「虎穴に入らずんば」「18ブックマーク」
危険を避けていては大きな成功も有り得ない事を、諺でなんというか?
この問題の答えは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」だ。
しかし、カメユキ君はどうしても納得はできなかった。
いったい何故だろうか?
この問題の答えは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」だ。
しかし、カメユキ君はどうしても納得はできなかった。
いったい何故だろうか?
15年03月21日 00:49
【ウミガメのスープ】 [junpocke]
【ウミガメのスープ】 [junpocke]
虎子を得ず
解説を見る
国語のテストにて。
問題:危険を避けていては大きな成功も有り得ない事を、諺でなんというか?
( )に書きなさい。
( )
↑13文字入らんやろ!
正解は分かっていても、カッコに惑わされたカメユキ君は疑いすぎて、違う答えと思ったらしい。
カッコの幅に納得出来ないカメユキ君であった。
問題:危険を避けていては大きな成功も有り得ない事を、諺でなんというか?
( )に書きなさい。
( )
↑13文字入らんやろ!
正解は分かっていても、カッコに惑わされたカメユキ君は疑いすぎて、違う答えと思ったらしい。
カッコの幅に納得出来ないカメユキ君であった。
「お母さん助けて」「18ブックマーク」
カメコは自分の目の前で最愛の娘が衝突事故に巻き込まれてしまったので
救急車を呼ばない選択をした。
一体なぜ?
救急車を呼ばない選択をした。
一体なぜ?
17年01月15日 19:44
【ウミガメのスープ】 [天童 魔子]
【ウミガメのスープ】 [天童 魔子]
解説を見る
カメコの娘は即死しました。
スローモーションのように娘に乗用車が激突し
じわじわと娘の形は絶望的に千切れ失われてしまいました。
もう助からないことは明確でした。
た、助けてくれ~
激突し燃え盛る自動車の中から運転手と思われる人物が助けを求めます。
こいつが、
こいつが娘を奪ったんだ。
怒りにとらわれたカメコは娘の復讐として運転手を助けないため
敢えて救急車を呼びませんでした。
スローモーションのように娘に乗用車が激突し
じわじわと娘の形は絶望的に千切れ失われてしまいました。
もう助からないことは明確でした。
た、助けてくれ~
激突し燃え盛る自動車の中から運転手と思われる人物が助けを求めます。
こいつが、
こいつが娘を奪ったんだ。
怒りにとらわれたカメコは娘の復讐として運転手を助けないため
敢えて救急車を呼びませんでした。
「肉肉そして肉」「18ブックマーク」
焼肉屋だというのに、その男ときたら、鶏や魚介ばかり頼んでいる。宗教上の理由があるわけでもないし、食べ放題なので値段が気になるということもないはずなのだが、男は何故そんなことをするのだろう?
16年08月15日 20:17
【ウミガメのスープ】 [az]
【ウミガメのスープ】 [az]
解説を見る
友人たちと三人で焼肉屋に来た男。
友人1「ハラミ! ツラミ!」
友人2「カルビ! ロース! タン!」
男「あー、肉はもう十分かな。じゃあえっと……鶏と烏賊を二人前」
次々に肉を頼む、食い意地の張った友人二人。肉はだいたい二人が頼んでしまうので、男が注文するのは、ほとんど肉以外になるのである。
友人1「ハラミ! ツラミ!」
友人2「カルビ! ロース! タン!」
男「あー、肉はもう十分かな。じゃあえっと……鶏と烏賊を二人前」
次々に肉を頼む、食い意地の張った友人二人。肉はだいたい二人が頼んでしまうので、男が注文するのは、ほとんど肉以外になるのである。
「【ラテクエ To Go!】 絶望の ピンチを救った 七面鳥」「18ブックマーク」
雪のちらつくクリスマスの夜、とある男がレストランに入店しました。
席に着いた男は、ウェイトレスに尋ねました。
「すみません。この店に七面鳥の丸焼きはありますか?」
「はい。 ございますよ。」
この返事を聞いた男は、自殺を思いとどまった。 一体、なぜ?
