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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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【扉30】人気ラーメン店の苦悩「10ブックマーク」
ラテシンラーメンは人気のラーメン店。平日も土日も、昼間は特に客でいっぱいだ。
人気の理由は、毎日長時間かけて仕込むこだわりのとんこつスープ。長年の業が冴えわたる、美味しいスープが客を虜にしている。

さて、既に25年ほど続くこのラーメン屋だが、ここの主人であるカメオは、ここ数ヶ月で、数秒にも満たないある作業が増えたことで、そろそろ店をたたもうかと迷っているところである。

さて、「ある作業」とは一体何だろう?
17年03月03日 23:56
【20の扉】 [フィーカス]



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#big5#答え:調味料の補充#/big5#

長年客の好みに合わせて研究に研究を重ね、万人の口に合うように味付けを研究してきたカメオ。今日も満員御礼である。
もちろん客の好みもあるので、塩コショウや醤油などといった調味料をカウンターに置いてある。そんなに減るものではないため、時々補充する程度で済んでいた。
しかし、ここ数ヶ月の間で、調味料の減りが早くなっているため、補充する回数が増えた。ということは、カメオの味付けではだんだん客の好みに合わなくなってきているということだ。

「もうお客さんの舌を満足させることができなくなってきているな。そろそろ潮時か……」

とはいえ、まだまだ客足が遠のく気配は感じられない。
客の入りが減り始めた、その時は……

いつも来てくれている常連に愛想笑いをしながら、カメオは今日もラーメンを作り続ける。

※満タンに入っているものと入れ替えるだけなら1秒かからず、少ない調味料入れに調味料を追加するなら数秒、中身を出して容器を洗い、補充すれば数分はかかります。
「せっかくですが、お断りします」
相手は、がっかりしたが、その後、喜んだ。

状況を説明せよ。
10年11月28日 20:59
【ウミガメのスープ】 [きのこ]



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「かーくん!かぁくん、もうそのセーター脱ごうよ~!」

今日も私はそう言いながら、息子の翔(かける)を部屋中追い掛け回す。

「このセーターが一番好きなんだもーん!ママが編んでくれたやつだから!」
「でももう毛玉だらけじゃないか。肘に穴も開いちゃってるし。ほらこっち来て見てごらん、
 パパが今日デパートで新しいセーターを買って来…」
「せっかくですが、お こ と わ り し ま ー す!!あははは!!」
ケラケラと笑いながら、生意気な口調で返してくる。一体どこで覚えてくるのだろう?

息子お気に入りの、毛玉がたくさんついたくすんだ水色の手編みのセーター。
4年前に編み上がった時には、きれいな空色をしていた。

******

空がとても高く感じる秋晴れの日だった。

「見て見て!仲良しの看護師さんに頼んで買ってきてもらっちゃった♪」
得意げな顔をして、妻はベッドの掛け布団の上に、空色の毛糸が5つ入ったパックを置いた。
「病院てすることなくて暇なのよねー。寝てるのももう飽きたしさ。
 だったらいっちょ、かわいい息子のために何か作ってやろーと思ってね!
 ね、ほら、翔の名前にぴったりの色じゃない?いいアイディアでしょ!」

妻は器用ではなかったが、教則本と格闘しながらどうにかこうにか3ヶ月かかって
1着のセーターを完成させた。……出来たものは、どう見ても2歳の息子には大きすぎるシロモノだったが。
「…うちこんなにでかい子供いたっけ?」
「い、いーじゃん!でかくなるじゃん!これから!」

少し恥ずかしそうに頬を膨らませた後、妻は翔に向き直った。

「かーくん、早く大きくなって、ママに着てるとこ見せてよね!」
「せーたー!ままの、せーたー、かーくんきるよー!」
「ほらねー!翔は気に入ったって!」

すっかり細くなった腕で、それでも力強く翔を抱き上げケラケラと笑う。
その笑い声があまりに朗らかで、つられて私も翔も笑った。

そしてセーターの完成から1ヶ月。
3月の初め、雪の降る静かな朝に、妻は逝った。

******

私はため息をついて、新しいセーターの首の部分についたブランドタグをいじりながら
肩を落とす。
とうぶん、袖が通される日は来ないのだろうな。
少し値の張るレーベル品、私にしては奮発したつもりだったのだが。

とはいえ子供の成長は早いから、来年の冬にはきっともうあのセーターも着収めなのだろう。
何せ翔はわんぱく盛り、外へ出かけるたびにどこかにひっかけてあっちがほつれ、こっちがほつれ、
本来ならとっくに衣服としてはお役御免になっているレベルだ。
いつまでもぼろぼろの服を身につけさせていては、ご近所からの信用にも関わる。

