動画内など、他所でラテシンの問題を扱う(転載など)際について
ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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皆様、魔女の館へようこそお越しくださいました。
私は魔女クリスティーナと申します。
もしかしたら「久しぶり」という方もいらっしゃるかもしれませんね。

はい?魔女などという存在は信じられぬ、と?
そうですね・・・それでは改めて宣言致しましょう。
#red#私、クリスティーナは魔女です。#/red#

今の赤い言葉は「赤き真実」という私の魔法の一つです。
#red#「赤き真実」にて綴られる言葉に一切の嘘偽りはなく、全て真実です。#/red#
その証明には論も証拠も必要とせず、ただ真実であるということが保証されます。
この魔法にて、ひとまずは納得いただけますでしょうか?

折角お越しいただきましたので、ちょっとした余興をご用意いたしました。
まずはこちらの物語をご覧ください。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とある名家の当主、カメオ。
彼は極度の人間嫌いで、カメオの私室には誰一人として入れようとしなかった。
長年連れ添った妻であるタト子ですらも、例外ではなかった。

あるときから、カメオは黒魔術に傾倒するようになった。
カメオは私室の近くに部屋を作らせ、そこを『#b#儀式の間#/b#』と称した。
#b#異界から異形の者を召喚#/b#する儀式などを執り行う部屋だとカメオは言った。
そうして、儀式の間に入ってから、数時間もの間出てこなくなることが頻繁になっていった。

不審に思ったタト子は、ある時、カメオが儀式の間に入るのを確認し、部屋の様子を窺うことにした。
しかし、待てども待てどもカメオが出てくる気配はない。
痺れを切らしたタト子は、思い切って儀式の間の扉を開く---

#b#そこにはカメオの姿はなかった#/b#。
あったのは、床に描かれた不気味な魔法陣がただ一つ。
魔法陣の中には、古代の言語で次の一文が書き入れられていた。

-#b#我が魂を悪魔に捧げよう#/b#-
-#b#悪魔よ 禁断の扉を開き 我を人知れぬ世界へと誘い賜え#/b#-

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

物語の詳細を説明させていただきますね。

#red#人名の他、儀式の間、扉などの固有名詞は、全て同一の存在を指し示します#/red#。
#red#儀式の間は、如何なる破壊も加工も不可能な部屋です#/red#。
#red#儀式の間には、扉は一つしかありません#/red#。#red#隠し通路や窓の類も存在しません#/red#。
#red#儀式の間の中には道具は存在しません#/red#。
#red#カメオ、タト子は超科学的、非科学的な特徴の無い人間です#/red#。
#red#カメオ、タト子以外に、如何なる生物も関与しません#/red#。ただし、生命を超越した存在である悪魔の関与は否定いたしません。
#red#タト子はカメオが儀式の間に立ち入ってから、出入り口より目を離すことはありませんでした#/red#。

そして・・・#red#タト子が扉を開けた時、部屋の中にカメオは存在していません#/red#。

さて。#b#一体カメオはどのようにして儀式の間から消え失せたのか#/b#。
私はこれを、#b#儀式の間にて召喚されし悪魔が、カメオを異界へと連れ去った#/b#、と説明します。
対して、皆様には#b#悪魔の関与を否定#/b#していただきたいのです。

詳しいルールはこちらです。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆当問題のルール☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

当問題は、2chの同人掲示板で実施されている「屁理屈推理合戦」というパズルをラテシンに輸入してみたものです。
基本的には「ウミガメのスープ」と同様、質疑応答により物語の真相を明らかにしていく内容となりますが、特殊なルールを設けております。

①#red#赤き真実、つまり赤い文字で記される言葉は、絶対的な真実として保証されます#/red#。言い換えれば、#red#赤き真実で嘘を語る事は不可能です#/red#。
(#red#回答欄では文字を赤くすることができないので、代わりに【赤】という記号で囲まれた部分を「赤き真実」とします#/red#。)
②Yes/Noで解答可能な質問に限らず、#red#どのような質問も可能です#/red#。#red#推理の提示や、特定の事柄について出題者に赤き真実での宣言を要求する事も可能です#/red#。
③#red#出題者は真相を全て知っています#/red#が、基本的に#red#出題者は質問に対する回答義務を持ちません#/red#。出題者は回答を任意に拒否することができます。
④ただし、#red#質問者から提示された推理により悪魔の関与が否定された場合、出題者はこれに赤き真実で反論する義務を負います#/red#。
 #red#出題者が質問者から提示された推理に反論できない場合は、正解となります#/red#。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

