項目についての説明はラテシンwiki!
【ラテクエ27リサイクル】 「遅すぎた告白」(問題ページ)
俺はあいつに告白して恋人同士になった。 でもある時、俺は後悔した。
そして、この告白はもっと早くにするべきものだったのに、そうしなかった自分を呪った。
悩んだあげく、俺は殺人を犯すことにした。これで全て解決すると思ったからだ。
でも無理だった。俺は後悔の中、自殺することにした。 さて、どういう事だろう?
【ラテクエ27 選考問題、ゲッシュさんの出題のリサイクルです】
そして、この告白はもっと早くにするべきものだったのに、そうしなかった自分を呪った。
悩んだあげく、俺は殺人を犯すことにした。これで全て解決すると思ったからだ。
でも無理だった。俺は後悔の中、自殺することにした。 さて、どういう事だろう?
【ラテクエ27 選考問題、ゲッシュさんの出題のリサイクルです】
13年02月22日 21:25
【ウミガメのスープ】 [yan]
【ウミガメのスープ】 [yan]
解説を見る
【簡易解説】
若いころの俺は、あまりにも意地っ張りで、自己中心的すぎた。
だから、あいつとの破局を迎えることになった。
あいつとは幼馴染で、互いに想い合っていることに胡坐をかき、自分の気持ちを
言葉にすることを怠ったせいで、「あの男」に横取りされるハメになったのだ。
あいつを失った俺は、以前から研究していたタイムマシンの開発に人生を捧げた。
数十年後、完成間近で行き詰まった私は、彼女が病に伏せっていることを知った。
なりふり構わず彼女の家を訪ねた俺の姿に、彼女は一瞬驚いた顔をしたものの、
すぐに招き入れてくれた。二人でずっと話し合い、わだかまりは溶けて行った。
俺はタイムマシンの研究の話をし、「もう無理かもしれない」と弱音を吐くと、彼女は
「絶対に成功するわ、自分を信じて」と励ましてくれた。 俺は、そんな彼女を…
俺は思い切って、告白した。彼女は、「やっと言ってくれた」と、苦笑いしながらも
受け入れてくれた。離れていた時間を取り戻すように、仲睦まじく過ごす二人。
だが、彼女の時間はもう残されていなかった。いまわの際、彼女は言い残す。
「ありがとう、あなたと一緒で、幸せな人生だった。何一つ後悔してないわ…」
だが、俺は絶望した。なぜもっと早く告白しなかったのか。想い合っていたのに!
…奴が、「あの男」がいなければ…!
俺は、未完成のタイムマシンを起動させる。過去に戻り、「あの男」を殺すのだ。
しかし、やはり装置に不具合があったのか。俺は時空の海に放り出された…
気がつくと、俺はベッドの上にいた。見覚えのある部屋。いやな予感がする…
そして、予感は当たった。ドアから顔を出したのは、「彼女」だった…
俺は「あの男」を殺すことはできない。なぜなら「俺」があの男だったからだ。
俺はなんのためにタイムマシンを作ったんだ?歴史を繰り返すためだけに?
いいや。あんな思いをするのは「俺」だけで十分だ。俺は、「若い頃の俺」と
彼女に手紙を残すと、海に身を投げた。若い二人がうまくいくことを願って…
【長編解説】
俺は、あいつ-ウミコを問い詰めた。
「何だよあの男は! 寝室に連れ込むなんて、どういう仲なんだ!」
「違うわよ。 家の前で倒れていたから、介抱してあげただけ」
「そんなの、病院に連れて行けばいいじゃないか」
「病院はダメだっていうのよ。 …きっと、何か訳ありなんだわ」
「余計怪しいじゃないか!そんな素性の知れない男をなぜ… 惚れたのか?」
「なっ…何を言うのよ!」 そう口ごもったあいつの顔は、真っ赤に染まっていた。
その反応が、俺にはショックだった。 「俺というものがありながら…!」
だが、その呟きを聞いたあいつは逆に激昂し、俺に詰め寄った。
「貴方が何だというの?! 一度だって、好きとか言ってくれなかったくせに!」
「そっ… そんなの、改めて言うまでもないだろ…? だいたい、何で俺が…」
「…貴方はわかってないわ。 結局貴方は、何よりも自分の研究が大事なのよ」
「それは否定しないがね。 今やってる研究は凄いぞ! まさに世界を変える…」
ウミコは悲しそうな顔で、かぶりを振った。 「…さよならカメオ。もう来ないで」
そして静かに扉は閉じ、俺たちはそれきり会わなくなった…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
はっ、大富豪で天才科学者の、このカメオ博士が、なぜ媚びなきゃいけない?
