ずっと青かった視界が白になったので、私は本を読むのを止めた。
なぜ?
15年07月27日 21:37
【ウミガメのスープ】
[芳香]
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バスが来たのがわかったから。
雨の日。
バス停には、傘をさした人が数人並んでいた。私はその最後尾につき、時計を確認する。雨だから遅れているだろうし、まだしばらくは来ないだろう。
こんなときのためにと持ってきた本を開くと、なぜか白いはずの本が青くなっていた。顔を上げて、その理由に気がつく。前に並んでいる人が青い半透明のビニール傘をさしているから、そこを通った光が本に差し込み、本文の紙が青く見えていたのだ。
構わず本を読んでいると、しばらくして、その青はなくなった。前に立っていた人が進み、その傘を閉じたのだ。
バスが来たのがわかったから、私は本を読むのを止めた。
総合点:2票 チャーム:1票 伏線・洗練さ:1票
チャーム部門エリム【
投票一覧】
「青い視界が白に・・・その視界の意味が解けてなお、さらに「白でどうして?」となる二重構造の謎が見事です。」
2015年07月27日23時
伏線・洗練さ部門フィーカス【
投票一覧】
「着眼点がおもしろいと思いました。そのうえで、問題として成立させるような言葉の抜き取り方、そして説得力のある解説。とても丁寧に作られていると思います。」
2015年08月07日22時