皆様が普段より嗜んでいらっしゃる「ウミガメのスープ」とは少々異なる部分もございますが、
最初の内はあまり気になさらず、気軽にご質問や推理のご披露をいただくのが良いでしょう。

さぁ、皆様。
どうか悪魔の幻影を、見事打ち破ってくださいませ。



※天童 魔子さんとのコラボ問題です。天童さんにはこの場をお借りしてお礼を申し上げます。
問題原案:天童 魔子さん 企画・出題:セルス
14年07月14日 21:05
【新・形式】 [セルス]

天童 魔子さんとのコラボ問題です。




解説を見る
お見事です。よくぞ悪魔の幻影を打ち破りました。
儀式の間に出入りするための扉はたった一つ。ですが、扉を出た先が一つとは限りません。
#red#儀式の間は移動した#/red#-これこそが、悪魔の心臓を貫く銀の弾丸だったのです。

語りましょう。
嘘偽りのない、真実の物語を。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カメオはとある名家の嫡男として生を受けた。
幼き頃より、厳格な両親から、一切の甘えを許さぬ英才教育を受け続けた。
両親による抑圧を受け続けたことにより、カメオは人間そのものを嫌うようになっていった。
何一つとして自由に選択する権利を与えられなかったのだから、当然といえば当然かもしれない。
食べるものも。学びの場所も。趣味も。友人も。結婚相手でさえも。

タト子との結婚は、完全なる政略結婚であった。
両家の立場もあり、表面上は当たり障りのない結婚生活を続けていた。
だが、長年タト子と連れ添うにつれ、徐々に夫婦間での諍いが絶えなくなっていった。
跡取りを決めるためだけに産まされた、何の愛着もない子供たちとその家族も、
誰が跡取りになるだとか、誰が遺産を継ぐだとか、そんな下らぬ衝突を繰り返してばかり。

カメオは孤独だった。
やがて名家の当主となり、莫大な財産を手にしてなお、心は空虚なままだった。

『彼女』と出会うまでは。

いつものように私室に籠っていると、ふと、ピアノの奏でる音色がカメオの耳に届いた。
幼いころの英才教育の一環でピアノを弾かされ、弾き間違えてはピアノの教師に手をはたかれていたのを思い出した。
手を叩かれないよう必死に、楽譜通りの音を機械的に再現していた。
その作業が嫌だった。だからピアノは嫌いだった。
嫌いのはずだった。

響いてくるピアノの音色をどれほど意識の外へ追いやろうとしても、耳から離れることはない。
それどころか、徐々にその旋律に心惹かれていった-あるいは、憧れていたのかもしれない。

かつて自分が奏でていた、無機質で事務的なものとは明確な違いを感じていた。
音の一つ一つが自由に遊び回るように、しかしそれぞれの音が調和して、
それだけで、一つの大きな世界を形作っているかのような。そんな錯覚を覚えた。

音を辿ると、娯楽室へと行きついた。
娯楽とは言いながらも、かつての自分が両親から強引に押し付けられた趣味の部屋だ。
ピアノもその中の一つだった。

ピアノの音の主を見る。
それはそれは美しい女性が、心の底から楽しむかのような表情で鍵盤に向かっていた。
それが、『彼女』との初めての出会いだった。

『彼女』は、長男夫妻が孫のピアノの講師として招いたピアニストだった。
『彼女』が訪れる週に二、三度だけ、あれだけ人を嫌っていたカメオが部屋から出て、
娯楽室の中の様子を窺うようになっていた。

気づけばカメオは、『彼女』に恋心を抱いていることに気が付いた。
空虚で無味乾燥なカメオの心に、初めて色を与えてくれた『彼女』に。
それはカメオにとって、本当の初恋であり、初めて他人に心を開いた瞬間でもあった。

