彼が一人で留守番をしていると、外出していた母親が血まみれになって帰ってきました。
話を聞いて、彼を助けてあげましょう。
16年02月29日 18:06
【亀夫君問題】【批評OK】
[苔色]
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……!!
驚いた拍子に足の下で小枝が音を立てた。はっと息を呑むがもう遅い。
気付いた時にはこちらを振り返った殺し屋と目があっていた。
「おい、子供がこんな所で何をしている」
殺し屋は怪訝そうな顔でそう言った。
すぐに打たれるかと思った僕はおずおずと顔を上げる。
「ひどい格好だな。おまえ、母親はいるのか? 一人か?」
こいつは何を言っているんだ? 殺し屋のくせに。
……あれ?
僕は何故こいつの喋っていることがわかるんだろう。
「そう唸るな。まるで狼みたいだぞ。……これは参ったな」
まるで狼みたい? それは勿論そうだ。だって僕は……
「あーとりあえず、名前は?」
……僕は誰なんだろう。
「何だ喋れないのか? まあいい、名前は後だ」
殺し屋は大きな手でがしりと僕の肩を掴んだ。
「とりあえず一緒に町に来い」
* * *
そうして僕は人間の中に戻ってきました。
母さんが死んだ事については、僕は未だに殺し屋――猟師を恨んでいます。
いつかは赦せるようになる時も来るのかもしれませんが、長い時間が必要だと思います。
でも母さんが撃たれなければ僕がこうして暮らす事もなかったのでしょう。
猟師はとても親切です。
何もわからない僕を引き取り、人間の間で暮らすのに必要なことを色々と教えてくれました。
今では数を数えることも、本を読むことだってできます。
……ただ、本の中で狼は必ず悪者として登場します。とても不満です。
大きくなったら作家になるのが夢です。
作家になって正義の狼が悪い少女をやっつける話を書いてやるのです。
そう言ったら猟師に苦笑されましたけどね。
兄さんたちは相変わらず元気に山を走っているようです。たまに遠くから遠吠えが聞こえきます。
窓から外を覗くと、雪をかぶった山に真っ赤な日が沈んでいくのが見えました。
【Good end】
総合点:1票 亀夫君部門1票
亀夫君部門相須 楽斗【
投票一覧】
「此方の予想を二転三転させ、臨場感溢れる問題でした。回答が待ち遠しかったのを忘れません」
2016年02月29日22時