飢饉で食べる物が少なくなったため、子供のカメゼルとラテーテルを捨てるために一緒に森に行った継母。
カメゼルとラテーテルが気が付くと、一緒にいたはずの父親も継母もどこにもいない。目印が無ければどこをどう歩けばいいのか分からない迷いの森で、二人は迷ってしまった。
カメゼルはこんな時にとパンを通り道に撒いていたが、当然それらは小鳥や小動物が食べてしまっている。
しかし、こんな状況にも拘わらず、
カメゼルとラテーテルは自分の家に戻ることが出来た。
一体何故?
16年01月23日 01:09
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[フィーカス]
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カメゼルは、継母が二人を森に捨てようとしていることを知っていた。
前回は庭にあった綺麗な小石をばら撒くことで、何とか家に戻ることが出来た。
しかし、今回はそんな余裕はない。仕方なく、渡されたパンをばら撒いたのだが……
「……なんだか騒がしいな。一体なんだろう?」
ふと振り返ると、そこには苦しんでバタバタしている小鳥の姿が。その小鳥はすぐに死んでしまった。
「カメゼル、どうしたんだい?」
「え、ああ、なんだか見慣れない動物がいたな、と思って」
その後も、通り道にパンを撒いていると、時々ギャーギャーと動物が苦しむ声が聞こえてくる。
「……今日はなんだか騒がしいわね。何か嫌な予感がするわ」
そう言いながらも、継母は森の奥へ奥へと進んでいく。
しばらくすると、継母は一息つけるところでカメゼルとラテーテルに小枝を集めるよう指示した。たき火をするためらしい。
しかし、カメゼルとラテーテルが一通り小枝を集めると、一緒に来ていた父親も継母もどこかに行ってしまった。
「お兄ちゃん、お腹すいたよぉ。お母さんにもらったパン、食べようよぉ」
「……これはダメだ、毒が入ってる」
「え、どうして?」
「多分、お母さんが僕たちを殺すために、パンに毒を入れたんだ。迷って、お腹が減ったらこのパンを食べて、すぐに死ぬように」
「そんな、ウソだよ!」
「嘘じゃないよ。ほら、こっち来て」
「え、なに、お兄ちゃん……ひぃ!」
カメゼルがラテーテルをとある場所に案内すると、そこにはばら撒いたパンを食べて死んだ小さな動物の死体があった。
「……僕は帰り道の目印に、パンをばら撒いたんだ。でも、それを食べた小鳥がすぐに死んじゃった。このパンには毒が入ってる。だから、食べちゃだめだよ」
「でも、でも、だったらどうすればいいの? 私、狩りとかできないよ?」
「大丈夫だよ。さっきパンをばら撒いたって言っただろう?」
「うん。それがどうしたの?」
「……動物には気の毒だけど、そのパンを食べた動物は、きっと死んでいる。ということは、動物の死体がある場所をたどれば、きっと家にたどり着くはずだよ」
「そっか……でも、私、怖いよぉ……」
「大丈夫、僕が付いているから。ほら、暗くならないうちに、早くいこう」
こうしてカメゼルとラテーテルは、動物の死体を目印に、家にたどり着いたとさ。
「お、おお、カメゼル、無事だったのか! 心配したよ!」
「ただいま、お父さん。あ、これ、お母さんが作ったパン、とても美味しかったんだけど、食べきれなくて。お父さんにあげる」
「おおそうかい、カメゼルはやさしいねぇ」
そういうと、パンを父親に渡すカメゼル。すると、カメゼルの声に驚いたのか、奥から継母が大慌てでやってきた。
「な、か、カメゼル、どうやって……そのパンは……あなた、食べちゃだめ!」
「え、これかい? うん、とても美味しいパンだ……う、うぐぐぐ……」
「あ、あなたぁぁぁぁ!」
父親は、パンを口にして間もなく死んでしまった。
「あーあ、お母さんが作ったパンで、お父さんが死んじゃった」
「か、カメゼル、あなた、そのパンに毒が入っていることを知って……」
「どうせ、お父さんには教えていなかったんでしょ? お父さん、教えちゃったら毒が入っていないパンと変えちゃうかもしれないからね。でもよかったじゃない。家族が多いと、食料が足りないんでしょ? 一人減ったから、これで足りるよね?」
「いや……いや……」
「それとも……」
カメゼルは、近くにあったナイフを継母に向ける。
「 も う 一 人 減 っ た 方 が 安 心 か な ? 」
疲れて寝ているラテーテルは、この夜何が起こったのかを知らない。
要約:継母から渡されたパンには即効性の毒が入っており、それを食べた動物が死んだため、その死体を目印にして家にたどり着いた。
総合点:19票 チャーム:1票 納得感:5票 伏線・洗練さ:5票 物語:8票
チャーム部門からす山【
投票一覧】
