【最後の一文】今度、会っていただけませんか。(問題ページ)
太郎は、愛する花子から今度会ってほしいと言われて、
激しい後悔ののちに、次郎を抹殺することにした。
いったいどうして?
※本企画は、「解説の最後の一文でぞくっとする問題」「その最後の一文をタイトルとする」というテーマで出題したものです。
16年05月08日 20:01
【ウミガメのスープ】
[3000才]
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太郎は、妻の葉子との生活に疲れていた。
葉子は、思い込みが激しいのだ。
付き合った頃はそれもかわいかったのだが、
長くいると耐えられなくなる。
趣味も、価値観も近かったのだが、結婚生活はそれだけでは成立しない。
太郎の周りに女性はいないからSNSで出会いを求めた。
すぐにある女性と意気投合できた。
何でも話した。
SNSでは、本名はさすがにはばかられたので、次郎と名乗っていた。
ついた嘘はそれだけだった。
彼女は花子といった。
彼女も夫との生活に疲れていた。
離婚も考えている、と。
趣味もあった。
世代も近かった。
境遇も、価値観も。
太郎は直感した。
花子と出会ったとき、おそらく、妻の葉子を裏切ることになるだろう。
花子にもしも出会えたらと思うと楽しみだが、それと同時に恐ろしかった。
なるべく出会うことを先延ばしにいる自分がいた。
それでも、ネットでの付き合いだけで愛が深まることを太郎は知った。
ある日。
太郎は、葉子から離婚を切り出された。
葉子も、太郎との生活に限界を感じていたという。
これからどうするのか。
そう尋ねても、首を振るだけだった。
太郎にとっても、離婚に不満はない。
太郎の脳裏に、まだ見ぬ花子が思い浮かんだ。
太郎は、離婚届に印鑑を押した。
その夜、太郎は、激しい後悔ののちに、
SNSの自分のアカウント―次郎―の存在意味がないことを知り、消去することを決意した。
太郎のSNS用に作ったメールアドレスに、葉子の携帯アドレスからメールが届いていたからだ。
なぜ葉子が自分のメールアドレスを知っているのかと訝しながらメールを開くと、
こう書いてあった。
次郎さんへ
花子です。
今日は思い切って、携帯メールアドレスから初めてメールします。
よければ次郎さんの携帯アドレスも教えていただけるとうれしいです。
今日、夫が離婚に承諾してくれました。
今度、会っていただけませんか。
総合点:1票 物語:1票
物語部門エリム【
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「この物語にぞくっとするか、それとも強い運命を感じるか・・・」
2016年05月21日23時