「鬼哭」「6ブックマーク」
男は、磔にされていた。
女は彼が好きなのに、彼が傷ついていくのを笑顔で眺めていた。
何故?
※水上さんにスープパートナーをしていただきました。
女は彼が好きなのに、彼が傷ついていくのを笑顔で眺めていた。
何故?
※水上さんにスープパートナーをしていただきました。
14年07月19日 11:37
【ウミガメのスープ】 [名もなきx]
【ウミガメのスープ】 [名もなきx]
水上さん、ありがとうございます。
解説を見る
女は自分のお気に入りのアイドルのポスターを壁に貼り付けた。
ポスターは飼っている猫にひっかかれたり、日に焼けたり、年々と傷ついていった。
しかし、女のポスターを見つめる笑顔は変わらなかった。
ポスターは色褪せていっても、女の気持ちが色褪せることはないのだった。
ポスターは飼っている猫にひっかかれたり、日に焼けたり、年々と傷ついていった。
しかし、女のポスターを見つめる笑顔は変わらなかった。
ポスターは色褪せていっても、女の気持ちが色褪せることはないのだった。
「このウミガメのスープを作ったのは誰だぁっ!!」「6ブックマーク」
海
の見えるレストランで「ウミガメの スープ」を注文た男。
しかし、男はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだとこ ろで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい・・・ ウミガメのスープに間違いございません。」
男は勘定を済ませ、帰宅した後、自殺をしました
何故でしょう?
【参加テーマ・この〇〇を作ったのは誰だぁっ!! ←〇〇に言葉を入れて下さい】
の見えるレストランで「ウミガメの スープ」を注文た男。
しかし、男はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだとこ ろで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい・・・ ウミガメのスープに間違いございません。」
男は勘定を済ませ、帰宅した後、自殺をしました
何故でしょう?
【参加テーマ・この〇〇を作ったのは誰だぁっ!! ←〇〇に言葉を入れて下さい】
14年01月30日 20:30
【ウミガメのスープ】 [アザゼル]
【ウミガメのスープ】 [アザゼル]
SPあさとさん
解説を見る
男
は下半身が動かなくなりこの店にこれなくなっていた
その為 妻にこの店の味を再現させようとしたが全く違う味だったために妻に怒鳴りちらした
何度作り直しても夫に怒られた結果 妻は自殺してしまう
その後足が治った男はこの店に来てスープを飲んだ
妻のスープと全く同じ味だった
妻は完全にこの店の味を再現していたのに男の味の記憶が間違っていたのだ。それなのに俺は妻を怒鳴って自殺に追い込んで・・・
男は深く後悔し自殺してしまった
は下半身が動かなくなりこの店にこれなくなっていた
その為 妻にこの店の味を再現させようとしたが全く違う味だったために妻に怒鳴りちらした
何度作り直しても夫に怒られた結果 妻は自殺してしまう
その後足が治った男はこの店に来てスープを飲んだ
妻のスープと全く同じ味だった
妻は完全にこの店の味を再現していたのに男の味の記憶が間違っていたのだ。それなのに俺は妻を怒鳴って自殺に追い込んで・・・
男は深く後悔し自殺してしまった
「救世主だよ!兎美ちゃん!」「6ブックマーク」
兎美ちゃんと亀夫くんはとっても仲良し。
ある日、亀夫くんはたくさんの人を殺して世界はめちゃくちゃになりました。
兎美ちゃんは世界を救うために自殺しました。
死の間際に兎美ちゃんは言いました。
「死にたくないよ」
次に兎美ちゃんは言いました。
「死ぬのも悪くないね」
兎美ちゃんの命が消えた後、誰もそのことを悲しみませんでした。
なぜ?
扉を開いた私を迎えるように、渇いた銃声が部屋に響く。
放たれた鉛玉は一人の少年の眉間を貫き、頭蓋を砕き脳を破壊する。
どさりと、少年の体が倒れ込む。その身体に生命反応はもうない。
また間に合わなかった。
…いや、彼は私が来るのを待っていた。私に見せつけるために。
「こんばんは。兎美ちゃん。今日もまた間に合わなかったね」
「また…また人を殺して…何をしているか分かってるの!?亀夫くん!!」
熱い喉から絞り出し、部屋に残る彼に叫ぶ。
たった今、少年を殺した張本人…銃を手に、優しい笑みを浮かべる彼に。
「酷いなぁ。まるで僕が馬鹿みたいじゃないか。勿論わかっているさ。人助けだよ」
「違う!あなたがしているのは人殺しよ!罪のない人を殺しているだけよ!」
「困ったなぁ。兎美ちゃん。君こそ何を言ってるんだい?」
すると彼は、心底呆れたように溜息をつき、不思議そうに告げる。
「罪ならあるよ。この子はこれから15年後に7人もの命を奪う犯罪者だ。殺しておかないと危ないじゃないか?」
なんの迷いもなく、それが真理と言わんばかりに。
ぞくりと、背筋に冷たいものが走った。
生物の根源的な恐怖が、ひどく気持ちの悪い泥のように私の心に満ちていく。
私は本能的に銃を抜き、亀夫くんにつきつける。しかしその照準は定まらず、カタカタと音を立てて震えてしまう。
「もうこんなことはやめて…お願い、罪を償って…」
「あはははは!罪?なんで?償うべき罪なんて僕にはないよ。そもそも、誰が僕を裁くんだい?」