まぁいいさ、今やってる研究に比べれば、色恋沙汰などくだらないことだ。
この時空間転移装置…タイムマシンが完成すれば、正に人類の歴史が変わる!
研究に専念できて、むしろ都合がいいくらいだ。 せいせいしたよ…
…だが、この革新的な研究に対し、世間の理解は乏しかった。今まで資金提供
をしていたパトロンや取巻き連中もいなくなり、俺は一人、黙々と研究を続けた。
そして、数十年の時が流れ…。
研究は完成に近づいているはず…。 だが、最後の詰めがうまくいかない。
先祖代々の財産も食いつぶし、実験を行うことすら困難な状態だった。
(このまま何の成果も出せずに終わるのか…?) そう疑問を抱き始めたころ、
伝聞で、あいつが病気で臥せっているということを聞いた。
夫となったあの男とはとうの昔に死別し、子供もおらず、身寄りもないというのに、
延命処置を断り、余命いくばくもないまま、あの家に一人戻って療養中だという。
(あいつが、死ぬ…? それも誰にも看取られず一人さびしく…?)
俺は、自分でも信じられないくらい早く、行動に移っていた。
もう夜も更けていたが、着の身着のまま、彼女の家の扉をノックする。
「はい…こんな時間に、誰ですか? …!? あなた…! どうして!!?」
「…幼馴染が死にかけてるんだ。 放って置くほうがおかしいだろう?」
「…カメオ…! …そう、そういうことなの。…わかったわ、あがってちょうだい」
俺たちは、語り合った。共通の思い出、別れてからのこと、そして近況など。
話題が研究の話に移ると、俺はためらいながらも、自嘲気味に答えた。
「あれからずっとタイムマシンの研究だよ。でももう無理かもな…可笑しいだろ?」
「タイムマシン…そう、タイムマシンなのね。…大丈夫、あなたなら成功するわ」
「…笑わないのかい?夢見たいな話で、しかも何十年も成果がないというのに」
「笑ったりしないわ… カメオ、昔のように自信を持って。…そう、自分を信じて」
…そうだ。 ウミコは、いつだって俺の味方をしてくれた。 なのに俺は…
「…ウミコ、俺は君が好きだ。 今でも、いや今までも、ずっと。」
「…やっと、言ってくれたのね。待ちくたびれて、私もうしわくちゃのお婆さんよ?」
「そんなことはないさ…俺の方はすっかりジジイだがな。受け入れてくれるかい?」
「喜んで! …ふふ、あなたも、素敵なオジサマよ?」
そして俺たちは、彼女に残された時間が尽きるまで、一緒に出かけたり、映画を
見たり、たわいもない会話をしたりしながら、過ごしていった。 だが…
「カメオ…そろそろ、もう、ダメみたい…」 「ウミコ…! しっかりしろ!」
「せっかくあなたと会えたのに、残念… でも充実した人生だった。後悔はないわ」
…俺は複雑な気持ちになった。じゃあ、「あの男」との結婚も、後悔してないのか?
きっと、ひどい顔をしていたに違いない。 彼女は俺を見て、首を振りながら言った。
「カメオ、違うの。そうじゃなくて… お願い、あたしを困らせないで」
そう言うと、彼女は俺に向かって優しく手を差し伸べた。 俺はその手を、強く握る。
「ありがとうカメオ… わたしは、あなたと一緒に過ごせて、幸せだった…」
そして彼女は、静かに目を閉じた。
「う…うああああああ!」 俺は、莫迦だ…! もっと早く告白すべきだったのに…!
互いに想いあっていたのに、彼女が死ぬ間際にようやく告白? なんと愚かな…!
俺は自分を呪った。そして、同時に「あの男」をも恨んだ。あいつさえいなければ…!
