「腕を送る男」「2ブックマーク」
ある男が郵便で小包を受け取った。
包みの中には、人間の切断された右腕が入っていた。
男は腕をしげしげと見つめてから、包み直して別の男に送った。
2人目の男も、腕をしげしげと見つめたのちに、森へ持っていき、焼却してしまった。
2人はなぜ、こんなことをしたのだろう?
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
はじめまして、P(ぴぃ)といいます。^^
当問題は、皆様お察しの通り「腕を送る男」の
パロディ・オマージュ問題となっております。
しかし、本家の解答の足下にも及ばない出来で、
またより素晴らしい別解があるかもしれませんが、
初出題故、温かく見守っていただければ、幸いです。
わたしは学生の身なので、なかなか応答できないことも
あるかもしれません。ご理解とご協力の程お願い致します。
包みの中には、人間の切断された右腕が入っていた。
男は腕をしげしげと見つめてから、包み直して別の男に送った。
2人目の男も、腕をしげしげと見つめたのちに、森へ持っていき、焼却してしまった。
2人はなぜ、こんなことをしたのだろう?
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―
はじめまして、P(ぴぃ)といいます。^^
当問題は、皆様お察しの通り「腕を送る男」の
パロディ・オマージュ問題となっております。
しかし、本家の解答の足下にも及ばない出来で、
またより素晴らしい別解があるかもしれませんが、
初出題故、温かく見守っていただければ、幸いです。
わたしは学生の身なので、なかなか応答できないことも
あるかもしれません。ご理解とご協力の程お願い致します。
12年02月19日 20:00
【ウミガメのスープ】 [ぴぃちゃん]
【ウミガメのスープ】 [ぴぃちゃん]
初問題でした。ご参加ありがとうございました。
解説を見る
あいつとは、飲み屋で知り合った。
「皆が笑って暮らせる世界が必要なんだ!」
おれは、10年前からしがない工場に勤めている。ある夜、一人で飲み屋に入ると、
笑顔でサイダーを飲んでいる男を見つけた。こちらから話しかけたのか、
その辺はよく覚えていないが、とにかく、いろんなことを話した。
同い年だということもわかり、ますます意気投合していった。
あいつは自分が訓練生であることを話し、またおれが工場で働いていることを知ると、
急にサイダーの瓶をおき、まじめな顔になって、それはそれは見事な敬礼をしてくれた。
「国を支える若き技術者に、最敬礼」
初めて、自分の仕事を誇らしく思った。その後彼は続けた。
「おれの夢は皆が笑顔な世界を作ることだ。
暗く混迷した今、皆が笑って暮らせる世界が必要なんだ!」
その後もあいつとは良く飲んだ。あいつは、いつもサイダーを片手に、笑っていた。
たが、あの日は違った。
あいつが酒を飲んでいた。心なしか目が赤い。
おれは勇気を持ってあいつに話しかけてみた。
すると彼は、おう、お前か、といった後、こう言った。
「この国は戦争をする」
遅くとも来月には遠い地に遠征するらしい。
おそらく手紙を書く暇もない、と。
気がつけば、俺も泣いていた。
あいつは最後に言った。
「おれには妻と、息子がいる。だがおれはずっと寮生活だから、息子は妻にまかせっきりだった。そんな息子も今年で10歳になる。息子を、二人を頼む」
翌日新聞に目を通すと、大きな二つの国がぶつかり、
うちの軍も連合軍として、他国に攻め入る様子が書かれていた。
おれはまず彼らの元へ行った。奥さんと話をすると、
「あの人が、そう・・・わかりました」
と言い、息子にも会わせてくれた。
やがて戦争が始まった。
工場は国の命令で武器を造るようになり、その金を少しずつ、あの家に送っていった。
その戦争は10年近く続いた。
戦争が始まってから5年ほどたったある日、母親が倒れたと息子から連絡が入った。
女手一つで息子を育て、かなりきていたらしい。
すぐに病院に駆けつけたが、多くの医者が戦地に駆り出されており、
どうすることもできないということだった。倒れてから3日後、母は静かに亡くなっていった。
お葬式も簡単に行われ、しばらくして息子は遠い親戚の家に引き取られた。旅立つ直前、
彼はおれに話してくれた。
父親が憎い。
あんなときにも、結局一度も駆けつけることはなかったと。
どうやら、母親が倒れてすぐに父親にも手紙を出したらしい。
もちろんあいつにそんな余裕はないだろう。もしかしたら読むことすらできなかったかもしれない。
そのことを彼に伝えると、
「そんなのは関係ない!