冗談でも聞いたように、楽しそうに笑う亀夫くん。
彼は躊躇うことなく銃を向ける私に歩み寄ると…その銃口を自分の胸に押し当てる。
「君が裁くのかな?いいよ。撃っても。それが意味のないことは、君が一番よく知ってるだろうし…ねえ、殺せる?」
「……ぅ、い…っ!!」
彼の言葉に猛烈な吐き気に襲われ、その場に膝をつく。
体の中を駆け巡る嫌悪感が暴走し、拒否反応となって胃液と共に逆流してくる。吐瀉物のすえた臭いと血の匂いが混ざりあい、更なる吐き気が誘発される。
「おやおや。いい歳してみっともないなぁ、兎美ちゃんは。まあ、お大事ね。僕は次のお仕事で忙しいから」
「ぁ…あなたは…!」
私に興味をなくしたように立ち去ろうとする彼の背中に投げかける。
「あなたはっ!神にでもなったつもり!?」
彼は何の迷いもなく。
「そうだよ」
答えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私こと兎美と亀夫くんは、幼いころから一緒に過ごした幼馴染だった。
親同士が親しかったこともあって、それこそ物心ついたころから一緒に遊んでいた。
小学校、中学校、高校と当然のように一緒に過ごし、その頃になるとお互いに意識し始め、同じ大学に進学したのを機に交際を始めた。
私たちの専攻は物理学。
いわゆる科学者の卵で、そんな私たちの恋愛は周りから見ると変人の語らいに見えたらしい。でも、その頃が一番幸せだった。
大学院に進学して…あれを創りだしてしまうまでは。
「次元跳躍?」
「そう。いわゆるタイムスリップというやつ」
それはいつものように、二人で研究室で『時間』をテーマに話し合っていた時のこと。
「SFなんかではよく聞くけど、時間を超えるのは科学的には不可能と立証されてるだろう?」
「確かに物理学的にはそうだけど…たとえば、そう。この世界、この星そのものを一個の生命体として仮定してみて。人間が都合の悪い記憶を書き換えるように、世界の記憶に人為的な矛盾を生じさせて、そこを意図的に介入することができれば…」
「歴史の改竄もあり得る、か…科学というより、オカルトの分野だね」
「科学とオカルトの差異なんて微々たるものでしょう?」
「違いないね…でも、歴史を変えれたら…」
「変えれたら…?」
「…いや、何でもない」
思えば、この時にもう少し彼を問い詰めていれば、こんなことにはならなかったのだろう。
しかし当時の私はそんなことに築かず、苦笑する彼と共に研究を始めた。
一見すると馬鹿げた話だろう。しかし可能性があるなら追求せずにはいられないのが科学者という生き物なのだ。
そして厄介なことに…私と彼は、それを成し遂げるだけの才能と、運があった。
研究から8年。2機のタイムマシン――時元改変機は完成した。
そして亀夫くんの裁きが始まった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
犯罪者を、犯罪を犯す前に殺す。
亀夫くんが過去で行なっているこの事実に私が気付いたのは、暫くたってからのことだった。
その経緯は語ると長くなるので省略するが、それに気付いた私はもうひとつの時元改変機を用いて過去の世界に飛んだ。
勿論、彼の凶行を止めるためだ。
時間を超えるなんてことは今の世界では想定されていない。たとえ警察に通報しても何の意味もないだろうし、逆にこの機械の存在は余計な混乱を助長するだけであることは目に見えていたから。
そして私は過去の世界に戻り。
すっかり変わり果てた亀夫くんと再会した。
「亀夫…くん…?」
「やあ兎美ちゃん。君も来てくれたんだね。よかった。人手が欲しいところだったんだ」
そう言って微笑む彼が引きずっていたのは、子供の死体だった。
まだ小学生にも上がっていないだろう幼い子供の死体。彼はそれを心底嬉しそうに放り投げた。
「ああ、これ?この子はね。今から40年後に人を殺すんだ。通り魔でね。かわいそうなことに襲われた家族は一人息子を遺してみんな殺されちゃうんだ。まあ、その一人息子って僕なんだけど。兎美ちゃんも覚えてるよね」
「ぁ…え、ぅ…」
勿論覚えていた。
ずっと幼いころから一緒にいたから覚えていた。
その時の亀夫くんの絶望的な表情も、しばらく話すことも笑うこともできなくなったことも、自暴自棄になって自殺未遂を起こしたことも。
でも、もうそれは振り切ったことだと思っていた。
勝手に、そう思っていた。
「兎美ちゃん。僕はね。あんな理不尽な悲しみをこの世からなくしたいんだ。そのためにはどうしたらいいか考えたんだよ。その答えがこれだよ!悪いことをする奴は、先に全部殺してやればいいんだ。そうしたら世界はずっと平和でいられるんだ!」
「違う…違うよ、亀夫くん…それは、それは違う…」
「違わないよ。だって、こんな力を…時間を超える力を手に入れたんだよ?これは神様が僕に与えた使命なんだよ」
亀夫くんが、笑っています。
私の知らない笑顔で、嗤っています。
「ああ、でもそういう意味なら、兎美ちゃんは天使みたいなものだよね」
「ぇ…どう、いう…」
「だって、この力は兎美ちゃんが僕に言ってくれなければ完成しなかったんだもの。ああ、じゃあこいつを殺せたのも兎美ちゃんのおかげだね!ありがとう、兎美ちゃん」
そんな。
そんなことを。
彼は。
殺せたのは。
私の。
私のせいで。
「あ…ああぁああああああああああああああ!!!」
