「【無茶振り三題噺16】世界は平和だった」「8ブックマーク」
勇者は優秀な仲間をかき集め、伝説の武器や防具を揃え、何年もかけて修行を重ねたが、魔王を倒すことができずにいた。
しかし、勇者の仲間の一人であった賢者は、たった一週間で世界を平和にしてしまった。
どういうことだろう?
-----------------------------------
※この問題は「賢者」「しゅうかん」「カキ」のお題をもとに作られた三題噺の問題です。
~無茶振り三題噺とは?~
「三つのキーワードから問題を作ろう」という企画です。
詳しくは、掲示板『ラテシンチャットルーム』の『無茶振り三題噺』をご覧ください。
過去問一覧:http://chat.kanichat.com/chat?roomid=SandaiBanashi
しかし、勇者の仲間の一人であった賢者は、たった一週間で世界を平和にしてしまった。
どういうことだろう?
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※この問題は「賢者」「しゅうかん」「カキ」のお題をもとに作られた三題噺の問題です。
~無茶振り三題噺とは?~
「三つのキーワードから問題を作ろう」という企画です。
詳しくは、掲示板『ラテシンチャットルーム』の『無茶振り三題噺』をご覧ください。
過去問一覧:http://chat.kanichat.com/chat?roomid=SandaiBanashi
14年11月16日 23:12
【ウミガメのスープ】 [とかげ]
【ウミガメのスープ】 [とかげ]
三題噺デビュースープ
解説を見る
数多の魔王が登場し、数多の勇者が生まれた。一人の魔王を倒すのに、何人もの勇者が必要だったこともあれば、たった一人の勇者が何代も魔王を倒し続け、最後は老衰で静かに息を引き取るようなこともあった。倒されても倒されても、新たな魔王は必ずどこかに現れ、新たな勇者が必ずどこかで魔王討伐を胸に立ち上がるのだった。
そして、現代――
相も変わらず、勇者と魔王という対立は続いていた。
勇者は魔王を倒そうと意欲的だったし、それに賛同する仲間もたくさんいた。
違ったのは、彼らを取り巻く一般人……世論とでもいうべきだろうか。勇者でも魔王でもなく、彼らに仕える魔族や仲間でもなく、ただそこに存在して日々の平和な暮らしだけを望む、何の変哲もないその他大勢の人々だった。
人々は……戦いなど、望んでいなかった。正義と悪の対立には興味がなかった。自分達が毎日を平和に過ごすことができるならば、魔王が世界を支配したって構わないとすら思っていた。
時代によって変わる勇者・魔王事情に、翻弄されるのはいつも一般人である。幾度となく繰り返される争いに、人々は疲弊していた。そして、勇者が勝たずとも、魔物が出歩く山奥を避け、自分達の小さな土地を堅実に守っていけば、十分平和に暮らせることに気付き始めていたのだった。
そして現代の魔王もまた、争いを好まぬ平和主義の変わり者であった。強靭な肉体と恐るべき魔力を持ちながら、それを戦に使う気はさらさらなかった。手下の魔物達をむやみに人里へ送り込むこともせず、ただ魔王城に乗り込もうとする命知らずな輩を、自分達の命を守るために攻撃していただけだった。魔王はただ、自分と自分の可愛い手下達が幸せに暮らせればいいと、それだけを願う実に平凡な思想の持ち主だったのだ。
人々は思った。この魔王ならば、共存できるのではないだろうか。勇者が魔王を倒さずとも、争いのない平和な世界が訪れるのではないだろうか。魔王を倒す必要がなければ、魔王討伐のためと銘打って徴収される税金も払わずに済むのではないか。訪問してくる勇者とその仲間達に気を使い、食事を用意し、労い、村の秘宝や先祖の遺跡を明け渡さずにいられるのではないか。勇者に誘われて村を出て行った若者達が、悲しい骸となって戻ってきて、激昂することさえ許されず悔し涙を流す日も、なくなるのではないか……。
そんな人々の心の内に薄々勘付き始めていたのが、勇者の仲間の一人である、賢者であった。鈍感な勇者はひたすらに魔王討伐を目指し、日々努力していたが、賢者はこの状況に違和感を覚えつつあった。
『勇者こそ正義である』
『悪の象徴である魔王を倒すことが世界平和への道だ』
そう唱えた王の言葉を疑うこともせず、人々が勇者という存在に感謝していると信じ込んで、何年も魔王討伐だけを考え続けてきた勇者。魔王が戦いを望まぬという書簡を送ってきても、王はそれを罠だとはねのけ、一層の努力を勇者に望むのだ。
賢者は、決断した。
それがこの世界をひっくり返してしまうことだとしても。今目の前にいる人々の平和を守らずして、何のための世界であろうか。何のための、我が頭脳であろうか――
「勇者よ……気でも狂ったか……!!」
震える声で、それでも威厳を保とうとふんぞり返る王に、勇者は構わず剣の切先を向けた。
