男は、努力を怠らなかった。
勉強、スポーツともに、何事にも手を抜かなかった。
男には夢があったのだ。
そしてついにその夢が実現しそうになった時、男は倒れてしまった。
だが男が目覚めた時、日々の努力は今日のためにあったのかと喜んだ。
状況を説明してください。
【参加テーマ:最近頑張ったこと】
13年05月24日 19:50
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[ノックスR]
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幼馴染の彼女と幼い頃に引越しで別れて───
それから何回も各地を転々として、彼女もどこかへ引っ越したらしく、全く連絡は取れなかった。
それでも、僕は彼女に会いたかった───
あのとき、「いつかまた」と言ったが、本当に再会できるか不安だった。
だから僕はあるとき考え付いた。
例え僕が世界のどこにいようとも。
例え彼女が世界のどこにいようとも。
常に、僕がどこにいるか分かるくらいに、有名になればいいんだ───
有名人になって、名前が世界中に知れ渡ったら、それで僕の居場所を知った彼女が会いに来てくれるかもしれない。
そう考えた僕は、一生懸命に勉強した。
分からないところは詳しく先生に聞いたりして、理解に努めた。
スポーツも全力で取り組んで、得意になった。
すべては、将来大物になるため。
それと、「僕はここにいるよ」という信号を世界中に伝えるため。
───そして十数年後。
僕は物理学者になって、今年、ついにノーベル賞の受賞が決まった。
皆は僕のことを「若き天才」なんて呼ぶが、それを支えたのはこの世界のどこかにいる、彼女の存在だった。
そして僕は、受賞の会見で彼女のことについて話そうと決意した。
「僕ががんばってこれたのは、世界のどこかにいる彼女に再会するためです。もしこの会見を見ていて、僕のことを覚えているのだったら、またお会いしませんか?」───と。
だが会見のその前日。
僕は───倒れてしまった。
過労だった。
病室で目覚めた私は、ひどい倦怠感に襲われた。
私がこれまでしてきたことはなんだったのだろう……
そう思っていると、誰かが部屋の中に入ってきた。
どうやら私の担当の看護師のようだ。
「お体の具合はいかがですか?」
彼女は聞く。
「……大丈夫です」
そう答えると、彼女は「そうですか」と笑った。
「ところで、学者様なんですね。やはり大変なのでしょう? ……なんでそんなに頑張るんですか?」
「それは───」
「あ、ちなみに、私がこうやって頑張っていたら、いつかあの人が世界のどこにいようとも、私がここにいることが分かるかな、って。小さい頃に「いつか、また───」って言って、離れ離れになった、あの人と───」
「え───」
「あら? あなたも一緒の理由だったりします?」
そう言ってわざとっぽく微笑む姿には、どこか、彼女の面影があった。
「君。まさか……」
僕が信じられない思いでそう言うと、彼女はクスッと笑った。
「ひどいな。私なんて、すぐに分かったのに」
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物語部門天童 魔子【
投票一覧】
「・゚・(ノД`)・゚・。こういう話良いな~」
2014年11月28日16時