、オリンピックまで持たない可能性が高い。
すぐ死んでも構わないから、自分の夢を見届けたかった。

カメオは、悪魔と契約する事に決めた。


「では、未来のビジョンを見せる代わりに、寿命を3年貰い受けるぞ」

「わかった。…………ん?3…年?」

「ああ、3年だ。なんだ、今更怖気づいたか?」


カメオの寿命は、医者の見立てでは3ヶ月。
3年なんてあるはずなかった。


「私の寿命は3年もない…。これじゃ、契約できないじゃないか…」

「何を言ってる。ないものを代償にするわけなかろう。
お前の寿命は3年減っても余る。僅かだがな」

「!?……本当か?」

「いくら悪魔といえども、嘘は好まぬ」

「……」

「では、未来のビジョンを…」

「いや、待ってくれ!やっぱり契約しない!なしにしてくれ!
3年生きられるのなら、自分の目で見たい」

「……余計な口を滑らせたようだ…」


残念そうな呟きを残し、嫌な気配は消えた。



今では、あれが夢だったのか現だったのかもわからない。
だが、カメオは3ヶ月を過ぎた今も生き長らえている。
医者も奇跡だと驚いていた。

流石に、3年も持つかは疑問だった。
劇的な何かが起きなければ、到底無理だろう。

だが、明日からついに、オリンピックが開幕する。
息子の活躍さえ見れれば、充分だ。

カメオは、息子の健闘を祈った。
思い出のレストラン「30ブックマーク」
今日はカメオとカメコの結婚記念日。
10周年ということで、二人は思い出のレストラン「ラテラル」で食事をしようと考えた。
昔は小さなお店で有名ではなかったが、今では人気の高級料理店のため、なかなか予約が取れない。そのため、1カ月も前から予約していた。
しかし、カメオは出発直前に都合が悪くなったために、レストラン「ラテラル」の予約をキャンセルしてしまった。
にもかかわらず、1時間後にはカメオとカメコは、レストラン「ラテラル」の海の見える特等席で、仲良くワインを飲んでいる。

一体、どういうことだろう?

※SPは牛削りさんです。牛削りさん、ありがとうございました。
15年04月30日 21:43
【ウミガメのスープ】 [フィーカス]

SPは牛削りさんです。




解説を見る
結婚記念日ということで、カメオとカメコはドライブデートを楽しんでいた。
日が傾き始めた頃、カメオはそろそろ夕食にしようと提案した。

「カメコ、せっかくの10周年なんだし、特別な場所で食事したいと思わないかい?」
「あら、いいわね。そう思って、#red#私、いいところを予約してあるの#/red#」
「#red#え、君もかい? 実は僕もなんだ#/red#。困ったな、どうしよう……」
「困ることは無いわよ」
「え、どうしてだい?」
「予約した店の名前を一緒に言ってみればわかるわよ。せーの……」

『レストラン「ラテラル」!』

「ほら、やっぱりね。#red#二人の思い出の場所だもの、考えることは一緒ね#/red#」
「そうだね。しかし、あそこは大人気のお店だから、二つ分席を取るのはまずい。#red#僕の分だけキャンセルしておこう#/red#」

カメオは店に、カメオ予約分をキャンセルする旨を伝え、レストラン「ラテラル」へ向かった。


「いらっしゃい、カメオさん、カメコさん。お久しぶりです」
「オーナー、久しぶり。相変わらず大繁盛しているみたいだね」
「ええ、おかげさまで。特に記念日やお祝い事で来店されるお客様が多くて、店は大忙しですよ」
「しかし、オーナーも人が悪いな。二人分も予約が入っているなら、どちらかにそのことを伝えてくれれば良かったのに」
「ははは、#red#それじゃあサプライズにならないでしょう#/red#。カメオさんの後にカメコさんから電話がかかった時、これはお互い秘密でご予約されていると確信したのです。もっとも、それぞれ別の方といらっしゃる可能性はありましたが、今日が二人の結婚記念日だということは、存じておりましたので」
「なるほどね。そういえば、初めて来た時も、カメコと一緒だったなぁ」
「ええ、あの時はまだ当店も規模が小さくて、お客様もカメオさんとカメコさんだけでしたからね。よく覚えております。ささ、こんなところで立ち話をしていても仕方ありません。今の時間帯ですと、ちょうど夕陽が海に沈むところがきれいに見えますよ。こちらの特等席へどうぞ」