「黙れ、王よ……いや、魔王よ。何年も魔王の存在すら見つからないなど、おかしいと思っていた。お前が……お前こそが魔王だったのだな……!?」
「な、なんだと……?」
勇者はじりじりと間合いをつめ、王の喉元を狙う。王は……魔王などではない、ただの人間にしか過ぎない王は、それに抗う術を持たない。
「魔王討伐のためと言って税金を絞りとり、いたずらに争いを起こし、何の罪もない人々を死に追いやった。そうして民を苦しめていたことに、勇者である私が何年も気付けなかったとは、情けない。しかし、もう騙されないぞ!!」
「待て、違う、わしは魔王などでは……!?」
王の弁明は勇者に届かなかった。最後まで言うこともできなかった。賢者はただその様子を、静かに眺めているだけだった。
王の亡骸は魔王として葬られた。人々は今まで仕えていた王が魔王であったということに驚き、しかし最終的には納得した。誰もいなくなった王座には、勇者が座ることを望む者もいたが、結局空席のまま何十年も平和に過ぎて行った。
賢者は使命を果たした勇者を労い、平和になった世界を勇者と共に旅をして回った。
時折勇者の元から数日離れることがあったが、野暮用だと言いはり、その件については決して多くを語らなかった。
「しかし、王が魔王であったとは、なかなか面白いことを吹き込んだ」
「またそのような昔話を。もういいだろう、忘れてくれ」
「いやいや、忘れられんよ。お主が我が魔王城に単身でやってきて、我輩に頭を下げたときの光景が、昨日のことのように思い出される」
「あのときは必死だった。あのままでは人々は苦しみ続けるし、勇者はいつか無茶をしでかしてあなたに殺されただろう。……王には悪いことをしたが、王の愚行を止めるためにもああする他なかった」
「『王を魔王に仕立て上げるから、我輩には今後死ぬまで魔王であることを明かすな』、とはな。元より我輩も、穏やかに暮らせれば良いとは思っていたが、そんな手があるとは……さすが賢者だな。何年も拮抗していた状況を、たった一週間でひっくり返した」
「こちらはいつあなたの機嫌を損ねて消し炭にされるか、気が気じゃなかったがな」
「確かに、お主の頼み事はなかなか無理難題だった。歴代の魔王であれば即座に殺していただろう。魔王が死んだことにせねばらなんということは、城からもむやみに出られぬからな。さすがに退屈だ」
「そのために、こうして時折あなたの元へ話しに来ているんじゃないか。妙な習慣ができてしまったものだ」
「そうだったな。……しかし、お主が死んだあとはどう時間を潰せば良いのだ。我輩より長くは生きまい」
「私に命を与えてくれさえすればいい。あなたの魔力を貰えれば、この身体でもあなたと同じくらいは生きられる。魔王には簡単なことだろう?」
「確かに、そうだな……もしや、それが本来の目的だったのではあるまいな?」
「どうだろうか」
「全く、食えぬ奴だ」
残った魔物を全て閉じ込めた、ということにしてある、魔王城の庭で、賢者は魔王とくだらない会話を楽しむ。
世界は実に、平和だった。
END
#b#魔王は平和主義で無害だったため、魔王討伐へと消し掛ける王が実は魔王だったと、賢者は勇者に吹き込んだ。賢者を信じた勇者は王を魔王だと思って倒し、結果、搾取や徴兵に苦しんでいた人々に平和な生活が訪れたのだった。#/b#
そして、現代――
相も変わらず、勇者と魔王という対立は続いていた。
勇者は魔王を倒そうと意欲的だったし、それに賛同する仲間もたくさんいた。
違ったのは、彼らを取り巻く一般人……世論とでもいうべきだろうか。勇者でも魔王でもなく、彼らに仕える魔族や仲間でもなく、ただそこに存在して日々の平和な暮らしだけを望む、何の変哲もないその他大勢の人々だった。
人々は……戦いなど、望んでいなかった。正義と悪の対立には興味がなかった。自分達が毎日を平和に過ごすことができるならば、魔王が世界を支配したって構わないとすら思っていた。
時代によって変わる勇者・魔王事情に、翻弄されるのはいつも一般人である。幾度となく繰り返される争いに、人々は疲弊していた。そして、勇者が勝たずとも、魔物が出歩く山奥を避け、自分達の小さな土地を堅実に守っていけば、十分平和に暮らせることに気付き始めていたのだった。
そして現代の魔王もまた、争いを好まぬ平和主義の変わり者であった。強靭な肉体と恐るべき魔力を持ちながら、それを戦に使う気はさらさらなかった。手下の魔物達をむやみに人里へ送り込むこともせず、ただ魔王城に乗り込もうとする命知らずな輩を、自分達の命を守るために攻撃していただけだった。魔王はただ、自分と自分の可愛い手下達が幸せに暮らせればいいと、それだけを願う実に平凡な思想の持ち主だったのだ。