親父は、母さんみたいにのことが好きじゃないのか!?
お母さんのことが大事じゃないのか!?」
と泣きながら怒鳴っていた。おれはそれ以上、何も言うことができなかった。
そして戦争は終結した。
情勢も安定に向かいだし、うちの工場も兵器製造をやめるようになったころ、
おれのもとに一つの小包が届いた。中には右腕と、一枚の紙が入っていた。
たぶん外人が書いたのだろう、下手な字で次の文が書かれていた。
わたしは、戦地で彼と知り合った者です。
彼はいつも“帰ったら、息子に会いたい”といっていました。
そして彼は先月、撃たれて死にました。
彼は最後にいっていました。
もう息子には会えない、でもせめて最後に握手がしたい。
大人になったあいつとあって、握手するのが夢なんだ、と。
自分の右腕を、あなたに送るように頼まれました。
妻が死んだこと、息子が親戚に引き取られたことを聞いた。
あいつなら、息子と握手ができるようにしてくれるはずだ、と。
おれは泣いた。悩んだ。おれだったら真っ先に手を握り泣き叫ぶだろう。
だけど、あの息子は・・・・・・
おれはしばらく考えた後、そのまま彼の親戚の家へ包みを送った。
おそらく、おれが何を言おうが言うまいが、彼は腕を捨てるだろう。
無理に握手させる必要はない。ありのままを伝え、受け止めることでしか、前に進めない。
お前の夢は、皆が笑顔になることだ。それはおれが一番良く知っている。
お前は、息子と握手するのが夢なんていう、小さな人間じゃないこともな。
そう、ただ彼の頼みに何もできなかった自分が、悔しいだけだ。
今日は久しぶりに、サイダーでも飲もうか。
「皆が笑って暮らせる世界が必要なんだ!」
おれは、10年前からしがない工場に勤めている。ある夜、一人で飲み屋に入ると、
笑顔でサイダーを飲んでいる男を見つけた。こちらから話しかけたのか、
その辺はよく覚えていないが、とにかく、いろんなことを話した。
同い年だということもわかり、ますます意気投合していった。
あいつは自分が訓練生であることを話し、またおれが工場で働いていることを知ると、
急にサイダーの瓶をおき、まじめな顔になって、それはそれは見事な敬礼をしてくれた。
「国を支える若き技術者に、最敬礼」
初めて、自分の仕事を誇らしく思った。その後彼は続けた。
「おれの夢は皆が笑顔な世界を作ることだ。
暗く混迷した今、皆が笑って暮らせる世界が必要なんだ!」
その後もあいつとは良く飲んだ。あいつは、いつもサイダーを片手に、笑っていた。
たが、あの日は違った。
あいつが酒を飲んでいた。心なしか目が赤い。
おれは勇気を持ってあいつに話しかけてみた。
すると彼は、おう、お前か、といった後、こう言った。
「この国は戦争をする」
遅くとも来月には遠い地に遠征するらしい。
おそらく手紙を書く暇もない、と。
気がつけば、俺も泣いていた。
あいつは最後に言った。
「おれには妻と、息子がいる。だがおれはずっと寮生活だから、息子は妻にまかせっきりだった。そんな息子も今年で10歳になる。息子を、二人を頼む」
翌日新聞に目を通すと、大きな二つの国がぶつかり、
うちの軍も連合軍として、他国に攻め入る様子が書かれていた。
おれはまず彼らの元へ行った。奥さんと話をすると、
「あの人が、そう・・・わかりました」
と言い、息子にも会わせてくれた。
やがて戦争が始まった。
工場は国の命令で武器を造るようになり、その金を少しずつ、あの家に送っていった。
その戦争は10年近く続いた。
戦争が始まってから5年ほどたったある日、母親が倒れたと息子から連絡が入った。
女手一つで息子を育て、かなりきていたらしい。
すぐに病院に駆けつけたが、多くの医者が戦地に駆り出されており、
どうすることもできないということだった。倒れてから3日後、母は静かに亡くなっていった。
お葬式も簡単に行われ、しばらくして息子は遠い親戚の家に引き取られた。旅立つ直前、
彼はおれに話してくれた。
父親が憎い。
あんなときにも、結局一度も駆けつけることはなかったと。
どうやら、母親が倒れてすぐに父親にも手紙を出したらしい。
もちろんあいつにそんな余裕はないだろう。もしかしたら読むことすらできなかったかもしれない。
そのことを彼に伝えると、
「そんなのは関係ない!
