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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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捕らわれの騎士の望み(問題ページ

はギルベルト・ボーデンシャッツ。

もし時間があれば、俺の話を聞いて欲しい。


ハール国とカナン国が戦争をした。
そして俺はハール国の騎士として戦った。

しかし戦争はカナン国の勝利に終わった。
俺は捕らえられ、カナン国の牢屋の中にいる。

俺は、祖国ハールに帰りたい。


もし時間があれば、知恵を貸してくれないだろうか?
俺がこの牢屋から脱出する方法を。
14年10月30日 21:43
【亀夫君問題】 [低空飛行便]



解説を見る
解説末尾に要約がありますので、時間のない方はそちらをご覧ください。


長い時をかけて牢屋からの脱出に成功した俺は、
祖国ハールへと向かった。

既に滅んでしまった、誰もいない祖国。

俺が勤めていた城は既にボロボロの廃墟だ。
城の周りの街も、何もかも、朽ち果てている。
無理もない。あの負け戦から、どれだけの時が過ぎたというのだろう。

足元には荒れた土。
手元にはカナン国から持ち出したリンゴの種。
いつの間にか降ってきた雨が、俺の全身を濡らす。

カナン国の牢屋での出来事を思い出す。

俺は目を閉じ、胸に手を当てる。
心音を感じる。決して止まない心音。

……俺は、一つの決心をした。
こんな形でしか亡き祖国に尽くせないが、
それでもこれは俺でなければ出来ないことなのだ。

例え何百年かかっても。



     ※



ハール国立大学。作物栽培学特別実習の授業中。
太陽の光が大学所有のリンゴ園に降り注ぎ、
そこにはまるで憩うかのように教授と学生たちがいる。

「実はこのリンゴには作物栽培学上の謎がある。
この品種はもともとハール市にはなく、
ここから遠く離れたカナン市の特産品であった。
しかし、ある時期よりハールでも盛んに栽培されるようになったのだ。
それ以来、このリンゴがハールの特産品として
豊かな富と恵みをもたらしていることは、諸君の知るところだろう」

教授が学問上の問題を学生たちに披露し始めた。

「カナンのリンゴというと、騎士がリンゴの木に変身したという、
あのリンゴですか?」

学生の一人が発言した。

「それは後世の人間が創作した逸話の類だろう。ともかく、そのリンゴだ。
さて、この品種がどのような過程でカナンからハールにもたらされたのか、
諸君には分かるかな?」

教授は微笑んで、学生たちに問いかけた。
学生たちは一様に首を傾げたり肩をすくめたりしている。

ただ一人、先ほど発言した学生だけは、リンゴの木をじっと見つめている。

「教授、おそらくその謎は解き明かせると思います」

リンゴの木を見たまま、その学生は言った。

「ボーデンシャッツ君、随分な自信だね。
学者たちは土壌の成分を調べたり、リンゴのDNAを調べたりしているが、
今のところ有力な説が出てきていない。
君はどうやってこの謎を解き明かすつもりかね?」

教授の質問に、ボーデンシャッツと呼ばれた学生は少し困ったように笑った。

「どうやって、かは、正直まだ分かりません。
でも、必ず解き明かしてみせます」

ボーデンシャッツは目を閉じ、胸に手を当てた。

「例え何百年かかっても」



解答要約:
不老不死の騎士が長年かけて牢屋の中でリンゴの木を育て、
その木によじ登って天井の窓から脱出する。



謝辞:
本問題作成にあたり、天童 魔子さん、さしゃさんに、
SPとしてご協力いただきました。ありがとうございます。
総合点:9票  亀夫君部門9票  


最初最後
亀夫君部門イナーシャ
投票一覧
「この問題に憧れて亀夫君問題を出題しました。実際自分で出題してみると、この問題の凄さを実感します。」
2017年09月26日00時
亀夫君部門ゴトーレーベル
投票一覧
「ファンタジー世界ならではの脱出トリック。重要な事実が次第に明らかになっていく構成と、込み入りすぎていないトリックという組合せが光ります。そして問題文から解説まで通しての雰囲気はこの作者ならでは。」
2017年05月21日18時
亀夫君部門手弁当
投票一覧
「時間ネタをご都合主義的に取り扱う上で重宝な設定のように思えるのですがさにあらず。なんとも感動的な形で料理されています。そしてその設定は解説にもうまく反映されて、物語全体に深みを与えています。」
2015年12月09日20時
亀夫君部門フィーカス
投票一覧
「「もし時間があれば、読んでみてほしい」。そんな問題。質問によって状況を明らかにし、解決策を考える亀夫君問題のお手本のような問題。亀夫君問題を考えている人は、まずこの問題を読んで問題の作り方や進行の仕方を学んでほしいと思います。」
2015年11月18日01時
亀夫君部門とかげ
投票一覧
「捕らわれた騎士の望みを叶えるには? 「語り手が気づいていないことを気づかせる」、「問題解決のために語り手を行動させる」という魅力的な要素をうまく組み合わせた問題。ベールを剥がすにつれ明らかになる事実から、自然とトリック部分が明確になる、納得度の高い作品でした。」
2015年11月17日08時
亀夫君部門ぽんぽこぺん
投票一覧
「もし時間があれば。」
2015年10月27日22時
亀夫君部門エリム
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「脱出ゲームを文字化するとこうなるのか、と唸らされる作品。さらに作中の設定が見事に生かされていて、物語性も非常に豊かです」
2015年10月23日23時
亀夫君部門牛削り
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「質問によって徐々に明らかになっていく現状。そのすべてを利用して、密室からの脱出を図れ。巷では脱出ゲームが流行っているが、ここまで重厚に練り上げられたものを知らない。亀夫君の楽しさを知りたいのであれば、まずこの作品を味わうべきである。」
2015年10月23日14時
亀夫君部門天童 魔子
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「ナイス誘導でした。このファンタジー感面白いのです」
2015年10月22日22時

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