人々は思った。この魔王ならば、共存できるのではないだろうか。勇者が魔王を倒さずとも、争いのない平和な世界が訪れるのではないだろうか。魔王を倒す必要がなければ、魔王討伐のためと銘打って徴収される税金も払わずに済むのではないか。訪問してくる勇者とその仲間達に気を使い、食事を用意し、労い、村の秘宝や先祖の遺跡を明け渡さずにいられるのではないか。勇者に誘われて村を出て行った若者達が、悲しい骸となって戻ってきて、激昂することさえ許されず悔し涙を流す日も、なくなるのではないか……。
そんな人々の心の内に薄々勘付き始めていたのが、勇者の仲間の一人である、賢者であった。鈍感な勇者はひたすらに魔王討伐を目指し、日々努力していたが、賢者はこの状況に違和感を覚えつつあった。
『勇者こそ正義である』
『悪の象徴である魔王を倒すことが世界平和への道だ』
そう唱えた王の言葉を疑うこともせず、人々が勇者という存在に感謝していると信じ込んで、何年も魔王討伐だけを考え続けてきた勇者。魔王が戦いを望まぬという書簡を送ってきても、王はそれを罠だとはねのけ、一層の努力を勇者に望むのだ。
賢者は、決断した。
それがこの世界をひっくり返してしまうことだとしても。今目の前にいる人々の平和を守らずして、何のための世界であろうか。何のための、我が頭脳であろうか――
「勇者よ……気でも狂ったか……!!」
震える声で、それでも威厳を保とうとふんぞり返る王に、勇者は構わず剣の切先を向けた。
「黙れ、王よ……いや、魔王よ。何年も魔王の存在すら見つからないなど、おかしいと思っていた。お前が……お前こそが魔王だったのだな……!?」
「な、なんだと……?」
勇者はじりじりと間合いをつめ、王の喉元を狙う。王は……魔王などではない、ただの人間にしか過ぎない王は、それに抗う術を持たない。
「魔王討伐のためと言って税金を絞りとり、いたずらに争いを起こし、何の罪もない人々を死に追いやった。そうして民を苦しめていたことに、勇者である私が何年も気付けなかったとは、情けない。しかし、もう騙されないぞ!!」
「待て、違う、わしは魔王などでは……!?」
王の弁明は勇者に届かなかった。最後まで言うこともできなかった。賢者はただその様子を、静かに眺めているだけだった。
王の亡骸は魔王として葬られた。人々は今まで仕えていた王が魔王であったということに驚き、しかし最終的には納得した。誰もいなくなった王座には、勇者が座ることを望む者もいたが、結局空席のまま何十年も平和に過ぎて行った。
賢者は使命を果たした勇者を労い、平和になった世界を勇者と共に旅をして回った。
時折勇者の元から数日離れることがあったが、野暮用だと言いはり、その件については決して多くを語らなかった。
「しかし、王が魔王であったとは、なかなか面白いことを吹き込んだ」
「またそのような昔話を。もういいだろう、忘れてくれ」
「いやいや、忘れられんよ。お主が我が魔王城に単身でやってきて、我輩に頭を下げたときの光景が、昨日のことのように思い出される」
「あのときは必死だった。あのままでは人々は苦しみ続けるし、勇者はいつか無茶をしでかしてあなたに殺されただろう。……王には悪いことをしたが、王の愚行を止めるためにもああする他なかった」
「『王を魔王に仕立て上げるから、我輩には今後死ぬまで魔王であることを明かすな』、とはな。元より我輩も、穏やかに暮らせれば良いとは思っていたが、そんな手があるとは……さすが賢者だな。何年も拮抗していた状況を、たった一週間でひっくり返した」
「こちらはいつあなたの機嫌を損ねて消し炭にされるか、気が気じゃなかったがな」
「確かに、お主の頼み事はなかなか無理難題だった。歴代の魔王であれば即座に殺していただろう。魔王が死んだことにせねばらなんということは、城からもむやみに出られぬからな。さすがに退屈だ」
「そのために、こうして時折あなたの元へ話しに来ているんじゃないか。妙な習慣ができてしまったものだ」
「そうだったな。……しかし、お主が死んだあとはどう時間を潰せば良いのだ。我輩より長くは生きまい」
「私に命を与えてくれさえすればいい。あなたの魔力を貰えれば、この身体でもあなたと同じくらいは生きられる。魔王には簡単なことだろう?」
「確かに、そうだな……もしや、それが本来の目的だったのではあるまいな?」
「どうだろうか」
「全く、食えぬ奴だ」
残った魔物を全て閉じ込めた、ということにしてある、魔王城の庭で、賢者は魔王とくだらない会話を楽しむ。
世界は実に、平和だった。
END
#b#魔王は平和主義で無害だったため、魔王討伐へと消し掛ける王が実は魔王だったと、賢者は勇者に吹き込んだ。賢者を信じた勇者は王を魔王だと思って倒し、結果、搾取や徴兵に苦しんでいた人々に平和な生活が訪れたのだった。#/b#
「バラバラになったカメオ」「8ブックマーク」
カメコがカメオのバラバラになった写真を持ってきたので
カメコと別れようと考えていたカメオは180度考えをひっくり返しました。
一体なぜ?