悩んだ挙句、私はある決意をした…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
研究室に戻った私は、タイムマシンを起動させた。 作動実験は行えなかったが、
理論上は問題ないはずなのだ。 …時間転移にかかるエネルギーは1回こっきり。
失敗したら終わりだが… 《自分を信じて!》 彼女の言葉が、私を後押ししてくれる。
「転移、開始。」 …周囲の景色が歪み、上下の感覚がなくなり始める。
目標時間軸は「あの男」が現れる前日、座標は彼女の家の裏手。計器は正常だ…
突然、装置がショートした。 マズいと思う間もなく、私は時空の狭間に飲み込まれ…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
目を覚ますと、俺はベッドの上で寝ていた。 ここは、見覚えがある…!
「あっ、起きられたんですね?とりあえず手当てしましたけど、夜が明けたら病院に…」
「いや、病院は待ってくれ」 「えっ?でも…」 「…頼む。命には別状はなさそうだし…」
「…わかりました。訳がおありなんですね。普通に動けるまではここに居ていいですよ」
「…助かる。」 「あの…お名前は?」 「…。 私はオメガ。 技術士をやっているものだ」
しばらく彼女の家で過ごし、正体がバレないように話をするうち、すっかり打ち解けた。
「…不思議です。オメガさんとは、初めて会った気がしないの」 「…運命、なのかもな」
「まぁ…!」 彼女は頬を赤らめると、「買い物に行きます」と言い、そそくさと部屋を出た。
そんな彼女の様子を微笑ましく見ながら、内心では深い絶望に襲われていた。
俺は、「あの男」を殺すつもりだった。 それで、すべて解説すると思ったからだ。
でも、それは無理だ。 なぜなら… 『俺』こそが、「あの男」だったのだから。
ふと窓の下を見ると、家の前で「若い頃の俺」が、憎々しげな顔をして見上げていた。
きびすを返して立ち去る「俺」の姿を見て、なぜ『過去から来た俺』が「若い頃の俺」を
応援せず、あまつさえ彼女を奪い取ったのか、わかるような気がした。
「若い頃の俺」は、あまりにも余裕がなく自己中心的過ぎた。仮に彼女と結ばれても、
すぐに破局を迎えるだろう。 だが、今の『俺』なら…
俺は、病床のウミコの家を訪れた時の、彼女の言葉を思い出す。
『あなた…! どうして!?」 「カメオ…そう、そういうことなの」
「そう、タイムマシンなのね。…大丈夫、あなたなら成功するわ」
「充実した人生だった。後悔はないわ」 「あたしを困らせないで…」
「あなたと一緒に過ごせて、幸せだった」
そう。彼女は俺と再会した時、すべてを悟ったのだろう。そして、「未来から来た俺」は、
間違いなく彼女を幸せにしていたはずなのだ。
あるいは、事故の影響で記憶を失ったのかもしれないし、単に「自分が彼女と結ばれたい」
という利己的な理由かもしれない。それでも、「若い頃の私」よりは随分マシだろう。
俺は絶望した。何の為にタイムマシンを開発したのだ?この歴史を繰り返す為だけに?
前に時間を遡った『俺』は、それで満足したのだろう。確かにそれで彼女を幸せに出来た。
だが、俺が同じ道を選べば、この時間軸の「若い俺」も、同じ運命を辿ることになる。
…あんな思いをするのは、もう、俺一人でたくさんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
…私は、2通の手紙をしたためた。 1通は、「若い自分」への手紙。
このまま研究を続ければ、色んな物を失うこと。得られるものは虚しさだけということ。
愛情は、言葉にしなければ伝わらないこと。彼女こそ、最大の味方であるということ。
もう1通は、彼女へ。
勝手に去ることを許して欲しい。だが、自分はここに居るべき人間ではなく、きみには
もっとふさわしい人物が居ること。 そしていつか、また会える日が来るということ…
…うまく、行くだろうか? 駄目なら、ただ歴史が繰り返されるだけだ。
いずれにせよ、俺はもうここに居てはいけない。 俺は岬に行くと、海に身を投げた…。
####################################
「…あなた、そろそろ、もう、ダメみたい…」 「ウミコ…! しっかりしろ!」 「母さん!」
