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ウミガメのスープ 本家『ラテシン』 
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エイプリルフールが来る前に(問題ページ

の友人の話をしよう。

友人はエイプリルフールが嫌いだった。
昔はそうでもなかったようだが、ここ暫くwebでここぞとばかりに乱痴気騒ぎ悪巫山戯を繰り返す連中に嫌気がさしているようであった。
「ネタで人をかつぐとか、物事に何も期待しないで悉く斜や裏から見て過剰反応してみるとか、どいつもこいつも普段っからやってることじゃないか。それをことさらきょうは公認とばかりに持ち上げるのは、新年度を迎えたくないだけのただの現実逃避だろう?」と。

そんな友人が、昨年の今頃、3月末—
「今年と来年のエイプリルフールは、とっておきの嘘を用意する」と言った。
つまり今から見れば、昨年のエイプリルフールに嘘をつき、今年のエイプリルフールにも何か嘘を用意しているということだ。

…なのだが、実は今の今になっても、俺には昨年友人がついたはずの嘘が何だったのかわからないのだ。
友人が"「嘘をつく」と言ってつかなかった"なんてメタ臭いことをするような奴には俺には思えない。

友人が昨年ついた嘘、今年つこうとしている嘘はどんなものだったのだろう?

※「友人」の「嘘」の真相を解明してください。
一字一句当てるものではなく、また一人称出題ですが「俺」に気づきを与えるのではなく屋上がお答えしますのでウミガメのスープとさせてください。
16年03月28日 22:30
【ウミガメのスープ】 [屋上]



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局友人の嘘がわからないまま迎えた、今年のエイプリルフール。

「生きてます。」

一年以上動きのなかった友人のSNSにこのタイトルで新しいエントリがあり、俺はぎょっとした。

友人が池端を散歩中に足を滑らせ、転落して亡くなった—友人のご家族からそんな連絡を受けたのは、昨年のエイプリルフールのこと。
最初はそれが「とっておきの嘘」なのかと思ったのだが、わざわざ家族まで巻き込むなんて悪趣味すぎるし、事実友人は亡くなっていた。
葬儀の日、棺の中の友人が二度と動かないのを目の当たりにして、ついこの間まで話してたのに、と悲しくなった。

しかしよりにもよってエイプリルフールに死ぬなんて。
それも、結果的に「とっておきの嘘」を墓の下にまで持って行ったまま。
そう思っていた。

エントリの本文にはこうあった。
「…驚かせてしまってごめんなさい。

このエントリは、3月31日に翌年のエイプリルフールに合わせて予約投稿したものです。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、昨年の今日川に転落して死んだ僕が実は生きていたわけでも、死後の世界から書いているわけでも、アカウントがハックされたわけでもありません。」

…なぜ、自分でそんなことが言える?

「ええ、疲れたんです。正直。
虚しくなったと言うか、気力が尽きたと言うか、世界はこんな連中を選んじまったのか…と言うか。

僕はみんなに迷惑ばかりかけていたから、たぶんいないとは思うけど。
もしかしたら、僕の心配は杞憂だったとか、そんなことで早まったのかとか、泣いている人もいるのかな。
いいんですよ。
きょうは、そういう現実とかけ離れた悪巫山戯も甚だしい言動が許される日、らしいですから。

# もしかして、やりすぎたのかな?
# でも生命保険かかってたわけでもないし、いいよね?」

私は気づいてしまった。
彼が昨年ついた嘘が、自殺を事故死に見せかけたこと、そして今年、(ネタばらしを兼ねて)生きているかのようにSNSを更新すること、だったと。

馬鹿。
二年がかりのとっておきの嘘って、そんな悪い冗談を仕込む奴があるか。
昨年のお前の葬儀、どれだけ人来たと思ってんだ。そしてどれだけお前の死を悔やんだと思ってんだ。

「…なんて、本当にごめんなさい。
ご存知の通りこのエントリ自体エイプリルフールの戯言です。気にしないでください。
もし僕が殺されていて、このエントリがもとで犯人を逃がすようなことがあったらことですから(笑)

もっとも、そもそも僕が死んだことでアカウントが閉鎖処理されてたらこのエントリもなかったことになるんですけど、そのときはそのとき、ということで。

つまらないことにお時間取らせてしまって本当にごめんなさい。お騒がせしました。」

思えば、友人は全部自分で抱え込みがちなところがあった。
…俺は、友人の遣る方無い感情に気づいてやれなかったのか。いや、その後悔を背負うのは俺だけじゃない。
お前は自分を想ってくれる人たちを悲しませるために、そんなことをしたのか…?
総合点:1票  物語:1票  


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物語部門エリム
投票一覧
「エイプリルフールという、軽やかなイメージの題材で、このような物語に出会うとは・・・。読み終えると語り手による「わからない」という言葉の響きも違って感じます。」
2016年04月12日00時

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