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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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ハンドメイドボックス(問題ページ

のことを想いながら一週間に一つのペースで木箱に花を彫っている百合野茂雄。

その花が増える度、妻は悲しくなるという。

一体なぜ?
16年04月09日 01:46
【ウミガメのスープ】【批評OK】 [水上]



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の船旅の疲れを癒そうと机の上に用意したご馳走が温度を失ってから2時間。

百合野花の携帯電話に着信があった。

それは待ち望んだ夫からのものではなく、夫が乗った船の転覆を告げる電話だった。


一方その頃。

百合野茂雄は転覆した船から海に投げ出されたものの、運良く積荷のカラの木箱にしがみつき、大海を彷徨っていた。
しかし大時化の海の中では何もできず、茂雄は自分の運命を天に任した。

一夜明け…

木箱を握りしめながら気絶していた茂雄が目をさますと、あたり一面が砂浜だった。
茂雄は無人島に打ち上げられたのだ。

その日から茂雄の孤独な無人島生活が始まった。
島を軽く一周し、ここが無人であることを察した茂雄。
幸いなことに身につけていたウェストポーチには、ライターやソーイングセット、ナイフなど、
サバイバルに必要なものが揃っていたので、まずは雨風がしのげる屋根を作り、そこに船の転覆から救ってくれた木箱を置いてテーブル代わりにした。
ソーイングセットの針を曲げ釣竿を作ったり、小枝を集めて火をおこしたりと、ここでの生活の準備を整えていった。

そして一日が終わる。

茂雄は日数の経過を把握する為に、机代わりの木箱に正の字を刻もうとナイフを手に取ったが、
どうせなら一週間がわかるように7画の漢字を並べていこうと考えた。
そして頭に浮かんだのが妻の名前。「花」
離れ離れになってしまった妻の顔を思い浮かべて、ナイフを握り、木箱に印を付けた。

一週間が経過。

木箱に「花」の字が一つ刻まれる。

花は茂雄からの連絡を待ち続けている。

茂雄もまた救助を待ち続けている。

更に一週間が経過。

木箱に二個目の「花」の字。

救助を待つ夫と、夫の無事を祈る妻。

三個目の「花」の字。

現状は変わらない。

夫の焦燥と、妻の悲しみだけが積もっていく。


・・・


「花」の字が木箱を埋め尽くしてしばらく経ったある日。
無人島の近くに一艘の船が近づいてきた。
しかし船は通り過ぎていく。
呼び止める者が誰もいないから。
つい先日まで茂雄がいたその島は、無人島に戻ってしまったから。




そう。茂雄は長い無人島生活の中でイカダを製作し、無人島を脱出していたのだった。
「花」で埋め尽くされた木箱に、島で採れた果物や魚の干物、希望を詰めて。







おかえりなさい。







ただいま。
総合点:20票  納得感:4票  トリック:3票  伏線・洗練さ:7票  物語:5票  言葉遊び:1票  


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納得感部門からす山
投票一覧
「端的な2行の問題文の要素全てに納得です。本当にもう、何から何まで。一つ一つ、どんな風に納得していたかを書けるほどですが、解説に全てが込められています。」
2017年10月03日19時
納得感部門桜小春
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「花を掘る。うーんなるほど。さすがです。」
2016年04月12日12時
納得感部門エリム
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「彫っている理由も、それが花である二重の理由も、全てに納得感があります。」
2016年04月10日00時
納得感部門tsuna
投票一覧
「解説になるほどと唸りました」
2016年04月09日02時
トリック部門牛削り
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「木箱に花を彫る夫と、花が増える度に悲しくなる妻。当問題が映し出す情景を、普通は想像したことがないと思うことだろう。ところがそれは問題文の巧みな表現によって曲げられた情景であり、解説で示されるのは、我々がよく知る有名な場面であった。状況の全体をまったく別の状況に摩り替えるという荒業をここまでスマートにやってのけるトリックの素晴らしさ。」
2016年04月29日20時
トリック部門手弁当
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「人に紹介したい問題のストックがまた一つ増えた。」
2016年04月09日08時
トリック部門tsuna
投票一覧
「自然に組み込まれています」
2016年04月09日02時
伏線・洗練さ部門からす山
投票一覧
「全ての点において非常に完成度高し。この状況をこの2行の問題文に凝縮したその文章力と手腕に脱帽です。」
2017年10月03日19時
伏線・洗練さ部門上3
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「「妻のことを想いながら...」物語の一部でありながら、ウミガメのスープとして成立するための情報が過不足無く含まれている圧巻の問題文です。」
2017年09月09日15時
伏線・洗練さ部門letitia
投票一覧
「一言の無駄もなく、まだどの表現にも細心の注意がはらわれ、何重もの効果を持っていますが、特に二文目は圧巻。何も隠しようがなさそうな表現にどれほどの工夫が詰まっているのか、解説を見た後に驚いた。頑張って凝って作った叙述トリックを含む文章というのは、どうしてもどことなくそれを感じさせるものだが、当問題の力が抜けた美しい文章は、まさに”洗練”と呼ぶにふさわしい。」
2017年02月27日22時
伏線・洗練さ部門みん
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「自然に組み込まれたトリックに加え、クルーの言葉が1つ1つ絶妙な表現で、細やかな配慮の感じられる洗練された問題文だと思いました。トリックが解けた瞬間に、全てが綺麗につながる爽快感があり、登場人物の心情含めて納得感が高かったです。」
2017年02月08日16時
伏線・洗練さ部門甘木
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「短い問題文に込められた表現がお見事です。」
2016年04月10日22時
伏線・洗練さ部門アアア
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「素晴らしい表現の仕方です。解説を読んでから問題文を読むと「これはそういうことか!」と納得できる。物語としても素晴らしいです。」
2016年04月10日09時
伏線・洗練さ部門tsuna
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「全く無駄のない問題文です」
2016年04月09日02時
物語部門からす山
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「ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、ハラハラしながら読み進めました。よかったああああ!!」
2017年10月03日19時
物語部門letitia
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「私は今まで物語部門でMVSを入れたことがなく、おそらく今後もまずないと思うのですが、例外として入れさせてください。「良い物語」だから入れるのではありません。私がこの物語に気持ちよく騙されたからです。」
2017年02月27日22時
物語部門牛削り
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「解説の中盤にある言い回しは、独立した名作問題としうるほどに上質な叙述トリックとなっている。素晴らしい物語は、読む者の感情を弄ぶ。当解説は短い中で何度、読者を感情の両極に振り切らせることだろう。素敵な物語をありがとう、尻の人。」
2016年04月29日20時
物語部門エリム
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「途中で心臓止まりかけましたよ・・・ありがとう!ありがとう!ハッピーエンドにしてくれてありがとう!!!」
2016年04月10日00時
物語部門tsuna
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「いい話です」
2016年04月09日02時
言葉遊び部門からす山
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「「花を掘る」。愛と美しさに満ちた言葉遊びが好きです。」
2017年10月03日19時

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