「喰う席」「10ブックマーク」
真面目な女は、いつものバスに乗った。
車内はそこそこ混んでいた。
女はひとつだけあいていた席にきちんと座った。
車内がさらに混んできた頃、女の自宅近くの停留所にバスが停まった。
女はバスを降りた。
また席があいた。
しばらくして、臆病な男がバスに乗ってきた。
車内はかなり混んでいて、立っている乗客が何人もいた。
男は、席があいているのを不思議に思いつつ、腰かけた。
いくつかの停留所を過ぎ、バスはすいてきた。
立っている乗客はいなくなり、あいている席が増えていった。
終点で、男を含む全員がバスを降り、すべての席があいた。
のちに男は、乗客の誰かが「死者」だったかもしれないと思って恐怖した。
席があいていた「本当の理由」を知ってしまったから……
一体どういうことだろう?
車内はそこそこ混んでいた。
女はひとつだけあいていた席にきちんと座った。
車内がさらに混んできた頃、女の自宅近くの停留所にバスが停まった。
女はバスを降りた。
また席があいた。
しばらくして、臆病な男がバスに乗ってきた。
車内はかなり混んでいて、立っている乗客が何人もいた。
男は、席があいているのを不思議に思いつつ、腰かけた。
いくつかの停留所を過ぎ、バスはすいてきた。
立っている乗客はいなくなり、あいている席が増えていった。
終点で、男を含む全員がバスを降り、すべての席があいた。
のちに男は、乗客の誰かが「死者」だったかもしれないと思って恐怖した。
席があいていた「本当の理由」を知ってしまったから……
一体どういうことだろう?
17年04月27日 21:23
【ウミガメのスープ】 [えぜりん]
【ウミガメのスープ】 [えぜりん]
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バスの運転手だった女が、仕事中に職務放棄した。
同僚の男は女の行動を不思議に思いながら、女の代わりにバスを運行させた
後日、女が脳腫瘍で認知障害を起こしていたという事実を知り、もし運悪く事故が起きていたら、乗客に死亡者がいたかもしれないと思い恐怖した。
以下、くだくだしい解説。
女は路線バスの運転手だった。
真面目で体が丈夫だったので、25年間無遅刻無欠勤であった。
ある日のこと、女は駅前で前の運転手と交替し、終点の営業所までバスを運行する予定だった。
しかし、自宅近くの停留所にバスを止めた途端、なぜか女はバスを降りて帰宅してしまったのだ。
何の説明もなく運転手がバスを降りてしまったのだから、驚いたのは乗客たちである。
最初のうちは、運転手が職務上の事情でほんの少し席を外しただけで、1、2分もすれば戻って来るだろうと思っていたのだ。
ところが5分経っても10分経っても戻ってこない。
乗客の1人がバス会社の営業所に電話をかけた。
急遽、女の同僚の男が停車中のバスに駆け付け、空っぽの運転席に座った。
男は、普段真面目な女の、突然の奇行を不思議に思いつつも、代わりにバスを運転し、終点まで運行させた。
翌日、事の次第を知った家族が女を病院につれていったところ、女の脳内に腫瘍が見つかった。
女がバスを降りたのは単なるサボりではなく、運転中に認知障害を起こし、仕事中であることを忘れてしまったためだと推察された。
女の診断結果はバス会社に連絡され、運転手の健康診断の項目を見直す結果になった。
そして……男は心底恐ろしいと思ったのである。
もしも運悪く、女が運転を誤って大事故を起こしていれば、女や、あの時見かけた乗客の誰かが死んでいたかもしれないのだから。
人命を預かる仕事。
その重さを胸に、今日も男はハンドルを握っている。
同僚の男は女の行動を不思議に思いながら、女の代わりにバスを運行させた
後日、女が脳腫瘍で認知障害を起こしていたという事実を知り、もし運悪く事故が起きていたら、乗客に死亡者がいたかもしれないと思い恐怖した。
以下、くだくだしい解説。
女は路線バスの運転手だった。
真面目で体が丈夫だったので、25年間無遅刻無欠勤であった。
ある日のこと、女は駅前で前の運転手と交替し、終点の営業所までバスを運行する予定だった。
しかし、自宅近くの停留所にバスを止めた途端、なぜか女はバスを降りて帰宅してしまったのだ。
何の説明もなく運転手がバスを降りてしまったのだから、驚いたのは乗客たちである。
最初のうちは、運転手が職務上の事情でほんの少し席を外しただけで、1、2分もすれば戻って来るだろうと思っていたのだ。
ところが5分経っても10分経っても戻ってこない。
乗客の1人がバス会社の営業所に電話をかけた。
急遽、女の同僚の男が停車中のバスに駆け付け、空っぽの運転席に座った。
男は、普段真面目な女の、突然の奇行を不思議に思いつつも、代わりにバスを運転し、終点まで運行させた。
翌日、事の次第を知った家族が女を病院につれていったところ、女の脳内に腫瘍が見つかった。
女がバスを降りたのは単なるサボりではなく、運転中に認知障害を起こし、仕事中であることを忘れてしまったためだと推察された。
女の診断結果はバス会社に連絡され、運転手の健康診断の項目を見直す結果になった。
そして……男は心底恐ろしいと思ったのである。
もしも運悪く、女が運転を誤って大事故を起こしていれば、女や、あの時見かけた乗客の誰かが死んでいたかもしれないのだから。
人命を預かる仕事。
その重さを胸に、今日も男はハンドルを握っている。
「指エット」「10ブックマーク」
人差し指にお気に入りの指輪をつけているさしゃこ。
彼氏と付き合い始めた時、指輪は小指につけていたのだが、
彼氏からネックレスをプレゼントされた日から指輪を中指につけるようになった。
いったい何故?
