カメオは娘からカレンダーをプレゼントされたが、
娘は、本当はカレンダーを返してほしいと思っており、
こっそりと自分の名前まで書き込んでいた。
なぜ娘は、返してほしい物をわざわざ父にプレゼントしたのだろうか?
オリオンさんにテストプレイしていただきました。ありがとりおんでしたm(_ _)m
16年08月15日 11:58
【ウミガメのスープ】
[みん]
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娘から渡されたのは、ポストカードサイズの卓上カレンダーだった。
「これいらないから、向こうで使えば?」
「ああ、そういえばカレンダーは準備してなかったな……。ありがとう」
お礼を言い終わる前に、娘の姿は部屋へと消えてしまった。
今年、カメオに単身赴任の辞令が下った。
カメオは、今からその赴任先へと出発するところだった。
しばらく会えないというのに、反抗期の娘は、別れの挨拶すらしてくれない。
肩を落とすカメオに、妻が鞄を手渡した。
「あの子も寂しいと思ってるのよ」
本当だろうか。
ここ数年、不機嫌そうに文句を言う姿しか見ていない。
しかし
今日はプレゼントをくれた。
あれが、娘なりの見送りだったのかもしれない。
「……そうだな」
カレンダーを握りしめ、カメオは頷いた。
難しい年頃だからしょうがない。
そう、自分に言い聞かせた。
ーーーーーーーーーー
一か月が経ち、新しい職場にも慣れてきた頃。
目覚めたカメオは、ナイトテーブルのカレンダーを見た。
毎朝、このカレンダーを見る度に娘の顔が浮かぶ。
家族は元気にしてるだろうか……。
今日から新しい月だ。
何気なくカレンダーをめくったカメオは、
そこに娘の名前を発見した。
これは、ポストカードに印刷されたカレンダーだったらしい。
裏面の宛先には、既に住所と名前が書き込まれていた。
この癖のある文字は、娘の字に違いない。
カメオは、重ねられたカレンダーを次々にめくった。
次の月もその次の月も、全ての宛先が娘の名前になっている。
「毎月ハガキを送れって事か……?」
それが、手紙の催促であるのは明らかだった。
嫌われてると思っていたが、少しは気にしてくれていたのか。
なんて回りくどい。
気づかなかったら、本当に嫌われてたかもしれないな……。
「今時メールもできないなんて、どんだけ機械音痴なのよ!」
そう悪態を吐く娘の顔が容易に想像できる。
苦笑したカメオは、引き出しから万年筆を取り出した。
【要約】
カメオは、娘と離れて暮らす事になった。
寂しいと素直に言えない娘は、ポストカードに印刷されたカレンダーの裏面に、
宛先(娘宛)を書いてプレゼントする事で、手紙がほしい事を暗に伝えようとした。
総合点:3票 チャーム:1票 物語:2票
チャーム部門希少種佐藤【
投票一覧】
「プレゼントしたカレンダーを返して欲しいってどんな状況!? 真実を知りたくなる魅力的な問題です。」
2016年08月15日14時
物語部門ゴトーレーベル【
投票一覧】
「作者はときどき実用的アイディアを持つ作品をものされますが、ある意味これもその一環。やはり作者の持ち味である細やかで優しい視点が心に残ります。」
2016年12月31日14時
物語部門SoMR【
投票一覧】
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「「返して欲しい」という言葉から娘からカメオへのマイナスの感情を連想させられるので、実は「返信して欲しい」というプラス感情から来る要素にたどり着くためにはそこの刷り込みを砕かなければならない。しかしながら、結果的に恐らく単身赴任の父に対するマイナス感情もある程度あるはずだ。だからミスリードはミスリードなのに蓋を開けてみると感情的な部分に関してはそこまでミスリードという訳では無い、これは面白い。」
2016年08月15日13時