カメコと別れようと考えていたカメオは180度考えをひっくり返しました。
一体なぜ?
14年11月07日 20:57
【ウミガメのスープ】 [天童 魔子]
【ウミガメのスープ】 [天童 魔子]
解説を見る
カメオは今日戦争へ行く
戦地へ死にに行く
お国のためだ。
仕方がないことだ
自分が死んで家族が生きてくれるならそれでも構わない
しかし幼いカメコは自分のことを覚えてくれるだろうか?
c⌒っ。・ω・。)っあ”ーあ”ー
ただでさえ家族で過ごしてやった時間は僅かだった。
今更父親面することよりも
いっそはじめから父親などいなかったことのほうがカメコが寂しくないんじゃないか?
c⌒っ。・ω・。)っあ”~~う”
そうだ。帰ってこない父親を待ち侘びるよりも
初めから父親はいなかったことにすれば行く分かは悲しくはないはずだ。
新しい父親が出来るとき自分のせいで確執が出来るのも嫌だし
帰ってくることを信じられても困る。自分はもう過去の人となるのだから
カメオは自分の写っている写真を処分するべき切り刻み始めました。
すると娘のカメコがカメオの顔の部分の切れ落ちを持ってきて
(´・ω・` )
(。・ω・。) パ~パ
/ つ ヽつ□
| | っと言うと涙が
. し ヽJ 止まらなくなりました。
そして生きて帰ろうと心に決めました。
戦地へ死にに行く
お国のためだ。
仕方がないことだ
自分が死んで家族が生きてくれるならそれでも構わない
しかし幼いカメコは自分のことを覚えてくれるだろうか?
c⌒っ。・ω・。)っあ”ーあ”ー
ただでさえ家族で過ごしてやった時間は僅かだった。
今更父親面することよりも
いっそはじめから父親などいなかったことのほうがカメコが寂しくないんじゃないか?
c⌒っ。・ω・。)っあ”~~う”
そうだ。帰ってこない父親を待ち侘びるよりも
初めから父親はいなかったことにすれば行く分かは悲しくはないはずだ。
新しい父親が出来るとき自分のせいで確執が出来るのも嫌だし
帰ってくることを信じられても困る。自分はもう過去の人となるのだから
カメオは自分の写っている写真を処分するべき切り刻み始めました。
すると娘のカメコがカメオの顔の部分の切れ落ちを持ってきて
(´・ω・` )
(。・ω・。) パ~パ
/ つ ヽつ□
| | っと言うと涙が
. し ヽJ 止まらなくなりました。
そして生きて帰ろうと心に決めました。
「息子の行方【相談済み問題】」「8ブックマーク」
ある一軒家にて。
父である私の息子がこの家の中で突然いなくなってしまった。
家族総出で家じゅうを探したが一向に見つからない。
玄関には息子の靴もあり、外へ出た様子もない。
窓はすべてカギがかかってて、まだ小さな息子の手が届く高さにはない。
また、家族以外に誰かが出入りした形跡もないのだ。
現在、息子はどこにいるのか、そして何があったのか、みなさんで明らかにしていただきたい。
そして私もそのためになら協力したいので、どんなことでも聞いてほしい。
ディダムズさんにSPしていただきました。
この場で改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
父である私の息子がこの家の中で突然いなくなってしまった。
家族総出で家じゅうを探したが一向に見つからない。
玄関には息子の靴もあり、外へ出た様子もない。
窓はすべてカギがかかってて、まだ小さな息子の手が届く高さにはない。
また、家族以外に誰かが出入りした形跡もないのだ。
現在、息子はどこにいるのか、そして何があったのか、みなさんで明らかにしていただきたい。
そして私もそのためになら協力したいので、どんなことでも聞いてほしい。
ディダムズさんにSPしていただきました。
この場で改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
13年04月08日 21:14
【亀夫君問題】 [+チック]
【亀夫君問題】 [+チック]
投票ありがとうございます!