ある時、カメオは『彼女』に声をかけ、私室へと招いた。
最近は妻のタト子ですら近づけないようにしていたあの私室に、初めて招き入れた客人だ。
『彼女』との談笑の中で、カメオはますます『彼女』に心を奪われていった。



だが、これまで人間との付き合いが希薄であったカメオの慕情は、徐々にあらぬ方向へと向かっていった。
執着のあまり、『彼女』を私室に軟禁するようになった。
それはまるで鳥籠に入れられた鳥のよう。

その事実を隠蔽することも徐々に難しくなっていった。
人を寄せつけないようにしているとはいえ、強引に家族に私室に入られたら見つかってしまうかもしれない。
このままでは『彼女』を私室に閉じ込めているのが明らかになるのも時間の問題。
そこでカメオは考え付いた。

『彼女』を、誰にも見つからない場所に閉じ込めてしまえば良いと。

カメオは黒魔術に傾倒した-”フリ”をした。
そして、黒魔術の儀式を行うための部屋だと言って作らせたのが、あの『#b#儀式の間#/b#』だった。
あの部屋を作らせる口実は何でも良かったのだろうが、黒魔術で使うなどと言っておけば、
気味悪がって誰も近寄りはしないだろう。そう思った。

その日もいつものように儀式の間に入る。
すると、地面から浮き上がるかのような錯覚を覚えた。
だがそれもいつもの事。
しばらくして儀式の間の扉を開けると-その向こうには『彼女』とピアノが存在していた。

#red#儀式の間はエレベーターだった#/red#。
#red#地下に作った地下室へと続く唯一の入り口#/red#。#red#それこそが、儀式の間の正体#/red#。
#red#儀式の間に存在する出入り口はただ一つ#/red#だが、#red#カメオが入った後に儀式の間は地下室に移動する#/red#ようになっていた。

儀式の間の真実を知る者は全て葬り去ってある。
そして、特殊な生体認証システムにより、カメオが入った時だけ動作するようになっている。
これで誰が、『彼女』が地下室に閉じ込められていると気づけようか?

今日も誰も知らない地下室の中で、『彼女』と二人きり。
カメオは最愛の『彼女』の名を口にする。

-さぁ。今日も君の美しい旋律を聞かせておくれ。親愛なる#b#カニバリーチェ#/b#。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

これが、「儀式の間の悪魔」の正体です。
長話になってしまいましたが、如何でしたでしょうか?

・・・ところで。
私の物語の最後の最後を台無しにしてくれましたね。「喰人の魔女」カニバリーチェ。

(゚д゚)「Σoh!なぜバレたのですか」

バレるに決まっています。今回、貴女にはかなり助けて頂きました。その点に関しては素直に感謝しています。
ただ、私の書き上げた物語を勝手に弄らないで頂きたいのですが?

(゚д゚)「まぁ良いではないですか ほんの遊び心なのです」

・・・はぁ。本当にしょうのない魔女ですね、貴女は。

さて、皆様、少々締まりのない幕切れになってしまいましたが、お楽しみ頂けましたか?
もし次があれば、またお会い致しましょう。
それでは、さようなら。

(゚д゚)「(゚д゚)ノシ さよならなのです」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

-さぁ。今日も君の美しい旋律を聞かせておくれ。親愛なるカニバリーチェ。

(゚д゚)「良いのですよ」



(゚д゚)「#red#今日は、私の体の中で、私の音色を直に聴かせてあげるのです#/red#」

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真剣勝負「12ブックマーク」
赤信号を見る度に自動車のアクセルを踏み込む男。なぜ?
14年05月12日 18:40
【ウミガメのスープ】 [ムク]



解説を見る
運転しっぱなしで停車中しかラテシン出来ないので、信号待ち時間を稼ぎました。
【世界田中奇行】部屋を汚す田中「12ブックマーク」
もうすぐお客さんがやって来るというのに、いきなり部屋の中を汚し始めた田中。

一体何故なの? アホなの? バカなの?



