ある女が、とある海の見えるレストランで「ウミドリのスープ」を注文しました。
しかし、彼女はその「ウミドリのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミドリのスープですか?」
「はい・・・ ウミドリのスープに間違いございません。」
女はその後激怒して文句を言った。
何故でしょう?
13年06月10日 23:06
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[ノックスR]
解説を見る
私は昔、船で海外旅行した先で嵐にあい、船が難破して救命ボートで遭難してしまった。
ボートには私のほかに二人の男と一人の子供がいた。
ボートは広かったが、食料や発炎筒などは嵐で流されてしまい、食料がない。
みんなの体力はだんだんと削られていった。
そしてついに、子供が死んでしまった。
みんな悲しんだが、次いつ自分がこうなってもおかしくなかった。
三人とも限界に達しかけていたその時、一人の男が口を開いた。
「二人とも、少しの間こっちを見ないでくれ」
二人とも黙ってそっぽを向いた。
いろいろな音が聞こえてきたが、聞かない振りをした。
「できた。二人とも、運よくウミドリがいたからそれをスープにしてみた」
そう言って差し出してきたのは、一つのスープ。
私たちは、黙ってそれを食べた。
私も、本当は分かっていた。
さっきまであそこにあった子供の遺体がない……
と、いうことは……このスープはおそらく…………
もう一人の男もそれが分かっているようで、黙って顔を青くしながら食べていた。
私はその時、この罪を一生背負おうと心に決めた。
それから少しして。
私たち三人は無事救出された。
子供のことはなにも言えなかった。
そのまま三人は、何も言わずに別れた。
そしてそれから数年後。
不意に、あの三人で集まろうという話が持ち上がった。
本当は参加したくなかったが、過去から目を向けてはいけない、あの子供への罪を忘れてはいけない。そう思って参加することにした。
そして三人は、不意にとあるレストランへと入った。
私はそのメニューの中に、ウミドリのスープがあるのを見つけた。
もう一人も気付いたようで、私達の罪を改めて自覚しようと、それを頼んだ。
だが、なぜか調理した男だけは反対していた。
そして、ウミドリのスープが運ばれてきた。
これが、本物の…………
そう思って口に含むと───
「……!?」
味が……同じ!?
どういうことだ。そんな…………
もう一人の男を見ると、
「こんな味だったんだ……」
とつぶやきながら食べている。
そして目に映ったのは、青ざめながら目を背けているもう一人の───
「……っ!!」
私はその男に掴みかかった。
「……どういうこと?」
「言ったろ……あれは、『ウミドリのスープ』だと。ちょうど、一羽だけいたんだよ。君だけには、人は食べて欲しくなかった……」
「なにそれ……なんで私には背負わせてくれないの!? 私だけなんで蚊帳の外にしたの!? 償うことも出来ないじゃない……!!」
私は、男にひたすら文句を言った。
理不尽だとは分かっていたけど、この口を止めることは出来なかった。
総合点:7票 トリック:1票 物語:5票 斬新さ:1票
トリック部門からす山【
投票一覧】
ネタバレコメントを見る
「激怒して文句を言ったのは、シェフに対してではなかったのですね。それだけではまだまだ真相にはたどり着けませんが、まずそこでだまされてしまいます。凄く自然なトリック。」
2017年10月18日20時
物語部門からす山【
投票一覧】
「本家とはまた全然違った方向ながらも、重くて深い物語。本家とどちらが素晴らしいかと聞かれると、悩むレベルの完成度です。」
2017年10月18日20時
物語部門SNC【
投票一覧】
「本歌取りの中でも上位に位置する良作ではないかと思います。解説も、前半はほとんど本家と変わりありません。ですが、新たな切り口から生み出された物語は、本家に劣らない名作でしょう。」
2016年03月01日00時
物語部門フィーカス【
投票一覧】
「本家ウミガメのスープとは別方向で、物語性の非常に高い問題です。こういう考え方もできるのですね。」
2015年06月13日16時
物語部門甘木【
投票一覧】
「本家『ウミガメのスープ』オマージュ問題であると同時に、それとはまた別の形で完成度の高い物語です。」
2015年06月10日02時
斬新さ部門アアア【
投票一覧】
「本家ウミガメのスープ、こういう解説もできるのか!って思いました。」
2015年07月08日12時