「おばあちゃん、しなないで!」 家族に囲まれながら、ウミコは息を引き取ろうとしている。
「あのね…昔のことを思い出したわ。あなたがプロポーズしてくれた前の日までいた人…」
「…私も、彼に手紙をもらったよ」 「不思議…ふふ、あの人の顔、今のあなたにそっくり…」
「確かに不思議だ… 意地っ張りだった若い頃の私が、なぜか彼の言葉は素直に訊けた」
「実は私、あの人に惚れてしまったんだけど…無理もないわ、あなたそっくりなんだもの」
「…喜んでいいのかな?」 「ええ…。 ふふ、年をとっても、あなたは素敵よ…?」 「…」
「…充実した人生だったわ。 あなたと一緒に過ごせて、とても幸せだった…」
若いころの俺は、あまりにも意地っ張りで、自己中心的すぎた。
だから、あいつとの破局を迎えることになった。
あいつとは幼馴染で、互いに想い合っていることに胡坐をかき、自分の気持ちを
言葉にすることを怠ったせいで、「あの男」に横取りされるハメになったのだ。
あいつを失った俺は、以前から研究していたタイムマシンの開発に人生を捧げた。
数十年後、完成間近で行き詰まった私は、彼女が病に伏せっていることを知った。
なりふり構わず彼女の家を訪ねた俺の姿に、彼女は一瞬驚いた顔をしたものの、
すぐに招き入れてくれた。二人でずっと話し合い、わだかまりは溶けて行った。
俺はタイムマシンの研究の話をし、「もう無理かもしれない」と弱音を吐くと、彼女は
「絶対に成功するわ、自分を信じて」と励ましてくれた。 俺は、そんな彼女を…
俺は思い切って、告白した。彼女は、「やっと言ってくれた」と、苦笑いしながらも
受け入れてくれた。離れていた時間を取り戻すように、仲睦まじく過ごす二人。
だが、彼女の時間はもう残されていなかった。いまわの際、彼女は言い残す。
「ありがとう、あなたと一緒で、幸せな人生だった。何一つ後悔してないわ…」
だが、俺は絶望した。なぜもっと早く告白しなかったのか。想い合っていたのに!
…奴が、「あの男」がいなければ…!
俺は、未完成のタイムマシンを起動させる。過去に戻り、「あの男」を殺すのだ。
しかし、やはり装置に不具合があったのか。俺は時空の海に放り出された…
気がつくと、俺はベッドの上にいた。見覚えのある部屋。いやな予感がする…
そして、予感は当たった。ドアから顔を出したのは、「彼女」だった…
俺は「あの男」を殺すことはできない。なぜなら「俺」があの男だったからだ。
俺はなんのためにタイムマシンを作ったんだ?歴史を繰り返すためだけに?
いいや。あんな思いをするのは「俺」だけで十分だ。俺は、「若い頃の俺」と
彼女に手紙を残すと、海に身を投げた。若い二人がうまくいくことを願って…
【長編解説】
俺は、あいつ-ウミコを問い詰めた。
「何だよあの男は! 寝室に連れ込むなんて、どういう仲なんだ!」
「違うわよ。 家の前で倒れていたから、介抱してあげただけ」
「そんなの、病院に連れて行けばいいじゃないか」
「病院はダメだっていうのよ。 …きっと、何か訳ありなんだわ」
「余計怪しいじゃないか!そんな素性の知れない男をなぜ… 惚れたのか?」
「なっ…何を言うのよ!」 そう口ごもったあいつの顔は、真っ赤に染まっていた。
その反応が、俺にはショックだった。 「俺というものがありながら…!」
だが、その呟きを聞いたあいつは逆に激昂し、俺に詰め寄った。
「貴方が何だというの?! 一度だって、好きとか言ってくれなかったくせに!」
「そっ… そんなの、改めて言うまでもないだろ…? だいたい、何で俺が…」
「…貴方はわかってないわ。 結局貴方は、何よりも自分の研究が大事なのよ」
「それは否定しないがね。 今やってる研究は凄いぞ! まさに世界を変える…」
ウミコは悲しそうな顔で、かぶりを振った。 「…さよならカメオ。もう来ないで」
そして静かに扉は閉じ、俺たちはそれきり会わなくなった…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
はっ、大富豪で天才科学者の、このカメオ博士が、なぜ媚びなきゃいけない?
まぁいいさ、今やってる研究に比べれば、色恋沙汰などくだらないことだ。
この時空間転移装置…タイムマシンが完成すれば、正に人類の歴史が変わる!