「ぼく、このセーターが一番好き!だ~~いすき!!」

…けれど、本音を言うならば。

母親が遺したものを大好きだと愛おしむ、キミの気持ちが嬉しいよ。
きっとこの先、背が伸びて、肩幅が広くなって、色々なものと出会って、母親との思い出も薄れてゆくのだろう。

でもその優しい気持ちはどうか、

いつまでも色褪せない空色のままで。
ロングトーカー「10ブックマーク」
ある女のせいで、私は長電話をしてしまう。
なぜだろう。
16年08月06日 13:32
【ウミガメのスープ】 [クアッド]



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「はい、名前はカメコです。はい。
動物の亀に、火へんの煌めきという字に、子供の子です。はい、はい。
ええっと、火が左側に、あとは皇帝の皇の字が右側の漢字です。」
私は亀煌子。母親が名前に煌めきを入れてしまった、文字通りのキラキラネームです。
おかげさまで、電話で自分の名前を説明するとき、ずいぶん長くなってしまいます。
成人したら、絶対名前変えてやるー!
こころ「10ブックマーク」
息子が妻の顔に足を向けて寝ているのを見て、男は安堵した。
何故だろう?
16年03月06日 22:32
【ウミガメのスープ】 [牛削り]



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子供がほしい、と、妻は結婚当初から言っていた。
男がそれに対し曖昧な態度で応じ続けた感情は、とても一言で説明できるようなものではない。
それは怖いというのと少し似ていた。

命というものを、男は考える。
命を思うとき、男の中では、それは闇の中で蠢く複雑な構造として想起される。
観測不可能な主観を内に宿していて、そして言うまでもなく、何よりも重い。
自分の子ということであれば、この世に発生した瞬間に、自分はその蠢く構造の父親として決定付けられる。
それがどういうことなのか、男は具体的にイメージできなかった。そのとき自分がどんな気持ちになるのかも、よくわからなかった。
そんな不確かな立場のまま、命という途轍もないものを、自分のほんのささいな行為ひとつで作ってしまっていいものだろうか。
結果に対し、原因や、結果を受け入れるべき人間の覚悟が軽すぎやしないだろうか。
これを六倍くらいまどろっこしくしたものが、男の抱えていた感情であった。
当時、男は自分の胸中を冷静に観察できずにいた。仮にできたとしても、泣かせるとわかっていながら妻にそれを語るのは憚られただろう。
妻に対する曖昧な態度は、こうした理由による。

では、男はいかにして、子供を作ろうという決断にいたったのか。
手に余る感情に苛まれた男は、周囲の人々と話をした。既に子を持っている先輩と、子供を欲しがっている友人と、世話好きな飲み屋のオヤジと、父親と……。
そしていろいろなことを考えた。近くにありながら、今まで気にもしなかった問題、例えば、母は自分や弟を産むとき、どんな気持ちだったのか、ということなどを。
命というものの不可解さは相変わらずありながら、男はそうした経験を経て、ひとつの小さな結論を得た。

もしも子供が生まれたら──。

妻はその小さな存在を抱き上げて、そして、今まで見たこともないくらい幸せそうに、笑うんだろう。
きっと薄いレースのカーテンが掛かった窓際で、祖父母や両親や妻の愛する人たちに祝福されて、妻は笑っている。
その光景がイメージできたとき、男は、それを見たいと素直に思えた。
他の多くの考えなければならない問題は棚上げにしても、自分は妻の、その笑顔が見たい。

相性に恵まれてか、男が決断してから半年以内には、検査薬は陽性を示した。
妻はたいそう喜んだ。妻が喜んだのを見て、男も喜んだ。
「男と女、どっちだろうね」
まだ膨らんでもいない腹をさすりながらはしゃぐ妻を見て、男は、自分の見た未来は間違っていなかったと改めて思った。
「男の子がいいなあ。あ、でも女の子もいいなあ」
気付けば自分もそんなことを言っていた。
「どっちなの」
妻は笑っていた。



「#red#このままだと、逆子になるかもしれない#/red#って」
そう診断されたのは、六ヶ月目くらいだったか。妻の腹はそれまで通りの生活が不便になるくらいまで大きくなっていた。
中の子は、頭が下ではなく、水平方向を向いていた。
逆子の可能性はまだそこまで大きくはないようだが、もしこのまま胎児が横を向いた状態で出産期を迎えれば、帝王切開は避けられないという。
妻は少し焦っていて、同調する男も、焦っていた。
逆子体操をする時期ではまだない。できるのは祈ることのみであった。

