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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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【猛者のスープ】   おばけと        (問題ページ

が母親からもらった絵本を声に出して読んでいる。



『   おばけと        』

そこのみえない おみずのおばけ
のみこまれると おぼれてしまう
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

                
               

きゅうにちかづく さわがしおばけ
どたばたしてて ぺちゃくちゃしゃべる
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

               
               

かんかんかんと とっきゅうおばけ
わたしのほうへ ちかづいてくる
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

                
                

くんくんくさい もうじゅうおばけ
ひくいなきごえ わたしにむける
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

                
                  

おばけたくさん こわいよこわい

               

おともだちなら たすけてくれる

               

おかあさんがね おしえてくれた
でもおともだち どこにもいない

               

おともだちには はやくあいたい
ねえねえわたし どうしたらいい?

                 
               



最後のページまで読み終えた娘は不安げな表情で
そばにいる母親の方を向いている。
それに対し母は
「近くにいるよ」
「勇気を持って」
と繰り返し静かに言った。


この娘がおともだちに会うには、どうすれば良いのだろうか?
16年09月28日 21:02
【ウミガメのスープ】【批評OK】 [ポトフ]



解説を見る
親が盲目の娘を思って自作した

点字と墨字(普通の文字)交じりの絵本は、こんな内容だった。


******************
いないおばけとみえないともだち

そこのみえない おみずのおばけ
のみこまれると おぼれてしまう
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

だいじょうぶだよ そこはあさいよ
ちかくでぼくが みていてあげる

きゅうにちかづく さわがしおばけ
どたばたしてて ぺちゃくちゃしゃべる
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

こわがらないで それはにんげん
ぼくのてにぎり はなさないでね

かんかんかんと とっきゅうおばけ
わたしのほうへ ちかづいてくる
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

ここはえきだよ でんしゃがとまる
みぎてつないで いっしょにのろう

くんくんくさい もうじゅうおばけ
ひくいなきごえ わたしにむける
こわいよこわい とってもこわい
ねえねえわたし どうしたらいい?

だいじょうぶだよ それはうしさん
おいしいぎゅうにゅう つくってくれる

おばけたくさん こわいよこわい

おばけはいない どこにもいない

おともだちなら たすけてくれる

そうだよぼくが たすけてあげる

おかあさんがね おしえてくれた
でもおともだち どこにもいない

ぼくはいつでも ちかくにいるよ

おともだちには はやくあいたい
ねえねえわたし どうしたらいい?

ゆうきをもって しゅじゅつをしよう
すべてみえれば ぼくにあえるよ
******************


この絵本の点字部分を盲目の娘自身が、
娘が読めない墨字(普通の文字)部分を母親が、
声を出してかけあうように読んでいった。

母親の口から聞こえる言葉の一つ一つを受け止め、
それでも不安げな表情をする娘。

母親は「おともだち」の言葉を繰り返す。

「近くにいるよ」
「勇気を持って」

このあと娘は、目の手術を受ける。

手術は無事成功し、娘は光を得た。
そして娘は気づく。
おともだちは、確かにすぐ近くにいたのだ。






さてここで、母親がこの絵本に込めた思いについて、
2つほど明らかにしよう。

まず、絵本の裏表紙には、
少女と少年が見つめ合って手を繋いでいる絵とともに、
墨字(普通の文字)でこう書いてある。

******************
しゅじゅつがおわり ひかりがみえた
しょうじょはぼくと まいにちあそぶ

こわいおばけは どこにもいない
******************


そして。

絵本のどこにも、お化けの絵など描かれてはいない。






要約解説:
絵本は母親が盲目の娘のために自作した、
点字と墨字(普通の文字)混じりのもの。
勇気さえあれば、目の前に素晴らしい世界が
待っていることを教えたくて作った。
母親の思いを理解した娘は勇気を持って目の手術を受ける。

一行解答:勇気を持って目の手術を受ける。
総合点:10票  チャーム:2票  トリック:2票  伏線・洗練さ:2票  物語:4票  


最初最後
チャーム部門ツォン
投票一覧
「問題文に対する違和感を見事に生かした一品。逸品。」
2016年10月06日22時
チャーム部門牛削り
投票一覧
「小気味良いリズムで綴られる幻想的なポエムと、「この娘がおともだちに会うには、どうすれば良いのだろうか?」という斬新な問い掛け。フォーマットも整っていて見やすく、奇抜ながらも「これだけ丁寧に作られているなら、解説もさぞかし」と安心して推理に臨める。チャームの高い問題が備えているべき条件を、すべて高いレベルで実現している。」
2016年10月06日16時
トリック部門かもめの水平さん
投票一覧
「アイデアが素晴らしい。「つまらない映画」という作品があるが、あの作品以来「実現したらどうなるだろう?」と思わせた作品である」
2016年10月12日08時
トリック部門ツォン
投票一覧
「洗練さと同じ理由ですが、謎のコアが問題文の作りにつながっております。」
2016年10月06日22時
伏線・洗練さ部門ツォン
投票一覧
「トリック部門としても同じ理由ですが、謎のコアが問題文の作りに関わっており、それを全て回収しきっています。」
2016年10月06日22時
伏線・洗練さ部門牛削り
投票一覧
「謎の根幹と物語の核心部分とがピタリと合致しているため、解き明かした達成感と物語から受け取る感動とが同時にやってくる。物語単体としても名作だが、ウミガメのスープとして出題することでその感動を何倍にも高めている。題材と形式との見事な調和が美しい。」
2016年10月06日16時
物語部門ゴトーレーベル
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「点字と通常の印刷文字を共存させるというアイディアが実に秀逸。その発想をやさしい物語という形に仕上げた、心に残る問題です。」
2017年08月19日13時
物語部門ツォン
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「やさしさに満ち溢れたすばらしい作品。これそのものが児童書にできそう。」
2016年10月08日16時
物語部門牛削り
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「類を見ない独特の展開を見せる物語は、優しさに溢れている。言葉の一つ一つが厳選されており、フォントタグの使い方にまで並々ならぬこだわりが見える。完璧という他ない完成度の傑作である。出版したら売れるよきっと。」
2016年10月06日16時
物語部門黒井由紀
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「物語・世界観がとても丁寧に作り込まれています。ちりばめられた手がかりから辿り着く真相は、初めて見る色に満ちあふれていました。」
2016年09月28日21時

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