研究に専念できて、むしろ都合がいいくらいだ。 せいせいしたよ…
…だが、この革新的な研究に対し、世間の理解は乏しかった。今まで資金提供
をしていたパトロンや取巻き連中もいなくなり、俺は一人、黙々と研究を続けた。
そして、数十年の時が流れ…。
研究は完成に近づいているはず…。 だが、最後の詰めがうまくいかない。
先祖代々の財産も食いつぶし、実験を行うことすら困難な状態だった。
(このまま何の成果も出せずに終わるのか…?) そう疑問を抱き始めたころ、
伝聞で、あいつが病気で臥せっているということを聞いた。
夫となったあの男とはとうの昔に死別し、子供もおらず、身寄りもないというのに、
延命処置を断り、余命いくばくもないまま、あの家に一人戻って療養中だという。
(あいつが、死ぬ…? それも誰にも看取られず一人さびしく…?)
俺は、自分でも信じられないくらい早く、行動に移っていた。
もう夜も更けていたが、着の身着のまま、彼女の家の扉をノックする。
「はい…こんな時間に、誰ですか? …!? あなた…! どうして!!?」
「…幼馴染が死にかけてるんだ。 放って置くほうがおかしいだろう?」
「…カメオ…! …そう、そういうことなの。…わかったわ、あがってちょうだい」
俺たちは、語り合った。共通の思い出、別れてからのこと、そして近況など。
話題が研究の話に移ると、俺はためらいながらも、自嘲気味に答えた。
「あれからずっとタイムマシンの研究だよ。でももう無理かもな…可笑しいだろ?」
「タイムマシン…そう、タイムマシンなのね。…大丈夫、あなたなら成功するわ」
「…笑わないのかい?夢見たいな話で、しかも何十年も成果がないというのに」
「笑ったりしないわ… カメオ、昔のように自信を持って。…そう、自分を信じて」
…そうだ。 ウミコは、いつだって俺の味方をしてくれた。 なのに俺は…
「…ウミコ、俺は君が好きだ。 今でも、いや今までも、ずっと。」
「…やっと、言ってくれたのね。待ちくたびれて、私もうしわくちゃのお婆さんよ?」
「そんなことはないさ…俺の方はすっかりジジイだがな。受け入れてくれるかい?」
「喜んで! …ふふ、あなたも、素敵なオジサマよ?」
そして俺たちは、彼女に残された時間が尽きるまで、一緒に出かけたり、映画を
見たり、たわいもない会話をしたりしながら、過ごしていった。 だが…
「カメオ…そろそろ、もう、ダメみたい…」 「ウミコ…! しっかりしろ!」
「せっかくあなたと会えたのに、残念… でも充実した人生だった。後悔はないわ」
…俺は複雑な気持ちになった。じゃあ、「あの男」との結婚も、後悔してないのか?
きっと、ひどい顔をしていたに違いない。 彼女は俺を見て、首を振りながら言った。
「カメオ、違うの。そうじゃなくて… お願い、あたしを困らせないで」
そう言うと、彼女は俺に向かって優しく手を差し伸べた。 俺はその手を、強く握る。
「ありがとうカメオ… わたしは、あなたと一緒に過ごせて、幸せだった…」
そして彼女は、静かに目を閉じた。
「う…うああああああ!」 俺は、莫迦だ…! もっと早く告白すべきだったのに…!
互いに想いあっていたのに、彼女が死ぬ間際にようやく告白? なんと愚かな…!
俺は自分を呪った。そして、同時に「あの男」をも恨んだ。あいつさえいなければ…!
悩んだ挙句、私はある決意をした…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
研究室に戻った私は、タイムマシンを起動させた。 作動実験は行えなかったが、
理論上は問題ないはずなのだ。 …時間転移にかかるエネルギーは1回こっきり。
失敗したら終わりだが… 《自分を信じて!》 彼女の言葉が、私を後押ししてくれる。
「転移、開始。」 …周囲の景色が歪み、上下の感覚がなくなり始める。
目標時間軸は「あの男」が現れる前日、座標は彼女の家の裏手。計器は正常だ…
突然、装置がショートした。 マズいと思う間もなく、私は時空の狭間に飲み込まれ…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
目を覚ますと、俺はベッドの上で寝ていた。 ここは、見覚えがある…!
