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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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夢を見ていた(問題ページ

は懸命に働いた。

夢を叶えるため。

生きるため。

3年後、遂にその仕事は成功した。
男は喜んだ。
ようやく夢が叶った、そう思われた矢先――

男は突然、自ら死を選んだ。


何故?
16年06月24日 17:53
【ウミガメのスープ】 [水瓶のスープ]



解説を見る
究者の男は、幼い頃から抱いたその夢を叶えるため、懸命に働いた。
だが、大した成果も得られないまま時は経ち、男は重い病に侵されてしまう。
その病を治す薬は、当時まだ開発されていなかった。

男は生きたかった。
そのために死に物狂いで研究した。
叶えたかった夢など、とうに忘れてしまっていた。

3年後。
病が進行し、許された時間がいよいよ終わりを告げようとする頃。
男は遂に薬を完成させた。
成功だ。自分は生きられるのだ。
男は喜んだ。

男が薬を飲もうとした、その時。

外から研究室の扉を叩く者があった。
開けると、そこに一人の老人が立っている。

「先生…!先生、お願いです。助けてください」

男の顔を見るなり老人はそう言った。男がどうしたのかと尋ねると、

「どうか薬を分けてください。私の娘が、あなたと同じ病気なのです」

「…いつからです?」

3年ほど前…。不治の病と諦めておりましたが、先生が薬の開発に成功なさったと聞いて」

3年前。
それではこの老人の娘もまた、男と同じ程度に病が進行しているはずだ。

男はちらと作業台の上を見やった。

完成した薬はたった1人分。
今から新たに作るのでは間に合わない。
男は決心した。

老人へ優しく微笑みかけ、言った。

「大丈夫。薬ならここにあります。さあ早く、持って帰って娘さんに飲ませてあげてください」

老人はわっと泣き出さんばかりに喜んだ。

「ありがとうございます…!あの、それで…お代は…」

「いいえ、お代は必要ありません」

男の言葉の真意など知る由もない老人は、ただただ男の親切に感謝し、薬を持ち帰った。





老人を見送った男は、ひとり研究室のソファに腰掛け、そっと目をとじた。

『…ずっと夢見ていた』

『いつか私の研究が、誰かの命を救うことを』

『自らが病に侵され、もうそんな夢は潰えたとさえ思ったが…』

『最後の最後で、叶ったんだなぁ』


男は満ち足りた思いで、永い眠りが訪れるのを待った。





【要約】
研究者の男が自分の病を治すために薬を開発したが、同じ病に罹った人がいたので、一人分しかない薬をその人に譲り、自らは死ぬことを選んだ。
総合点:2票  物語:2票  


最初最後
物語部門エリム
投票一覧
「問題としても完成度が高いですが、解説の展開がまた素晴らしい。男の夢の内容がこれだからこそ。」
2016年06月25日20時
物語部門QQS
投票一覧
「ストーリーの美しさ,素晴らしいの一言です」
2016年06月25日14時

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