男は頭を打って嘘を吐いた。女は男を信じて嘘を吐いた。だからふたりは恋人になった。もう二度と、家族に会えないことは承知の上で。
状況を補完してください。
15年06月26日 17:26
【ウミガメのスープ】
[芳香]
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ふたりは実の兄妹である。
幼い頃に両親を亡くしたふたりは、身を寄せ合うようにして生きてきた。
だが、兄は妹が自分へと抱く感情が、家族愛のそれではないことにうすうす気が付いていた。己も同じものを隠していたから。
ある日、兄は家の階段で足を滑らせ、頭を強打した。
命に別状はなかったが、兄はそれを利用した。
「頭を打ったから記憶喪失になってしまった」、と、妹に嘘を吐いたのだ。
もちろん、本来ならば病院に行って検査をするべきだ。しかし、妹は、彼女は兄にそう勧めなかった。
ふたりとも、限界だった。
兄の、彼の言葉を真に受けた彼女は、「あたしたちは恋人だった」と嘘を吐いた。
彼女がそうするだろうとわかっていた彼は信じたふりをして、そしてふたりはその日から「恋人」になった。
兄は兄ではなくなった。妹も妹ではなくなった。天国にいるだろう両親にも、ふたりはきっと会えない。
大事な「家族」を失って、それでも、ふたりは互いをどうしても手にいれたかったのだ。
要約
妹を愛していた兄は、頭を打ったから記憶をなくしたと嘘を吐いた。兄に恋をしていた妹は、それを信じて今までふたりは恋人だったと嘘を吐いた。すべてを知っていて、兄は騙されたふりをした。兄妹という関係より恋人という関係を選んだふたりは家族をなくした。天国にいる両親には、きっともう会えない。
総合点:4票 伏線・洗練さ:1票 物語:3票
伏線・洗練さ部門春雨【
投票一覧】
「家族を失う、その意味。」
2016年01月06日00時
物語部門とかげ【
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「嘘を吐いた男と女が、恋人に。二人の嘘の秘密を解き明かせば、そこには嘘のない本当の愛情が確かにありました。この二人には、「爆発しろ」とは言えない。」
2015年10月30日22時
物語部門牛削り【
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「映画化を切望します。監督は僕がやったっていい。」
2015年07月07日13時
物語部門フィーカス【
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「小説が書けそうなおもしろい話でした。問題文ではとぎれとぎれになっている情報が、解説できれいにつながる。時にはこういった物語重視の問題も作ってみたいものです。」
2015年06月28日01時