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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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狭間-times and square-(問題ページ

にでも人に話せない側面があるものだ。


男の手元には正方形のタイマーが握られていた。

几帳面な男はいつもだれもいないことを確認した後、きっちり3分間タイマーの時間をセットする。

     カチリ・・カチリ・・ 

タイマーが1秒ごとに正確に時を刻んでいく。男はいつも悩んでいた、自分のしていることが正しいのかどうか・・。



ある日を境に男がセットする時間は短くなった。



状況を補完して説明してください。

13年01月18日 00:26
【ウミガメのスープ】 [こいる]



解説を見る
のマンションには少年とその家族が住んでいた。

少年は数日前、住んでいるマンションと隣のビルの隙間に子猫を見つけた。親猫はいないようだった。

たまたま近くにあった雑誌からその子猫を『スクエア』と名付けた。


両親にこのことが知られると怒られるに違いないと思った少年は、この隙間でこっそりと飼うことにした。

段ボールと新聞紙でささやかな家を作ったり、スクエアが寒くないように毛布を持ちだしたりした。

いつしか彼は自分のお小遣いで買った猫用のミルクを持ってスクエアに会いに行くのが楽しみになっていた。


もちろん、ミルクは家族がいない時を見計らって家で温めてから持って行った。

高い位置にある鍋を手に取り、毎日キッチンタイマーできっちり3分間計って温める。

・・・カチリ・・・カチリ  コンロの火を調整する。

子猫のもとまで届ける頃にはちょうど人肌になっている算段だ。

逆に言えば彼ができることはそれぐらいしかなかった。



(スクエアのためを思うならこんな路地裏で飼い続けるのではなく、飼ってくれる人を探しに行くべきなのではないか?)


幼心にそういう葛藤がない訳ではなかった。ただ、どういう判断を下せば正しいのか少年には分からなかった。

迷いに迷った少年は、スクエアの住処である段ボールに『だれかかってあげてください。なまえはすくえあです。』とだけ書いた紙を張り付けておいた。



ある日、いつものように彼がミルクを温めて持っていくとスクエアの姿がなかった。理由はすぐに分かった。

段ボールに貼った紙の自分の文字の下に、恐らく大人の人が書いたであろう綺麗な字で小さく

『わかりました。すくえあちゃんはだいじにするのであんしんしてください。』と書いてあった。


本当はスクエアを引き取ってもらったことを喜びたかった。しかし、それとは違う感情の涙が勝手に溢れてきた。
涙を堪えて上を向くと、お世辞にも綺麗とは呼べない路地裏の狭い隙間から冗談みたいに青い空が見えた。


・・・とぼとぼと家に帰ると、珍しく両親が帰宅していた。父親が「明日引っ越しをするから準備しておきなさい」と言ってきた。スクエアがいないこの町に未練などない今の彼にはどうでもよかった。

「そうそう、それだけじゃないんだ。今日からは可愛い家族が増える」父親がそういうと同時に聞き覚えのある鳴き声。




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「すくえあ!」

少年が名前を呼ぶと父親の後ろからとことこと子猫が歩いてきた。

「なんで?」

少年はスクエアを抱えると両親に尋ねた。

「可愛い子どもの字くらい見たらわかるわ。見覚えのある毛布もあったもの。」

「そうそう、それにこのマンションじゃその子は飼えないからな。ふふふ、今度の家は一戸建てだぞ!」

少年は嬉しくてたまらなかった。スクエアも嬉しそうだった。

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今日も少年はきっちり3分間・・ではなく、今ではタイマーをセットするのは1分間だけだ。


・・・もう少年が狭間に行く必要はなくなったのだから。
総合点:2票  チャーム:1票  物語:1票  


最初最後
チャーム部門エリム
投票一覧
「緊迫感のある描写に引き込まれ、隠された意外な展開に感心できる1作です。」
2015年08月04日01時
物語部門春雨
投票一覧
「クルーが明かされてゆくたびに、見えてくる物語。」
2015年08月03日01時

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