とある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。
しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい……ウミガメのスープに間違いございません。」
男は勘定を済ませ、帰宅した後、崖から飛び降りて自殺をしました。
何故でしょう?
14年01月15日 23:46
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[ノックスR]
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俺は仲間たちと漁船に乗り込んだ。
すると予想できなかった突然の暴風雨で船が遭難してしまった。
あまり大きい船でなく、ほんの少しの水しか積んでいなかった船だったので、遭難して数日も経つと、みんな飢えていった。
「おい、大丈夫か」
仲間であり、俺の親友のカメオが声をかけてきた。
「なんとかな……」
「そうか……だが、あいつ、リクオの方は持ちそうにないぞ」
彼の言ったリクオとは、俺のもう一人の仲間で、これもまた、俺の友達であった。
「あいつはあまり体力が無いほうだからな……」
「無線も壊れてるしな。とにかく、助けが早く来るのを祈るしかないな」
「……ああ、そうだな」
だが、それから数日たっても救助は来なかった。
そしてついにある日、リクオが死んでしまった。
俺たちは悲しんだが、それと同時に、次俺がこうなるのかもしれないという恐怖もあった。
おそらくそれはカメオにもあったのかもしれない。
その日の夜、カメオがこんなことを言ってきた。
「なあ、リクオを、食べないか……?」
「は?」
「このままじゃ、俺らも死んでしまう。それだったら……」
「バカいうな!! 仲間を、友達を食えって!? 出来るわけないだろ!! お前がそれでいいんでも、俺は死んでもごめんだ!」
「……あ、ああ。そうだよな、ごめん。どうかしてたわ」
「ったく、しっかりしろよ? あいつの分まで生き残ろうぜ」
「ああ!」
それで、この日は終わった。
そして、それはその次の日のことだった。
「おい! 聞いてくれ! 甲板で小さいウミガメを捕まえたぞ!」
「本当か!? カメオ!」
「ああ! これをスープにしてみた!ちょうど二人分しかないが、 一緒に食べようぜ!」
「ああ!」
そういつて食べたスープは美味しかった。
……本当に、美味しかった。
そうして二人でそのスープを食べ終えて、ひと段落ついて、体力を少し回復させた時、何気なくリクオの部屋を立ち寄った。
安らかなリクオの顔をもう一度見ようと思ったのだ。
だが……
「……おい」
そこにリクオはいなかった。
「なんだよ、これ……!」
その代わり、そのシーツには、おびただしい量の血痕が付着していた。
その時、カメオの昨日の言葉を思い出した。
全てが、分かった気がした。
すぐにカメオに詰め寄った。
「おい! なんだよ、あのリクオの部屋の血痕は!? リクオはどこへやったんだよ!」
「お、落ち着け……リクオを食べたのは俺だ。が、お前のは……」
「うおおおおおおお! なんでだ!? なんで俺に仲間を食べさせた!! 食うならお前一人でよかったろ!?? 俺にまで罪を背負わせやがって!」
「落ち着け…グウッ」
「うおおおおおおお! 殺してやる……殺してやるううう!!」
頭が真っ白になって、気づいたら目の前に、カメオが横たわって、死んでいた。
「お、お前が悪いんだ……俺に、俺にいっ……!」
俺が殺してしまったとすぐに分かったが、のうのうと友人に騙して人肉スープを食わしたこいつが悪いんだ。こんなやつだとは思わなかった! と、そのままカメオの死体を海に流した。
ーーーそれは、俺がカメオを間違っても食べないためであったし、殺人の証拠を隠すためでもあった。
皮肉にも、その翌日に救助がきて、俺は救助された。
カメオは嵐時に海に流されたことにした。
リクオのことも緊急避難だとか言って罪にはならなかった。
それから少しして。
俺は海の見えるレストランに立ち寄った俺は、メニューにウミガメのスープがあるのを見つけた。
ウミガメのスープ……
思い出すのは嫌なことばかりだ。
それでも俺は本当の味がどんな物か気になり、それを注文した。
そして出されたスープを飲んで、俺は衝撃をうけた。
味が同じなのだ。
これは…どういうことだ!?
店員に確認しても、やはりこれはウミガメのスープだという。
半ば呆然とレストランを出て、じっくりと考えて、気づいた。いや、思い出した。
『お、落ち着け……リクオを食べたのは俺だ。が、お前のは……』
あの言葉……
続きはなんだろう……?
もはや考えるまでもなかった。
「ああああああああああ!!!! 俺は! 俺は、なんてことを!!! 友を困らせて、挙げ句の果てに、信用できないで……俺は……殺してしまったっっ!!!!」
男の足はそのまま、崖のほうへと向かった。
総合点:1票 物語:1票
物語部門甘木【
投票一覧】
「本家オマージュ問題で、ベールをはがしていく過程で新たな真実が明かされていく物語の面白さを体験できる問題です。」
2017年09月09日00時