彼氏と付き合い始めた時、指輪は小指につけていたのだが、
彼氏からネックレスをプレゼントされた日から指輪を中指につけるようになった。
いったい何故?
17年04月23日 23:44
【ウミガメのスープ】 [水上]
【ウミガメのスープ】 [水上]
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さしゃこが◯0歳の誕生日に自分へのご褒美として購入したトパーズの指輪。
右手人差し指に丁度のサイズで、寝る時も風呂入る時も常につけっぱのお気に入り。
そんなさしゃこに彼氏ができた。そんなさしゃこに。
付き合いはじめの最初のデートでさしゃこから彼氏の手を握った。
まだ恋人繋ぎには抵抗があるので彼氏の人差し指から小指までをまとめて握る。
そうすると、さしゃこの人差し指に付けている指輪が彼氏の#red#小指にくっつく。#/red#
しばらくはその手の繋ぎ方だったのだが、5回目のデートの時、
彼氏からネックレスをプレゼントされて嬉しくなったさしゃこは、いつもの手の繋ぎ方から恋人繋ぎに握り直した。
そうすると、さしゃこの人差し指の指輪は彼氏の人差し指と#red#中指にくっつくようになる。#/red#
うん、ただそれだけのこと。
リア充のさしゃこってあんまり面白くないね。
右手人差し指に丁度のサイズで、寝る時も風呂入る時も常につけっぱのお気に入り。
そんなさしゃこに彼氏ができた。そんなさしゃこに。
付き合いはじめの最初のデートでさしゃこから彼氏の手を握った。
まだ恋人繋ぎには抵抗があるので彼氏の人差し指から小指までをまとめて握る。
そうすると、さしゃこの人差し指に付けている指輪が彼氏の#red#小指にくっつく。#/red#
しばらくはその手の繋ぎ方だったのだが、5回目のデートの時、
彼氏からネックレスをプレゼントされて嬉しくなったさしゃこは、いつもの手の繋ぎ方から恋人繋ぎに握り直した。
そうすると、さしゃこの人差し指の指輪は彼氏の人差し指と#red#中指にくっつくようになる。#/red#
うん、ただそれだけのこと。
リア充のさしゃこってあんまり面白くないね。
「【扉30】人気ラーメン店の苦悩」「10ブックマーク」
ラテシンラーメンは人気のラーメン店。平日も土日も、昼間は特に客でいっぱいだ。
人気の理由は、毎日長時間かけて仕込むこだわりのとんこつスープ。長年の業が冴えわたる、美味しいスープが客を虜にしている。
さて、既に25年ほど続くこのラーメン屋だが、ここの主人であるカメオは、ここ数ヶ月で、数秒にも満たないある作業が増えたことで、そろそろ店をたたもうかと迷っているところである。
さて、「ある作業」とは一体何だろう?
人気の理由は、毎日長時間かけて仕込むこだわりのとんこつスープ。長年の業が冴えわたる、美味しいスープが客を虜にしている。
さて、既に25年ほど続くこのラーメン屋だが、ここの主人であるカメオは、ここ数ヶ月で、数秒にも満たないある作業が増えたことで、そろそろ店をたたもうかと迷っているところである。
さて、「ある作業」とは一体何だろう?
