月はロミオの肩越しか、あるいはジュリエットの肩越しか。
それがなかなか定まらないため、ひまわりがひとつ完成した。
もちろんこの「ひまわり」というのはあるものの暗喩なのだが、さて、この問題文が示しているのはどのような状況なのだろうか?
17年10月24日 22:48
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[牛削り]
解説を見る
文化祭を明日に控え、準備中の一年五組。
このクラスは模擬店ではなく、体育館のステージでオリジナル演劇「ロミオとジュリエットと隆史」を演じることになっている。
準備は順調に進んだ。
立ち位置や大道具の置き場所が決まると、各々、その下に色つきテープを貼ってバミっていく。
ところがあるシーンについて、意見の対立が起きた。
ジュリエットがロミオに「あなたは何故ロミオなの?」と尋ね、隆史はその隣でシャドーボクシングに精を出すという重要なシーンだ。
満月を背負う上手にロミオを置くか、あるいはそちらにはジュリエットを立たせるか。
それによって、必然的に隆史の立ち位置も変わってくる。
隆史だけでなく、二人を中心とした色々なものの位置も定まらない。
「観客はセリフの多いジュリエットの方を見るのだから、満月はそちら側にあるほうがいい」
「いや、ジュリエットが満月を見ながら感傷的になっているという設定は譲れない」
「隆史は赤パンツの方が映えるのではないか」
議論はしばらく続き、その間、みなの作業は中断する。
ただひとり、野村を除いては。
野村は何をしていたか。
バミリ用の黄色テープを適当な長さに切って、近くの丸テーブルに貼っていく作業だ。
皆は丸テーブルからテープを剥がし、それぞれの持ち場にバミっていく。
野村の働きにより各自のテープを切る作業が省けて、効率的になるのである。
立ち位置決めが紛糾していても、野村はペースを変えずにテープを切り続けた。
消費が止まったまま供給され続ける黄色テープは、やがて丸テーブルの円周を埋め尽くした。
それはさながら、悲恋の二人と隆史を優しげに見守るひまわりのようであった。
【要約解説】
演劇の登場人物の立ち位置が決まらないため、バミリ用テープを予め切って手近な場所に貼っておく作業ばかりが進行し、それを使う作業が滞った。
その結果、黄色のテープが丸テーブルの円周いっぱいに貼られ、ひまわりのようになった。
【解説の解説】
「バミる」とは、演劇などで、立ち位置や道具の置き場所にテープなどで印をつけておくことをいう。
総合点:1票 納得感:1票
納得感部門からす山【
投票一覧】
「確かにひまわりです、ひまわりと言わざるを得ない、納得ですが、まさかアレをひまわりと見るとは!着眼点というか、連想の仕方が見事かつ素敵です。」
2017年10月25日18時