親父は、母さんみたいにのことが好きじゃないのか!?
お母さんのことが大事じゃないのか!?」
と泣きながら怒鳴っていた。おれはそれ以上、何も言うことができなかった。
そして戦争は終結した。
情勢も安定に向かいだし、うちの工場も兵器製造をやめるようになったころ、
おれのもとに一つの小包が届いた。中には右腕と、一枚の紙が入っていた。
たぶん外人が書いたのだろう、下手な字で次の文が書かれていた。
わたしは、戦地で彼と知り合った者です。
彼はいつも“帰ったら、息子に会いたい”といっていました。
そして彼は先月、撃たれて死にました。
彼は最後にいっていました。
もう息子には会えない、でもせめて最後に握手がしたい。
大人になったあいつとあって、握手するのが夢なんだ、と。
自分の右腕を、あなたに送るように頼まれました。
妻が死んだこと、息子が親戚に引き取られたことを聞いた。
あいつなら、息子と握手ができるようにしてくれるはずだ、と。
おれは泣いた。悩んだ。おれだったら真っ先に手を握り泣き叫ぶだろう。
だけど、あの息子は・・・・・・
おれはしばらく考えた後、そのまま彼の親戚の家へ包みを送った。
おそらく、おれが何を言おうが言うまいが、彼は腕を捨てるだろう。
無理に握手させる必要はない。ありのままを伝え、受け止めることでしか、前に進めない。
お前の夢は、皆が笑顔になることだ。それはおれが一番良く知っている。
お前は、息子と握手するのが夢なんていう、小さな人間じゃないこともな。
そう、ただ彼の頼みに何もできなかった自分が、悔しいだけだ。
今日は久しぶりに、サイダーでも飲もうか。
「あの羽が落ちるとき」「2ブックマーク」
手を伸ばした先にある羽が地に落ちたとき、カメオは、
このままだと自分が会社に行くことはできないな、と思った。
一体どういうこと?
このままだと自分が会社に行くことはできないな、と思った。
一体どういうこと?
16年03月01日 18:56
【ウミガメのスープ】 [ごがつあめ涼花]
【ウミガメのスープ】 [ごがつあめ涼花]
解説を見る
お正月、カメオは娘のカメコと#b#羽根つき#/b#をしていた。
しかし、カメコが放ったショットに対応しきれず、カメオは手を伸ばしたが、#red#羽根つきの羽は落ちてしまった。#/red#
そんなカメオに、カメコは笑顔でこう言った。
#b#「お父さん、じゃあ顔に落書きするね!」#/b#
そう。#red#負けたほうが顔に墨を塗る。#/red#羽根つきのルールの1つである。
#b#カメコに墨を塗られたカメオは、この顔のままでは会社に行くことはできないな、と思ったのだ。#/b#
しかし、カメコが放ったショットに対応しきれず、カメオは手を伸ばしたが、#red#羽根つきの羽は落ちてしまった。#/red#
そんなカメオに、カメコは笑顔でこう言った。
#b#「お父さん、じゃあ顔に落書きするね!」#/b#
そう。#red#負けたほうが顔に墨を塗る。#/red#羽根つきのルールの1つである。
#b#カメコに墨を塗られたカメオは、この顔のままでは会社に行くことはできないな、と思ったのだ。#/b#
「明るくなるまで待って」「2ブックマーク」
ヤスシはサヤカに愛を囁くために、
窓の外が明るくなるのをじっと待った。
何故だろうか?