「有名な童話の一部を変えただけのオマージュ。しかし変わったのは一部だけでも、そこを変えただけでも話は成立しなくなりそうです。どうやって解決するのか?謎だらけです。」
2017年09月30日18時
納得感部門かもめの水平さん【
投票一覧】
「実は原作がこれなんだ。と言われても疑わない位の納得感。」
2016年07月29日16時
納得感部門ゴトーレーベル【
投票一覧】
「この問題の「隠された要素」は、極めて説得力がありながら、見つけるには想像力を大きく羽ばたかせる必要がある。瞬殺はまったくもってただの事故。正解を見て、「なるほど!」と叫んでほしい。」
2016年05月15日14時
納得感部門アアア【
投票一覧】
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「ちょっぴりブラックですが、よく納得できる解説です。本物がこの話でも違和感ない。(以外と昔の童話もグロかったりするし)」
2016年02月28日11時
納得感部門からてちょっぷ【
投票一覧】
「なるほど、非常に有り得る〜っという問題でした。」
2016年01月25日19時
納得感部門tsuna【
投票一覧】
「これは上手い組み合わせだと思いました」
2016年01月23日01時
伏線・洗練さ部門からす山【
投票一覧】
「原作を読んだことのない人に、これが原作です、と説明しても問題ないぐらい、違和感のない謎の解かれ方。むしろ原作以上では?凄い完成度です。「ウミガメのスープ」の数々の名オマージュを彷彿とさせますね。」
2017年09月30日18時
伏線・洗練さ部門上3【
投票一覧】
「元の童話も水平思考的なのですが、そこに新たな要素を付け加えることで洗練された問題に仕上がっています。」
2017年09月20日19時
伏線・洗練さ部門SoMR【
投票一覧】
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「「家に戻ることが出来た」が謎になっているのが凄い。正しいし、何も嘘は言っていないのだけれど、そこじゃないでしょという笑 このサイコパス感にウミガメならではのゾクゾクを味わえる。 命や死の要素を全カットして結論だけ書くと、こうなるわけで、この強烈な違和感ともどかしさが真相を知った時のインパクトを何倍にも増やしている。この手法はめちゃめちゃ面白いと思う。」
2017年02月08日23時
伏線・洗練さ部門亜綾【
投票一覧】
「洗練さという点において感動するほど綺麗な問題だと思います。素敵。」
2016年08月02日10時
伏線・洗練さ部門3000才【
投票一覧】
「切れ味のいい問題が切れ味のいいスナイプで瞬殺される可能性があることを示した例。瞬殺されることは必ずしも悪いわけではなく、伏線が丁寧に張られ、洗練された素晴らしい問題だからこそです。」
2016年01月23日10時
物語部門とかげ【
投票一覧】
「通った道の目印に撒いたパンは小鳥や小動物に食べられたのに、どうやって家に帰ったのだろう? シンプルかつ大胆な発想が魅力的である。まさにラテシン版『ヘンゼルとグレーテル』としてふさわしい真相。」
2017年10月24日06時
物語部門からす山【
投票一覧】
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「毒素たっぷりの強烈な物語が印象的。カメゼル、もう一人減らせてよかったね!」
2017年09月30日18時
物語部門SoMR【
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「死ぬこと自体が真相なのではなくて、死というのが単に1つの現象として、それが必要なものとして組み込まれている物語は、狂っている感じがして、とても怖い。この場合、「自分の家に戻ることができた」という部分がそれに当たる。これは、怖面白い。」
2017年02月08日23時
物語部門蓮華【
投票一覧】
「この童話のストーリーで語り継がれていた可能性も有ったかもしれない、そんな説得力とメッセージ性のある物語でした。」
2016年06月19日21時
物語部門甘木【
投票一覧】
「極めて綺麗で、そして何とも言えない味わいのある物語です。」
2016年01月26日20時
物語部門ひゅー【
投票一覧】
「納得感が素晴らしい問題ですが、読者を引き込ませる解説ということで物語部門で投票しました。こちらのほうが実際にありえそうな、そして背筋がぞくぞくする物語です。」
2016年01月25日23時
物語部門のりっこ。【
投票一覧】
「これは物語としても水平思考問題としても実に素晴らしい、見事な作品です。」
2016年01月23日10時
物語部門tsuna【
投票一覧】
「童話のパロディーとしても面白いです」
2016年01月23日01時