頭の中が真っ白になりました。
気付いた時には私は、亀夫くんの体を何度も何度もナイフで刺し貫いていました。
彼の顔は命が抜け落ちてなお笑顔のままで…それがうすら寒く、私は感じました。
でもそれ以上に。
「ぇ…ぁ…わ、私…殺し…亀夫くんを…」
カランと、手からナイフが零れ落ちます。
真っ赤に染まった自分の手が映り、否が応でもそれが現実だと感じさせられます。
視界が、頭の中まで真っ赤に変わります。
でも、そんな私を嘲笑うように声が響きます。
「あーあ。そんなにめちゃくちゃにしちゃって。可哀そうな僕」
亀夫くんが、亀夫くんの死体に跨る私を見降ろしていました。
「ぁ…え。え?な…なん、で…?」
「驚くようなことじゃないよ。だってその僕は僕と同じで、この世界線の人間じゃない…オリジナルさえ無事なら、他の未来から来れるに決まってるじゃない」
そう言って、歌うように手を広げて。
「もっとも、君がまだ過去に飛ぶ前のオリジナルの僕を殺せば話は別だけどね?その場合は僕が殺した皆もなかったことになっちゃうのかな?あはは!でも兎美ちゃんはそんなこと出来ないもんね。僕の好きな兎美ちゃんは!」
子供のような笑顔で、嗤う。
ガチガチと歯が鳴る音が煩い。私の歯だ。でも止まらない。止められない。
肉を刺した感触が残っている。内臓の潰れる感覚が伝わっている。熱い血の匂いが染みついている。
腕が上がらない。殺そうにも体が言うことを効かない。
「なんで…なんで…こんなことに…」
「なんで?君のおかげなのに、変なこと言うんだね。まあいいや。僕はまた殺しに行かなきゃいけないから…じゃあ。またね。兎美ちゃん」
そして。
彼を止めるための、時を超えた追跡が始まった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…………」
3678。
私が今まで越えた時間の回数。
そして今まで私が救えなかった命の数。
これだけの数を繰り返して、これだけの数を犠牲にして、私は彼を止められないでいた。
彼はあらゆる面で私より上手だった。
私の行動を読み、時には誘導し、時には罠にはめ、必要なら自分の命も平気で捨ててくる。
それは自爆テロと変わらない自己を省みない殺戮の塊。
私にはもう、彼を止める手段が分からないでいた。
彼を殺しても、また別の時間軸の彼が殺戮を繰り返す。
彼を殺すには、その時間軸に生きるオリジナルの彼を殺さないといけない。
私には彼を殺せない。
完全に積んでいました。
もう私自信が心を壊してオリジナルの彼を殺すくらいしか手が浮かびませんが、それだと私がちゃんと殺してくれる保証がありません。
こんな時でも推測で動けない理系の自分が嫌になります。
しかし、私の精神力ももう限界に達していました。
なんとしても彼が時を超える前に殺さないといけない。
時を超える前に……
「…時を…超える…?」
その時。
私の脳裏にひとつの仮説がひらめきました。
それは酷く曖昧で、同時に危険を孕んだものでしたが。
「…そうだ。今の私にできることは…これしかない」
私は屍のような体を引きずり、最後の時間跳躍を行ないます。
目指す先は……
大学生の、私がいる街。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナイフをずぶりと女の胸元に抉りこむ。
指先に、肉を裂く感触が伝わってきます。
心臓の鼓動に合わせて盛大に傷口から血が吹き出す。
目の前には何が起きたのか理解できない、茫然とした女――大学生の私の姿。
「ぇ…あ、え…なに…これ…」
「ごめんね」
私の口から、ごぼりと血の塊が零れる。
足から力が抜け、地面に倒れ込むと血だまりが辺り一面に広がっていく。
どうみても助からない致命傷。
止めとばかりに私はナイフを抜くと、噴水みたいな赤が周囲を満たす。
その頃になってようやく周囲の人たちはこれが現実だと気付いたのか、一斉に叫び声があがった。
「ぁ…なん…で……ゃ…いたい…よぉ……」
「…ごめんね」
もう一度、意味のない謝罪を告げる。
私はきっと、いま文字通りに死ぬほどの苦しみを味わっているんだろう。
心臓が裂け、肺に穴があき、血が流れ込んで呼吸もままならない。
ずきりと、胸が痛む。でもこれは過去の自分の古傷なんかじゃない。その証拠に私の胸にはなんの傷も浮かんでいない。
逆にいえば、それはこの子がここで絶対に助からないということ。
「――兎美ちゃん!?」
その時、人込みをかき分けてくる人影が見えた。
その姿に私は思わず目を見開く。
それは私が時を超えながらずっと探していた、かつての亀夫くんだった。
ああ、そうか。この頃の私たちは…ちょうど付き合い始めた頃だったんだ。
「兎美ちゃん!しっかり…酷い怪我だ…すぐに救急車を呼ぶから!」
「ゃ…亀夫、くん…私…しぬ、の…?」
「喋らないで!大丈夫だから…きっと助かるから…!」
「…ゃだ、よぉ…まだ…やりたいこと、いっぱいあるの…に…」
「兎美ちゃん…!お願いだから喋らないで…!」
「死にたく……ない……ょ……」
「兎美――――」
私の手が、亀夫くんの手から滑り落ちる。
それは私の命の終わりを意味していて、同時に私の終わりの始まりだった。
――ぐにゃりと、ノイズが走ったように世界がひび割れるのを感じた。
それはまるで絵画が崩れるように、ガラガラとひび割れを増していき、そこから黒い靄のような何かが溢れだしてきた。