窓の外が明るくなるのをじっと待った。
何故だろうか?
14年11月06日 23:10
【ウミガメのスープ】 [牛削り]
【ウミガメのスープ】 [牛削り]
-
解説を見る
上越新幹線「とき」
東京駅を始発に、埼玉、群馬を通り、新潟に至る。
山間部を突っ切るため、トンネルの数は非常に多い。
ヤスシは窓際の自由席に深く座り、ぼんやりと外を眺めていた。
東京駅のホームで、別れ際に見たサヤカの顔が忘れられない。
「新潟でやりたいことがあるんだ」
ヤスシがそう告げた時、サヤカは「私」と言った。
「……は、賛成だよ。ずっと夢だったんだもんね。頑張って!」
「私も」と言いかけてできた不自然な間。
ヤスシはそれに気付かないふりをした。
回想の中でホームに立っているサヤカは、新幹線を見送った後も、ずっと立ち尽くしていた。
そしてついに、堪えていた涙を落とした。
悲しそうな彼女を優しく包んであげることもできない自分を、どうしようもなく情けないと思った。
高崎駅を通過する頃、ヤスシは居ても立ってもいられなくなった。
客席を出て、携帯電話を開く。
もどかしい指でサヤカの番号を探す。
しかし。
#red#──圏外#/red#
ドアの窓から見える景色は真っ黒だった。
#red#トンネルに入ったのだ#/red#。
ヤスシは携帯電話を開いたまま、忙しなく体を揺すらせる。
窓ガラスに写る気弱な男。
早く、抜けてくれ。
永遠とも思える時が経ち、ついに、#red#窓の外が明るくなった#/red#。
ヤスシはすぐに通話ボタンを押した。
6コール目で、サヤカが出た。
「……ヤスシ? どうしたの?」
「あのさ……聞いてほしいんだ」
新幹線の走行音が、妙に大きく聞こえる。
「今日、何も喋れなかったけど、本当はすごく大事な話がしたかったんだ。
でも、勇気が出なかった」
言葉の一つ一つが、鉛のようだ。
「サヤカ、俺、本当はもっとサヤカと一緒にいたいんだ。だからサヤカの気持ちに答えてあげたかった。
でも、俺と一緒に来ることが本当にサヤカの幸せになるのか、自信が持てなかったんだ。
俺がやろうとしてるのは、全く先の見えない、夢物語みたいな仕事だ。
人並みの生活ができるかどうかもわからない。
"それでもついてこい"って言えたらカッコいいよね。
でもやっぱり、今の俺にはそんな資格はない」
サヤカは黙っている。
「でもさ、サヤカ。
俺、これからがむしゃらに働くよ。
いろんなことを経験して、勉強も超する。
今は真っ暗で、手探りでしか進めないけど、いつか自信をつけて、#b#目の前が明るくなったら#/b#、
そしたら俺はサヤカに……」
やはり大事なところで言い淀んでしまう。
目を瞑って、覚悟を決める。
「……サヤカに、結婚を申し込むよ。
何年かかるかわからないけど、#b#それまで待っててほしいんだ#/b#」
サヤカの声は聞こえない。
目を開けると、窓の外はまた暗くなっていた。
大清水トンネル。群馬と新潟をつなぐ、全長2万2千メートルのトンネルだ。
これを抜ければ、雪国である。
右手に握りしめた携帯電話は切れていた。
いつ切れたのかはわからない。
ヤスシは繋がっていない電話に向かって、
「頑張るね」
と囁いた。
────────────
#big5#簡#/big5#易解説
新幹線内でサヤカに電話しようとしたヤスシ。
しかしトンネルに入り圏外となってしまったため、
トンネルを抜けて窓の外が明るくなるのを待った。
東京駅を始発に、埼玉、群馬を通り、新潟に至る。
山間部を突っ切るため、トンネルの数は非常に多い。
ヤスシは窓際の自由席に深く座り、ぼんやりと外を眺めていた。
東京駅のホームで、別れ際に見たサヤカの顔が忘れられない。
「新潟でやりたいことがあるんだ」
ヤスシがそう告げた時、サヤカは「私」と言った。
「……は、賛成だよ。ずっと夢だったんだもんね。頑張って!」