解説を見る
この家には海山カメコが住んでいる。
数年前に夫を亡くして以来、ずっと一人だ。
そんなカメコも数ヶ月前足を悪くした。
誰の助けもない家の中では不便が多く、特に階段の上り下りは危険だった。
さて、それを危惧した息子夫婦が、家にエレベーターを設置することにした。
カメコも自分のことを思ってくれているのだと知り、とても喜んだ。
エレベーター設置後は危険な生活もかなり改善された。
さらには週に一回、息子夫婦は孫を連れてカメコの家へ訪れる。
身体の具合や、家のことなどを心配して、なるべく助けになろうと考えていた。
カメコにとって、これ以上なくうれしいことだった。
夫婦の息子はまだまだ小さくて遊び盛り。
カメコの家でも好き勝手にしていた。
彼の興味はエレベーターへと向いた。
触っているうちに、扉が開いてしまったのだ。
さっきカメコが昇っていったため、エレベーターの箱は二階にある。
当然、本当は開いてはいけないはずだった。
だが開いてしまったのは、誰も気づかなかったエレベーターの欠陥だった。
彼は親を驚かすため、中へ閉じこもって隠れてしまった。
そのころ二階にいたカメコは一階へ降りるためにエレベーターに乗り込んだ。
むろん真下に孫がいることも知らず、エレベーターは一階へ降下した。
そして、エレベーターの下敷きになった変わり果てた彼が発見されたのだった――。
数年前に夫を亡くして以来、ずっと一人だ。
そんなカメコも数ヶ月前足を悪くした。
誰の助けもない家の中では不便が多く、特に階段の上り下りは危険だった。
さて、それを危惧した息子夫婦が、家にエレベーターを設置することにした。
カメコも自分のことを思ってくれているのだと知り、とても喜んだ。
エレベーター設置後は危険な生活もかなり改善された。
さらには週に一回、息子夫婦は孫を連れてカメコの家へ訪れる。
身体の具合や、家のことなどを心配して、なるべく助けになろうと考えていた。
カメコにとって、これ以上なくうれしいことだった。
夫婦の息子はまだまだ小さくて遊び盛り。
カメコの家でも好き勝手にしていた。
彼の興味はエレベーターへと向いた。
触っているうちに、扉が開いてしまったのだ。
さっきカメコが昇っていったため、エレベーターの箱は二階にある。
当然、本当は開いてはいけないはずだった。
だが開いてしまったのは、誰も気づかなかったエレベーターの欠陥だった。
彼は親を驚かすため、中へ閉じこもって隠れてしまった。
そのころ二階にいたカメコは一階へ降りるためにエレベーターに乗り込んだ。
むろん真下に孫がいることも知らず、エレベーターは一階へ降下した。
そして、エレベーターの下敷きになった変わり果てた彼が発見されたのだった――。
「脱獄の相棒は」「8ブックマーク」
なああんた、こいつを見てくれ。
・・・へへ、凄いだろ?俺の顔が映るぐれぇにぴっかぴかに磨いてある。
ムショに金目のもんはご法度だが、とっ捕まる寸前に飲み込んだのさ。
独房暮らしってな退屈でさ。
うっかり俺が金貨を隠し持ってるのをばらした途端、ごろつきども、鼻息を荒くして「自分は脱獄のプロだ」とかぬかしだした。地獄の沙汰も金次第さな。
俺も脱獄を考えなかったわけじゃない。この監獄のことを色々調べてみた。
・・・結果、俺一人じゃどうも難しいってことが分かった。
なんとか監獄の図面は手に入れたが、外は監視の目が厳しくて、昼間はノミの子一匹這い出せやしねえ。
連中は金貨を寄こす代わりに牢破りを手伝ってくれるらしい。その頼れる相棒候補は二人。
思うに、三人行動は止めたほうがいいな。人が多けりゃその分危険も増すからよ。
一人目は#red#隣の男#/red#。がめつくてみじめったらしい嫌な野郎だ。おまけに疑り深いときてる。
牢番の気配に敏感だとか自慢げに話してたよ。声から察するに相当ブサイクだな。
馬鹿の癖に自信満々だから笑っちまうよ。
もう一人は#red#向かいの男#/red#。挙動不審で気味が悪ぃ。
こいつは正直よくわからん。空気も読めない。同伴は御免被りたい。
・・・とまあ、情報は少ねえし期待できる顔ぶれでもねえが、できるだけ万全を期したい。
あんた!どっちの男に頼るべきか突きとめてくれ。
俺が納得できる理由付きでな。
・・・へへ、凄いだろ?俺の顔が映るぐれぇにぴっかぴかに磨いてある。
ムショに金目のもんはご法度だが、とっ捕まる寸前に飲み込んだのさ。
独房暮らしってな退屈でさ。
うっかり俺が金貨を隠し持ってるのをばらした途端、ごろつきども、鼻息を荒くして「自分は脱獄のプロだ」とかぬかしだした。地獄の沙汰も金次第さな。
