とある海の見えるレストランで男はウミガメのスープを1口食べると、
『これは本当にウミガメのスープですか?』
と尋ねた。
『はい、これはウミガメのスープで間違いありません。』
と店員が答えると、
男は泣きながらスープを完食した。
会計を済ませた後、男は胸ポケットからある物を取り出し、店員に見せた。
店員が首を横に振ると、男は会釈して店を出た。
そして男は歩き続けた。
状況を推理してください。
13年02月26日 22:43
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[のりっこ。]
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とある海の見えるレストランで男はウミガメのスープを1口食べると、
『これは本当にウミガメのスープですか?』
と尋ねた。
『はい、これはウミガメのスープで間違いありません。』
と店員が答えると、
『………ああ………
そうだ………この味だ………
…あれは、やはり本物のウミガメのスープだったんだ………
良かった………本当に良かった……………
俺が食べたのは………
………本当にウミガメのスープだったんだ………』
男は泣きながらスープを次から次へと口に運び、
一口一口を確かめる様に、その味を噛み締める様に………
そして綺麗に完食した。
−−−数年前、
男の乗った船は遭難してしまった。
船乗り仲間達数名と救難ボートに乗ったまま漂流…
不運にも、嵐に遭った………
………気が付くと、男はどこかの浜にいた…
仲間の声が聴こえた。
仲間は男に【しっかりしろ】【生きろ】と言い、
意識が朦朧としていた男の口を無理矢理こじ開け、
何かモノを注ぎ込むと、力ずくで噛ませ、飲ませた。
仲間は言った。
【これはウミガメのスープだ、
しっかり食え!
命ある者は…生きなきゃいけない!!!
命を失ってしまった者の分まで…
俺達は生きて帰らなきゃいけない!!!!!】
…仲間は泣いていた。
…男も泣いていた。
その時は全身に力が入らず、
視界もぼやけていて、仲間に抱き抱えられ、ただ【生きる為の糧】を口に流し込まれていた。
男はそれを噛んだ。
そして飲んだ。
そして、生きた。
どれ位か時間が経った頃、偶然通りかかった船に助けられた。
…仲間の数名が力尽きて死亡し、
行方不明者も数名いた。
その中に、一緒に船に乗っていた男の息子の名前もあった………
故郷に帰り、療養し、
男はずっと考えていた。
息子の遺体は実際にあがっていない。
息子は流されたのか…
まだどこかで生きている可能性だってある…
そして、仲間が食べさせてくれた【ウミガメのスープ】の事も、
ずっと頭から離れなかった。
あれは…本当に………
【絶望】の闇の中に身をさらしていた、あの状況下………
男は…仲間が【ウミガメのスープ】だと言ったあの食べ物が…
本当は………
【考えたくもなかった事】を想像してしまい、
身震いし、困惑していた………
それから、男には2つの【やるべき事】が出来た。
1つは、【息子を探す旅】に出る事。
男は実際に息子と対面するまで、絶対に希望を失わないと決めた。
もう1つは、あの時、男が生きる為に食べたあの【ウミガメのスープが本当に『ウミガメ』の味だったのか…
この口で実際に確かめる】事。
それから男の旅は始まった。
息子はきっと生きている。
そして、俺は決して…【仲間を食べてなどいない】…という【真実の確信】が欲しい…
『…ご馳走さま。
【ウミガメのスープ】、本当に美味しかったよ。』
会計を済ませた後、男は胸ポケットから大切な息子の写真を取り出し、心当たりがないか、店員に見せた。
店員が首を横に振ると、男は会釈して店を出た。
そして男はまた歩き、
長い長い旅を続けた。
総合点:3票 チャーム:1票 伏線・洗練さ:1票 物語:1票
チャーム部門からす山【
投票一覧】
「本家ウミガメのスープとだいぶ違う、ちょっと前向きな感じの問題文は、解きたくなるチャームが高い方と思います。」
2017年10月14日23時
伏線・洗練さ部門からす山【
投票一覧】
ネタバレコメントを見る
「本家ウミガメのスープを、まるで逆の、このように解釈する。のりっこ。さんの想像力の凄さが垣間見えた、のりっこ。さんの初期の傑作だと思います。」
2017年10月14日23時
物語部門からす山【
投票一覧】
「解説読んで鳥肌立ちました。絶望からの救い、そしてそこから前へ歩き始める力強い物語がここにありました。」
2017年10月14日23時