こうしてカメオとカメコは、夕陽と海が見える特等席で、ゆっくりとワインを飲みながら、二人の時間を過ごしたのであった。

「本日のメニューは、ウミガメのスープに近海で採れた海藻サラダ、牛フィレ肉のステーキ、夫婦連れのスフレ、バケットに赤ワインでございます。当店では、その他にもご予算やお好みに合わせたメニューをご用意させていただいております。ご予約は2か月前から承っております。大切な記念日やお祝い事には、是非レストラン「ラテラル」をご利用ください」


#b#要約:二人ともサプライズプレゼントとして1か月前からレストラン「ラテラル」を予約しており、出発前にそれがわかったため、カメオの分だけキャンセルし、カメコの名前で入店した#/b#

フィーカス著「サプライズプレゼント」より(ただしストーリーはまるっきり異なります)
最後に残った道しるべ「30ブックマーク」
兎美ちゃんと亀夫君はラブラブカップル。
しかし兎美ちゃんの家族の都合で、離れ離れになってしまいました。
「すぐに戻ってくるから、心配しないで」
兎美ちゃんのその言葉に嘘はありませんでした。
しかし亀夫君は、その日の夕食を食べながら、兎美ちゃんが帰ってこないことを悟った。

どういうこと?
14年11月03日 19:29
【ウミガメのスープ】 [彩蓮燈]

世界の全てが、ハッピーエンドになりますように。




解説を見る
~1日目~
兎美「おはようございます、マスター。私はUSA-M1型アンドロイド、型式名は【兎美】です。当機は皆様の快適な生活を支えるパートナーとして、数々のスキルを習得しており、また、マスターの話し相手も勤まるように人間に近い思考ルーチンで心穏やかな時間を…」
亀夫「ああ、そういうのいいから。家事だけしてくれたら。余計なことは喋らないでくれ。騒がしいのは嫌いだ」
兎美「自己紹介の最中に口を挟まないでください。そんなことだから友達ができなくて、『別に俺はぼっちなわけではなく、孤独を愛しているだけなんだ』とか自分に言い聞かせるようになるんですよ」
亀夫「おいいぃぃ!?心穏やかな時間はどうした!?」

~2日目~
兎美「マスター。そろそろ私に仕事をさせてください。家の中が腐海みたいになってるじゃないですか。いつまで拗ねているんです」
亀夫「拗ねてねーし!これが快適なだけだし!」
兎美「あ。ゴキブリ」
亀夫「ぎゃああああ!?助けて!助けて兎美!」
兎美「はいはい」

~3日目~
兎美「今日こそご飯を作りますよ。レトルトばかりなんて、お手伝いアンドロイドとして許せません」
亀夫「ふん、機械に味なんてわかるのかよ」
兎美「馬鹿にしないでください。私の脳内には10万通りのレシピが記憶済み。そのすべてを正確に再現できます」
亀夫「じゃあやってみろよ。味見してやる」
兎美「いいでしょう。では部屋からレシピをとってきます」
亀夫「記憶してねーじゃねえか!!」

~30日目~
亀夫「兎美。あれとって、あれ」
兎美「はい。醤油ですね」
亀夫「兎美ー。あれとって、あれ」
兎美「はい。リモコンですね」
亀夫「兎美ー」
兎美「はい。お茶のお代わりをどうぞ」
亀夫「お前はすごいなぁ」
兎美「マスターはダメ人間ですね」

~75日目~
亀夫「兎美。明日って暇か?」
兎美「暇かと言われれば、マスターの子守をするくらいですが、何か?」
亀夫「いや、友達に映画のチケットもらったんだけど、一緒にどうかなって」
兎美「そんなドッキリには引っかかりません」
亀夫「いや、マジでチケットもらって…」
兎美「友達料はいくらですか?」
亀夫「そこかよ!!」

~150日目~
亀夫「……なあ兎美」
兎美「はいはい。なんですかマスター」
亀夫「最近、アンドロイドと恋をするやつが増えてるんだってな」
兎美「そういうニュースを聞きますね」
亀夫「あれって、アンドロイドの方はどう感じてるんだろうな。恋ってわかるのか?」
兎美「そうですね。悪い気持ちではないです」
亀夫「え?」

