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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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やめて(問題ページ

リスマス当日。

カメコの枕元には豪華なクリスマスプレゼントが置かれていたので、
カメコは悲しみました。

一体なぜ?




※天童 魔子さんの問題「やめて!」のオマージュ問題です。
15年12月25日 19:16
【ウミガメのスープ】 [みん]



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谷は、後部座席の華芽子の様子を伺った。


「すみません…渋滞に嵌ってしまいました」

「いいのよ、こんな風に夜の街を眺めるなんて初めてだもの。
遅い時間なのに、人がたくさんいるのねぇ」

「ええ、今宵はクリスマスイヴですから」


街を彩るイルミネーション。
大きなツリーの周りに、カップルがひしめき合っていた。


「クリスマスは皆、こういった所でデートするのね。素敵だわ」

「お嬢様、来年は…」

「私はもう、お嬢様ではないわ」

「ええ、そうでした…」


車内に沈黙が訪れる。
外を眺める華芽子の目は、どこか遠くに向けられている様にも見えた。

そう思うのは、深谷自身に迷いがあるせいだろうか。


華芽子は資産家の娘、深谷は使用人。
いつしか恋仲になった2人だが、周りが認めるはずもない。

結局選んだのは、駆け落ちという道だった。


後悔してはいないだろうか。
全てを捨てて、私を選んだ事を。
私が、この方の将来を奪ってしまって良いのだろうか。


いや、違う…
自分が本当に恐れているのは、もっと別の事だ。


両親の管理下で育った華芽子の世界は狭い。
華芽子が自分を選んだのは、きっと、知らないからだ。

もっと広い世界に触れたら、自分に対する想いなど、
ただの気の迷いであったと気づいてしまうのではないか…

深谷は、それが怖かった。



「華芽子さん、紅茶はいかがですか?」

「ええ、いただこうかしら」


深谷は、水筒から紅茶を注いで華芽子に差し出した。
暖かい紅茶に、華芽子の表情がほころぶ。

深谷は、華芽子の幸せそうな顔を見るのが好きだった。
その笑顔をお守りしたいと、ずっと思ってきたのだ。

それなのに、こんな時に心配しているのは保身の事。
深谷は、己の醜い感情に戸惑った。

この感情が、いつか華芽子を傷つける事になるのではないか…



「温まったせいかしら。なんだか眠いわ…」

「どうぞ、おやすみになってください。もう遅い時間ですから」


頷いて、華芽子は目を閉じる。


「…目覚めたら、もう知らない場所に着いているのかしら」

「不安ですか?」

「いいえ…深谷がいるもの。大丈夫よ…きっと…」


そのまま、華芽子は眠りについた。












クリスマスの朝。
華芽子は、ベットの上で目覚めた。

枕元には豪華なプレゼントの箱。

お父様ったら…
もう幼い子供ではないのだから、
プレゼントはいらないって言ってるのに…



……!?


華芽子は、飛び起きて辺りを見回した。

ふかふかのベッド。
お気に入りのアンティーク時計。
一点物の刺繍が施されたカーテン。

そこは、見慣れた自分の部屋だった。


どうして!?
深谷はどこなの?

華芽子の手が何かに触れ、カサっと音がなる。

枕の下から、白い封筒がはみ出していた。
華芽子は、慌てて手紙の封を切った。



「ご挨拶もなしに去るご無礼をお許しください。
どうかお幸せに。」


手紙には、それだけ書かれていた。



深谷の部屋には、辞表が置いてあったという。
どこに行ったのか、なぜいなくなったのか。
屋敷の者は、誰一人知らなかった。



「どうしてなの…?」

捨てたはずの人生に、一人取り残された華芽子。

大切な人がいなくなった理由も、何もわからない。
そんな事もわからない自分が情けなかった。









【要約】
お嬢様のカメコ。目が覚めたら、そこは自室だったので、
駆け落ちするはずだった相手に置いて行かれた事を知って悲しんだ。
総合点:2票  物語:1票  その他:1票  


最初最後
物語部門エリム
投票一覧
「短い問題文から想像もつかない深く繊細な心理描写の物語が展開します。」
2016年01月03日22時
その他部門3000才
投票一覧
「少しずつベールがはがれていく様子がスリリングです 参加していてとても面白い問題でした ベール部門がないので、その他部門で投票します」
2015年12月25日20時

最初最後