みんなのブックマーク

有名人のいで（井手）さん。

「キャァァア！！！！！　いでよ！！！　いでよ！！！！！」

カメコの飼っている猫の具合が、最近あまりよくない。
もう十七歳、けっこうなおばあちゃんである。おばあちゃんであるのだが、カメコはまだまだ猫と一緒に生きたかった。
だからいつもは一パックずつ買っているレトルトパックのごはんを、カメコは今回、十数パック入っている箱で購入したのだ。
「これがなくなるまでは死んじゃダメだよ、ウチではアンタしかこれ食べないんだから。アンタが死んじゃったら、無駄になっちゃうんだからね」
そう、猫にとっては無茶だけれど、大切な願いをこめて。

要約　たくさん買えばこれがなくなるまでは生きてくれるかもしれない、という願掛け。

「今日は遅くなるかもしれない」
夫のエイジは卸したての革靴に苦戦しながらそう言った。
「無理はしないでね。はい、鞄」
「ありがとう」

軽い抱擁を済ませると、エイジは玄関のドアを開けて外に出た。
そのドアを、アユが中からそっと押さえる。
エイジは#red#長年の癖で、左に向かって歩き出した#/red#。

「あなた、そっちは」
#red#アユは半開きのドアから顔を少しだけ覗かせて#/red#、エイジの背中に声をかけた。
「ああ、そうだった」

彼らの住んでいるアパートには、#red#左右二つの階段がついており#/red#、エイジ・アユ夫妻の部屋から近いのは部屋から見て左側の階段である。
しかし先日、左隣のアパートで火事が起き、#red#近い側の階段が延焼してしまった#/red#。
したがって、そちらが#red#修理中#/red#の今、住人は右側の階段を使うしかないのである。

エイジは踵を返し、反対側へと歩き始めた。
#red#夫が右へ行くならば、半開きのドアからその後ろ姿を見送ることはできない#/red#。
#red#顔だけ覗かせるならパジャマ姿でいい#/red#が、全身を出すならそうはいかない。
火事が起きてからは、いつも#red#朝から洋服に着替えるようになったアユ#/red#。
アユはドアを開けて外に出た。

「あなた」
エイジは半身だけで振り向いた。
「今晩はあなたの好きなアボカドサラダにするね」
「おお、楽しみ」
親指を立てる仕草をして見せてから、階段を降りて行くエイジ。
アユは彼の姿が消えるまで見守っていた。

寂しいけれど、ちょっと嬉しい朝のひととき。
アユはこの時間が大好きだ。


#big5#【要約解説】#/big5#
#b#火事の延焼により、アユの住むアパートの、部屋から見て左側の階段が使えなくなった。#/b#
#b#そのため、アユの夫は通勤の際、右側の階段を使うようになった。#/b#
#b#アユはいつも、外開きのドアを半分だけ開けて、顔だけを覗かせて夫を見送っていたのだが、上記によりそれができなくなった。#/b#
#b#全身を部屋の外に出さざるを得なくなったため、パジャマ姿ではなく朝から洋服に着替えるようになったのである。#/b#



#big5#【解説の解説】#/big5#
#b#日本の玄関のドアは多くが外開きである。#/b#
#b#内側から左側を押して開くドアの場合、部屋の外の左側を見る際にはドアを少し開けるだけでいいが、右側を見たければ全身を外に出すしかないのである。#/b#

「一にビタミン二にビタミン、三四がなくて五にビタミン！！！！！」

「いや、三と四のはじめを１さげて、さいごをにごしたほうがいい」

#big5#「いちにビタミンににビタミン、さんしが“にくで”ごにビタミンだな！！！！！」#/big5#

野菜もお肉もたっぷり摂りましょう。

金融業に勤めているカメオは、なぜか大量の現金を徒歩で運ばされている。
右手にアタッシュケース、左手にジェラルミンケース、背中にはリュックサック、腰にはポシェット。
お金を持ちすぎて手が塞がっているので、カメオは駄菓子のひとつも買えなかった。