八ヶ月目に入る頃、妻は実家に帰っていった。里帰り出産の準備である。
広すぎる部屋で、男は妻と子の安否をいつも案じていた。
二月の終わりの週末、男は妻の実家を訪れた。妻は世間話もそこそこに、先日の検診の際のエコー写真を男に見せた。
4Dの、想像以上にリアルな画像だった。

「見て、ほら、これが足」

嬉々として語る妻の指先を見ると、#red#胎児の足は上を向いていた#/red#。
#red#逆子の危険を脱した#/red#のである。ひとまずは。
男は安堵した。これで、妻は出産までの期間を少しは安心して過ごすことができる。
男は妻の腹を撫でた。時折力強い反発を感じるまでになっていた。

「そろそろ名前、決めなきゃね」

妻のその言葉に、男はどきっとした。
命名は男に一任されているのだ。まだ決められる目処は立っていない。
「そ、そうだね」
我が子の性別は男だと判明していた。

名前を付けるという場面に直面し、男は子供への願いが次々と湧き出てくるのを感じていた。
こんな風に育ってほしい、こんな風に呼ばれてほしい。
命の複雑さが云々言っていた頃には想像もできなかった感情だ。
妻と一緒に、我が子にまつわる様々な気持ちを経験して、少しずつ変化してきたのだろう。


男はイメージする。例えば、こんな光景を。

少年がグローブをつけて原っぱに立っている。
対面にいる男がボールを高く掲げる。
「○○、いくぞ」
妻はにこやかに二人を応援している。

いつの頃からか、男の想像する未来の光景には、男自身の姿があるのだった。

父になるのだな、心も。
その男、牛削りはそう思った。



生まれてくるのは、四月。
彼の地元では桜の咲き始める季節である。



「うしけずりのはつこいのはなし 〜その5・こころ〜」 完



#big5#【要約解説】#/big5#
#b#生まれてくる我が子の足が上を向いており、逆子の危険を脱したとわかって安堵した。#/b#





「うしけずりのはつこいのはなし 〜その1・あくしゅ〜」
http://sui-hei.net/mondai/show/12288
「うしけずりのはつこいのはなし 〜その2・せなか〜」
http://sui-hei.net/mondai/show/12440
「うしけずりのはつこいのはなし 〜その3・ばいばい〜」
http://sui-hei.net/mondai/show/12471
「うしけずりのはつこいのはなし 〜その4・いつまでも好きな人〜」
http://sui-hei.net/mondai/show/12472
意地っ張りラヴァーズ「10ブックマーク」
恋人の佐藤タクトからついにプロポーズされた山村カナエ。
彼女は、彼から求婚されたのは、#b#自分が料理下手なため#/b#だと推理した。

カナエの推理過程を辿れ。
16年01月18日 21:11
【ウミガメのスープ】 [牛削り]



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意地っ張り。

山村カナエは自らの性格をそう評価している。ひとたび思い込んだら絶対に曲げないし、納得できない常識や固定観念に縛られたくない。たとえそのせいで求めるものが手に入らないとしても、山村カナエはしばしば意地の方を優先する傾向がある。それを彼女は、自分の短所でも長所でもあると思っていた。もちろん、八対二くらいで前者の比重が大きいのだけれど。

プロポーズは男の方から。これは山村カナエにとって曲げられない信念だった。だから、親になんと言われようと、友人が次々に家庭を築こうと、街中で素敵なウェディングドレスを見つけようと、自分からは絶対に結婚の話など出さなかった。
恋人のタクトは、カナエの秘めた願いに気付く様子もなく、ルーティンのようにこの恋愛を楽しんでいるだけ。そんな風に、カナエには見えていた。

「男を落とすなら料理よ」
と、カナエの母は言った。以前、グラタンの作り方を習ったときだ。
「そ、そんなつもりじゃないよ」
否定しつつも、カナエは内心、確かにと頷いていた。
山村カナエは、世の女性に比べて料理が得意とはいえない。実家暮らしを三十年弱も続けていれば、それも無理はない。成人するまでに作ったことがある料理は、目玉焼き丼くらいである。

彼女はその日から母の指導のもと修行を積み、夕飯前のタクトの部屋に押しかけては、台所に立った。
「どう、かな?」
そう聞きながらも、わかっていた。
鍋は焦がしたし、野菜を入れる順番も間違えた。砂糖と塩と小麦粉、実家での練習のときは区別できたのに。大さじはシャベルのことではないと、タクトに指摘されて初めて知った。包丁で指を切ってしまい、貴重なAB型の血がスープに混ざり込んだ。
「うん、美味しいよ」
わかっていた。
その笑顔が、見栄っ張りの彼の精一杯だってこと。
山村カナエは、この頃には例に倣って意地になっていた。絶対に心の底から美味しいと言わせて、そのままプロポーズさせてやる。何度失敗したって絶対に。