それは空をあっという間に覆い尽くすと、黒い雨のように大地に降り注ぎ、世界を溶かし始める。
周りの人たちを眺める。彼らは死体となった私に驚愕するばかりで、世界の変容には見向きもしない…やはりこれは世界が壊れているのではなく、私が壊れているのだろう。
タイムパラドクス――SFでお馴染みの、時間を超えることで発生する矛盾。
これはそれを犯した私に対する世界の処置。
かつて私のたてた仮説では、世界はひとつの意思をもつ巨大な生命体であり、歴史とはすなわちその世界の記憶している思い出だった。
では人間なら、自分の記憶の中で都合の悪い矛盾が発生したらどうするか。
答えは簡単。自分の都合のよいように書き換える。
しかし、今やこの世界において、私の存在は決して書き変えられない究極の矛盾となり、世界自体を脅かし始めた。
私が死んでは、タイムマシンは完成しない。
タイムマシンが完成しなければ、私が過去に戻り私を殺すこともない。
その場合は私は生存し、タイムマシンが完成する。
完成したタイムマシンを使って、私が私を殺しに来る。
どう頑張っても解消出来ないジレンマ。
そんなとき、次に人は記憶をどうするか。
そう。忘れるのだ。
全部全部なかったことにして、真っ黒に塗りつぶして、黒歴史にして、蓋をする。
それが記憶の防衛機能。
いままさに、世界のそれが私に作用している。
私に関するあらゆる記録を世界から抹消するために。
黒い靄が私にまとわりつく。
ねっとりとした感触。同時に、私の中から何かが失われる感覚。
ああ、これが死すらも超えた『消滅』の感覚なんだ。
恐怖よりも先に感じたのは安堵だった。
これでやっと終われる…亀夫くんも、これで罪を犯さなくて済む。
そしてゆっくりと瞳を閉じて――。
頬に熱い衝撃を受けて、ひっくり返った。
「お前が…お前が兎美を殺したのか…!」
衝撃の正体は亀夫くんの拳だった。
あろうことか普段から大人しい彼は、私に馬乗りになって胸倉をつかみ上げていた。
「――そうよ」
どうして彼の言葉に答えたのか。
もしかしたらずっとまともに話せなかったかれと、もう一度だけでも言葉を交わしたかったのかもしれない。
彼は私に気付いていないようだった。
無理もない。いまの私は彼にとっては10年以上後の存在。判別をつけるのは難しいだろう。
彼の拳が再度私の頬を打った。
痛覚はもう消されてしまったのか、あまり痛みは感じなかった。
「なんで…なんでだよ!兎美が何をしたっていうんだ!」
「……これからするのよ。彼女はこれから、世界を危機に陥れる」
口から出たのは、いつも亀夫くんが言っていた台詞。
犯罪者を事前に殺す、彼の正義の常套句。
今になって私が口にするなんて、皮肉以外の何でもない。
「ふざけんな!そんな…そんなくだらない妄想で兎美を…兎美を…!」
「あなたは…その子が死んで悲しいの?」
「当り前だろうが!!」
拳が頬を捉える。痛みはない。
亀夫くんの顔は涙でぼろぼろになっていた。叫び声は嗚咽交じりで、握りしめた拳からは痛々しく血がにじんでいる。
そして苦しげに、喉から絞り出すように。
「ずっと、ずっと好きだったんだ!愛してたんだ!悲しくないわけないだろうがっ!!」
――叫んだ。
心の底から。
魂の底から。
消えかけた私の胸に、熱い火が僅かにともるのを感じた。
「……なんだよお前」
「え…?」
「お前…なんで兎美を殺して…泣いてるんだよ…!」
「ぇ…あれ…?」
言われて触れてみた私の頬には、確かに熱い涙が流れていた。
痛みも感じないのに。
恐怖も感じないのに。
とめどなく涙があふれていた。
「…ぁ…そっか…」
私はずっと忘れていたんだ。
長い永い時間の中で、忘れていたんだ。
いつの間にか殺すとか殺されるとか、止めるとか止めないとか、そんなことで一杯で。
本当は何を望んでいたのかも思い出せなくなっていたんだ。
私はただ昔みたいに。
愛しているって言われたくて。
そして今はすれ違ってしまったけど。
確かに愛されていたんだ。
「――馬鹿だなぁ。私」
空が落ちてくる。真っ黒になった世界を押し潰すように。
もうどこから空でどこから大地かも分からない。
ただ、亀夫くんだけがはっきりと見える。
私は最後に、彼にそっと微笑んだ。
どうせ忘れてしまうだろうけど、最後は綺麗な顔でいたいから。
「さようなら。亀夫くん」
辛いことがいっぱいあって。悲しいこともいっぱいあって。
でも最後に、少し幸せなこともあって。
こんな気持ちなら――。
「――死ぬのも悪くないね」
そして私は。
世界から消えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……あれ?」
大学の構内で、亀夫はふと我に返った。
どうやら立ったままぼーっとしていたらしい。なんだか頭がふらふらする。
「何してたんだっけ……あっ、もう時間が!」
時計を確認すると、もう次の講義まで数分しかない。
亀夫は鞄を担ぎ直すと、急ぎ足で教室へと向かう。
時計の針が進む。
時間通りに、講義開始のベルが鳴る。
世界は今日も、変わることなく進んでいく。
ある日、亀夫くんはたくさんの人を殺して世界はめちゃくちゃになりました。
兎美ちゃんは世界を救うために自殺しました。
死の間際に兎美ちゃんは言いました。
「死にたくないよ」
次に兎美ちゃんは言いました。
「死ぬのも悪くないね」
兎美ちゃんの命が消えた後、誰もそのことを悲しみませんでした。
なぜ?
