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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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ほほえみ(問題ページ

の花びらがたくさん舞っている。たくさん、たくさん。

とても久しぶりに笑った彼女は、僕に「あなたって、ほんとに嘘がつけないのね」と言った。

状況を補完してください。
15年06月23日 06:06
【ウミガメのスープ】 [芳香]



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また来年の桜も、あなたと一緒に見られるかしら」

「ああ、見られるよ。来年も、そのまた来年も、十年後の桜だって一緒に見よう」

大きな手術を間近に控えた彼女の問い掛けに、僕は迷いなくそう答えた。

だが、手術後。どうにか命は助かったけれど、彼女は昏睡状態に陥ってしまった。

春が終わり、夏が過ぎ、秋が去り冬が来て、また春になっても、彼女は深く眠ったまま。桜が満開になっても、彼女の意識は戻らない。
だから僕は、花びらを集めた。「来年の桜」を、彼女と一緒に見るために。

がくから離れて風に乗り、ひらひらと舞う花びらを、地面に落ちる前にやさしく掴む。紙に挟んで、厚みのある辞書のあいだに入れ、僕はいくつも押し花をつくった。その翌年も、また次の年も。桜が咲くたび、僕の辞書には押し花が増えていった。

十回目の桜が花を終わらせ、力強い葉桜になった六月。
彼女が目覚めた。
医者は奇跡だと言っていたが、僕は信じていた。

彼女が話せるようになったころ、僕は病室に辞書を持ち込んだ。挟んでいるものを手のひらに移して、ふわりとやさしく投げる。
はらはら、十年ぶんの押し花が白いシーツの上に舞った。

「あの年から今までの桜だ、君と一緒に見ようって」

約束しただろう。僕の声は、情けないくらいに震えていた。

「……あなたって、ほんとに嘘がつけないのね。あんな約束、忘れたってよかったのに」

彼女はそう言って、十年ぶりに笑った。待ち焦がれた笑顔だった。


要約解説(これが明かされたらFA)
桜の花びらは押し花。彼女が笑ったのが「とても久しぶり」なのは、ずっと昏睡状態だったから。「僕」と彼女は、来年やその先の桜を一緒に見ようと約束していた。押し花はその、彼女が眠っていたあいだのぶんの桜。
総合点:5票  納得感:1票  物語:4票  


最初最後
納得感部門エリム
投票一覧
「この時期に桜の問題?? 登場人物の言動は勿論、解答者の抱く疑問も納得させてくれる解説です。これは逆に、今だからこそ・・・。」
2015年06月23日23時
物語部門エリム
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「短編として非常に美しい、そして優しい物語です。うっかり電車の中で読んでしまって泣きました。」
2015年06月23日23時
物語部門bears
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「泣けるストーリーです」
2015年06月23日16時
物語部門のりっこ。
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「とても感動的で美しい物語です。素晴らしい。」
2015年06月23日15時
物語部門牛削り
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「僕が嘘をつかなかったことがどれほどのことなのか、解説に心打たれることでしょう。」
2015年06月23日09時

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