「私も」と言いかけてできた不自然な間。
ヤスシはそれに気付かないふりをした。
回想の中でホームに立っているサヤカは、新幹線を見送った後も、ずっと立ち尽くしていた。
そしてついに、堪えていた涙を落とした。
悲しそうな彼女を優しく包んであげることもできない自分を、どうしようもなく情けないと思った。
高崎駅を通過する頃、ヤスシは居ても立ってもいられなくなった。
客席を出て、携帯電話を開く。
もどかしい指でサヤカの番号を探す。
しかし。
#red#──圏外#/red#
ドアの窓から見える景色は真っ黒だった。
#red#トンネルに入ったのだ#/red#。
ヤスシは携帯電話を開いたまま、忙しなく体を揺すらせる。
窓ガラスに写る気弱な男。
早く、抜けてくれ。
永遠とも思える時が経ち、ついに、#red#窓の外が明るくなった#/red#。
ヤスシはすぐに通話ボタンを押した。
6コール目で、サヤカが出た。
「……ヤスシ? どうしたの?」
「あのさ……聞いてほしいんだ」
新幹線の走行音が、妙に大きく聞こえる。
「今日、何も喋れなかったけど、本当はすごく大事な話がしたかったんだ。
でも、勇気が出なかった」
言葉の一つ一つが、鉛のようだ。
「サヤカ、俺、本当はもっとサヤカと一緒にいたいんだ。だからサヤカの気持ちに答えてあげたかった。
でも、俺と一緒に来ることが本当にサヤカの幸せになるのか、自信が持てなかったんだ。
俺がやろうとしてるのは、全く先の見えない、夢物語みたいな仕事だ。
人並みの生活ができるかどうかもわからない。
"それでもついてこい"って言えたらカッコいいよね。
でもやっぱり、今の俺にはそんな資格はない」
サヤカは黙っている。
「でもさ、サヤカ。
俺、これからがむしゃらに働くよ。
いろんなことを経験して、勉強も超する。
今は真っ暗で、手探りでしか進めないけど、いつか自信をつけて、#b#目の前が明るくなったら#/b#、
そしたら俺はサヤカに……」
やはり大事なところで言い淀んでしまう。
目を瞑って、覚悟を決める。
「……サヤカに、結婚を申し込むよ。
何年かかるかわからないけど、#b#それまで待っててほしいんだ#/b#」
サヤカの声は聞こえない。
目を開けると、窓の外はまた暗くなっていた。
大清水トンネル。群馬と新潟をつなぐ、全長2万2千メートルのトンネルだ。
これを抜ければ、雪国である。
右手に握りしめた携帯電話は切れていた。
いつ切れたのかはわからない。
ヤスシは繋がっていない電話に向かって、
「頑張るね」
と囁いた。
────────────
#big5#簡#/big5#易解説
新幹線内でサヤカに電話しようとしたヤスシ。
しかしトンネルに入り圏外となってしまったため、
トンネルを抜けて窓の外が明るくなるのを待った。
「荒廃する少女」「2ブックマーク」
少女は荒廃した街にいる。
夜を彩っていたイルミネーションは植物の蔓のようだ。ビルには埃が積もり長い間、放置されていたことを感じさせる。
――『立ちされ頭を見つけろ』
中性的で抱擁力のある声だった。心地良さげに耳を澄ます。けれど声はもうしなかったので、少女は唇をとがらせた。
《ルール》
1.質問の指示に従って少女は動きます。少女が疑問に答えることはありません。
2.基本は早い者勝ちです。指示が被った場合は最初の人の指示が反映されます。
3.解答には少女の行動の結果が反映されます。
4.それでは短めですが、よろしくお願いします。
夜を彩っていたイルミネーションは植物の蔓のようだ。ビルには埃が積もり長い間、放置されていたことを感じさせる。
――『立ちされ頭を見つけろ』
中性的で抱擁力のある声だった。心地良さげに耳を澄ます。けれど声はもうしなかったので、少女は唇をとがらせた。
《ルール》
1.質問の指示に従って少女は動きます。少女が疑問に答えることはありません。