俺も脱獄を考えなかったわけじゃない。この監獄のことを色々調べてみた。
・・・結果、俺一人じゃどうも難しいってことが分かった。
なんとか監獄の図面は手に入れたが、外は監視の目が厳しくて、昼間はノミの子一匹這い出せやしねえ。
連中は金貨を寄こす代わりに牢破りを手伝ってくれるらしい。その頼れる相棒候補は二人。
思うに、三人行動は止めたほうがいいな。人が多けりゃその分危険も増すからよ。
一人目は#red#隣の男#/red#。がめつくてみじめったらしい嫌な野郎だ。おまけに疑り深いときてる。
牢番の気配に敏感だとか自慢げに話してたよ。声から察するに相当ブサイクだな。
馬鹿の癖に自信満々だから笑っちまうよ。
もう一人は#red#向かいの男#/red#。挙動不審で気味が悪ぃ。
こいつは正直よくわからん。空気も読めない。同伴は御免被りたい。
・・・とまあ、情報は少ねえし期待できる顔ぶれでもねえが、できるだけ万全を期したい。
あんた!どっちの男に頼るべきか突きとめてくれ。
俺が納得できる理由付きでな。
11年03月27日 00:27
【亀夫君問題】 [笹アイス]
【亀夫君問題】 [笹アイス]
解説を見る
隣の男は盲目、向かいの男は聾だった。夜しか脱獄できないなら隣の男を頼るのが得策だろう。
隣の男は目が見えなかった。
そのため、金貨を提示されても納得せず、「お願いだからそいつを握らせてくれ」としつこく頼んでいた。
耳がいいので牢番の気配には敏感だが、牢屋の図面を見せられても分からない。
そのため「口で説明してくれ」と頼み、馬鹿にされていた。
向かいの男は耳が聞こえず読唇術で会話していた。
目も合わさず唇ばかり見ていたため「挙動不審」、
目を閉じていると話しかけられても気づかず、牢番の足音にも気づかないため「空気を読まない」と評されていた。
二人とも相棒に選んでもらえなくなるのを恐れて、自分の障害を隠していたのだ。
隣の男は目が見えなかった。
そのため、金貨を提示されても納得せず、「お願いだからそいつを握らせてくれ」としつこく頼んでいた。
耳がいいので牢番の気配には敏感だが、牢屋の図面を見せられても分からない。
そのため「口で説明してくれ」と頼み、馬鹿にされていた。
向かいの男は耳が聞こえず読唇術で会話していた。
目も合わさず唇ばかり見ていたため「挙動不審」、
目を閉じていると話しかけられても気づかず、牢番の足音にも気づかないため「空気を読まない」と評されていた。
二人とも相棒に選んでもらえなくなるのを恐れて、自分の障害を隠していたのだ。
「【猛者のスープ】それは私と、羽根を隠した鳩が言う」「8ブックマーク」
恋人から渡された花束を手に、私はとあるビルの屋上を訪れた。ビルの縁にそっと花束を置いた私は、ふと背後に気配を感じ、後ろを振り返った。
そこにいたのは恋人だった。
確かな足取りで向かってくる彼女の姿に私は心底驚いたが、やがて事態の真相を悟った。彼女はずっと、自分を殺すつもりだったのだ――と。
どういうことだろう?
そこにいたのは恋人だった。
確かな足取りで向かってくる彼女の姿に私は心底驚いたが、やがて事態の真相を悟った。彼女はずっと、自分を殺すつもりだったのだ――と。
どういうことだろう?
17年08月22日 23:00
【ウミガメのスープ】 [ポトフ]
【ウミガメのスープ】 [ポトフ]
解説を見る
ビルの屋上。恋人から渡された花束をそっと置き、手を合わせながら、私はあの日のことを思い出していた。あの日――私がこの場所から、一人の男を突き落として殺した日のことを。
このビルには、私の勤める会社のオフィスが入っている。彼は私の同僚で、そして――私の恋人の、当時の交際相手だった。
なぜ私が彼に呼び出されてこの場に来たのか、実のところよく覚えていない。貸した金を返せとか、そんな些細なトラブルだったはずだ。そんなきっかけから、いつのにか口論になり、口論はいつしかつかみ合いに発展していた。
……殺すつもりなどなかったのだ。つかみかかってくる彼を振り払い、突き飛ばした先に、屋上のコンクリートは続いていなかった。
彼は落ちていった――。
私は恐る恐る、屋上の縁から下を覗き込んだ。彼はビルの入り口の前で倒れていた。死んでいるのは明らかだった。
茫然と下の様子を見つめていた私は、誰かに見られている気がして慌てて顔を引っ込めた。そして急いで屋上から離れた。
