メグミは学年一の優等生で、難関大進学を目指し猛勉強していました。
しかし彼女は、
ミツルを愛しすぎてしまったがために、高校を卒業するとすぐに就職することになってしまいました。
さて、一体どういうことでしょうか?
14年10月05日 09:41
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[牛削り]
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『山吹家の長女として生まれたメグミは、両親の愛情を一身に受け……』〜♪
ここで幼少期の写真を表示。
『勉強が得意で、成績はいつも学年トップ。高校時代は束大目指しわき目も振らず……』〜♪
ここで高校時代の写真を表示。
『念願かなって束大合格。キャンパスライフも充実して……』〜♪
ここで大学時代の……
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「……おい、大学時代の写真がないぞ」
パソコンに向かっていた男が言った。
「仕方ないじゃない、使えるのがないんだから」
向かいに座る女が答えた。
「どういうこと? 多少画質悪くたってどうにでもできるぜ」
「そういうことじゃなくてさ……一応預かってきたから、見る?」
女はクリアファイルから写真の束を取り出した。
「なんだいっぱいあるじゃないか……ああ、ダメだなこりゃ」
「ね? 元カレのミツル。メグミいつもベタベタだったもんね。大学時代はミツルとのツーショットしかないのよ」
彼らはメグミ(29)の昔の同級生。
二ヶ月後に行われるメグミとトシキの結婚披露宴で流すプロフィールムービーを制作している。
努力が実って束大に合格したメグミは、そこで出会ったミツルと交際を始めた。
どこへ行くにも、何をするにも一緒で、彼らの結婚を誰一人疑わなかった。
しかし若き日の恋はそう上手くはいかないものである。
些細な諍いから、4年間続いた二人の仲は、卒業を前に終わってしまった。
失恋の痛手を何年も引きずっていたメグミだったが、29歳の春、取引相手のトシキと運命的な出会いを果たし、わずか3ヶ月で電撃入籍を果たしたのであった。
「トシキさんとの結婚式なのに、ミツルとのツーショットは使えねえしなあ……。しゃーねえ、大学時代飛ばしちまうか」
「そうすると、高校出てすぐ就職することになるけど……」
「ま、いいじゃん」
「仕方ないよね」
「ああ、仕方ない」
総合点:5票 チャーム:1票 納得感:1票 トリック:1票 伏線・洗練さ:1票 物語:1票
チャーム部門さるぼぼ【
投票一覧】
「圧倒的なチャームとそれを裏切らない納得感!間違いなく傑作です。」
2015年04月29日00時
納得感部門とかげ【
投票一覧】
「納得感に定評のある牛削りさんですが、中でもこれは「そういう意味か!」と悔しくなること請け合いです。」
2015年02月10日00時
トリック部門とむわん【
投票一覧】
「「水平思考をしないと確実に解けない」のでトリック部門に。ミツルを愛しすぎてしまった事がこんな事象につながるとは想像できませんでした。」
2017年10月01日12時
伏線・洗練さ部門letitia【
投票一覧】
「トリックを内包する文章もさることながら、文字通りの意味しかない一文目がこの問題を強力に支配しています。と、ここまで書いてしまっても絶対にネタバレとしては機能しないと確信できるほど、優秀なトリックです。」
2015年12月24日02時
物語部門ゴトーレーベル【
投票一覧】
「トリックが前面に出ている作品で、もちろんそれも素晴らしいのですが、私は物語部門に一票。「あまりに濃密であったがゆえの空虚」が印象的だったからです。解説には本人が登場せず、友人たちの会話で終始する。それもまた印象深い視点の置き方として心に残ります。「物語性」とは、文章の長さとは関係ないと思うのです。」
2015年12月24日02時