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幸福の代償(問題ページ

は自分が怖くなった。

「なんてこった・・・また当たっちまった・・・」

馬券を見ながら呟く。震えが止まらない。
軽い気持ちで買った超大穴中の大穴。300円が1000万円になる夢の馬券だ。

男は過去にも500万円の万馬券を当てた事があり、その日から人生が変わり始めた。
定職にもつけたし、愛する人もいた。500万円は結婚資金に消えてしまったが、後悔はしていない。

幸せの絶頂にいたはずの彼は、翌日死体で発見された。

さて、何故だろう?
13年08月12日 13:43
【ウミガメのスープ】 [クレーマー]



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残酷な描写がありますので、注意してください。








日も競馬はうまくいかなかった。
大穴狙い一点集中。だが俺はツキを持ってる。いつかうまく行くはずだ。

あの日から男は変わってしまった。
休みのたびに競馬で数万、十数万もスッてしまう。たまに勝つ。そんな日が続いた。
過去に当たった500万円の幻影に今も取り憑かれていたのだ。

彼女は俺のことを思って、何度も競馬を止めさせようとしてきた。

「うるせぇ!俺の金をどう使おうが俺の勝手だ!」

・・・その度につい彼女に辛く当たってしまう。時には暴力を振るうこともあった。
激昂すると何をしでかすかわからない。そんな自分が怖かった。

定職は既にクビになってしまった。貯金も底を尽き、ツキにも見放されてしまった。
そんなある日、いつもの様に負けて帰ってくると、彼女が言ったのだ。

「もう愛想が尽きたわ。ギャンブルをやめる気が無いんなら離婚しましょう。」

・・・
そこからのことはよく覚えていない。
気がつけば拳は血に濡れ、動かない彼女を見下ろしていた。

俺は理解した。
「ああ、なんてこった・・・俺は・・・また彼女に当たっちまったんだな・・・。」

手には馬券を握っていた。
当たれば1000万円の夢の馬券。当たるはずもない夢の馬券。

ついに彼女にも見放されてしまった。俺にはもう何も残っちゃいない。

台所にあった包丁で、手首を切った。ためらいは無かった。

これはきっと悪い夢なんだ。目が覚めれば、幸せなあの頃に戻れるんだ。



部屋に残されたのは、後悔と罪悪感。二つの死体。そして儚い夢の残り香。
ただそれだけであった。
総合点:6票  チャーム:2票  伏線・洗練さ:4票  

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ジャンル名前表示コメント日付
チャーム部門手弁当
投票一覧
「流し読みすると普通の問題のように見えますが、問題文、解説ともよく吟味されていて、ベールのかけ方が上等です。」2016年02月13日11時
チャーム部門春雨
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「非現実?陰謀?色んな想像ができて解きたくなることでしょう。」2015年08月22日17時
伏線・洗練さ部門az
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「解説を読んだあとに問題文を見返すと、あらゆる表現がまったく違った意味合いを持って迫ってきます。絶妙な伏線の活かし方に、細部までの作り込みと言葉へのこだわりを感じます。」2017年02月04日10時
伏線・洗練さ部門エリム
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「ベールとチャーム、解説のストーリーのバランスが見事です。」2016年02月13日23時
伏線・洗練さ部門かもめの水平さん
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「解説を見れば問題文が更に味わい深くなる。そして、この作品のキモである伏線部分にこう思う『ああ、これが幸福の代償だったのか』と」2015年11月21日22時
伏線・洗練さ部門春雨
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「解説を読むと、問題文の節々が作りこまれているなあと感服します。」2015年08月22日17時

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