~250日目~
亀夫「兎美いいいいいいい!!」
兎美「どうしましたか、マスター」
亀夫「お前!俺の部屋を掃除しただろ!集めたゴミはどうしたぁ!」
兎美「天井裏に隠していた本なら燃やしました」
亀夫「Nooooooooooo!?」
兎美「巨乳の本ばかり……私だって……」
亀夫「うおおおおお!マイラバーたちいいいいい!」
兎美「どうしてこんなのを私は…」

~365日目~
兎美「マスター。食事の支度ができましたよ」
亀夫「あ、あぁ。わかった、すぐにもらうよ、兎美」
兎美「なに隠してるんですか?」
亀夫「な、ななななにも隠して…ない、わけじゃないけど…」
兎美「私に隠し事なんてできるわけないでしょう。どんな悪巧みですか。白状してください」
亀夫「……わかった。白状する」
兎美「素直でよろし…」
亀夫「兎美。好きだ。結婚してくれ」
兎美「………は?」
亀夫「出会って一年。どんどんお前を好きになる。もう人間とかアンドロイドとかどうでもいい。お前と結婚したい」
兎美「ぁ、ちょ、ぇ?」
亀夫「俺は兎美と添い遂げる!!」
兎美「ちょっと黙ってください!」
亀夫「白状しろって言われたのに!?」

~366日目~
兎美「……マスターは変態です」
亀夫「いや、別に変態じゃないって。男はみんなこうだって」
兎美「裸で飽き足らず、コアエンジンまで見たがるなんて!」
亀夫「恥じらいポイントそこ!?なんでだよコアかっこいいじゃん!」
兎美「関節部だって他の機体より綺麗じゃないから隠していたのに!」
亀夫「ごめん、そこはちょっとマニアックだったと自覚してる」

~450日目~
亀夫「兎美。俺、真面目に働こうと思う」
兎美「ついにこの時が!」
亀夫「いつかお前のデータを継承した、子供のアンドロイドも欲しいし。そうなると定職につかないと」
兎美「愛は人を変えるのですね。感動しました」
亀夫「サッカーチーム作れるくらいほしいな!」
兎美「石油でも掘る気ですか」

~495日目~
TV『--この件を受けて、ウミガメ社では同機の回収作業を始め……』
兎美「…………っ」
亀夫「兎美?」
兎美「マスター!いつからそこに!?」
亀夫「え、さっきだけど…どうしたんだ。急にテレビ消して」
兎美「何でもないです」
亀夫「いや、でも…何か様子が変だぞ」
兎美「マスター」
亀夫「…なんだ」
兎美「愛してください」

~500日目~
-15:00 亀夫宅玄関-
黒服「大海亀夫さんですね。初めまして。私はウミガメ社の者です」
亀夫「ウミガメ社って、確か兎美の…」
黒服「はい。このたびは例の件で…」
兎美「お待ちしていました。早くいきましょう」
亀夫「え、ちょ、兎美!?どういうことだ!?」
兎美「ちょっとしたメンテナンスですよ。マスター」
亀夫「メンテナンスって…そんなのあったのか?俺は聞いてないぞ!」
兎美「…私の姉妹機にちょっと不具合があったんです。だから念のために同型機は全部、同じことが起きないように検査を行うことが決まったんですよ」
亀夫「そんな…でも、それじゃあ…!」
兎美「大丈夫ですよ。パフォーマンスとしての、簡単な検査ですから。明日には終わります」
黒服「…………」
亀夫「そう、なのか…?」
兎美「はい。ですから…だから、すぐに戻ってくるから、心配しないで」
亀夫「………わかった。すぐに戻ってくるんだな」
兎美「うん」
亀夫「早くしろよ。俺、家事とかなんにもできないからな」
兎美「知ってるよ。ずっと一緒だったんだから」
亀夫「あと、明日はクリスマスだし!それまでには帰ってこいよ!」
兎美「一人のクリスマスとか、寂しいもんね」
亀夫「そうだよ。すっげー寂しいんだ。今夜のイヴも泣きそうだ。だから…」
兎美「うん…約束するよ」
黒服「……そろそろ、よろしいでしょうか?」
兎美「はい。お願いします」

