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世界一(問題ページ

は、世界一美味しいケーキを作れるようになって迎えにくると約束し、妻をたった一人家に残して旅に出た。
しかし、修行しながら諸国を巡るつもりでいたのに、あっという間にあきらめた。
最初に立ち寄った華やかな都会で、住みこみで数年働いたあと、郊外に小さな店を構えて気ままに暮らしていたのだ。

とある夜明け前、みすぼらしい身なりの少女が、重たそうな水桶を持って店の前を通りかかった。
男はふと少女が気になり、昨日の売れ残りのケーキを1つ与えた。

ガツガツとケーキをほおばる少女に、男は尊大に尋ねた。
「どうだい? 世界で一番美味しいケーキだろう?」

すると少女は言った、
「いいえ、世界で二番目に美味しいケーキだわ。」

男は少し不機嫌になった。
こんな少女が、ケーキのような贅沢品を食べたことがあるとはとても思えなかった。
『生意気な奴だ』と男は思い、再び問いかけた。

「じゃあ、世界で一番美味しいケーキはどんなケーキなんだい?」

少女の答えを聞き、ひどく恥じ入った男は、少女と一緒に働くようになった。



状況を解き明かしてください。
16年09月28日 22:34
【ウミガメのスープ】 [えぜりん]



解説を見る

女は、自分の父の作ったケーキが世界一だと答えた。
父が世界一のケーキを作れるようになって迎えにくるのを待っているので、父以外の人が作ったケーキが世界一だと困ると言う。
男は少女が自分の娘であることに気づいた。
男が家を出たあとに生まれ、亡くなった母に父の話を聞かされて育ったのだ。

約束を忘れ、世界一になることをあきらめたあと、妻に連絡すらせず、娘の存在も知らなかった男は、自らの無責任ぶりを恥じた。
男は、娘と暮らし始め、店で共に働いている。



以下、詳細ですが読まなくても大丈夫です。



「それはね、アタシの父さんの作ったケーキよ。」
少女は答えた。

少女はさらに語った。
少女の父が、自分の生まれる前に家を出たことを。
世界一のケーキを作れるようになって、自分の店を持ったら迎えにくると、母に約束したことを。

「もし、あなたのケーキが世界一だったら、父さんは迎えにこられないでしょう? あなたのケーキはとっても美味しいけど、一番じゃ困るの。アタシは父さんに会いたいんだもの。」



男はハッと胸を突かれた。
夜明けが近づき、白く浮かんできた少女の顔に、妻の面影を見たのだ。

男は妻が身ごもっていたとは思っていなかった。
でも、もしかしたら……

男は震える声で尋ねた。

「キミの母さんは?」
「去年事故で死んだの。私は母さんの親類に引き取られたの。ああ、早く水を運ばないとまた殴られるわ。」

少女は水桶にかがみこんだ。



男は妻の名を呼ぼうとした。
2回呼ぼうとして、2回失敗した。
3回目に、わずかに声が出た。
とても少女にまで届くとは思えないくらい、かすれ切った声が。

だが、母の名を聞いた少女の反応は早かった。
男を見つめる丸い目によぎる様々な感情。

答えはそれだけで充分だった。



男は、約束を忘れていた自分自身を恥じ、娘である少女に心から謝罪した。

その後少女は、男と一緒に暮らし始め、店を手伝うようになった。

少女の顔が笑顔になることは、まだあまり多くない。
『許してもらってはいないのかもしれない』と男は思う。

だけど、精一杯の償いをしようと、男は心に決めている。
総合点:1票  物語:1票  

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物語部門エリム
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【ネタバレ】コメントを見る

「ものの価値について考えさせられる1問。甘いだけではない味付け、余韻が残ります。」
2016年10月21日00時

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