席に着いた男は、ウェイトレスに尋ねました。
「すみません。この店に七面鳥の丸焼きはありますか?」
「はい。 ございますよ。」
この返事を聞いた男は、自殺を思いとどまった。 一体、なぜ?
12年12月22日 22:33
【ウミガメのスープ】 [yan]
【ウミガメのスープ】 [yan]
解説を見る
カメオはプロボウラー。一時期全世界に名を馳せていた彼だが、ここ数年は酷いスランプ続き。
蓄えも使い果たした彼は絶望し、自殺の名所であるウミガメ岬に向かい車を走らせていた。
しかし、考え事をしていたせいか、道中、#red#レーン#/red#から外れて道路脇の側溝に脱輪してしまった。
どうにか溝からは脱したものの、タイヤはパンク。寒空の中、#red#スペア#/red#タイヤに交換するハメに。
「ふう、車までガターとは… だがまぁ、かろうじて ”スペア” で挽回、ってところか」 とはいえ、
スペアタイアで長距離を走るわけにはいかない。彼は最寄の駅に車を止め、電車で行こうとした。
ところが、今度は鉄道会社が#red#ストライキ(strike)#/red# 中である。
「ふう、ツイてないな… いや、ボウラーとしては、STRIKE なら大歓迎なんだが…」
もうこの際、飛行機にするか… 空港に行ってチケットを買い、いざ発券手続きに移ろうとすると…
「あら…? すみません! この座席、#red#ダブル#/red#ブッキングしてますわ。 機械の故障かしら…?」
何!? 今度はダブル(#red#※1#/red#)だと…? …ガーター、スペア、ストライク(キ)、ダブルと来れば…!
カメオは空港から見える、一軒のレストランに足を運ぶと、席に着くなりウエイトレスに確認した。
「すみません。この店に七面鳥の丸焼きはありますか?」 「はい。 ございますよ?」
「兄ちゃん、運がいいね!この界隈じゃ、七面鳥(#red#ターキー#/red#)を出す店はウチしかないぜ!」
厨房からマスターが顔を出し、愛想よく笑いかける。 カメオも、満面の笑みで笑い返した。
早速ターキー(#red#※2#/red#)を注文すると、「食前酒に#red#スプリッツァー#/red#は如何ですか?」 と聞かれる。
ここでスプリット(#red#※3#/red#)か! とカメオは苦笑しかけたが、すぐに思い直して注文する。
スプリッツァーでもスピリット(火酒)でも、なんでも来やがれ! 一気に片付けてやるぜ!
店のテレビでは、ニュースが流れていた。「ウミガメ鉄道のストライキは、まだまだ続くようです」
「タートルズのトータス選手、#red#パーフェクトゲーム#/red#達成!」 …もう間違いない。カメオは確信した。
これはきっと、神様からのクリスマスプレゼント。 諦めた自分に、「まだ頑張れ」と言っている。
そして、自殺の名所に行こうとした自分を、様々な手段で止めてくれた。
テーブルに来た七面鳥の丸焼きとスプリッツアーを平らげると、さっきのマスターがやってくる。
「いい食いっぷりだねぇ! これはワシからのおごりだよ」 と、#red#ハムボーン(※4#/red# 骨付きハム)と、
5種類の具が入った#red#ファイブバーガー(※5#/red#)と、#red#パーフェクトレディー#/red#を持ってきた。
「あんた、プロボウラーのカメオだろ? ワシはずっとあんたのファンだったんじゃ! 最近調子を
落としちゃいるようだが、なぁに!ウチの料理を食べて、元気出しとくれよ!」 「…ありがとう!」
ホームから離れたこんな土地で、俺のファンに会えるなんてな… もういつでもレディー・ゴーだ!