※元ネタあり
14年03月01日 18:26
【ウミガメのスープ】 [水上]



解説を見る
むかーしむかしのーことじゃったー。

田中は村の大地主で、高台にそれはそれは立派な一軒家を持っておった。
田中は地位に奢らず、気さくで農民の手伝いも厭わない働き者であり、
村の者たちはみんな田中を慕っておったそうじゃ。

そんなある日のこと。
日照り続きだった村に念願の雨が降り、村人達は喜んでおったのじゃが、
その雨は2日経っても3日経っても止むことはなく、ついに村に流れる川が氾濫してしまった。

幸いすぐに氾濫は収まったものの、村一体が水浸しになり、村人たちは泥まみれになりながら高台に避難した。
もちろん田中も村人たちの避難を手伝い、しばらくは自分の屋敷で休むように提案した。

「みんなで入ると狭いかもしれんが我慢してやってくれんか」
村人たちにそう声を掛けて屋敷の中に入るよう勧めるも誰も入ろうとしない。
皆一様に泥だらけになった自分の体を気にしている。

屋敷は掃除が行き届いており、玄関も上り口もピカピカ。
それを自分たちの泥で汚してしまうのをためらっているのだった。

田中は村人たちの様子をしばし眺めた後、自分の体についた泥を玄関にぶちまけた。
そして草履も脱がず、部屋の中を闊歩し、ゴロゴロ転がり回って、部屋の中を泥で汚していった。
村人たちは呆気にとられて田中の奇行を見つめていると、田中が大声で叫んだ。

「変な遠慮などするな。この通りワシの屋敷は泥だらけじゃ。皆も入ってこい! 」

村人たちは田中の屋敷を拠点として村の泥水の撤去作業を行い、また元の平穏な暮しに戻っていったのだった。
もちろんみんなで田中の屋敷の大掃除もして。

途中から昔話っぽい語り口じゃなくなったけど、めでたしめでたし。
6つの顔と、目が21個、そのうち1つは充血していた。

カメコの母親は、それを見つめながら悩んでいた。

いったい、どういうことだろう?

嘘一回のウミガメ30です。

【挿絵担当・阿瓜様 問題監修・アザゼル様】
この場を借りて改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
13年04月23日 22:00
【ウミガメのスープ】 [+チック]

投票ありがとうございます!




解説を見る
娘カメコが通う小学校の先生から連絡があり、呼び出された母親。

「カメコに何かあったのですか?」
「それがですね……」
先生は一枚の絵を差し出した。
その絵は、人のような形をしていて、顔と目がいくつも描かれている、とても奇妙でおそろしいものだった。
「なんですか、これは……」
「これは、図工の時間にカメコさんが描かれた絵です」
「まさか、こんな絵を、カメコが?」
「ええ、率直な感想を述べるとおぞましい絵です。もしかしたら家庭などで何か問題を抱えているのではないかと心配しているのです」
「いいえ、そんなことはないです。でも、もっと話を聞いてあげようと思います」
「はい、お母さん、お願いします」

見れば見るほど気味の悪さが増長する絵を見つめながら、母親は頭を抱えていた。

~後日談~
「ねえ、カメコ?どうしてこんな絵を描いたの?」
「えっとね、叔父さんがそんな化け物との勝負に負けたって聞いて描いたの」
「えっ、そうだったの!」
叔父さんと言えば、ギャンブル好きの私の弟だ。まったくカメコに何を吹き込んでくれたのよ。
それにしても、こんな絵を描くなんて――。

カメコの将来を思って、やはり悩んで仕方のない母親であった。
しあわせの鳥「12ブックマーク」
臆病なユウキ少年に、ラブレターを書く決意をさせたのは1羽の鳥であるという。
いったいどういうことだろう?
17年09月30日 02:00
【ウミガメのスープ】 [az]



解説を見る
それは、離陸してから5分と経たないうちの出来事だった。遠方の親戚を訪ねるため#b#飛行機#/b#に乗っていた木戸勇樹が座席から目撃したのは、爆音と共に突如として#red#炎を吹いたエンジン#/red#だった。

