ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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《ロンリの罠・第一講》牛乳ラビリンス(問題ページ

ーンコーンカーンコーン

「では、『ロンリ学』第一回の講義を始めます。
 私は講師の根室理世(みちよ)です。
 ……って、あら、受講者は一人だけですか」
「あ、僕、久松っていいます。よろしくお願いします」
「久松君、よろしく。さっそくだけど、本題に入りますね。
 当講義では、みんなが陥りやすいロンリの罠について学んでいきます」
「ロンリの罠?」
「そう。筋道だてて話しているつもりでも、論理的に正しくないということは多々あります。
 それを私は、"ロンリの罠"と呼んでいます。例えば、次の例を見てみましょう」


(A)
都築は冷たい牛乳を飲んだ翌日には、お腹が痛くなるという。
では都築のお腹が痛くなる原因は何だろうか?


「これ、わかるかしら」
「え、これ普通に答えていいんですか?」
「どうぞ」
「えっと、牛乳でお腹を下すから?」
「久松君、それが、ロンリの罠なんです」
「え?」
「こんな条件を加えてみましょう」


(B)
都築は毎日お腹が痛くなっている。


「そんな人いるんですか?」
「いるんです」
「はあ。でもこの条件で、何か変わりますか?」
「わかりませんか?
 この条件なら、牛乳を飲んだ翌日だろうとそれ以外の日だろうと、必ずお腹が痛くなることになります」
「ああそうか、牛乳が原因とは言えなくなる!」
「もちろん、牛乳が原因である可能性も残っていますけどね。
 論理的に語りたいのであれば、隠された条件についてもしっかり追及することが大事です。
 条件を明らかにできないのであれば、断定は避けるべきでしょう」
「なるほどなあ。あ、じゃあ先生、こうすれば牛乳が原因だと断定できそうですね」


(C)
都築は冷たい牛乳を飲んだ翌日には、お腹が痛くなるという。
そしてお腹が痛くなった日の前日には、冷たい牛乳を飲んでいる。
彼は毎日牛乳を飲むわけではない。
では都築のお腹が痛くなる原因は何だろうか?


「……久松君」
「はい、先生」
「まんまと掛かったわね」
「え、まさか……」
「実はこの都築という人は、私の知り合いなんです。
 そして彼は、まさしくあなたの作ってくれた(C)の文章通りの状況を抱えています。
 でも、彼に関していえば、牛乳が原因だというのは明らかに間違えています
「え、そんな……」
「久松君、これがロンリの罠です」


(C)に、ロンリの罠を回避しつつ回答せよ。
15年11月26日 01:39
【ウミガメのスープ】【批評OK】 [牛削り]



解説を見る
ーンコーンカーンコーン

「あら、もう休み時間のようですね。
 では手短に解説します」
「お願いします」
「私の知り合いの都築氏は、趣味で筋トレをやっているのです。
 趣味の範囲だから、毎日みっちりってほどではないけどね。
 で、筋トレの直後には、必ずプロテインを飲むことにしています。
 プロテインの推奨される飲み方は、牛乳に溶かすこと
 当然、彼もそれに従ってプロテイン牛乳を飲むわけです。
 別に牛乳が好きってわけじゃないから、それ以外で牛乳を飲むことはほとんどないそうよ」
「ははあ、じゃあ都築さんが牛乳を飲むのは、筋トレをした日ってことですか」
「そういうこと。
 で、彼はメタボ気味なのが気になっているようで、筋トレメニューには必ず腹筋運動を入れているそうです。
 つまり……」
「そうか、筋肉痛だ!」
「そう、"お腹が痛くなる"というのは、腹筋の筋肉痛を表していたのです。
 筋肉痛の原因は、牛乳ではあり得ないわね」
「なるほどなあ。
 でも先生、そうすると、あることがあることの原因だと断定できるのは、どんな時なんでしょう?」
「久松君、実はね、事実についてのどんな観察結果があろうと、本当の意味で原因を断定することは不可能なんです。
 せいぜい、Aが起きた後にBが起きることが多いから、次にAが起きたらBも起きるんじゃないかな、と予想できるくらいです」
「ええ!? な、なんだか、身も蓋もないですね……」
「そんなことはないわよ。
 間違いの可能性をしっかり理解した上で考察を重ねていくこと。
 その先には必ず、価値のあるものが待っています」
「ほへー。奥が深いですねえ」
「時に久松君、きみ、もてないでしょ」
「え? なんでわかるんですか?」
「こんな簡単なロンリの罠に掛かるようでは、もてないはずです」
「せ、先生、それさっそく、原因の取り違えじゃ……」
「では、次の講義でお会いしましょう」



【要約解説】
都築が牛乳を飲むのは、筋トレをした後にプロテインを摂取するためである。
筋トレをした翌日には、腹筋が筋肉痛になる。つまり、お腹が痛くなる。
腹筋の筋肉痛の原因は、牛乳ではなく筋トレであると考えるのが普通である。
総合点:9票  納得感:1票  トリック:1票  伏線・洗練さ:1票  斬新さ:4票  その他:2票  


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納得感部門かもめの水平さん
投票一覧
「原因を筋道立てて解明しようとすればするほど混乱する。質問者はきっと最初は登場人物と同じ心理に陥ることでしょう。それだけに真相がわかった時あなたも登場人物同様に感動すること間違いなし」
2016年03月20日09時
トリック部門白露もみじ
投票一覧
「ロンリの罠や登場人物の掛け合いという調理法もさることながら、私は純粋にトリックが素晴らしいと思いました。牛乳 お腹が痛い この2つのつなげ方が絶妙です。素晴らしい着眼点!」
2017年10月28日23時
伏線・洗練さ部門からす山
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「「ロンリの罠」について独特の視点も交えながら、本来解くべき問題もその中に融合させてごく自然に解決しています。そうそう作れない、素晴らしく洗練・完成された作品です。」
2017年10月01日17時
斬新さ部門YOUSUN
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「納得感抜群の『謎部分』とそれを引き立てる『問題構成』、その両方に水平思考が用いられています。前者の素晴らしさについてはかもめさんに、後者の素晴らしさについてはとかげさんに100%同意なのでこれ以上は語りませんが、あのトリックをこのような斬新な形で仕立て上げた作者の手腕とこだわりは是非見習いたいものです。」
2017年10月29日18時
斬新さ部門蓮華
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「ミルの方法を思い出しました。水平思考と縁の無さそうな論理学まで問題になっちゃいました。新ジャンルに近い雰囲気のスープです。」
2016年06月07日01時
斬新さ部門フィーカス
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「授業のような形で出題するという斬新さ。しかし、この形だからこそ成り立っているという点も見逃せず、解説も実に勉強になるものでした。ぜひシリーズ化してほしいものです。」
2015年12月06日00時
斬新さ部門まぴばゆ
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「チャームがない問題って敬遠しちゃう事が多いですよね。ですがこの問題では一見チャームがない問題に罠をはって参加者をうならせるのです。」
2015年11月27日10時
その他部門からす山
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「牛削りさんの独自の視点が細かくつづられています。興味深いです。こういうのを交えながら、充分に深い謎を盛り込む手腕が物凄いですね。」
2017年10月01日17時
その他部門とかげ
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「良いトリックを思い付いたけれど、「魅力的な謎を感じる問題文」にできない! そんなとき、まあいいかと出題するか、勇気を出して没にするか……これはそのどちらでもない、問題文自体を作中作にしてしまう、問題づくりの新たな試みです。こういう姿勢を見習いたい。」
2015年12月06日16時

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