そのあとのことはよく覚えていない。気がついたら自宅のベッドで寝ていた。 逃げ出したい気持ちを抑え、翌朝なんとか出社すると、当然大騒ぎになっていた。周囲の人間ともども私も何度か警察に事情を聞かれ、生きた心地もしなかったが、幸運にも私が逮捕されることはなかった。警察は自殺と結論付けたらしいと噂で聞いたが、本当のところは分からない。
彼への罪悪感はあったが、それよりも日常を取り戻せることへの安堵の方が大きかった。私は、あの時屋上で本当は何があったのか、その真実を己の胸にのみ仕舞い込むことに決めたのだ。
しかし、話はそれで終わらなかった。
彼の葬儀の日、私は彼の恋人だという女性と出会った。話を聞くと、なんと彼女はあの日、彼を迎えにビルの前まで来ていたらしい。そして――彼が落ちてくるその瞬間を目撃してしまったそうだ。
あれ以来、高いところが怖いんです。彼のようになってしまうんじゃないかという気がして……
彼の死を目撃したショックで、高所恐怖症を発症してしまったらしい。日常生活にも支障を来すようになり、住んでいたマンションも引っ越してしまった――彼女はそう語った。
私は思った、残された彼女を支えていくことが、彼へのせめてもの罪滅ぼしになるのではないか、と。
彼女のことを気にかけ、何かと世話をするうち、私は彼女と交際するようになっていた。もっとも、私の彼女への思いが恋愛感情なのか、それともある種の義務感なのか、今となってはもう分からない。
彼女の、高いところへの恐怖は相当だった。私の住居はアパートの2階にあったが、たったそれだけの高さでも彼女は怖がるので、彼女が来ているときはずっとベランダのカーテンを閉めておかなければならなかった。ショッピングモールへ行ったとき、何気なく乗ったエレベーターがガラス張りで、降りる暇もなく扉が閉まってしまったのたが、エレベーターが上昇している間中ずっと、彼女はうずくまって子どものように泣きわめいていた。
今年も彼の命日がやってきた。でも、そんな彼女だから、あの屋上へ弔いの花を供えにいくことは不可能だった。だから、彼女に乞われて、私が代わりにその役目を果たす。
――ビルの屋上。
手を合わせ、そっと目を閉じていた私は、背後に気配を感じ、思わず振り返った。
そこにいたのは恋人だった。
確かな足取りで向かってくる彼女の姿に、私は心底驚いた。高所恐怖所の彼女が、こんなところへ来れるはずがない――。
だが、まっすぐに歩く彼女の足取りは、どうみても高所恐怖症を患う者のそれではなかった。
混乱する頭が、ひとつの結論を導き出した。
――彼女は、高所恐怖症などではなかったのだ。
あの晩、私が彼を突き落してしまった晩、彼女はきっと見たのだ。屋上から彼の死体を見下ろす、私の顔を。私が感じた視線、あれは彼女のものだったのだ。
気付いていたのだ、私が彼を殺したのだと。
そして彼女は、彼が味わった恐怖を私に味わわせるために、その復讐を誰にも疑われることなく果たすために、ずっと準備をしてきたのに違いない。このあと私の死体が見つかったとして、誰が彼女を疑うだろう? 高所恐怖症で高いところに来れるはずのない、彼女を。
誰にも疑われぬよう、何年も高所恐怖症を演じ続け、そして今日、彼女は私をこのビルから落として殺すため、花束を渡してここへおびき出し、先回りして私を待ち構えていたのだ。
見たこともない冷たい目をした彼女が、私のもとへ迫ってくる。手を伸ばせば、私の身体に届くだろう。たったの一押しで、私の身体は奈落の底へと落ちていくだろう――
#b#【簡易解説】#/b#
#b#かつて私はこのビルから男を突き落として殺した。私の恋人は当時その男の恋人であり、私が男を殺したのだと察していた。#/b#
#b#彼女は私に復讐するため、私に近づいた。#/b#
#red#それとともに彼女は始めた。長きにわたる、高所恐怖症の演技を。#/red#
#b#男の追悼のため、花束を現場の屋上に置いてほしい。#/b#
#b#その願いを受け入れて屋上に行った私が見たものは、高所恐怖症の人間には近づけないはずのそこに現れ、確かな足取りで私に近づいて来る彼女だった。#/b#
#b#私は悟った。彼女はすべて知っていた。彼女の高所恐怖症は誰にも疑われずに私を殺すための演技だった。そして今その仮面は取り払われ、復讐の時がやってきたのだと。#/b#
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Who'll be chief mourner?
I, said the Dove,
I mourn for my love,
I'll be chief mourner.
誰が喪主になるのだい?