カナエがタクトの夕飯を作るようになって二ヶ月が経過した。料理番組は必ず録画して何度も見返し、レストランではシェフを呼んでそれが本当にウミガメのスープか確かめた。彼女の日常は料理の上達のためだけに費やされるようになっていた。しかしそれでも、彼女は恋人の心からの笑顔を見られずにいた。

才能というものがある。山村カナエは絵が上手だし、発想力が豊かである。人には無い良いところをたくさん持っている。しかし料理だけは、絶望的だった。
男を落とすなら料理。確かにそれも一つの道だろう。だが男は女の優しいところにも惹かれるし、チャーミングな笑顔にも虜になる。別の道はいくらでもあるのである。しかし山村カナエの意地が、料理以外の道にブラインドを掛けていた。

その日もカナエは失敗した。母が広辞苑並みに詳細に書いてくれたレシピを見ながら作ったミートローフは、食卓に置いた瞬間に爆発した。何かの配合を間違えてしまったようだ。
タクトの顔を見たくなくて、カナエは後ろを向いた。

「カナエ」
涙声になりそうで、返事ができなかった。
「カナエ、ちょっとこっち向いて」
「なんでよ」
やっと、か細い声が出た。
「カナエ」
ぐいっと、彼が肩を掴んだ。いつになく力強い掌。
二人、正対する形になる。

「カナエ、結婚しよう」
彼は背中に隠していた左手を前に差し出した。そこにはリングケースが載っていた。
驚きのあまり、声が出ないカナエ。
なんで? まだ料理上手になっていないのに。
カナエの沈黙を感激と受け取ったのか、タクトは優しそうに微笑んで、
「左手を出して」
と言った。
言われるままに差し出す。
#red#彼はリングケースから指輪を取ると、それをカナエの薬指にはめた。#/red#
#red#ぴったりだった。#/red#

停止していたカナエの思考は、この時、めまぐるしく回転し始めた。
何故?
#red#何故彼は私の指のサイズを知っていた?#/red#
カナエの指は友人と比べても細い方だ。女性の平均的な指輪のサイズは九号であるが、カナエの薬指は六号くらいが丁度いい。
サプライズで指輪を買う場合、平均的なサイズをプレゼントするのが普通である。細く見えたとしても、平均サイズの一号下あたりを選ぶのが無難なはずだ。三号下を選べるというのは、何か確信があったに違いない。
プロポーズの場で、サイズが小さくてはまらないなんて格好悪すぎる。見栄っ張りの彼がそんなリスクを犯すはずがない。
では、彼はどうやってサイズを知ったのだろう。
まず、とカナエは考える。
彼の前で指輪をしたことなどないから、カナエの持っている指輪のサイズを盗み見たというセンはない。また、タクトはカナエの友人と接点を持たないはずだから、友人から聞いたというセンもない。もっとも、カナエの指のサイズを知る友人などほとんどいないのではあるが。
では、直接測ったのだろうか。カナエが寝ている間に、指に何かを巻きつけて? ありえない、とカナエは思った。人一倍敏感なカナエは、寝ている間に悪戯をされればすぐに起きてしまう。それを掻い潜って測るなんて、不可能だ。
指輪そのものでもなく、誰かから聞いたでもない。直接でもなければ……間接?
カナエはあることに思い至った。

あの#red#絆創膏#/red#、どこに捨てたっけ?

最初に料理を振舞ったあの夜、#red#カナエは包丁で左手の指を切ってしまった#/red#。そう、薬指を。タクトはすぐに絆創膏をくれた。次に来た時、料理前に手を洗う際、絆創膏を取ったのだった。#red#合わせ目を剥がすことなく、そのままくるくると指から引き抜く形#/red#で。
それを、タクトの部屋のゴミ箱に捨てた。

長い沈黙を経て、カナエはようやく薬指を見ていた顔を上げた。タクトは待ちきれないといった様子で、もう一度言った。
「結婚、しよう」

カナエは唾を飲み込み、言った。
「やだ」
「え」
タクトの身体が急に小さくなったような気がした。
「な、なんで」
「だって」

だって、意地っ張りだから。


「だって、美味しいグラタンであなたを落とすって、決めてるから」


#big5#【要約解説】#/big5#
#b#タクトがサプライズでくれた婚約指輪は、サイズがぴったりだった。#/b#
#b#カナエは次のように推理した。#/b#
#b#カナエが料理中に指を切ってしまい使った絆創膏のゴミをタクトが回収し、指のサイズを知った。#/b#
#b#それで、今まで怖気づいていたサプライズのプロポーズに踏み切れたのだ、と。#/b#