次の瞬間、機体が大きくガクンと揺れた。窓から見えるエンジンは、真っ黒な煙を吹き上げている。何らかのトラブルが起きたことは火を見るよりも明らかだった。

「お客様にお知らせいたします。エンジントラブルの発生により、当機は緊急着陸いたします――」

にわかに騒がしくなる機内で、ユウキの脳裏をよぎったのは#b#墜落#/b#の2文字。
真っ二つに割れた機体、燃え上がる炎、黒焦げの残骸。テレビで見た昔の飛行機事故の映像を思い出したユウキは、#red#きっと自分は死んでしまうのだ#/red#、と思った。
恐怖と絶望の中、残された時間で何をすべきかを考えたユウキが、手荷物から取り出したのはペンとメモ帳だった。

#b#死んでしまうのなら、せめて最後の言葉を残しておこう――。#/b#そう思ったユウキは震えるペン先を紙に走らせた。



まず家族への感謝のメッセージを書いた。ここまで育ててくれてありがとう。幸せな人生でした。


次に親友に宛てた言葉を記す。俺がいなくなっても、変わらず楽しくやってくれよ。


そして、あとは誰にメッセージを遺そう、と考えたとき、思い浮かんだのは高校のクラスメイトの長谷川サヤカの顔だった。中学で知り合って、一目惚れして以来、実に5年間も片想いを続けている相手だ。臆病なユウキには遂に告白などできなかったが、死んでしまうのなら、#red#最後に想いだけでも伝えておきたかった。#/red#



「拝啓 長谷川沙也加様

残暑の厳しい候となりました。長谷川様におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

さて、この度私は死ぬことになりまして」


そこまで書いて、ユウキはメモを破いた。
違う。なんだこれは。もっとストレートに想いを伝えなくては。



「ずっと前から好きでした! 僕と付き合ってください!」



違う違う。死んだら付き合えない。ユウキはまたメモを破いた。

落ち着け、自分の気持ちを正直に書こう――。ユウキは息をひとつ吐くと、真っ白なメモ帳にペンを向けた。





やっとの思いでラブレターを書き上げたとき、機体が大きく振動した。いよいよ墜落か、とユウキは覚悟したが、次の瞬間、機内は歓声と拍手で満たされていた。


ユウキが手紙に夢中になっている間に、飛行機は着陸に成功していたのだ。


「助かった……!」
安堵のため息を漏らすユウキ。ようやく少し落ち着いた彼は、自分が握りしめている紙切れに目をやった。


「君の声は小鳥のさえずり? 僕は君のために天上から愛のハープを奏でよう? なんだこりゃ?」


……そこにあったのは、勢いに任せて書き上げたあまりにもあんまりなポエムだった。


呆然としていたのも束の間、爆発の恐れがあるのですぐに機内から出よとの指示。そうだ、まだ完全に助かったわけではないのだ――。現実を思い出し、ユウキは慌てて乗務員の指示に従い脱出した。



――エンジンは未だ、黒煙を上げている。手負いの鉄の鳥を眺めてユウキは、自分が置かれていた危機をあらためて実感して震え上がった。そして同時に、その危機を脱した安堵感から、全身の力が抜ける思いだった。

「そうだ、ラブレター……」

さっさとあの恥ずかしいポエムを処分しようと思い立ったユウキだが、そのポエムを記したメモがどこにもない。握りしめていたはずなのだが、どうやら脱出の途中で機内に落としてきてしまったようだ。
ユウキの顔がみるみる青ざめていく。今後、調査などで機内に入った誰かが、あの手紙を拾ったら……

ユウキは天を仰いだ。


あぁ……



爆発してくれ。





――・――・――・――

ユウキの祈りも虚しく、エンジンの火災は無事に消火された。結局、この事故による死傷者は一人もいなかった。
やがて専門家による調査が行われ、事故の原因は#b#1羽の鳥がエンジンに巻き込まれたこと#/b#――いわゆる#red#バードストライク#/red#だったことが判明した。




#b#【要約】#/b#
#b#ユウキの乗っていた飛行機が、バードストライクによりエンジントラブルを起こした。#/b#
#b#墜落による死を覚悟した彼は、最期に自分の想いを遺しておくため、ラブレターを書こうと思った。#/b#