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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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項目についての説明はラテシンwiki

喰う席(問題ページ

面目な女は、いつものバスに乗った。
車内はそこそこ混んでいた。
女はひとつだけあいていた席にきちんと座った。

車内がさらに混んできた頃、女の自宅近くの停留所にバスが停まった。
女はバスを降りた。
また席があいた。

しばらくして、臆病な男がバスに乗ってきた。
車内はかなり混んでいて、立っている乗客が何人もいた。
男は、席があいているのを不思議に思いつつ、腰かけた。

いくつかの停留所を過ぎ、バスはすいてきた。
立っている乗客はいなくなり、あいている席が増えていった。

終点で、男を含む全員がバスを降り、すべての席があいた。


のちに男は、乗客の誰かが「死者」だったかもしれないと思って恐怖した。
席があいていた「本当の理由」を知ってしまったから……


一体どういうことだろう?
17年04月27日 21:23
【ウミガメのスープ】 [えぜりん]



解説を見る
スの運転手だった女が、仕事中に職務放棄した。
同僚の男は女の行動を不思議に思いながら、女の代わりにバスを運行させた
後日、女が脳腫瘍で認知障害を起こしていたという事実を知り、もし運悪く事故が起きていたら、乗客に死亡者がいたかもしれないと思い恐怖した。



以下、くだくだしい解説。



女は路線バスの運転手だった。
真面目で体が丈夫だったので、25年間無遅刻無欠勤であった。


ある日のこと、女は駅前で前の運転手と交替し、終点の営業所までバスを運行する予定だった。
しかし、自宅近くの停留所にバスを止めた途端、なぜか女はバスを降りて帰宅してしまったのだ。

何の説明もなく運転手がバスを降りてしまったのだから、驚いたのは乗客たちである。
最初のうちは、運転手が職務上の事情でほんの少し席を外しただけで、1、2分もすれば戻って来るだろうと思っていたのだ。
ところが5分経っても10分経っても戻ってこない。

乗客の1人がバス会社の営業所に電話をかけた。
急遽、女の同僚の男が停車中のバスに駆け付け、空っぽの運転席に座った。
男は、普段真面目な女の、突然の奇行を不思議に思いつつも、代わりにバスを運転し、終点まで運行させた。


翌日、事の次第を知った家族が女を病院につれていったところ、女の脳内に腫瘍が見つかった。
女がバスを降りたのは単なるサボりではなく、運転中に認知障害を起こし、仕事中であることを忘れてしまったためだと推察された。

女の診断結果はバス会社に連絡され、運転手の健康診断の項目を見直す結果になった。

そして……男は心底恐ろしいと思ったのである。
もしも運悪く、女が運転を誤って大事故を起こしていれば、女や、あの時見かけた乗客の誰かが死んでいたかもしれないのだから。


人命を預かる仕事。
その重さを胸に、今日も男はハンドルを握っている。
総合点:3票  チャーム:1票  伏線・洗練さ:2票  


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チャーム部門さるぼぼ
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「「乗車率100%以上の満員バスの中で何故ひとつだけ席が空いているのか?」これだけでもチャームポイント(得点という意味での“ポイント”)が高いのに更に問題文の最後でまた煽る煽る!これだけハードルを上げても解説で期待を裏切らないという凄さ。」
2017年05月31日18時
伏線・洗練さ部門エリム
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「一見ホラーのように見えますが、実は全く別方向の怖さがあります。進行中に1つだけ空いた席の理由がわかりますが、それだけでは恐怖の理由になりません。席に座った『真面目な女』と『臆病な男』の設定がまたベールやクルーとして光ります。」
2017年06月04日00時
伏線・洗練さ部門さるぼぼ
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「これは面白い。参加したならじっくりと取り組みたい重厚なスープ。描写が丁寧で叙述も素晴らしい。きっとあなたもコロッと騙されることだろう。是非質疑応答の一部始終を追って楽しんでもらいたい。私は鳥肌が立ちました。」
2017年05月31日18時

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