…ふと、久しぶりにタバコが吸いたくなる。 きっと、アレも置いてあるだろう。
「…マスター、ここ、タバコは置いてあるかい?」 「ああ、銘柄は?」 「それは、もちろん…」
#big5#「「ラッキー・ストライク!」」#/big5#
#red#※1#/red# ダブル … ボウリングで、ストライクが2回続くこと。
#red#※2#/red# ターキー … 同、3回続くこと。
#red#※4#/red# ハムボーン … 同、4回続くこと。
#red#※5#/red# ファイブバーガー … 同、5回続くこと。
#red#※3#/red# スプリット … 同、ピンが離れた状態で残ること。
蓄えも使い果たした彼は絶望し、自殺の名所であるウミガメ岬に向かい車を走らせていた。
しかし、考え事をしていたせいか、道中、#red#レーン#/red#から外れて道路脇の側溝に脱輪してしまった。
どうにか溝からは脱したものの、タイヤはパンク。寒空の中、#red#スペア#/red#タイヤに交換するハメに。
「ふう、車までガターとは… だがまぁ、かろうじて ”スペア” で挽回、ってところか」 とはいえ、
スペアタイアで長距離を走るわけにはいかない。彼は最寄の駅に車を止め、電車で行こうとした。
ところが、今度は鉄道会社が#red#ストライキ(strike)#/red# 中である。
「ふう、ツイてないな… いや、ボウラーとしては、STRIKE なら大歓迎なんだが…」
もうこの際、飛行機にするか… 空港に行ってチケットを買い、いざ発券手続きに移ろうとすると…
「あら…? すみません! この座席、#red#ダブル#/red#ブッキングしてますわ。 機械の故障かしら…?」
何!? 今度はダブル(#red#※1#/red#)だと…? …ガーター、スペア、ストライク(キ)、ダブルと来れば…!
カメオは空港から見える、一軒のレストランに足を運ぶと、席に着くなりウエイトレスに確認した。
「すみません。この店に七面鳥の丸焼きはありますか?」 「はい。 ございますよ?」
「兄ちゃん、運がいいね!この界隈じゃ、七面鳥(#red#ターキー#/red#)を出す店はウチしかないぜ!」
厨房からマスターが顔を出し、愛想よく笑いかける。 カメオも、満面の笑みで笑い返した。
早速ターキー(#red#※2#/red#)を注文すると、「食前酒に#red#スプリッツァー#/red#は如何ですか?」 と聞かれる。
ここでスプリット(#red#※3#/red#)か! とカメオは苦笑しかけたが、すぐに思い直して注文する。
スプリッツァーでもスピリット(火酒)でも、なんでも来やがれ! 一気に片付けてやるぜ!
店のテレビでは、ニュースが流れていた。「ウミガメ鉄道のストライキは、まだまだ続くようです」
「タートルズのトータス選手、#red#パーフェクトゲーム#/red#達成!」 …もう間違いない。カメオは確信した。
これはきっと、神様からのクリスマスプレゼント。 諦めた自分に、「まだ頑張れ」と言っている。
そして、自殺の名所に行こうとした自分を、様々な手段で止めてくれた。
テーブルに来た七面鳥の丸焼きとスプリッツアーを平らげると、さっきのマスターがやってくる。
「いい食いっぷりだねぇ! これはワシからのおごりだよ」 と、#red#ハムボーン(※4#/red# 骨付きハム)と、
5種類の具が入った#red#ファイブバーガー(※5#/red#)と、#red#パーフェクトレディー#/red#を持ってきた。
「あんた、プロボウラーのカメオだろ? ワシはずっとあんたのファンだったんじゃ! 最近調子を
落としちゃいるようだが、なぁに!ウチの料理を食べて、元気出しとくれよ!」 「…ありがとう!」
ホームから離れたこんな土地で、俺のファンに会えるなんてな… もういつでもレディー・ゴーだ!