2.基本は早い者勝ちです。指示が被った場合は最初の人の指示が反映されます。
3.解答には少女の行動の結果が反映されます。
4.それでは短めですが、よろしくお願いします。
15年04月05日 23:16
【新・形式】 [KUZUHARA]
【新・形式】 [KUZUHARA]
解説を見る
幸せで心が暖まり、凍った未来が溶けていく。
魔法使い。
何とも胡散臭い称号だけれど、それを言えばその弟子というか何というか、魔法少女になってしまったからには自分を否定することにもなってしまう。
親切な魔法使い。
聞いたときは嫌な予感がしたけれど、神様が勧める人だし嘘はないだろう――と思って契約を結んだ。今になって考えてみれば嘘はなくとも隠し事はあったのかもしれない。
まあ、会ってみれば普通の人だ。案ずるより産むが易しの言葉通り、事はスムーズに行われた。市井の人間には戸籍やら何やら決まり事が多いらしいけれど、魔法使いは縛られない存在だ。魔法使いに決まり事はない。
約束通り、料理をたくさん紹介してもらった。牛、カニ、豚が特に最近のお気に入りだ。あと一つはどうしても名前を教えてもらえなかったけれど。まあ、変なものは食べさせられてはいない……はず……。その辺は正直あんまり自信がなかったけれど、自由ではあっても孤独ではない生活に、私はようやく慣れてきた。
風がさらりと流れた。
あなたが立ち止まっているときに風や何かの匂いをふと感じたときは、魔法使いが通ったあとかも知れない。
今は文字だって読める。もし何かあったら――何かあったら、私宛に手紙を綴って欲しい。その手紙を掲げてくれたなら、風が吹くだろう。それが、私が手紙を読んだしるしだ。文字が汚くて恥ずかしいから返信はしないけれど、おまじないを掛けさせてもらおう。
内容は秘密。魔法使いに秘密は付き物だから。
『――』
私を呼ぶ声がする。
名残惜しいけれど、また今度。
今度は私が、あなたの幸せを祈ります。
【TRUE END ∞ 優しい魔の手】
魔法使い。
何とも胡散臭い称号だけれど、それを言えばその弟子というか何というか、魔法少女になってしまったからには自分を否定することにもなってしまう。
親切な魔法使い。
聞いたときは嫌な予感がしたけれど、神様が勧める人だし嘘はないだろう――と思って契約を結んだ。今になって考えてみれば嘘はなくとも隠し事はあったのかもしれない。
まあ、会ってみれば普通の人だ。案ずるより産むが易しの言葉通り、事はスムーズに行われた。市井の人間には戸籍やら何やら決まり事が多いらしいけれど、魔法使いは縛られない存在だ。魔法使いに決まり事はない。
約束通り、料理をたくさん紹介してもらった。牛、カニ、豚が特に最近のお気に入りだ。あと一つはどうしても名前を教えてもらえなかったけれど。まあ、変なものは食べさせられてはいない……はず……。その辺は正直あんまり自信がなかったけれど、自由ではあっても孤独ではない生活に、私はようやく慣れてきた。
風がさらりと流れた。
あなたが立ち止まっているときに風や何かの匂いをふと感じたときは、魔法使いが通ったあとかも知れない。
今は文字だって読める。もし何かあったら――何かあったら、私宛に手紙を綴って欲しい。その手紙を掲げてくれたなら、風が吹くだろう。それが、私が手紙を読んだしるしだ。文字が汚くて恥ずかしいから返信はしないけれど、おまじないを掛けさせてもらおう。
内容は秘密。魔法使いに秘密は付き物だから。
『――』
私を呼ぶ声がする。
名残惜しいけれど、また今度。
今度は私が、あなたの幸せを祈ります。
【TRUE END ∞ 優しい魔の手】
「呪うのは自らの弱さ」「2ブックマーク」
男は自分の車をぺたりと触った。
そしてこれから悲しい結末を迎えるのだと悟ってしまった。
さてどういうことだろう?