13年12月14日 22:06
【ウミガメのスープ】 [彩蓮燈]
【ウミガメのスープ】 [彩蓮燈]
十作目です。世界を救う勇者より魔王が好きです。
解説を見る
扉を開いた私を迎えるように、渇いた銃声が部屋に響く。
放たれた鉛玉は一人の少年の眉間を貫き、頭蓋を砕き脳を破壊する。
どさりと、少年の体が倒れ込む。その身体に生命反応はもうない。
また間に合わなかった。
…いや、彼は私が来るのを待っていた。私に見せつけるために。
「こんばんは。兎美ちゃん。今日もまた間に合わなかったね」
「また…また人を殺して…何をしているか分かってるの!?亀夫くん!!」
熱い喉から絞り出し、部屋に残る彼に叫ぶ。
たった今、少年を殺した張本人…銃を手に、優しい笑みを浮かべる彼に。
「酷いなぁ。まるで僕が馬鹿みたいじゃないか。勿論わかっているさ。人助けだよ」
「違う!あなたがしているのは人殺しよ!罪のない人を殺しているだけよ!」
「困ったなぁ。兎美ちゃん。君こそ何を言ってるんだい?」
すると彼は、心底呆れたように溜息をつき、不思議そうに告げる。
「罪ならあるよ。この子はこれから15年後に7人もの命を奪う犯罪者だ。殺しておかないと危ないじゃないか?」
なんの迷いもなく、それが真理と言わんばかりに。
ぞくりと、背筋に冷たいものが走った。
生物の根源的な恐怖が、ひどく気持ちの悪い泥のように私の心に満ちていく。
私は本能的に銃を抜き、亀夫くんにつきつける。しかしその照準は定まらず、カタカタと音を立てて震えてしまう。
「もうこんなことはやめて…お願い、罪を償って…」
「あはははは!罪?なんで?償うべき罪なんて僕にはないよ。そもそも、誰が僕を裁くんだい?」
冗談でも聞いたように、楽しそうに笑う亀夫くん。
彼は躊躇うことなく銃を向ける私に歩み寄ると…その銃口を自分の胸に押し当てる。
「君が裁くのかな?いいよ。撃っても。それが意味のないことは、君が一番よく知ってるだろうし…ねえ、殺せる?」
「……ぅ、い…っ!!」
彼の言葉に猛烈な吐き気に襲われ、その場に膝をつく。
体の中を駆け巡る嫌悪感が暴走し、拒否反応となって胃液と共に逆流してくる。吐瀉物のすえた臭いと血の匂いが混ざりあい、更なる吐き気が誘発される。
「おやおや。いい歳してみっともないなぁ、兎美ちゃんは。まあ、お大事ね。僕は次のお仕事で忙しいから」
「ぁ…あなたは…!」
私に興味をなくしたように立ち去ろうとする彼の背中に投げかける。
「あなたはっ!神にでもなったつもり!?」
彼は何の迷いもなく。
「そうだよ」
答えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私こと兎美と亀夫くんは、幼いころから一緒に過ごした幼馴染だった。
親同士が親しかったこともあって、それこそ物心ついたころから一緒に遊んでいた。
小学校、中学校、高校と当然のように一緒に過ごし、その頃になるとお互いに意識し始め、同じ大学に進学したのを機に交際を始めた。
私たちの専攻は物理学。
いわゆる科学者の卵で、そんな私たちの恋愛は周りから見ると変人の語らいに見えたらしい。でも、その頃が一番幸せだった。
大学院に進学して…あれを創りだしてしまうまでは。
「次元跳躍?」
「そう。いわゆるタイムスリップというやつ」
それはいつものように、二人で研究室で『時間』をテーマに話し合っていた時のこと。
「SFなんかではよく聞くけど、時間を超えるのは科学的には不可能と立証されてるだろう?」
「確かに物理学的にはそうだけど…たとえば、そう。この世界、この星そのものを一個の生命体として仮定してみて。人間が都合の悪い記憶を書き換えるように、世界の記憶に人為的な矛盾を生じさせて、そこを意図的に介入することができれば…」
「歴史の改竄もあり得る、か…科学というより、オカルトの分野だね」
「科学とオカルトの差異なんて微々たるものでしょう?」
「違いないね…でも、歴史を変えれたら…」
「変えれたら…?」
「…いや、何でもない」
思えば、この時にもう少し彼を問い詰めていれば、こんなことにはならなかったのだろう。
しかし当時の私はそんなことに築かず、苦笑する彼と共に研究を始めた。
一見すると馬鹿げた話だろう。しかし可能性があるなら追求せずにはいられないのが科学者という生き物なのだ。
そして厄介なことに…私と彼は、それを成し遂げるだけの才能と、運があった。
研究から8年。2機のタイムマシン――時元改変機は完成した。
そして亀夫くんの裁きが始まった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
犯罪者を、犯罪を犯す前に殺す。
亀夫くんが過去で行なっているこの事実に私が気付いたのは、暫くたってからのことだった。
その経緯は語ると長くなるので省略するが、それに気付いた私はもうひとつの時元改変機を用いて過去の世界に飛んだ。
勿論、彼の凶行を止めるためだ。
時間を超えるなんてことは今の世界では想定されていない。たとえ警察に通報しても何の意味もないだろうし、逆にこの機械の存在は余計な混乱を助長するだけであることは目に見えていたから。
そして私は過去の世界に戻り。
すっかり変わり果てた亀夫くんと再会した。
「亀夫…くん…?」
「やあ兎美ちゃん。君も来てくれたんだね。よかった。人手が欲しいところだったんだ」
そう言って微笑む彼が引きずっていたのは、子供の死体だった。
まだ小学生にも上がっていないだろう幼い子供の死体。彼はそれを心底嬉しそうに放り投げた。
