ここは海の見えるレストラン。
男は尋ねた。
「これは本当に、ウミガメのスープなのか?」
「はい。間違いなく、ウミガメのスープです。」
その返答に絶望し、汗を滲ませる男。
そして、やがて男は死んだ。一体なぜだろう?
13年11月17日 19:02
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[セルス]
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彼らは今、水平思考型パズル「ウミガメのスープ」を使った対戦型の賭博をしていた。
負けた方が、全ての財産を失う。実に単純明快な賭博だ。
勝負の内容は、こうだ。
対戦者たちは事前に「ウミガメのスープ」の問題文のみを提示される。
それに対して、対戦者はそれぞれ真相、すなわち解説を用意し、ジャッジに提出する。
そして対戦。対戦者たちは交互に質問をぶつけ合う。
対戦者たちは質問に対してYes, No, 関係ないのいずれかで答える。
その場にはジャッジが同席し、適切な回答がなされているかを監視する。
最終的に、相手の用意した真相を先に当てた方が勝者となる。
対戦会場の海の見えるレストラン。
男の目の前には、また別の男が二人。
一人はジャッジ。もう一人は、対戦相手。
そして、対戦は始まった。しかし・・・
-くそ、おかしい。一体どうなっているんだ。
男は焦り始めていた。
対戦相手はもう、自分の用意した真相の核心にまで迫ってきている。
一方の自分はというと、相手の真相が、全く見えてこない。
ここまで重ねて来た質問の全てが、まるで意味を為していなかった。
-おかしい、くそ、こんな事があるのか。あってたまるか・・・!
痺れを切らしてしまった男は、つい、こんな事を口走ってしまう。
「これは本当に、ウミガメのスープなのか?-『ウミガメのスープ』の問題として、成立しているのか!?」
その『質問』に、対戦相手の男は嘲笑を交えながら、冷淡に返す。
「『はい』。間違いなく、ウミガメのスープです。・・・それでは、次は私の手番ですね。」
-な、なんだと・・・
ただでさえ不利な状況だというのに、追いつめられた自分の迂闊な一言で、あろうことか手番を無駄にしてしまった。
男は絶望し、脱力した。焦りが加速し、汗が滲む。
次の対戦相手の質問で、決着した。無論、結果は男の敗北。
賭博に負け全財産を失った男が野垂れ死ぬのは、時間の問題だった。
総合点:2票 斬新さ:2票
斬新さ部門甘木【
投票一覧】
「発想の意外性、それを成立させる説得力のある解説がお見事。」
2017年09月08日23時
斬新さ部門とかげ【
投票一覧】
「「ウミガメのスープです」という返答に絶望する男。問題文から別解は色々考えられそうなものの、ここでこの題材を持ってきたのは面白い! 斬新な視点でつくられた本歌どりです。」
2015年07月07日20時