そしてこれから悲しい結末を迎えるのだと悟ってしまった。
さてどういうことだろう?
11年11月20日 23:31
【ウミガメのスープ】 [ふわっふぁするよ]
【ウミガメのスープ】 [ふわっふぁするよ]
鈍いのビデオ ってスロー再生?(´・ω・`)
解説を見る
午前2時 同棲中のアパートの一室
男「仕事で疲れてるところごめんな。ちょっと話したいことがあって」
女「ううん、いいよ。最近お互い忙しかったから話せなかったもんね」
男「ああ、うん……、そうだな」
女「………」
気まずい会話、続かない雑談。
男は直球で聞いた。
男「おまえ……浮気してるだろ?」
女「ううん、してないよ」
まさかの即答、再び会話が詰まる。
男「そっか、そうなんだな」
女「そうだよ、急にびっくりしたよー」
男「ははは、そういえば最近寒いよなー」
女「うん、そだねー」
急に弾む会話、互いに手探りの状態。
男「車の中にいると、温度差でくもっちゃうもんなー」
女「あはは、あるある」
男「うっかり手を置いちゃうと跡が残るんだよなー」
女「あるねー」
男「今日朝車を使おうとしたら、手形が残っててびっくりしたよ、はは」
女「………」
沈黙は肯定。
この恋は終わると男は確信した。
男「昨日遅くまで車使ってどこいってたんだ?」
女「ちょっと待って、それ誰かが悪戯で付けたんじゃないの?」
男「いや車の中からだった」
女「ああ、そういえば私がつけちゃったかも。ごめんね不注意で」
男「そっか、お前俺より手が大きくなったんだな。いつも仕事大変だもんな」
女「………ごめん」
男「俺が買った車の中で、やったな?」
女「うん」
女は翌日出て行った。
男は悲しかった。
それはきっと女が惜しかったのではないのだろう。
女を奪った別の男よりも、自分の手のひらが小さかった。
相手の姿は見たことないけれど、なんとなく情けない気持ちになったのだった。
男「仕事で疲れてるところごめんな。ちょっと話したいことがあって」
女「ううん、いいよ。最近お互い忙しかったから話せなかったもんね」
男「ああ、うん……、そうだな」
女「………」
気まずい会話、続かない雑談。
男は直球で聞いた。
男「おまえ……浮気してるだろ?」
女「ううん、してないよ」
まさかの即答、再び会話が詰まる。
男「そっか、そうなんだな」
女「そうだよ、急にびっくりしたよー」
男「ははは、そういえば最近寒いよなー」
女「うん、そだねー」
急に弾む会話、互いに手探りの状態。
男「車の中にいると、温度差でくもっちゃうもんなー」
女「あはは、あるある」
男「うっかり手を置いちゃうと跡が残るんだよなー」
女「あるねー」
男「今日朝車を使おうとしたら、手形が残っててびっくりしたよ、はは」
女「………」
沈黙は肯定。
この恋は終わると男は確信した。
男「昨日遅くまで車使ってどこいってたんだ?」
女「ちょっと待って、それ誰かが悪戯で付けたんじゃないの?」
男「いや車の中からだった」
女「ああ、そういえば私がつけちゃったかも。ごめんね不注意で」
男「そっか、お前俺より手が大きくなったんだな。いつも仕事大変だもんな」
女「………ごめん」
男「俺が買った車の中で、やったな?」
女「うん」
女は翌日出て行った。
男は悲しかった。
それはきっと女が惜しかったのではないのだろう。
女を奪った別の男よりも、自分の手のひらが小さかった。
相手の姿は見たことないけれど、なんとなく情けない気持ちになったのだった。