…ふと、久しぶりにタバコが吸いたくなる。 きっと、アレも置いてあるだろう。
「…マスター、ここ、タバコは置いてあるかい?」 「ああ、銘柄は?」 「それは、もちろん…」
#big5#「「ラッキー・ストライク!」」#/big5#
#red#※1#/red# ダブル … ボウリングで、ストライクが2回続くこと。
#red#※2#/red# ターキー … 同、3回続くこと。
#red#※4#/red# ハムボーン … 同、4回続くこと。
#red#※5#/red# ファイブバーガー … 同、5回続くこと。
#red#※3#/red# スプリット … 同、ピンが離れた状態で残ること。
「最後のパントマイム」「18ブックマーク」
野山エンジがパントマイミストとしての生涯最後の仕事に選んだのは、実際には存在しないボロボロの板切れを存在するかのように見せるというものだった。
彼はいったいどのような心持ちでこの仕事に臨んだのだろうか。状況を明らかにしつつ、推測せよ。
彼はいったいどのような心持ちでこの仕事に臨んだのだろうか。状況を明らかにしつつ、推測せよ。
17年07月16日 05:23
【ウミガメのスープ】 [牛削り]
【ウミガメのスープ】 [牛削り]
解説を見る
パントマイミスト・野山エンジと、衣装担当の穂村あかりとの恋仲は、団内ではすでに公然の秘密だった。それぞれに職業意識が高く、これまで恋より仕事で生きてきた二人の不器用な恋路を、仲間内の誰もが微笑ましく見守っていた。
ある日、団員たちを乗せた船が転覆し、乗員乗客は荒ぶる海に投げ出された。激しい波にさらわれ、皆散り散りになる中、エンジとあかりは互いの姿を確認できる距離にいた。二人とも、必死に海面に顔を出して立ち泳ぎしている。
「あかり、無事か」
「うん、なんとか。でも足がつりそう。エンジ君は?」
「まだ大丈夫だけど、いつまでもつかわからない」
エンジが見回すと、小さな板切れが一枚、海面に浮いているのが見えた。エンジの方に流れてくる。
「あかり、板が流れてきた。これに掴まってれば、きっと助かる」
「本当? よかった……」
エンジは板を自分の方に引き寄せる。掴まってみて、思う。
この板では一人が限界だ……。
「あかり、とりあえず一枚、そっちに回す。しっかり捕まえて」
「一枚? もう一枚あるの? エンジ君の分もちゃんと?」
「うん、丈夫そうなのがもう一枚来るよ」
エンジが手放して、少し勢いをつけて押し出した板は、無事あかりのもとにたどり着いた。
「エンジ君、捕まえた。これでもちこたえられそう。そっちは?」
「こっちも捕まえた。だいぶ楽になったよ」
エンジはあかりが自分の方を見て安心したように笑ったのを見た。それで、彼も安心した。
板切れは一枚しかなかったのである。エンジの分など、存在しない。
ここに板切れをもう一枚存在させる。それがパントマイミストとしての自分の最後の仕事だと、彼は思った。
「きっともうすぐ救助が来る。それまでがんばろう」
幻想の板切れに身を預けながら、エンジはそう言ってあかりを励ました。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。エンジの体力はとうに限界を超えていた。それでも、たった一人の観客のためのパントマイム・ショーは続いていた。
「エンジ君、私たち、死ぬのかな……」
あかりは弱気になっていた。
「大丈夫だよ。この板があれば、心配いらない。できるだけ体力を使わないように、板にしっかりしがみつくんだ」
言いながら、エンジはいつ死のうかと考えていた。
目の前で自分が沈めば、あかりはショックを受ける。その動揺が、彼女の生存可能性を低めてしまうかもしれない。
あかりが何かに気を取られている隙に、静かに死のう。
「あかり」
水中で激しく足をばたつかせながら、水上に出ている身体にはその素振りを伝えない。そしてそこにはない板切れを全力で表現し続ける。もうこれ以上はもたないと思った。
「あかり、愛してるよ」
「私も……」
エンジは自分が沈んでいくときのことを想像した。遠くない未来にやってくる死。身体中の力を使い果たして、何も感じなくなって、青い、青い海に落ちていく。
