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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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項目についての説明はラテシンwiki

箱庭の夢(問題ページ

の名前はカメオ。カメ王国の王子さ。


その少女と僕が出会ったのは、ある夜、美しい花々が咲き乱れるお城の庭。
少女は外から庭を見つめ、息をするのも忘れているようだった。

僕が少女の前へ行って笑いかけると、少女ははにかんだようにそっと微笑み返してきた。
僕は嬉しくなって、庭に生えているラテの木から、甘く熟れた実をひとつとって少女に差し出した。
実を口に含んだ少女は、頬を薔薇色に染めて目を輝かせた。

なんて可愛いのだろう。

僕は思った。
この子ともっと仲良くなりたい。
そう思った僕は、勇気を出して少女に話しかけた。
紳士らしく、まずは礼儀正しく挨拶を。

けれど少女は突然、とても悲しそうな顔をした。
そうしてそのまま走り去ってしまった。


僕はどこで間違えたのだろう。
どうして彼女は、僕に答えてくれなかったのだろうか?
16年07月05日 16:22
【ウミガメのスープ】 [水瓶のスープ]



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の名前はカメオ。君の名前は?


彼は私にそう話しかけました。
その瞬間に、魔法は消えてしまったのです。

この国では、自分の名前を持てるのは、高貴な生まれの人たちだけ。
彼が話しかけてくれたことがとても嬉しいのに、私には答える名前がないのです。

まだ幼い彼は知らなかったのでしょう。
彼にとっては余りに当たり前すぎるから。
自分の持っているものを、持たない人間がいることなど、きっと想像もつかなかったのです。

彼は、この美しい箱庭の中で暮らす王子様。
はじめから、外の世界に住む私たちなんかとは、交わるはずもない人。
そんなことを私は、今更のように思い知ったのでした。

「お答えできません…。ごめんなさい。もう二度と来ませんから」

それだけ言うと、私は逃げるように立ち去りました。

少し熱い喉の奥に、彼がくれたラテの実の、初めて食べた甘酸っぱい味が、微かに残っていました。
総合点:2票  物語:2票  


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物語部門az
投票一覧
「常識と思っていることが、実は相手にとってはそうではないかもしれない。その想像力も水平思考と言えるのではないでしょうか。」
2016年09月26日23時
物語部門エリム
投票一覧
「自分の知らない世界を、どれだけ想像できますか? そんな普遍的なことを、静かに問いかけて来る物語です」
2016年07月10日22時

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