17年03月03日 23:56
【20の扉】 [フィーカス]
【20の扉】 [フィーカス]
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#big5#答え:調味料の補充#/big5#
長年客の好みに合わせて研究に研究を重ね、万人の口に合うように味付けを研究してきたカメオ。今日も満員御礼である。
もちろん客の好みもあるので、塩コショウや醤油などといった調味料をカウンターに置いてある。そんなに減るものではないため、時々補充する程度で済んでいた。
しかし、ここ数ヶ月の間で、調味料の減りが早くなっているため、補充する回数が増えた。ということは、カメオの味付けではだんだん客の好みに合わなくなってきているということだ。
「もうお客さんの舌を満足させることができなくなってきているな。そろそろ潮時か……」
とはいえ、まだまだ客足が遠のく気配は感じられない。
客の入りが減り始めた、その時は……
いつも来てくれている常連に愛想笑いをしながら、カメオは今日もラーメンを作り続ける。
※満タンに入っているものと入れ替えるだけなら1秒かからず、少ない調味料入れに調味料を追加するなら数秒、中身を出して容器を洗い、補充すれば数分はかかります。
長年客の好みに合わせて研究に研究を重ね、万人の口に合うように味付けを研究してきたカメオ。今日も満員御礼である。
もちろん客の好みもあるので、塩コショウや醤油などといった調味料をカウンターに置いてある。そんなに減るものではないため、時々補充する程度で済んでいた。
しかし、ここ数ヶ月の間で、調味料の減りが早くなっているため、補充する回数が増えた。ということは、カメオの味付けではだんだん客の好みに合わなくなってきているということだ。
「もうお客さんの舌を満足させることができなくなってきているな。そろそろ潮時か……」
とはいえ、まだまだ客足が遠のく気配は感じられない。
客の入りが減り始めた、その時は……
いつも来てくれている常連に愛想笑いをしながら、カメオは今日もラーメンを作り続ける。
※満タンに入っているものと入れ替えるだけなら1秒かからず、少ない調味料入れに調味料を追加するなら数秒、中身を出して容器を洗い、補充すれば数分はかかります。
「【ラテクエ1】Blue,SkyBlue」「10ブックマーク」
「せっかくですが、お断りします」
相手は、がっかりしたが、その後、喜んだ。
状況を説明せよ。
相手は、がっかりしたが、その後、喜んだ。
状況を説明せよ。
10年11月28日 20:59
【ウミガメのスープ】 [きのこ]
【ウミガメのスープ】 [きのこ]
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「かーくん!かぁくん、もうそのセーター脱ごうよ~!」
今日も私はそう言いながら、息子の翔(かける)を部屋中追い掛け回す。
「このセーターが一番好きなんだもーん!ママが編んでくれたやつだから!」
「でももう毛玉だらけじゃないか。肘に穴も開いちゃってるし。ほらこっち来て見てごらん、
パパが今日デパートで新しいセーターを買って来…」
「せっかくですが、お こ と わ り し ま ー す!!あははは!!」
ケラケラと笑いながら、生意気な口調で返してくる。一体どこで覚えてくるのだろう?
息子お気に入りの、毛玉がたくさんついたくすんだ水色の手編みのセーター。
4年前に編み上がった時には、きれいな空色をしていた。
******
空がとても高く感じる秋晴れの日だった。
「見て見て!仲良しの看護師さんに頼んで買ってきてもらっちゃった♪」
得意げな顔をして、妻はベッドの掛け布団の上に、空色の毛糸が5つ入ったパックを置いた。
「病院てすることなくて暇なのよねー。寝てるのももう飽きたしさ。
だったらいっちょ、かわいい息子のために何か作ってやろーと思ってね!
ね、ほら、翔の名前にぴったりの色じゃない?いいアイディアでしょ!」
妻は器用ではなかったが、教則本と格闘しながらどうにかこうにか3ヶ月かかって
1着のセーターを完成させた。……出来たものは、どう見ても2歳の息子には大きすぎるシロモノだったが。
「…うちこんなにでかい子供いたっけ?」
「い、いーじゃん!でかくなるじゃん!これから!」
少し恥ずかしそうに頬を膨らませた後、妻は翔に向き直った。
「かーくん、早く大きくなって、ママに着てるとこ見せてよね!」
「せーたー!ままの、せーたー、かーくんきるよー!」
「ほらねー!翔は気に入ったって!」
すっかり細くなった腕で、それでも力強く翔を抱き上げケラケラと笑う。
その笑い声があまりに朗らかで、つられて私も翔も笑った。
そしてセーターの完成から1ヶ月。
3月の初め、雪の降る静かな朝に、妻は逝った。
******
私はため息をついて、新しいセーターの首の部分についたブランドタグをいじりながら
肩を落とす。
とうぶん、袖が通される日は来ないのだろうな。
少し値の張るレーベル品、私にしては奮発したつもりだったのだが。
とはいえ子供の成長は早いから、来年の冬にはきっともうあのセーターも着収めなのだろう。
何せ翔はわんぱく盛り、外へ出かけるたびにどこかにひっかけてあっちがほつれ、こっちがほつれ、
本来ならとっくに衣服としてはお役御免になっているレベルだ。
いつまでもぼろぼろの服を身につけさせていては、ご近所からの信用にも関わる。
「ぼく、このセーターが一番好き!だ~~いすき!!」
…けれど、本音を言うならば。
母親が遺したものを大好きだと愛おしむ、キミの気持ちが嬉しいよ。
きっとこの先、背が伸びて、肩幅が広くなって、色々なものと出会って、母親との思い出も薄れてゆくのだろう。
でもその優しい気持ちはどうか、
いつまでも色褪せない空色のままで。
今日も私はそう言いながら、息子の翔(かける)を部屋中追い掛け回す。
「このセーターが一番好きなんだもーん!ママが編んでくれたやつだから!」
「でももう毛玉だらけじゃないか。肘に穴も開いちゃってるし。ほらこっち来て見てごらん、
パパが今日デパートで新しいセーターを買って来…」
「せっかくですが、お こ と わ り し ま ー す!!あははは!!」
ケラケラと笑いながら、生意気な口調で返してくる。一体どこで覚えてくるのだろう?
