面白みのないストーリーで、どこにでもいるような魅力の薄い登場人物が、普段誰もが過ごしているような日常を送るだけの、無名の小説家による小説。
そんな何の変哲もない小説が、何の変哲もないために売れまくっているという。
どういうことだろう?
15年04月27日 22:50
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[とかげ]
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その小説を呼んで、男は驚いた。
ごく普通の夫婦が、平凡な日常を過ごすだけの小説だった。
出てくる登場人物は、見た目も性格も思想もごく普通の人達で、魅力的でもなんでもない。
夫婦の暮す家は一般的なアパートで、置いてある家具や家電の描写は、当たり前過ぎて何の面白みもないものだった。
朝夫が出勤して、しばらくすると妻も仕事に出かけ、二人はそれぞれの職場でありきたりな仕事をこなし、どうってことはない友人達とのくだらない会話を交わし、家に帰ってからどこでも食べられそうな夕食をたいらげ、ベーシックなデザインのパジャマを着て、平均的な時間に就寝する。
男は、恐怖すら感じた。
これは……なぜ、こんなに、何の変哲もないのだ。
まるで自分の一日を書かれているかのような――
改めて、本の後ろに書いてある出版年月日を確認する。
何度見ても、男が持つその本は、今から100年以上前に書かれたSF小説だということに、変わりはなかった。
END
100年以上前に書かれたSF小説が、何の変哲もないと感じるくらい今の生活を見事に言い当てていたため、未来を予言した書として有名になり、売れまくった。
総合点:31票 チャーム:6票 納得感:8票 トリック:9票 伏線・洗練さ:7票 物語:1票
トリック部門tsuna【
投票一覧】
「当たり前と言う言葉を揺さぶられました」
2015年04月28日22時
トリック部門牛削り【
投票一覧】
「解説の最後の行を読むまで真相がわかりません。わかった瞬間のカタルシスは異常。」
2015年04月28日20時
トリック部門かきかき【
投票一覧】
「あの問題文からこのような解説が導き出せると誰が思っていただろうか?」
2015年04月27日23時
伏線・洗練さ部門letitia【
投票一覧】
「ショッキングでもなくグロテスクでもないのに、真相を知ると鳥肌が立ち、しばらく余韻から覚めることができません。長くはないのに、読ませる解説です。解説を読んでから問題文を読むと、何でもないことのように自然に潜んでいる表現の奥深さにも驚きます。」
2015年12月31日17時
伏線・洗練さ部門からてちょっぷ【
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「それは売れる。変哲がないって何だっけ、と思わせられます。」
2015年12月28日23時
伏線・洗練さ部門華【
投票一覧】
「以前読んで既に投票してると思ってました、何の変哲もない小説が何故だろうから、解説への納得感。そしてこの世界感がとても好きです。」
2015年05月30日03時
伏線・洗練さ部門米野郎【
投票一覧】
「シンプルながらも洗練されている模範的な問題だと思います…」
2015年05月15日23時
伏線・洗練さ部門牛削り【
投票一覧】
「問題文だけを見れば、装飾過多に見えてしまうかもしれない。「本当にこの情報全てに意味があるの?」と疑いたくもなる。しかし解説を読めば一目瞭然、全てにちゃんと意味がありました。変哲のなさをここまで強調していた伏線が、解説のラストで一気に回収されます。美しい完成度。」
2015年04月28日22時
伏線・洗練さ部門ディダムズ【
投票一覧】
「【ネタバレ防止】のトリックを核として、巧みな表現を用いた問題文が魅力的な良い問題だと思います。」
2015年04月28日22時
伏線・洗練さ部門なさ【
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「解説の最後の一文、そこで一気に心を奪われました。」
2015年04月28日13時
物語部門からす山【
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ネタバレコメントを見る
「実際に起こりうるかもしれない、えもいわれぬ恐怖の物語です。何の変哲もないのに。」
2017年09月24日20時