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幻ノ女(問題ページ

あ、はじめまして。俺の名前はロンバートだ。ん?どこかでお会いしたことがありましたっけね?

実は今ちょっとやっかいな事件に巻き込まれていてね。
親友のスコットがある事件の容疑者として連行されてしまった。
事件のあらましはこうだ。

スコットは夜のニューヨークを独りさまよい歩いていた。なんでも妻と喧嘩をしたとかで、彼は夜更けすぎまで家には帰らなかったらしい。
だが、スコットが留守にしている間に彼の妻マーセラが自宅で殺されていてね、まあつまりはスコットが妻殺しの犯人として疑われているというわけだ。
しかも、引っ立てられたスコットの供述が要領を得ないようで、どうやら少し記憶がいかれちまっているらしい。
精神鑑定士が聞き出した話によれば、スコットは"俺はやってない"とか"俺は大きな帽子を目深にかぶった女と一緒に居た"というような発言をしているらしく、この帽子の女の証言があればアリバイが成立するようなんだが、困ったことに刑事さんたちの聞き込みの甲斐なく帽子の女の目撃情報は得られていない。まさに幻の女ってわけだな。
結局スコットの話は信用されず、死刑判決が下されてしまった。

しかしね、バージェスっていう刑事さんがどうもこの事件に納得がいってないようでね、警察としてはこれ以上の捜査は出来ないが、代わりにスコットのために動いてくれる探偵は居ないか、ということで俺に白羽の矢が立ったというわけ。
もちろん俺も親友スコットがマーセラを殺したなんて微塵も思っちゃいないし、全力で捜査してスコットの無実を証明してやりたいと思っている。
バージェス刑事のはからいで、俺はいくらでも現場に入れるし、好きなときにスコットと面会できる。が、いかんせん探偵の経験はないのでね、どのように捜査したら無実を証明できるものか……どうかおまえさん方、俺の捜査を手伝ってくれないか?
14年10月11日 21:36
【亀夫君問題】 [nattu]



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残酷な描写がありますので、注意してください。








が戻ってきた1992年のニューヨーク、そこではマーセラの殺害は起こっていなかった!
今日の日付は……ありゃ?10日か。11日から出発したはずだったんだが……
まあ、ここでの俺はニューヨークに呼び出されてすらいないはずだからな。明日からの南米での仕事に間に合うように神様が計らってくれたのかも。なんてな。
まあ、事件を未然に防げたのならなによりだ。皆の協力に感謝する。ありがとう。

…………………………………………………………………

観測者による解説

事の始まりは、押し込み強盗によるマーセラの殺害だった。
外出から帰ってきたスコットは愛する妻の死を受け入れられず、自らが開発したタイムマシンでマーセラを助けに行こうとした。しかし、スコットは気が動転していたためか、目的日時の設定を誤ってしまう。スコットが送られた先は実に20年前のニューヨークであった。
スコットの造ったタイムマシンは、短期間に一往復以上のタイムトラベルを行うことはできない。自らの失敗を呪うスコットだったが、偶然にも幼少のころのマー セラに出会った。ぶかぶかな女性ものの帽子を被る少女こそ、幼き頃のマーセラだったのだ。スコットは驚くべき偶然に感謝し、走り書きの手紙を幼きマーセラ に託した。


「親愛なるマーセラへ
この手紙は1992年の10月1日に読んで欲しい。

今日、君は殺される運命にある。信じられないことだろうが事実だ。今日1日は一歩も家から出ず戸締まりをしっかりして、誰の来客も断ってくれ。これくらいしかしてあげられることがなくて本当にすまない。

君を誰よりも愛している者より」


……しかし、現代に戻ってきたスコットの目の前にあったのは、刺殺されたマーセラの死体だった。
運命を変えることが出来ないと思ったスコットは、激しいショックを受け部分的に記憶喪失になってしまう。

