ある日、「明後日、綺麗な星を一緒に見に行こう」とシンに誘われたラテ。
ラテはシンに思いを寄せていたが、告白する勇気は無かった。
頭にはもっふもふの耳当て、腕はニットの長い萌え袖セーター、足はふかふかブーツと、可愛くコーデを決めて楽しみにしていたラテだが、残念ながら空は厚い雲に覆われており、星は見えなかった。
しかし、そのおかげでラテはシンに告白し、付き合うことになったという。
一体何故?
Special Thanks:ディダムズさん SPありがとうございました!
15年11月30日 21:58
【ウミガメのスープ】
[からてちょっぷ]
解説を見る
長いです。要約解説ありなので、飛ばしたい方はスクロール推奨。
天文部に所属する幼なじみのシンが、星を一緒に見ようとラテを誘ったのは、ついこの間のことだった。
「明後日は綺麗な流星群が見られるんだ。一緒に見に行かない?」
これって、もしかして………
いや、そう早く決めつけるのは良くないし、違った場合のダメージはとても大きい。
下手に告白して傷つくのは嫌だ。
ラテは思いを巡らせながら、誘いには二つ返事で承諾した。
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…当日。
「…ごめん!お待たせ!」
白い耳当てに桃色のニットのセーター、ふわりと広がるスカートにこれまたふわふわなブーツ。
急いで待ち合わせ場所にやって来たラテを見て僕は思わず、天使のようだ、なんてそう思ってしまった。
ラテには幼い頃からずっと好意を抱いていたけれど、ずっと内緒にしていた。本人は気づいてないみたいだ…
今日もまた、思いは伝えられないけれど、それでも一緒に星を見られるだけで僕は満足だ。
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…困った。
空は曇ってきて、どうにも星は見えそうにない。
せっかく来て貰ったのに、これでは……
そう思って、彼女に謝ろうと小声で声をかけたが、耳当てのせいか全く気づかない。
おそるおそる肩を叩いたとき。
雪が降り出した。
「雪……」
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いきなり肩を叩かれて、私は振り向く。
さっきまで暗かった彼は、どこか驚いているような、神妙なような、そんな表情をしていた。
彼が口を開く。
…へっ?
彼の口の動きが、私の時間を一瞬止める。
彼は、私に、好きと、そう言った…
そんな…彼も?なら、もう怖くない。
「わ、私も、好き!シンのことが好き!」
ぐるぐる回る頭の中でなんとかそれだけを返す。
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「わ、私も、好き!シンのことが好き!」
何故か急にラテに告白された。
体温が上がる。
「僕も好きです、付き合って下さい」
体温が上がっていつもの理性はどこかへいってしまったようだ。
僕は彼女の耳当てを外し、承諾してくれた彼女の返事を聞いてから、おもむろに頬にキスをした。
雪が二人の真っ赤に熟れた頬の上で解けていた。
要約解説
ラテとシンは星を一緒に見に行ったが、星は見えず、雪が降り出した。シンは思わず「雪…」と呟いたが、耳当てをしていてシンの声がよく聞こえなかったラテは、シンが自分に「好き」と言ったと勘違いしてしまう。
母音、口の動きが共通であるがために起きた偶然。
その勘違いをきっかけに、ラテも想いを伝えた。
総合点:5票 チャーム:1票 トリック:1票 伏線・洗練さ:1票 物語:2票
チャーム部門にゃうさ【
投票一覧】
「素敵な文章で、謎も魅力的です」
2016年01月21日18時
トリック部門にゃうさ【
投票一覧】
「原因と結果を結びつけるロジックが単純でなく複雑すぎない良問だと思います」
2016年01月21日18時
伏線・洗練さ部門かもめの水平さん【
投票一覧】
「物語として見た時、問題として見た時、どちらとして読んでもこの伏線の綺麗さには関心します。からちょさんの温もりあるストーリーが洗練された一作です」
2015年12月01日00時
物語部門とかげ【
投票一覧】
「目的の星は見えなかったのに、そのおかげで思いを寄せていた相手に告白できた……? 問題文のクルーをつなぎあわせると現れる、なんとも面映ゆい真相に、思わずにやりとしてしまいます。とりあえず一言。爆発しろ!」
2016年01月26日23時
物語部門ツォン【
投票一覧】
「問題文と解説の、それぞれに美しさと謎と答えがあって、一度じっくり読んでいただきたいです。お手本のような「ストーリータイプ」の問題です。」
2015年11月30日22時