クラスメイトのカメコを見かけたカメオは、
突然リコーダーを取り出し、吹いた。
何故?
16年06月28日 22:22
【ウミガメのスープ】
[水瓶のスープ]
解説を見る
カメオの学校には、ウミガメ学級なるクラスがある。
いわゆる特別支援学級だ。
春からこのクラスに通っているカメオは、生まれつき声を出すことができない生徒だった。
ある日、学校からの帰り道。
カメオは、ウミガメ学級のクラスメイトのカメコが、横断歩道の手前で佇んでいるのを見かけた。
カメコは、目が見えなかった。
カメコが渡ろうとしている先の信号は、ちょうど赤から青に変わったところだった。
いつもなら、信号機から流れる「通りゃんせ」のメロディーが、カメコにそのことを教えてくれる。
ところが今日は、その音響装置が壊れてしまったのか、一向に何の音も聞こえてこない。
カメオは、カメコに信号の変わったことを教えてあげなければと思った。
だがカメオには、声に出してそのことを伝えることが出来ない。
かといって、いきなり肩を叩いたりしたら、カメコを驚かせてしまうかも。
カメオは考えて、背負っていたランドセルからリコーダーを取り出すと、習ったばかりの「通りゃんせ」を吹いた。
音楽はあまり得意ではなかったけれど、一生懸命吹いた。
くす、とカメコの小さく笑う声がした。
「そこ、少し違うよ。」
カメコは言った。
「授業の時にもそう先生に注意されていたね、カメオくん?」
名前を言い当てられ、カメオがもじもじしていると、カメコが傍へ寄ってきた。
「もう渡っても大丈夫だよってことかな?」
カメオは慌てて、返事のかわりに「ピ」とひとつリコーダーを吹いた。
「ありがとう。ねえカメオくん、一緒に帰ろうか。」
カメコは笑顔で言った。
カメオは頬を真っ赤に染め、さっきよりも高く擦れた音で、もうひとつ「ピ」とリコーダーを吹いた。
きらきらと夕日が照らす横断歩道を、ふたりは並んで歩き出した。
総合点:2票 物語:2票
物語部門蓮華【
投票一覧】
「優しい物語です。」
2016年07月09日10時
物語部門エリム【
投票一覧】
「心を温かくしたいときに、是非お読み下さい。2人に幸あれと願わずにいられません」
2016年07月06日00時