怖くはなかった。そのまま自分は溶けていって、海になるんだろう。そうしたら、俺たちから命を奪おうとしている大きな意思に抗って、あかりを助けてあげよう。優しい波を起こして、彼女を陸まで運んであげるんだ。
酸欠状態で、エンジの思考は論理性を欠いていた。ただひたすら、最後のパントマイムを完遂させようとするだけの機械だった。
死を察知した彼の脳裏に、あかりの顔が映し出された。彼女が時折見せていた、困ったような笑顔。「俺、お腹いっぱいだから」「俺、雨に濡れるの嫌いじゃないから」そんな言い訳をしていつも何かを譲ってきた。その度に、あかりはその表情になった。エンジはそれを、遠慮と感謝の混ざった顔なのだと解釈していた。
死にゆく彼の脳は、そこに別解釈があることを発見した。
違う。俺は思い上がっていた。あかりは俺の嘘に気づいていたんだ。気づいていながら、俺がその嘘で手に入れたかったもの──笑顔を、精一杯実現させてくれていたんだ。困ったような表情は、遠慮なんかじゃなかった。もっとずっと、シンプルな……。享受するものが半分になったとしても、本当は二人でそれを分かち合いたかった。その寂しさ。それが、困ったような笑顔。
論理性を失った彼の、直感のような推理。しかしそれは真実を捉えていた。
生きなくちゃいけない。俺の分まで生きるなんてこと、あかりは望んでいない。
そう思った時、エンジの肉体はすでに海の中だった。しかし彼の最後の生きる意志が、もうピクリとも動かないはずの右腕を動かした。
海面から出たその手を、誰かが掴んだ。
ざぱあっと、彼の身体が海上に現れる。
「大丈夫ですか?」
救助のヘリだ。気を失いかけていた彼は、ヘリが近づいてくるのに気づかなかったのだ。
「手を伸ばしてくれなかったら、助けられませんでしたよ」
救助隊員はそう言って笑った。
引き上げられた機内には、レインコートを被せられたあかりの姿があった。
目が合うと、あかりは今まで見せたことのない最高の笑顔を見せた。
何か言いたかったが、お互い声がかすれていた。
ただただ、無言で抱き合った。
あかりの体温を感じながら、エンジは仕事をやめようかと思った。
相手の一番見たいものを見せられないようでは、エンターテイナーとして失格だ。
あかりの前で演じてしまった最高に無様な演技を最後に、この仕事から足を洗おう。
そう思った。
#big5#【要約解説】#/big5#
#b#恋人と一緒に海に投げ出された野山エンジの目の前に、一人分の身体しか支えられなそうな板切れが流れてきた。#/b#
#b#彼はそれを恋人に譲り、恋人が遠慮なく受け取れるよう、得意のパントマイムで自分にも板切れがあるように振る舞った。#/b#
#b#この最後の仕事に臨む彼は、「自分が死んでも相手を助けたい」というような心持ちだったと推測できよう。#/b#
※解説では結果として仕事をやめる決意をすることになったが、「最後の仕事」に臨むときのエンジは死ぬ覚悟だったのだから、文字通り「生涯最後の仕事」のつもりであった。
ある日、団員たちを乗せた船が転覆し、乗員乗客は荒ぶる海に投げ出された。激しい波にさらわれ、皆散り散りになる中、エンジとあかりは互いの姿を確認できる距離にいた。二人とも、必死に海面に顔を出して立ち泳ぎしている。
「あかり、無事か」
「うん、なんとか。でも足がつりそう。エンジ君は?」
「まだ大丈夫だけど、いつまでもつかわからない」
エンジが見回すと、小さな板切れが一枚、海面に浮いているのが見えた。エンジの方に流れてくる。
「あかり、板が流れてきた。これに掴まってれば、きっと助かる」
「本当? よかった……」
エンジは板を自分の方に引き寄せる。掴まってみて、思う。
この板では一人が限界だ……。
「あかり、とりあえず一枚、そっちに回す。しっかり捕まえて」
「一枚? もう一枚あるの? エンジ君の分もちゃんと?」
「うん、丈夫そうなのがもう一枚来るよ」
エンジが手放して、少し勢いをつけて押し出した板は、無事あかりのもとにたどり着いた。
「エンジ君、捕まえた。これでもちこたえられそう。そっちは?」
「こっちも捕まえた。だいぶ楽になったよ」
エンジはあかりが自分の方を見て安心したように笑ったのを見た。それで、彼も安心した。
板切れは一枚しかなかったのである。エンジの分など、存在しない。
ここに板切れをもう一枚存在させる。それがパントマイミストとしての自分の最後の仕事だと、彼は思った。