「ああ、これ?この子はね。今から40年後に人を殺すんだ。通り魔でね。かわいそうなことに襲われた家族は一人息子を遺してみんな殺されちゃうんだ。まあ、その一人息子って僕なんだけど。兎美ちゃんも覚えてるよね」
「ぁ…え、ぅ…」
勿論覚えていた。
ずっと幼いころから一緒にいたから覚えていた。
その時の亀夫くんの絶望的な表情も、しばらく話すことも笑うこともできなくなったことも、自暴自棄になって自殺未遂を起こしたことも。
でも、もうそれは振り切ったことだと思っていた。
勝手に、そう思っていた。
「兎美ちゃん。僕はね。あんな理不尽な悲しみをこの世からなくしたいんだ。そのためにはどうしたらいいか考えたんだよ。その答えがこれだよ!悪いことをする奴は、先に全部殺してやればいいんだ。そうしたら世界はずっと平和でいられるんだ!」
「違う…違うよ、亀夫くん…それは、それは違う…」
「違わないよ。だって、こんな力を…時間を超える力を手に入れたんだよ?これは神様が僕に与えた使命なんだよ」
亀夫くんが、笑っています。
私の知らない笑顔で、嗤っています。
「ああ、でもそういう意味なら、兎美ちゃんは天使みたいなものだよね」
「ぇ…どう、いう…」
「だって、この力は兎美ちゃんが僕に言ってくれなければ完成しなかったんだもの。ああ、じゃあこいつを殺せたのも兎美ちゃんのおかげだね!ありがとう、兎美ちゃん」
そんな。
そんなことを。
彼は。
殺せたのは。
私の。
私のせいで。
「あ…ああぁああああああああああああああ!!!」
頭の中が真っ白になりました。
気付いた時には私は、亀夫くんの体を何度も何度もナイフで刺し貫いていました。
彼の顔は命が抜け落ちてなお笑顔のままで…それがうすら寒く、私は感じました。
でもそれ以上に。
「ぇ…ぁ…わ、私…殺し…亀夫くんを…」
カランと、手からナイフが零れ落ちます。
真っ赤に染まった自分の手が映り、否が応でもそれが現実だと感じさせられます。
視界が、頭の中まで真っ赤に変わります。
でも、そんな私を嘲笑うように声が響きます。
「あーあ。そんなにめちゃくちゃにしちゃって。可哀そうな僕」
亀夫くんが、亀夫くんの死体に跨る私を見降ろしていました。
「ぁ…え。え?な…なん、で…?」
「驚くようなことじゃないよ。だってその僕は僕と同じで、この世界線の人間じゃない…オリジナルさえ無事なら、他の未来から来れるに決まってるじゃない」
そう言って、歌うように手を広げて。
「もっとも、君がまだ過去に飛ぶ前のオリジナルの僕を殺せば話は別だけどね?その場合は僕が殺した皆もなかったことになっちゃうのかな?あはは!でも兎美ちゃんはそんなこと出来ないもんね。僕の好きな兎美ちゃんは!」
子供のような笑顔で、嗤う。
ガチガチと歯が鳴る音が煩い。私の歯だ。でも止まらない。止められない。
肉を刺した感触が残っている。内臓の潰れる感覚が伝わっている。熱い血の匂いが染みついている。
腕が上がらない。殺そうにも体が言うことを効かない。
「なんで…なんで…こんなことに…」
「なんで?君のおかげなのに、変なこと言うんだね。まあいいや。僕はまた殺しに行かなきゃいけないから…じゃあ。またね。兎美ちゃん」
そして。
彼を止めるための、時を超えた追跡が始まった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…………」
3678。
私が今まで越えた時間の回数。
そして今まで私が救えなかった命の数。
これだけの数を繰り返して、これだけの数を犠牲にして、私は彼を止められないでいた。
彼はあらゆる面で私より上手だった。
私の行動を読み、時には誘導し、時には罠にはめ、必要なら自分の命も平気で捨ててくる。
それは自爆テロと変わらない自己を省みない殺戮の塊。
私にはもう、彼を止める手段が分からないでいた。
彼を殺しても、また別の時間軸の彼が殺戮を繰り返す。
彼を殺すには、その時間軸に生きるオリジナルの彼を殺さないといけない。
私には彼を殺せない。
完全に積んでいました。
もう私自信が心を壊してオリジナルの彼を殺すくらいしか手が浮かびませんが、それだと私がちゃんと殺してくれる保証がありません。
こんな時でも推測で動けない理系の自分が嫌になります。
しかし、私の精神力ももう限界に達していました。
なんとしても彼が時を超える前に殺さないといけない。
時を超える前に……
「…時を…超える…?」
その時。
私の脳裏にひとつの仮説がひらめきました。
それは酷く曖昧で、同時に危険を孕んだものでしたが。
「…そうだ。今の私にできることは…これしかない」
私は屍のような体を引きずり、最後の時間跳躍を行ないます。
目指す先は……
大学生の、私がいる街。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ナイフをずぶりと女の胸元に抉りこむ。
指先に、肉を裂く感触が伝わってきます。
心臓の鼓動に合わせて盛大に傷口から血が吹き出す。
目の前には何が起きたのか理解できない、茫然とした女――大学生の私の姿。
「ぇ…あ、え…なに…これ…」
「ごめんね」
私の口から、ごぼりと血の塊が零れる。
足から力が抜け、地面に倒れ込むと血だまりが辺り一面に広がっていく。
どうみても助からない致命傷。
止めとばかりに私はナイフを抜くと、噴水みたいな赤が周囲を満たす。
その頃になってようやく周囲の人たちはこれが現実だと気付いたのか、一斉に叫び声があがった。
「ぁ…なん…で……ゃ…いたい…よぉ……」
「…ごめんね」
もう一度、意味のない謝罪を告げる。
