厳格な法治国家であるその国で殺人事件が起きた。
しかし殺人犯は罪に問われなかった。
一体何故だろう?
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この国の皇帝は独裁者だった。
自らを神と名乗り、民衆や他の貴族とは明らかに一線を引いていた。
「国のものは皇帝のもの、皇帝のものは皇帝のもの」
こんな名言を残すほど、国の法律は厳しいものだった。
とにかく重労働、重税、人権無視。
治安維持のため、犯罪者は全て拷問、及び死刑。
これらの項目が全て法律によって定められていた。
この国において法は絶対で、皇帝の権力も法律による根拠が強かった。
飢餓や病気で死ぬものが絶えず、民衆と貴族たちは我慢の限界だった。
ある日皇帝が宮殿の庭でのんびり紅茶を嗜んでいると、突然警備兵の男がサーベルで切りつけてきた。
「く、くせもの!誰かおらぬか!であえ、であえー!」
皇帝の呼びかけに数十人の屈強な兵士たちが集まってきた。
「見ろ!この腕の傷を!あいつは私を切りつけてきた!傷害は死刑だ!殺せ!」
しかし皇帝の命令に対し、兵士たちはただ黙って突っ立っているだけだった。
「ええい!お前ら聞かんか!奴を殺せちゅうとるのに!」
「どなたが刺されたのですか?」
「見れば分かるじゃろ!わしじゃ!」
「そうですか……。よし、全隊員持ち場に戻れ!」
「何故じゃ!皇帝の命令無視は死罪じゃぞ!」
「お答えします、皇帝閣下。残念ながら我が国の法律には、人外に対しての傷害や殺害の記述がないのです」
「あたりまえじゃろが!まさかわしを豚のような畜生扱いしているのか!!許せぬ!」
「いえそうではありません皇帝閣下。皇帝閣下のような高貴なお方を誰が畜生扱いしましょうか」
「ではなぜ!」
「神を殺す、そんな法律は我が国にはないのですよ。……では、御機嫌よう。皇帝閣下」
その日、人々は自由を得た。
その後の国の統治は人間が行い、人々は平等を維持することができた。
総合点:6票 納得感:1票 物語:4票 言葉遊び:1票
納得感部門az【
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「詭弁と言えば詭弁。しかし、状況がしっかり作り込まれているため、納得感は抜群です。解説の物語も含め、シチュエーションパズルとしての面白さを堪能させてくれます。」
2016年11月16日18時
物語部門からてちょっぷ【
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「一見矛盾した問題文から出てきたのは粋な真相。なるほど、そこをつくとは…」
2015年12月31日13時
物語部門とかげ【
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「厳格な法治国家で殺人事件が起きたというのに、罪に問われないだなんて……何か奇抜なトリックが隠されているのだろうとわくわくして解説を見ましたが、良い意味で裏切られました。童話になりそうな、粋なストーリーでした。」
2015年06月26日19時
物語部門甘木【
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「印象に残る読後感を味わえる、まさしく物語部門に相応しい問題です。」
2015年05月08日23時
物語部門牛削り【
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「別解のいくらでも生まれうる問題文ではあるが、解説を見るとこれ以上面白い真相はないのではないかと思ってしまいます。最後のセリフが素晴らしくかっこいい!」
2015年05月08日22時
言葉遊び部門エリム【
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「ダジャレという意味の言葉遊びではなく・・・。言葉の盲点を見事に突いた、見事な逆襲です。」
2015年06月27日00時