この事件に疑問を持ったロンバートは、捜査の末にスコットがタイムマシンを用いて妻を救いに行ったことに気づき、自らも事の真相を確かめるべく事件の当日にタイムトラベルする。

一方、マーセラは手紙の内容に絶大なショックを受け、精神を病み人間不信に陥ってしまっていた。事件当日のスコットとの喧嘩もこれが原因である。
これらの条件が重なり、不幸な事件の連鎖が紡がれていくこととなる。

過去へタイムトラベルしたロンバートがスコット家の張り込みを行った場合、押し込み強盗の侵入は阻止できるが、死の影に怯え正気を失ったマーセラは夫を殺人者だと勘違いし揉み合いの末に死亡、スコットは自らを責め自殺することとなる。

ロンバートがスコット家を訪れた場合は、ロンバートが殺人者だと疑われマーセラと揉み合いになり、正当防衛でマーセラを殺害してしまう。

ロンバートがスコット家に張り込み、スコットの帰宅さえ妨害した場合も、マーセラは死の恐怖に耐えきれず自殺してしまう。

張り込みを行わなかった場合は、押し込み強盗の侵入を許し、マーセラは殺される。

……事件が不幸な終わりを迎えるたびに、ロンバートは幾度も幾度もタイムトラベルを行いやり直そうとした。タイムマシンの誤作動により11日から出発し、10日に存在している自身に統一される形で戻ってくることを繰り返し続けていたのだ。
激しいショックにより記憶を失いながらも、この運命の輪をループし続けたロンバートの精神力は本当に大したものだ。
しかし、15,499回目のループの際に運命は思わぬ展開へと至る。
ロンバートが事件当日ではなく20年前にタイムトラベルしたのだ。幼少の頃のマーセラから手紙を奪うことで、不幸の元凶を断ち切ったのだった。


……ん?それはおかしい?その場合、全ての始まりのときと同じように押し込み強盗による殺害が起きるはずだって?
そうなんだよ、私もそう思っていたんだがね……
どうやらロンバートが小銭を恵んであげたことで、奴の人生は好転し、強盗にはならずに済んだようだ。

こんなことは観測者になって以来初めてだ。
なんとも御都合主義な展開ではあるが、運命とはそういったものなのかもしれないね。

Fin.





作者注:今回、自分の知識と設定、回答力の至らなさゆえに参加して下さっていた皆様に多大な迷惑をおかけしてしまったと、本当に反省しております。
結構な裏設定があったのですが、もう本当に表に出すのも恥ずかしいのでお蔵にさせて下さい。ごめんなさい。
何か疑問や腑に落ちない点などあると思いますが、直接メッセージをいただければ、出来る限りの回答をしたいと思います。すみませんでした。
総合点:4票  亀夫君部門4票  

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亀夫君部門低空飛行便
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「普通の亀夫君問題なら、何度も繰り返して複数のENDを迎えることは叶わない。迎えるENDは1つだけ。ただしこの作品に限っては何度も繰り返すことが決定的な意味を持つ。既存の亀夫君問題とラテシンのシステムを守りつつ、ストーリー設定の工夫で、参加者が繰り返し挑戦できる問題というのは、とても貴重でとても面白い。」2016年06月25日21時
亀夫君部門とかげ
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「まずはhttp://sui-hei.net/mondai/show/12387からご覧ください。常識破りな「ある設定」を、緻密な計画と魅力的な謎で上質な問題に作り上げたその実力に、圧倒されました。」2015年11月17日08時
亀夫君部門牛削り
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「この手のSFは、少しでも計算が狂えば大失敗に終わる。当作品は、過去のある出来事が現在にどう影響を与えているか、事象の一つ一つについて緻密に計算し尽くされている。これだけ壮大な物語を、一切の破綻なく進行させるという腕前はさすがである。質疑の中でさりげなく伏線を忍ばせるテクニックにも脱帽だ。」2015年10月23日14時
亀夫君部門天童 魔子
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「作り込みが素晴らしい力作なのです」2015年10月22日22時

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