私はきっと、いま文字通りに死ぬほどの苦しみを味わっているんだろう。
心臓が裂け、肺に穴があき、血が流れ込んで呼吸もままならない。
ずきりと、胸が痛む。でもこれは過去の自分の古傷なんかじゃない。その証拠に私の胸にはなんの傷も浮かんでいない。
逆にいえば、それはこの子がここで絶対に助からないということ。
「――兎美ちゃん!?」
その時、人込みをかき分けてくる人影が見えた。
その姿に私は思わず目を見開く。
それは私が時を超えながらずっと探していた、かつての亀夫くんだった。
ああ、そうか。この頃の私たちは…ちょうど付き合い始めた頃だったんだ。
「兎美ちゃん!しっかり…酷い怪我だ…すぐに救急車を呼ぶから!」
「ゃ…亀夫、くん…私…しぬ、の…?」
「喋らないで!大丈夫だから…きっと助かるから…!」
「…ゃだ、よぉ…まだ…やりたいこと、いっぱいあるの…に…」
「兎美ちゃん…!お願いだから喋らないで…!」
「死にたく……ない……ょ……」
「兎美――――」
私の手が、亀夫くんの手から滑り落ちる。
それは私の命の終わりを意味していて、同時に私の終わりの始まりだった。
――ぐにゃりと、ノイズが走ったように世界がひび割れるのを感じた。
それはまるで絵画が崩れるように、ガラガラとひび割れを増していき、そこから黒い靄のような何かが溢れだしてきた。
それは空をあっという間に覆い尽くすと、黒い雨のように大地に降り注ぎ、世界を溶かし始める。
周りの人たちを眺める。彼らは死体となった私に驚愕するばかりで、世界の変容には見向きもしない…やはりこれは世界が壊れているのではなく、私が壊れているのだろう。
タイムパラドクス――SFでお馴染みの、時間を超えることで発生する矛盾。
これはそれを犯した私に対する世界の処置。
かつて私のたてた仮説では、世界はひとつの意思をもつ巨大な生命体であり、歴史とはすなわちその世界の記憶している思い出だった。
では人間なら、自分の記憶の中で都合の悪い矛盾が発生したらどうするか。
答えは簡単。自分の都合のよいように書き換える。
しかし、今やこの世界において、私の存在は決して書き変えられない究極の矛盾となり、世界自体を脅かし始めた。
私が死んでは、タイムマシンは完成しない。
タイムマシンが完成しなければ、私が過去に戻り私を殺すこともない。
その場合は私は生存し、タイムマシンが完成する。
完成したタイムマシンを使って、私が私を殺しに来る。
どう頑張っても解消出来ないジレンマ。
そんなとき、次に人は記憶をどうするか。
そう。忘れるのだ。
全部全部なかったことにして、真っ黒に塗りつぶして、黒歴史にして、蓋をする。
それが記憶の防衛機能。
いままさに、世界のそれが私に作用している。
私に関するあらゆる記録を世界から抹消するために。
黒い靄が私にまとわりつく。
ねっとりとした感触。同時に、私の中から何かが失われる感覚。
ああ、これが死すらも超えた『消滅』の感覚なんだ。
恐怖よりも先に感じたのは安堵だった。
これでやっと終われる…亀夫くんも、これで罪を犯さなくて済む。
そしてゆっくりと瞳を閉じて――。
頬に熱い衝撃を受けて、ひっくり返った。
「お前が…お前が兎美を殺したのか…!」
衝撃の正体は亀夫くんの拳だった。
あろうことか普段から大人しい彼は、私に馬乗りになって胸倉をつかみ上げていた。
「――そうよ」
どうして彼の言葉に答えたのか。
もしかしたらずっとまともに話せなかったかれと、もう一度だけでも言葉を交わしたかったのかもしれない。
彼は私に気付いていないようだった。
無理もない。いまの私は彼にとっては10年以上後の存在。判別をつけるのは難しいだろう。
彼の拳が再度私の頬を打った。
痛覚はもう消されてしまったのか、あまり痛みは感じなかった。
「なんで…なんでだよ!兎美が何をしたっていうんだ!」
「……これからするのよ。彼女はこれから、世界を危機に陥れる」
口から出たのは、いつも亀夫くんが言っていた台詞。
犯罪者を事前に殺す、彼の正義の常套句。
今になって私が口にするなんて、皮肉以外の何でもない。
「ふざけんな!そんな…そんなくだらない妄想で兎美を…兎美を…!」
「あなたは…その子が死んで悲しいの?」
「当り前だろうが!!」
拳が頬を捉える。痛みはない。
亀夫くんの顔は涙でぼろぼろになっていた。叫び声は嗚咽交じりで、握りしめた拳からは痛々しく血がにじんでいる。
そして苦しげに、喉から絞り出すように。
「ずっと、ずっと好きだったんだ!愛してたんだ!悲しくないわけないだろうがっ!!」
――叫んだ。
心の底から。
魂の底から。
消えかけた私の胸に、熱い火が僅かにともるのを感じた。
「……なんだよお前」
「え…?」
「お前…なんで兎美を殺して…泣いてるんだよ…!」
「ぇ…あれ…?」
言われて触れてみた私の頬には、確かに熱い涙が流れていた。
痛みも感じないのに。
恐怖も感じないのに。
とめどなく涙があふれていた。
「…ぁ…そっか…」
私はずっと忘れていたんだ。
長い永い時間の中で、忘れていたんだ。
いつの間にか殺すとか殺されるとか、止めるとか止めないとか、そんなことで一杯で。
本当は何を望んでいたのかも思い出せなくなっていたんだ。
私はただ昔みたいに。
愛しているって言われたくて。
そして今はすれ違ってしまったけど。
確かに愛されていたんだ。
「――馬鹿だなぁ。私」
空が落ちてくる。真っ黒になった世界を押し潰すように。
もうどこから空でどこから大地かも分からない。
ただ、亀夫くんだけがはっきりと見える。
私は最後に、彼にそっと微笑んだ。
どうせ忘れてしまうだろうけど、最後は綺麗な顔でいたいから。
