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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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『For you』(問題ページ

る小説が大ヒットし、至るところで話題になっていた時の話。

A君が
「文章の力というものを実感させられた。作者は素晴らしい小説家だ。」
との感想を私に述べてきたので、
「どんな話なの?」
と尋ねると、
「家族愛がテーマらしいけど、あんまり詳しくは分からない。」
とA君。


一体どういう事だろう?
16年08月28日 20:20
【ウミガメのスープ】【批評OK】 [SoMR]



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の小説の作者はA君の父。
A君の家庭は崩壊しており、家族間の会話は無いに等しい。
A君と父親はもう何年も会話らしい会話をしていないそうだ。
そんな中出た1冊の小説。
それはある家族が一致団結し、巻き起こる様々な困難に立ち向かっていく愛情溢れるストーリーであった。

A君は父の書いた小説などは読みたくも無いが、
テレビ、雑誌、電車内の広告等で否が応にもその評判が目に入ってきてしまう。

「家族の愛って素晴らしいと実感させられました! (40代 女性)」
「涙が止まりませんでした。親を大切にしようと思いました!(20代 女性)」
「皆が一つになればどんな問題も解決できる!(30代 男性)」

A君は「あの父親」が家族愛なんてものをテーマにした事に驚き、同時に苛立ちもおぼえた。
「作者の現実の家族には愛なんて存在しないのに…」
何よりその小説に出てくる家族の大黒柱となっている父親が人気キャラクターらしいのも腹立たしかった。

「『俺を信じろ!皆は俺が守る!』男の中の男です! (20代 男性)」
「こんなお父さんだったらよかった! (10代 女性)」

現実の父親と比較して頭が沸騰しそうになる。

「こんな妄想を書いて、大ヒットとは世も末だな。
それにしても……現実では家族が崩壊しているのに、
家族愛をテーマにした大ヒット作品が産み出せるというのは、いかに文章というものが人を欺き騙せるパワーを持っているという事を実感させられるな。
その意味でコイツは確かに凄いよ。
現実に経験してないものをリアリティある話として創り出し、皆を感動させられるんだから、
小説家としては一流なんじゃないか。」

彼が私に述べた感想はこういう意味だったらしい。


興味が出たので私は後日、件の小説を読んでみた。
評判通り、家族愛というものの力を再認識させられるような、素晴らしい小説であった。
ふと私は、これはA君の父親から崩壊している家族へ宛ててのメッセージなのでは?と思った。
物語の前半では、登場する家族も上手くいっていない状態であり、父親は悩み葛藤しながらも家族に愛を取り戻していく…
何より父親の心理描写として描かれていた、家族に対する申し訳なさと家族への愛はA君の父親の気持ちそのものではないだろうか?
怒られるかな、と思いながらも、私はA君に小説を読む事を促すと、
初めは嫌がりながらも、「ネタにはなるだろうから、読んでみる」と私のその本を借りて行った。

次の日、A君は久しぶりに親父と話したらしい。


要約:
A君はその小説に関してテレビや広告で目に入る程度の内容しか知らない状態であるが、家族愛がテーマらしいという事は知っている。
実はその小説の作者はA君の父であり、
そしてA君の家庭は崩壊していたのだった。
にも関わらず、家族愛をテーマにした作品で大ヒットを飛ばせるなんて父は小説家としては凄い力をもっているのだな、という事をA君は問題文のセリフで皮肉を込めて言っている。
総合点:2票  物語:2票  


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物語部門とかげ
投票一覧
「大ヒットした小説について、素晴らしいと言っているのに、どんな話なのかよく知らないってどういうこと? いい加減なことを言っていると思っていたA君の言葉の本当の意味を知り、にやりと笑ってしまった。確かにこれは家族愛が主題の作品だ。」
2016年11月27日18時
物語部門エリム
投票一覧
「問題文から『A君は小説の内容が嘘だと思っている』ことはうかがえるのですが、なぜ知らない内容を嘘と断言できるのか? その理由の丁寧な組み立てと、第三者視点ならではの踏み込み過ぎない優しい展開が、良い味わいとなっています」
2016年09月05日23時

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