「きっともうすぐ救助が来る。それまでがんばろう」
幻想の板切れに身を預けながら、エンジはそう言ってあかりを励ました。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。エンジの体力はとうに限界を超えていた。それでも、たった一人の観客のためのパントマイム・ショーは続いていた。
「エンジ君、私たち、死ぬのかな……」
あかりは弱気になっていた。
「大丈夫だよ。この板があれば、心配いらない。できるだけ体力を使わないように、板にしっかりしがみつくんだ」
言いながら、エンジはいつ死のうかと考えていた。
目の前で自分が沈めば、あかりはショックを受ける。その動揺が、彼女の生存可能性を低めてしまうかもしれない。
あかりが何かに気を取られている隙に、静かに死のう。
「あかり」
水中で激しく足をばたつかせながら、水上に出ている身体にはその素振りを伝えない。そしてそこにはない板切れを全力で表現し続ける。もうこれ以上はもたないと思った。
「あかり、愛してるよ」
「私も……」
エンジは自分が沈んでいくときのことを想像した。遠くない未来にやってくる死。身体中の力を使い果たして、何も感じなくなって、青い、青い海に落ちていく。
怖くはなかった。そのまま自分は溶けていって、海になるんだろう。そうしたら、俺たちから命を奪おうとしている大きな意思に抗って、あかりを助けてあげよう。優しい波を起こして、彼女を陸まで運んであげるんだ。
酸欠状態で、エンジの思考は論理性を欠いていた。ただひたすら、最後のパントマイムを完遂させようとするだけの機械だった。
死を察知した彼の脳裏に、あかりの顔が映し出された。彼女が時折見せていた、困ったような笑顔。「俺、お腹いっぱいだから」「俺、雨に濡れるの嫌いじゃないから」そんな言い訳をしていつも何かを譲ってきた。その度に、あかりはその表情になった。エンジはそれを、遠慮と感謝の混ざった顔なのだと解釈していた。
死にゆく彼の脳は、そこに別解釈があることを発見した。
違う。俺は思い上がっていた。あかりは俺の嘘に気づいていたんだ。気づいていながら、俺がその嘘で手に入れたかったもの──笑顔を、精一杯実現させてくれていたんだ。困ったような表情は、遠慮なんかじゃなかった。もっとずっと、シンプルな……。享受するものが半分になったとしても、本当は二人でそれを分かち合いたかった。その寂しさ。それが、困ったような笑顔。
論理性を失った彼の、直感のような推理。しかしそれは真実を捉えていた。
生きなくちゃいけない。俺の分まで生きるなんてこと、あかりは望んでいない。
そう思った時、エンジの肉体はすでに海の中だった。しかし彼の最後の生きる意志が、もうピクリとも動かないはずの右腕を動かした。
海面から出たその手を、誰かが掴んだ。
ざぱあっと、彼の身体が海上に現れる。
「大丈夫ですか?」
救助のヘリだ。気を失いかけていた彼は、ヘリが近づいてくるのに気づかなかったのだ。
「手を伸ばしてくれなかったら、助けられませんでしたよ」
救助隊員はそう言って笑った。
引き上げられた機内には、レインコートを被せられたあかりの姿があった。
目が合うと、あかりは今まで見せたことのない最高の笑顔を見せた。
何か言いたかったが、お互い声がかすれていた。
ただただ、無言で抱き合った。
あかりの体温を感じながら、エンジは仕事をやめようかと思った。
相手の一番見たいものを見せられないようでは、エンターテイナーとして失格だ。
あかりの前で演じてしまった最高に無様な演技を最後に、この仕事から足を洗おう。
そう思った。
#big5#【要約解説】#/big5#
#b#恋人と一緒に海に投げ出された野山エンジの目の前に、一人分の身体しか支えられなそうな板切れが流れてきた。#/b#
#b#彼はそれを恋人に譲り、恋人が遠慮なく受け取れるよう、得意のパントマイムで自分にも板切れがあるように振る舞った。#/b#
#b#この最後の仕事に臨む彼は、「自分が死んでも相手を助けたい」というような心持ちだったと推測できよう。#/b#
※解説では結果として仕事をやめる決意をすることになったが、「最後の仕事」に臨むときのエンジは死ぬ覚悟だったのだから、文字通り「生涯最後の仕事」のつもりであった。