「あっ、起きられたんですね?とりあえず手当てしましたけど、夜が明けたら病院に…」
「いや、病院は待ってくれ」 「えっ?でも…」 「…頼む。命には別状はなさそうだし…」
「…わかりました。訳がおありなんですね。普通に動けるまではここに居ていいですよ」
「…助かる。」 「あの…お名前は?」 「…。 私はオメガ。 技術士をやっているものだ」
しばらく彼女の家で過ごし、正体がバレないように話をするうち、すっかり打ち解けた。
「…不思議です。オメガさんとは、初めて会った気がしないの」 「…運命、なのかもな」
「まぁ…!」 彼女は頬を赤らめると、「買い物に行きます」と言い、そそくさと部屋を出た。
そんな彼女の様子を微笑ましく見ながら、内心では深い絶望に襲われていた。
俺は、「あの男」を殺すつもりだった。 それで、すべて解説すると思ったからだ。
でも、それは無理だ。 なぜなら… 『俺』こそが、「あの男」だったのだから。
ふと窓の下を見ると、家の前で「若い頃の俺」が、憎々しげな顔をして見上げていた。
きびすを返して立ち去る「俺」の姿を見て、なぜ『過去から来た俺』が「若い頃の俺」を
応援せず、あまつさえ彼女を奪い取ったのか、わかるような気がした。
「若い頃の俺」は、あまりにも余裕がなく自己中心的過ぎた。仮に彼女と結ばれても、
すぐに破局を迎えるだろう。 だが、今の『俺』なら…
俺は、病床のウミコの家を訪れた時の、彼女の言葉を思い出す。
『あなた…! どうして!?」 「カメオ…そう、そういうことなの」
「そう、タイムマシンなのね。…大丈夫、あなたなら成功するわ」
「充実した人生だった。後悔はないわ」 「あたしを困らせないで…」
「あなたと一緒に過ごせて、幸せだった」
そう。彼女は俺と再会した時、すべてを悟ったのだろう。そして、「未来から来た俺」は、
間違いなく彼女を幸せにしていたはずなのだ。
あるいは、事故の影響で記憶を失ったのかもしれないし、単に「自分が彼女と結ばれたい」
という利己的な理由かもしれない。それでも、「若い頃の私」よりは随分マシだろう。
俺は絶望した。何の為にタイムマシンを開発したのだ?この歴史を繰り返す為だけに?
前に時間を遡った『俺』は、それで満足したのだろう。確かにそれで彼女を幸せに出来た。
だが、俺が同じ道を選べば、この時間軸の「若い俺」も、同じ運命を辿ることになる。
…あんな思いをするのは、もう、俺一人でたくさんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
…私は、2通の手紙をしたためた。 1通は、「若い自分」への手紙。
このまま研究を続ければ、色んな物を失うこと。得られるものは虚しさだけということ。
愛情は、言葉にしなければ伝わらないこと。彼女こそ、最大の味方であるということ。
もう1通は、彼女へ。
勝手に去ることを許して欲しい。だが、自分はここに居るべき人間ではなく、きみには
もっとふさわしい人物が居ること。 そしていつか、また会える日が来るということ…
…うまく、行くだろうか? 駄目なら、ただ歴史が繰り返されるだけだ。
いずれにせよ、俺はもうここに居てはいけない。 俺は岬に行くと、海に身を投げた…。
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「…あなた、そろそろ、もう、ダメみたい…」 「ウミコ…! しっかりしろ!」 「母さん!」
「おばあちゃん、しなないで!」 家族に囲まれながら、ウミコは息を引き取ろうとしている。
「あのね…昔のことを思い出したわ。あなたがプロポーズしてくれた前の日までいた人…」
「…私も、彼に手紙をもらったよ」 「不思議…ふふ、あの人の顔、今のあなたにそっくり…」
「確かに不思議だ… 意地っ張りだった若い頃の私が、なぜか彼の言葉は素直に訊けた」
「実は私、あの人に惚れてしまったんだけど…無理もないわ、あなたそっくりなんだもの」
「…喜んでいいのかな?」 「ええ…。 ふふ、年をとっても、あなたは素敵よ…?」 「…」
「…充実した人生だったわ。 あなたと一緒に過ごせて、とても幸せだった…」
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