「さようなら。亀夫くん」
辛いことがいっぱいあって。悲しいこともいっぱいあって。
でも最後に、少し幸せなこともあって。
こんな気持ちなら――。
「――死ぬのも悪くないね」
そして私は。
世界から消えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……あれ?」
大学の構内で、亀夫はふと我に返った。
どうやら立ったままぼーっとしていたらしい。なんだか頭がふらふらする。
「何してたんだっけ……あっ、もう時間が!」
時計を確認すると、もう次の講義まで数分しかない。
亀夫は鞄を担ぎ直すと、急ぎ足で教室へと向かう。
時計の針が進む。
時間通りに、講義開始のベルが鳴る。
世界は今日も、変わることなく進んでいく。
「猫語」「6ブックマーク」
彼女の肌にペン先が触れた瞬間
#big5#「はんにゃはんにゅ!」#/big5#
と奇声を発すると彼女は笑いながら猫語を使い始めた
その様子を見て僕はうれしくなった
「彼女が突然猫語を使い始めた」理由と「僕が喜ぶ」理由
を推理してください
#big5#「はんにゃはんにゅ!」#/big5#
と奇声を発すると彼女は笑いながら猫語を使い始めた
その様子を見て僕はうれしくなった
「彼女が突然猫語を使い始めた」理由と「僕が喜ぶ」理由
を推理してください
13年09月05日 20:48
【ウミガメのスープ】 [真央]
【ウミガメのスープ】 [真央]
スープだにゃん
解説を見る
#red#(注意)精神的につらいものがあります#/red#
それはいつもと変わらないクラスの風景
クスクスと誰かが笑いながら彼女の話をしている
彼女は僕たちのクラスメイトであって友人ではない存在だ
いつも一人でいる彼女には友人がいない
そんな彼女をからかうのが女子達の遊び
言ってしまえばそれは #red#いじめ#/red#だ
後ろの席の女子が彼女の背中にペンを当てる
だが正確にはそれはボールペンでもシャープペンシルでもない
護身用のペン型スタンガンだ
ペン先をよく見ればわかる、一本のペンから二本ペン先が出てる
バチバチっとどこかで音がなったと思ったら
#big5#「はんにゃはんにゅ!」#/big5#
と彼女が奇声を発した
「なんだなんだ」「どうしたどうした」とクラス中が騒いでいる
「ひ、ひぇ。らいじょうぶにゃふ」(い、いえ。大丈夫です)
スタンガンを受けて呂律の回らない彼女を女子達が口々に笑う
「あなたまるで猫みたいね」「ホント、にゃんにゃん鳴いてみてよ」
彼女は空笑いを浮かべると落書きだらけの教科書を読みふけ
心に限界が来ると決まって保健室へ移動する
その様子を見て僕はとてもうれしくなる
彼女がいじめられているのが許せない反面
彼女がいじめられ続ければ保険委員である僕が一番彼女に近い存在なのだから
それはいつもと変わらないクラスの風景
クスクスと誰かが笑いながら彼女の話をしている
彼女は僕たちのクラスメイトであって友人ではない存在だ
いつも一人でいる彼女には友人がいない
そんな彼女をからかうのが女子達の遊び
言ってしまえばそれは #red#いじめ#/red#だ
後ろの席の女子が彼女の背中にペンを当てる
だが正確にはそれはボールペンでもシャープペンシルでもない
護身用のペン型スタンガンだ
ペン先をよく見ればわかる、一本のペンから二本ペン先が出てる
バチバチっとどこかで音がなったと思ったら
#big5#「はんにゃはんにゅ!」#/big5#
と彼女が奇声を発した
「なんだなんだ」「どうしたどうした」とクラス中が騒いでいる
「ひ、ひぇ。らいじょうぶにゃふ」(い、いえ。大丈夫です)
スタンガンを受けて呂律の回らない彼女を女子達が口々に笑う
「あなたまるで猫みたいね」「ホント、にゃんにゃん鳴いてみてよ」
彼女は空笑いを浮かべると落書きだらけの教科書を読みふけ
心に限界が来ると決まって保健室へ移動する
その様子を見て僕はとてもうれしくなる
彼女がいじめられているのが許せない反面
彼女がいじめられ続ければ保険委員である僕が一番彼女に近い存在なのだから
「1200秒の誘拐」「6ブックマーク」
公園で遊んでいたカメオは誘拐された。
しかし20分後には何事もなく解放された。
身代金を払ったわけでもカメオが自分で抜け出したわけでもないなら
一体なぜだろう?
しかし20分後には何事もなく解放された。
身代金を払ったわけでもカメオが自分で抜け出したわけでもないなら
一体なぜだろう?
17年10月14日 19:51
【ウミガメのスープ】 [天童 魔子]
【ウミガメのスープ】 [天童 魔子]
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最近、幼子から目を離してお喋りやスマホに夢中になる母親が増えている。
公園を管理するものとしては嘆かわしい限りだ。
目を離した隙に車道に飛び出したり事故に巻き込まれたらどうするつもりなのか?
だからちょっと子供を攫って
気付いた親がようやく心配してあたりを探し周り
警察に連絡しようか否か悩んだタイミングを見計らって子供を解放してやるのさ。
そうすれば今後、ちゃんと子供を見るようになるだろう?
公園を管理するものとしては嘆かわしい限りだ。
目を離した隙に車道に飛び出したり事故に巻き込まれたらどうするつもりなのか?
だからちょっと子供を攫って
気付いた親がようやく心配してあたりを探し周り
警察に連絡しようか否か悩んだタイミングを見計らって子供を解放してやるのさ。
そうすれば今後、ちゃんと子供を見るようになるだろう?