とある少女が盲目から回復した。人々は奇跡だと喜んだが、なぜだか少女は泣いていた。
1年後の彼女の誕生日。彼女は生物学者のもとに少し不気味な小さな花を持ち込んだ。
見たこともない花を目の前に生物学者は喜び、新種として世に発表することを決めた。
『花の発見者はその花に名前を付けることができます。あなたの名前をぜひこの花に付けましょう!』
少女は少し微笑んで、すぐさまこう答えた。
『名前ではなくて、私の性をこの花に付けてもらえるかしら?』
一体どういうことだろうか?
13年02月18日 19:16
【ウミガメのスープ】
[こびー]
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『悪魔さん、こんにちわ』
窓際に座っている悪魔に少女が話しかける。
この悪魔は3日前から彼女の家に暇つぶしに遊びに訪れるようになったのだ。
少女は、盲目のために悪魔の姿が見えず、彼を恐れることもなかった。
悪魔は自分を恐れない少女を珍しく思い、興味をもった。
たわいないことを話しながら、目の見えないことで友達のできたことのない少女と、人から忌み嫌われた悪魔にとって、お互いは初めての友人となり、二人はいつしか恋に落ちていた。
『私、悪魔さんと結婚したいわ』
『ケッコン?なんだそれは』
『ん~、そうね…男女が同じ性を名乗ることよ』
『そんなことなら容易い。』
『でも、1年待ってね。私は16歳にならないと結婚できないのよ』
『そうか。』
半年後、少女は恐れていた盲目の手術を受けることを決心する。
悪魔が彼女を励まし、彼女に勇気を与えたからだ。
だが、悪魔には少し先の未来が見える。彼女の手術は失敗してしまうと。
悪魔は決心する。彼女を助けることを。
醜い姿を見られ恐れられることを怖がったが、なにより彼女に世界を見せてあげたいという気持ちが強かったからだ。
人間に不幸を与えるのが悪魔の役目。人間を助けるために力を使うことはタブーであった。そんな悪魔を待っているのは死である。
『しばらく私は、声が出せなくなる』
『え?どうして?』
『悪魔だからだ』
『そう・・・、寂しいわね』
『私は話せなくなる。貴様は目が見えるようになる。
対した問題は無い』
―――手術を無事に終えた少女が家に帰ると、そこは静けさに満ちていた。
悪魔がいた場所には、一輪の花が咲いていた。
少しだけ不恰好に曲がった葉を除けば、とても、可愛らしい花だった。少女は花に歩み寄る。
その、口の利けない、小さい小さい花には、微かに、温もりがあった。
『あなたは嘘つきよ。こんなに可愛らしい姿を自分で、醜いだなんて…でも、勇気をくれたあなたとの約束は守るわ』
1年後の彼女の誕生日。すっかり目が見えるようになった彼女は生物学者のもとにその小さな花を持ち込んだ。
見たこともない花を目の前に生物学者は喜び、新種として世に発表することを決めた。
『花の発見者はその花に名前を付けることができます。あなたの名前をぜひこの花に付けましょう!』
少女は少し微笑んで、すぐさまこう答えた。
『名前ではなくて、私の姓をこの花に付けてもらえるかしら?』
『それはどうしてですか?』
『ふふ・・・、花と結婚するのも悪くないと思わない?』
総合点:8票 伏線・洗練さ:1票 物語:7票
伏線・洗練さ部門からす山【
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「人外の存在について、問題文中のクルーは「少し不気味な」ぐらい。そこから真相にたどり着くのは相当困難なことではないかと思います。難度の高い水平思考、完成度・洗練さに1票。」
2017年10月18日19時
物語部門からす山【
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「盲目の少女と人外の存在との、奇跡的な恋の物語。周囲に溶け込めない者同士で、だからこそひかれあう。分かります。二人はもう、孤独ではない。たとえ片方が花になってしまっても。そして「結婚」することによって、二人はきっと、本当に幸せになるのです。少女が悪魔のもとの姿を知らなくても、悪魔が口を聞けなくなってしまっても、きっと二人はお互いの全てを分かりあい、幸せなのです。」
2017年10月18日19時
物語部門蓮華【
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「やさしい物語です。最後の一行が非常に印象的です。」
2016年06月02日20時
物語部門SNC【
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「名作と言っても過言ではない物語の構成。とても感動的な結末。「やさしさ」が明確に現れている、そんな作品です。」
2016年03月19日19時
物語部門春雨【
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「名前でなく姓を。盲目の手術と合わせて、味わい深い物語が有ります。」
2016年01月04日02時
物語部門エリム【
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「絵本として出版しましょうと言いたい1作です。花が不気味な理由も、しっかりと物語として生きています。」
2015年06月22日23時
物語部門bears【
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「切なく、儚い、素晴らしい話です。」
2015年06月21日15時
物語部門junpocke【
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「問題文・解説ともにレベルの高い問題ですね。読み進める内に惹き込まれる見事な構成。参加してませんでしたが、軽い気持ちで読み始め、無意識にイイね(当時は殿堂入り)を押したと記憶しております。」
2015年01月22日12時