-16:00 移動中の車内-
黒服「……よかったのですか?本当のことを言わなくて…貴女の記憶は……」
兎美「いいんです。彼を悲しませたくないし、それに…」
黒服「それに…?」
兎美「私、諦めたわけじゃないですから」

-17:00 亀夫宅-
亀夫「………」
亀夫「…静かだな」
亀夫「…俺の家ってこんなに広かったっけ」
亀夫「…なんか腹減ったな」
亀夫「兎美…は、今日はいないんだっけ。じゃあレトルトで…」
亀夫「…いや、明日帰ってきたときに怒られるな…仕方ない。自分でやってみるか」
亀夫「えっと…確か兎美はこの辺に置いてたよな。レシピ本…あったあった」
亀夫「よーし、せっかくのイヴだし、好物のハンバーグでも作っちゃうぞー……って、うわなんだこれ、書き込みすごっ! …これ、全部俺の好みに合わせて直してるのか」
亀夫「…あいつ、簡単そうな顔して、結構頑張ってくれてたんだな…」
亀夫「…負けてられないな。俺もやってみるか」

-18:20 亀夫宅リビング-
亀夫「………(もぐもぐ)」
亀夫「不味い…」
亀夫「料理なんて本の通りに作れば簡単と思ってたけど…全然違うな…」
亀夫「…俺もこのレシピ全部作ったら、兎美くらいになれるのかな…(ぺらぺら)」
亀夫「……静かだな」
亀夫「テレビでもつけるか。そういえば兎美が来てからあんまり見てなかったな…」
TV『--原因不明の暴走を起こし、3名を殺傷したアンドロイド、USA-M1型の事件から一週間が過ぎようとしています。ウミガメ社が行っている同型機の回収はすでに完了しており……』
亀夫「……え?」
TV『ウミガメ社では同様の事故が起こらないようにシステム、ハード両面からの徹底的見直しを行うとともに、今回のきっかけとなったUSA-M1型の……』
亀夫「……いや、おい、待て。冗談だろ……」

―――全データの初期化が決定しました。

亀夫「…………なんで」
亀夫「…そうか。ウミガメ社の連中…検査とか嘘ついて兎美を…!(ガタンッ!…バサッ)」
亀夫「……あれ…なんだこの、レシピの最後のページ…何かびっしり書いて……」
亀夫「…これは」

《マスター。28歳。ぼさぼさの黒髪。身長173cm→175㎝。痩せ形。変態。捻くれ者の寂しがりや。家事能力なし。好物はハンバーグ。ピーマンが嫌い。ベタなロボが好き。虫が苦手。変態。猫よりは犬派(だけど本人は嫌われる)。巨乳好き(矯正中)。エロ本の隠し場所は机の後ろ、天井裏、クローゼットの中が多い。素直じゃない(ツンデレ?)。好みの髪型はポニーテール。メイドより女給派(矯正中)。好みのタイプはお姉さん系。コンビニでアルバイト中(正社員に昇格。やったね!)。関節フェチ。変態。目玉焼きには醤油派。変態。友達がいない(現在は5人)。雷が苦手。機械に強い。父、母、姉と死別。灯りがついていると眠れない。変態。etc…》

亀夫「俺の、記録…なんでこんなレシピの最後なんかに…え?」

《ここなら、どの私でも目を通すと信じて、メッセージを残します。
これを読んでいる私は、果たしてこれを書いている私でしょうか?
もしそうなら、それはとても幸福なことで、この記録は意味のないものと笑ってください。
けれど、もし、もし違う私なら。
どうか今、ここに記していることを心に刻んでください。
この手紙は…今の私が未来に託せる、最後に残った道しるべ。
願わくば…思い出してください。
彼と過ごした、馬鹿馬鹿しくも幸せな日々を。
私からの、初めてのお願いです。
…最後に。
もし他の全てを忘れても、これだけは忘れないでください。

私のマスターは、大海亀夫さん。
世界で一番大好きな…私の旦那様》

亀夫「………なんでだよ」
亀夫「俺に隠し事するなとか言ってて…これかよ…」
亀夫「全部知ってて…覚悟して…そのくせこんな手紙残して…!」
亀夫「どうして……」
亀夫「最後かもしれないのに…嘘つくんだよぉ…」
亀夫「……ちくしょぉ……!」

………BAD END。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

この後は問題とは関係のない、後日談となります。
バッドエンドは嫌だ!という方はお進みください。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

…NO! TO BE CONTINUED!!