息子お気に入りの、毛玉がたくさんついたくすんだ水色の手編みのセーター。
4年前に編み上がった時には、きれいな空色をしていた。
******
空がとても高く感じる秋晴れの日だった。
「見て見て!仲良しの看護師さんに頼んで買ってきてもらっちゃった♪」
得意げな顔をして、妻はベッドの掛け布団の上に、空色の毛糸が5つ入ったパックを置いた。
「病院てすることなくて暇なのよねー。寝てるのももう飽きたしさ。
だったらいっちょ、かわいい息子のために何か作ってやろーと思ってね!
ね、ほら、翔の名前にぴったりの色じゃない?いいアイディアでしょ!」
妻は器用ではなかったが、教則本と格闘しながらどうにかこうにか3ヶ月かかって
1着のセーターを完成させた。……出来たものは、どう見ても2歳の息子には大きすぎるシロモノだったが。
「…うちこんなにでかい子供いたっけ?」
「い、いーじゃん!でかくなるじゃん!これから!」
少し恥ずかしそうに頬を膨らませた後、妻は翔に向き直った。
「かーくん、早く大きくなって、ママに着てるとこ見せてよね!」
「せーたー!ままの、せーたー、かーくんきるよー!」
「ほらねー!翔は気に入ったって!」
すっかり細くなった腕で、それでも力強く翔を抱き上げケラケラと笑う。
その笑い声があまりに朗らかで、つられて私も翔も笑った。
そしてセーターの完成から1ヶ月。
3月の初め、雪の降る静かな朝に、妻は逝った。
******
私はため息をついて、新しいセーターの首の部分についたブランドタグをいじりながら
肩を落とす。
とうぶん、袖が通される日は来ないのだろうな。
少し値の張るレーベル品、私にしては奮発したつもりだったのだが。
とはいえ子供の成長は早いから、来年の冬にはきっともうあのセーターも着収めなのだろう。
何せ翔はわんぱく盛り、外へ出かけるたびにどこかにひっかけてあっちがほつれ、こっちがほつれ、
本来ならとっくに衣服としてはお役御免になっているレベルだ。
いつまでもぼろぼろの服を身につけさせていては、ご近所からの信用にも関わる。
「ぼく、このセーターが一番好き!だ~~いすき!!」
…けれど、本音を言うならば。
母親が遺したものを大好きだと愛おしむ、キミの気持ちが嬉しいよ。
きっとこの先、背が伸びて、肩幅が広くなって、色々なものと出会って、母親との思い出も薄れてゆくのだろう。
でもその優しい気持ちはどうか、
いつまでも色褪せない空色のままで。
「ロングトーカー」「10ブックマーク」
ある女のせいで、私は長電話をしてしまう。
なぜだろう。
なぜだろう。
16年08月06日 13:32
【ウミガメのスープ】 [クアッド]
【ウミガメのスープ】 [クアッド]
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「はい、名前はカメコです。はい。
動物の亀に、火へんの煌めきという字に、子供の子です。はい、はい。
ええっと、火が左側に、あとは皇帝の皇の字が右側の漢字です。」
私は亀煌子。母親が名前に煌めきを入れてしまった、文字通りのキラキラネームです。
おかげさまで、電話で自分の名前を説明するとき、ずいぶん長くなってしまいます。
成人したら、絶対名前変えてやるー!
動物の亀に、火へんの煌めきという字に、子供の子です。はい、はい。
ええっと、火が左側に、あとは皇帝の皇の字が右側の漢字です。」
私は亀煌子。母親が名前に煌めきを入れてしまった、文字通りのキラキラネームです。
おかげさまで、電話で自分の名前を説明するとき、ずいぶん長くなってしまいます。
成人したら、絶対名前変えてやるー!