それは私と、鳩が言う。
愛する者を悼むため、
私が喪主に、なりましょう。
マザー・グース ――Who killed Cock Robin ?――
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このビルには、私の勤める会社のオフィスが入っている。彼は私の同僚で、そして――私の恋人の、当時の交際相手だった。
なぜ私が彼に呼び出されてこの場に来たのか、実のところよく覚えていない。貸した金を返せとか、そんな些細なトラブルだったはずだ。そんなきっかけから、いつのにか口論になり、口論はいつしかつかみ合いに発展していた。
……殺すつもりなどなかったのだ。つかみかかってくる彼を振り払い、突き飛ばした先に、屋上のコンクリートは続いていなかった。
彼は落ちていった――。
私は恐る恐る、屋上の縁から下を覗き込んだ。彼はビルの入り口の前で倒れていた。死んでいるのは明らかだった。
茫然と下の様子を見つめていた私は、誰かに見られている気がして慌てて顔を引っ込めた。そして急いで屋上から離れた。
そのあとのことはよく覚えていない。気がついたら自宅のベッドで寝ていた。 逃げ出したい気持ちを抑え、翌朝なんとか出社すると、当然大騒ぎになっていた。周囲の人間ともども私も何度か警察に事情を聞かれ、生きた心地もしなかったが、幸運にも私が逮捕されることはなかった。警察は自殺と結論付けたらしいと噂で聞いたが、本当のところは分からない。
彼への罪悪感はあったが、それよりも日常を取り戻せることへの安堵の方が大きかった。私は、あの時屋上で本当は何があったのか、その真実を己の胸にのみ仕舞い込むことに決めたのだ。
しかし、話はそれで終わらなかった。
彼の葬儀の日、私は彼の恋人だという女性と出会った。話を聞くと、なんと彼女はあの日、彼を迎えにビルの前まで来ていたらしい。そして――彼が落ちてくるその瞬間を目撃してしまったそうだ。
あれ以来、高いところが怖いんです。彼のようになってしまうんじゃないかという気がして……
彼の死を目撃したショックで、高所恐怖症を発症してしまったらしい。日常生活にも支障を来すようになり、住んでいたマンションも引っ越してしまった――彼女はそう語った。
私は思った、残された彼女を支えていくことが、彼へのせめてもの罪滅ぼしになるのではないか、と。
彼女のことを気にかけ、何かと世話をするうち、私は彼女と交際するようになっていた。もっとも、私の彼女への思いが恋愛感情なのか、それともある種の義務感なのか、今となってはもう分からない。
彼女の、高いところへの恐怖は相当だった。私の住居はアパートの2階にあったが、たったそれだけの高さでも彼女は怖がるので、彼女が来ているときはずっとベランダのカーテンを閉めておかなければならなかった。ショッピングモールへ行ったとき、何気なく乗ったエレベーターがガラス張りで、降りる暇もなく扉が閉まってしまったのたが、エレベーターが上昇している間中ずっと、彼女はうずくまって子どものように泣きわめいていた。
今年も彼の命日がやってきた。でも、そんな彼女だから、あの屋上へ弔いの花を供えにいくことは不可能だった。だから、彼女に乞われて、私が代わりにその役目を果たす。
――ビルの屋上。
手を合わせ、そっと目を閉じていた私は、背後に気配を感じ、思わず振り返った。
そこにいたのは恋人だった。
確かな足取りで向かってくる彼女の姿に、私は心底驚いた。高所恐怖所の彼女が、こんなところへ来れるはずがない――。
だが、まっすぐに歩く彼女の足取りは、どうみても高所恐怖症を患う者のそれではなかった。
混乱する頭が、ひとつの結論を導き出した。
――彼女は、高所恐怖症などではなかったのだ。
あの晩、私が彼を突き落してしまった晩、彼女はきっと見たのだ。屋上から彼の死体を見下ろす、私の顔を。私が感じた視線、あれは彼女のものだったのだ。
気付いていたのだ、私が彼を殺したのだと。
そして彼女は、彼が味わった恐怖を私に味わわせるために、その復讐を誰にも疑われることなく果たすために、ずっと準備をしてきたのに違いない。このあと私の死体が見つかったとして、誰が彼女を疑うだろう? 高所恐怖症で高いところに来れるはずのない、彼女を。
誰にも疑われぬよう、何年も高所恐怖症を演じ続け、そして今日、彼女は私をこのビルから落として殺すため、花束を渡してここへおびき出し、先回りして私を待ち構えていたのだ。
見たこともない冷たい目をした彼女が、私のもとへ迫ってくる。手を伸ばせば、私の身体に届くだろう。たったの一押しで、私の身体は奈落の底へと落ちていくだろう――
#b#【簡易解説】#/b#
#b#かつて私はこのビルから男を突き落として殺した。私の恋人は当時その男の恋人であり、私が男を殺したのだと察していた。#/b#
#b#彼女は私に復讐するため、私に近づいた。#/b#
#red#それとともに彼女は始めた。長きにわたる、高所恐怖症の演技を。#/red#
#b#男の追悼のため、花束を現場の屋上に置いてほしい。#/b#
#b#その願いを受け入れて屋上に行った私が見たものは、高所恐怖症の人間には近づけないはずのそこに現れ、確かな足取りで私に近づいて来る彼女だった。#/b#
#b#私は悟った。彼女はすべて知っていた。彼女の高所恐怖症は誰にも疑われずに私を殺すための演技だった。そして今その仮面は取り払われ、復讐の時がやってきたのだと。#/b#
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Who'll be chief mourner?
I, said the Dove,
I mourn for my love,
I'll be chief mourner.
誰が喪主になるのだい?
それは私と、鳩が言う。
愛する者を悼むため、
私が喪主に、なりましょう。
マザー・グース ――Who killed Cock Robin ?――
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