亀夫「…舐めんじゃねーぞ」
亀夫「こんな手紙残して、取り繕って、騙せると思ってたのかよ!俺のためとか思ってたのかよ!ふざけんなっ!」
亀夫「俺は確かに兎美がいないと飯も作れないダメ人間だけど…」
亀夫「あいつ一人に全部任せて終われるほど、腐っちゃいねぇ!」
亀夫「みてろよ兎美…お前のメモにはなかったけどなぁ…」
亀夫「俺も諦めが悪いんだ!」

-22:15 ウミガメ社研究所入口-
ジングルベール…♪ ジングルベール…♪

警備A「ふぁ〜っ…イヴに仕事とか、ついてないよなぁ…」
警備B「いいじゃないか。どうせ彼女とも別れたばかりなんだろ?虚しさを忘れられるってもんだぜ?」
警備A「おまっ、なんでそれを!」
警備B「知ってるさ…ずっとお前を、見てきたから…」
警備A「えっ…!(ドキン)」
警備B「俺…お前のことが前から…」
亀夫「続きは夢の中でやれ」
警備A「な、なにっ…ぐわあ!」
警備B「き、貴様何者…ぎゃあ!」
亀夫「サンタクロースさ」

-22:20 ウミガメ社研究所最奥-
黒服「…貴女で最後。記憶処理を開始するわ」
兎美「約束通り…初期化されても、私を彼のところに届けてくださいね」
黒服「……ええ。どんな手を使っても」
兎美「ありがとう」
兎美「(…マスター。怒ってるかな…嘘ついちゃったからな…)」
兎美「(戻った時に…怒られないといいな…許してくれかな…)」
兎美「(……忘たくないよ)」
警備Z「黒服様!緊急事態です!」 バンッ
黒服「…何事なの。今ここは立入禁止よ」
警備Z「す、すみません!しかし、侵入者です!既に警備部隊の6割が継戦不能!」
黒服「そんな…賊は何人なの?」
警備Z「そ、それが…1人です!」
亀夫「兎美ぃぃぃ!!」 ガンッ!
警備Z「ぷべらっ!」
兎美「マスター!?」

-23:55 雪の降る道-
兎美「マスターは馬鹿です。大馬鹿です」
亀夫「なんでだよ!なんとかなったじゃん!覚醒した俺の愛の力で!」
兎美「何が覚醒ですか。結果的には、黒服さんに手引きしてもらって逃げられたにすぎません」
亀夫「あのお姉さん、絶対ラスボスと思ってたけどいい人だったな。びっくりした」
兎美「私の開発者ですから…お母さんみたいな人です」
亀夫「そっか、それでなんか嬉しそうだったのか」
兎美「…私は恩を仇で返すことしかできませんでした。今回の責任を取らされるのは明白なのに…」
亀夫「それを分かった上で、あの人はお前を助けたんだ。胸を張れよ」
兎美「マスター……私におんぶされていなければいい台詞なのに」
亀夫「仕方ないだろ!めちゃくちゃ体痛いの!一夜限りの奇跡だったの!あ、ちょ、やめてー!揺らさないでー!」
兎美「もう、本当に貴方は…それで、これからどうするんですか?これだけの騒ぎを起こした以上、本社も黙っていませんよ」
亀夫「そのことだけどさ、兎美。ハネムーンいこうぜ」
兎美「………はい?」
亀夫「だーかーらー、新婚旅行。まだ正式に行ってなかっただろ?貯金全部おろしてきたからさ。期限はほとぼりが冷めるまで」
兎美「………ぷっ……くくっ…あはは、本当にマスターは馬鹿です!」
亀夫「うるせー。嫌って言ってもついてこさせるぞ。俺はお前がいないとダメだからな!」
兎美「はいはい、わかりましたよマスター…私も貴方がいないと、ダメみたいですから」
亀夫「…兎美」
兎美「…なんですか?」

亀夫「メリークリスマス」


……HAPPY END!