「もしもし?おれ。・・・」
そんな電話を受けた私は、息子のカメオであると思い言われるがままに金を振り込んだ。
結局、私が振り込んだ相手はまったくの見ず知らずの人間であることが判明したのだが
私はそれを知りほっとしたのだった。
なぜ?
16年08月13日 12:30
【ウミガメのスープ】【批評OK】
[Ratter]
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1945年、終戦直前の話。
気が付くと焼け野原に投げ出されていた。どうやら近くに焼夷弾でも落ちたのだろう
まわりには火の手が上がっており、顔のあたりががズキズキと痛む。
どうやらやけどを負っているようだ。
目の前には自分と同じくらいの年齢の女性の遺体が転がっている、
同じく顔などがに大きなやけどをおっていて、それが原因で死んだようだが・・
その手荷物や着物をみると・・かなりの金持ちのようだ・・
とっさに死体の身ぐるみをはぎその場を立ち去った。
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数年後、【私は亀井カメコとなっていた。】
終戦後の混乱のドサクサ期、
都合のいいことに、夫であるカメゾウは戦死。息子であるカメオは戦場で行方不明。
顔の火傷のせいもあり、私のことを見抜ける人間は存在しなかった。
こうして亀井カメコの人生を乗っ取り、
私は生まれて初めて金銭に不安のない生活というものを送れるようになった。
それからさらに年月がたった頃、一本の電話がかかってきた。
「もしもし?おれ。カメオだけど・・・」
行方不明になっていたはずのカメコの息子、カメオからの金の無心の電話であった。
・長年行方不明であった息子が急に電話をかけてきたこと。
・そのくせ、【会えない理由があるから口座に金を振り込んで欲しい】などという願いをしてきたこと。
怪しく思わないではなかったが、
変に詮索して【直接会いに来る】と言われても困る。
なにせ実の親子である・・会うこととなれば火傷があるとはいえ仕草や記憶から、
他人であることはすぐにバレるだろう。
結局私は、金は惜しくはあったが言われた口座に金を振り込んだ。
それからというもの、私は
・また連絡が来るのではないだろうか?
・それ以前に今回の金で、会えない理由が解消して、つぎは会いに行くなどと言い出すのではないか?
という恐怖にさいなまれることになった。
ところが後日、警察から電話があった。
どうやら戦争不明者のリストを使った連続詐欺事件であったようで、
カメオと名乗っていた男はまったくの赤の他人だったそうだ。
こうして私は、【カメコの息子によって正体がバレる】という恐怖から開放され
当面の間はほっとすることができたのであった。
総合点:2票 納得感:1票 伏線・洗練さ:1票
納得感部門エリム【
投票一覧】
「現在の犯罪と過去の犯罪、それが成立するだけの説得力がこの解説にはあります」
2016年08月13日22時
伏線・洗練さ部門低空飛行便【
投票一覧】
「振り込んでしまった理由も、ホッとした理由も、ある事実でつながっています。」
2017年01月02日23時