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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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【ラテクエ52-2】朝まで踊る夢だけ見せて(問題ページ

は願っていた。
舞踏会に行って、王子様と踊りたい。
私には舞踏会に参加するような資格はないけれど、それでも――

様々な手助けを借りてようやく着いた舞踏会。
きらめくシャンデリア、絢爛豪華な装飾品に、きれいに着飾った沢山の女の人たち……。
幼い頃憧れていたのとそのまま同じ光景が、そこには広がっていた。
宮廷音楽士の音楽が途切れると、王子様が手を差し伸べてこう言った。
「美しいお方……私と踊ってくださいませんか?」

荘厳な音で12時の鐘が鳴り響いた。私はホールの外、お城の外へと駆け出した。

お城の大階段に落ちてしまった靴に気づくと、私は急いで拾って帰った。
置きざりにしておけば、王子様が持ち主を探しだすかもしれないと思っていたのに、一体なぜ?
15年05月24日 20:36
【ウミガメのスープ】 [黒井由紀]



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と王子は、幼い頃から決められていた許婚だった。一応政略結婚ではあるけれど、長年の友好国の、年の近い王子が相手なのだから、私は幸せな方だろう。いや、“方”ではなく、最も幸せな部類の女の子の一人である、と言う方が正確かも知れない。何故なら、幼い頃から度々彼とは顔を合わせることができたし、彼は完璧だったのだから。
さらさらの金髪にくりっとした碧い目、目鼻立ちも整っていたし、背も高く力も強い。勉強だって得意で、趣味のヴァイオリンはそんじょそこらの楽士よりも上手い。婚約者という意識の薄い昔、色々なことで彼と張り合おうとしていたけれど、私は彼に全然勝てなかった。彼の致命的な弱点を発見したいと、色々な事を試してみたけれど、結局私が彼に勝てる事は一度もなかった。
でも、その後、意外な所で彼の致命的な弱点は見つかった。
彼は、私と結婚したくないとごねたのだ。自身が本当に愛する女性とでなければ結婚できない、と。
そう、彼は、あてがわれた相手と幸せになる、ということができなかったのだ。
そんなことを言われたら私の立場はどうなると思っているの。そう訴えても梨の礫。王子は瞬く間に両親を説き伏せ、自身の花嫁を選ぶ舞踏会の開催を決めてしまった。
当然、振られたも同然の私に参加資格はないし、行ってもみじめな思いをするだけだと友人や両親に言われた。でも――
私は、侍女と従者に手引きしてもらい、舞踏会の開かれているお城へ行った。
お城のホールに辿り着くと、ちょうど音楽が途切れた所だった。
「美しいお方……私と踊ってくださいませんか?」
という聞き慣れた声に振りむけば、王子は一際美しい女性に声を掛けていた。
私になんか目もくれず、二人は優雅に舞い踊る。女性には見覚えがなかったけれど、彼女に向ける王子の目で、その気持ちが完全に彼女にあるのだけは分かった。……私にはそんな目、今までに一度だってしなかったのにね。
やがて十二時の鐘が鳴り響くと、女性は何か大事なことを思いだしたかのように、お城の外へ一目散に駆け出した。皆ぽかんとしていたけれど、私は急いで彼女を追い掛けた。こんなに急に駆け出すなんて、何か後ろ暗いことがあるに違いないから。そんな女が王子と結婚なんて、有り得ないことだから。彼女を追い掛けると、階段でつまづいた彼女が何かを落として行った。近づいてよくよく見ると、それはガラスでできた靴だった。もし王子がこれを拾ったら、きっとどんな手を使ってでもこの靴の持ち主を探しだしてしまうだろう。
私は、ガラスの靴を拾うと、そのまま自分の国に帰った。靴という手がかりがあればまだしも、手がかり無しなら、彼女を特定する手段は王子による首実検しかない。国中の女を集めた舞踏会を開くだけでも大変な事なのだから、いくらなんでもそれは認められないだろう。つまり、この靴さえ無ければ、王子は彼女を探しだせないはずだ。そして、あの舞踏会の日、王子はずっと、私がいることにさえ気づかないほどに彼女の方ばかり見ていたから、彼女以外の花嫁候補はいないだろう。そうなったら、許婚の私が王子様と結婚してめでたしめでたしという、予定通りの展開が戻ってくる。
笑いがこみ上げてきて、もう表情は誤魔化し様がないほどにやけているに違いなかった。そう、これはチャンスなのだ。
私は、拾った靴をドレスに隠し、ひっそりとお城を後にした。

一行解説:舞踏会開催に当たって婚約破棄された王子の元婚約者が、シンデレラの身元特定を妨害するため。
総合点:1票  納得感:1票  


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納得感部門フィーカス
投票一覧
「これは新しい視点ですね。いろいろ書くとネタバレになってしまうので詳しくは「読んでみてください」としか」
2015年05月26日09時

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